昭和残侠伝の紹介:1965年日本映画。高倉健のスターイメージを決定づけた東映の任侠シリーズの第1作。ストイックな男が耐えに耐え、最後に怒りを爆発させるというパターンはハリウッド映画でも模倣されている。落語家の三遊亭圓生が隠居した大親分として出演。
監督:佐伯清 出演:高倉健(寺島清次)、池部良(風間重吉)、三田佳子(西村綾)、梅宮辰夫(ゼロ戦五郎)、松方弘樹(ジープの政)、伊井友三郎(川田源之助)、水島道太郎(岩佐徹造)、三遊亭圓生(大谷)、江原真二郎(西村恭太)、水上竜子(風間美代)、ほか
映画「昭和残侠伝」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「昭和残侠伝」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「昭和残侠伝」解説
この解説記事には映画「昭和残侠伝」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
昭和残侠伝のネタバレあらすじ:起
昭和21年、価値観がガラリと変わってしまった戦後の日本。それは下町である浅草にも影響を及ぼしていました。
元々道端で雑多な品物を売る露天商たちを仕切っているのは当代が4代目となる神津組なのですが、戦後に勢力を伸ばしてきた新誠会がそのシマを荒らしにかかっているのです。彼らへの上納金は恐ろしく高く、商人たちも青息吐息です。
今日も揉め事がありましたが、通りすがりのヤクザである風間重吉が助けてくれたため、神津組の若い組員も怪我をせずにすみました。その汚いやり口には神津組の組長川田源之助も常日頃から怒りを覚えているのですが、任侠道を重んじる彼はあくまで事を荒立てるのは避けていました。重吉に感謝した川田は客人として彼を迎え入れます。
昭和残侠伝のネタバレあらすじ:承
そんな神津組を舐めてかかった新誠会はそのシマをそっくり頂こうと、闇夜に乗じて川田組長を射殺します。若い組員は怒り狂い、落とし前をつけたいといきり立つのですが、証拠がないためにどうすることもできません。
そんな中、戦地から寺島清次が復員してきます。彼は頼りになる兄貴として慕われている神津組の組員で、川田もその人望を見込み、遺言で5代目として指名していました。寺島は遺言通り跡目を継ぎ、新しい組長として神津組を率いていくことになります。
ただ徴兵前にお互い好意を持ち合っていた綾は石岡組の西村恭太と結婚していて、それだけが心の傷として残りました。しかしストイックな寺島は嫌な顔も見せず、彼らを祝福します。
昭和残侠伝のネタバレあらすじ:転
寺島が組長となっても新誠会の嫌がらせは続きました。組員の1人で、特攻隊の生き残りである五郎も美代という女に関するトラブルで新誠会の奴らになぶり殺しにされます。その葬儀には美代も姿を見せましたが、その顔を見て重吉は驚きます。
それは行方知れずになった実の妹だったからです。結核を病んでいる美代を重吉は入院させますが、治療の甲斐もなく彼女は他界します。また新誠会の作った組合に入っていた西村は裏切られたことに気づき、1人で殴り込みをかけて殺されます。
一方、新誠会は財産税の捻出に苦しんでいる地主から安い金で土地を買い上げ、神津組のシマを合法的に手に入れようと画策。しかし仁義を欠いたやり口に卸問屋や古い親分たちが反発し、資金を集めた上で神津組に屋根付きのバラックを建てさせようとします。
昭和残侠伝の結末
大工仕事にも手慣れた組員たちは自分たちでそのバラックを建て始めます。これを新誠会が黙ってみているはずがありません。夜に現場に火を放ち、せっかく出来た骨組みを丸焼けにしてしまいます。おまけにその火を消そうとした組員も撃たれて死亡します。
散々我慢を重ねてきた寺島も度重なる新誠会の横暴に堪忍袋の緒が切れます。先代の長ドスを持ち、1人新誠会の事務所に向かう寺島。その彼に途中で合流したのが重吉でした。妹を亡くした彼にこの世への未練はありません。さらにそこにジープの政という若い組員も加わり、3人は新誠会の男たちを次々に血祭りにあげます。
重吉と政はやられ、寺島も刀や銃弾で満身創痍になります。しかし最後には岩佐組長を追い詰めた上でドスで殺し、見事に復讐を遂げるのです。
以上、映画「昭和残侠伝」のあらすじと結末でした。
「昭和残侠伝」シリーズの第1作目の作品で、監督は佐伯清。
数多くの時代劇を量産後、この作品から任侠映画を手掛け、メイン・ディレクターとして、「昭和残侠伝」シリーズの全10作中5作を監督している。
そして、このシリーズの企画は、東映任侠映画のゴッド・ファーザーこと俊藤浩滋と吉田達。
脚本は、俊藤浩滋直系の村尾昭と東映東京の若手コンビ、山本英明と松本功。
東映のドル箱となっていた「日本侠客伝」シリーズの”ヤクザ”的な部分を拡張。
侠客という抽象的な存在を、よりリアルに”ヤクザ”として描く事により、東映任侠路線は、大きな飛躍を遂げる事になる。
この映画の舞台は、終戦直後の浅草。
戦争から復員して、由緒あるテキヤ一家・神津組の跡目を継いだ、高倉健演じる寺島清次。
新興ヤクザの新誠会の横暴や妨害で、幾度も窮地に陥る。
高倉健を慕う子分たちは、新誠会と小競り合いを繰り返し、梅宮辰夫は、新誠会に斬殺される。
大親分の応援もあって、高倉健は、民主的なマーケットを建設するが、新誠会の放火で、建物は炎に包まれる。
客分の風間重吉を演じる池辺良。後の「花と風」コンビのスタートでもある。
怒りのドスを胸に、敵地に乗り込む二人。
バックに流れる「唐獅子牡丹」。
高倉健の迫力に満ちた殺陣と、キメのセリフが炸裂する。
これぞ任侠映画だ。