それでもボクはやってないの紹介:2007年日本映画。突然痴漢の疑いをかけられ、自らの濡れ衣を晴らそうと立ち向かっていく主人公の話です。実際にあった話を元にして「Shall we dance?」の周防監督が11年ぶりに作り上げた意欲作です。痴漢冤罪に対して鋭く切り込んだ社会派ドラマです。現代の刑事裁判における問題点に焦点を当て、痴漢の冤罪事件裁判に立ち向かう厳しい現実を非常にリアルに描いた作品となっています。
監督:周防正行 製作:亀山千広 出演:加瀬亮(金子徹平)、瀬戸朝香(須藤莉子)、山本耕史(斉藤達雄)、もたいまさこ(金子豊子)、田中哲司(浜田明)、光石研(佐田満)、尾美としのり(新崎孝三)、大森南朋(山田好二)、鈴木蘭々(土井陽子)、野間口徹(小倉繁)、山本浩司(北尾哲)、田山涼成(和田精二)、大和田伸也(広安敏夫)、田口浩正(月田一郎)、竹中直人(青木富夫)、小日向文世(室山省吾)、役所広司(荒川正義)、ほか
映画「それでもボクはやってない」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「それでもボクはやってない」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
それでもボクはやってないの予告編 動画
映画「それでもボクはやってない」解説
この解説記事には映画「それでもボクはやってない」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
それでもボクはやってないのネタバレあらすじ:起・痴漢免罪事件
金子徹平(加瀬亮)は就職面接に向かうために通勤ラッシュの電車に乗り込みました。身動きも取れない程の状況で徹平は女子中学生に痴漢に間違えられてしまい、警察に連行されてしまいます。
取調室に連れて来られた徹平、いきなり入ってきた刑事はキレモードで怒鳴り散らします。認めれば出してやる等という随分な言い草です。さらに刑事は、徹平が認めたかの様に話し出し、それを調書係が勝手に調書を取りはじめます。憤慨する徹平をよそに刑事が手錠をかけ逮捕してしまいました。
やっていないと主張する徹平は留置所に拘留されてしまいます。同じ留置所にいた男に教えられて、刑事事件において逮捕された人が警察に呼んでもらえるという当番弁護士を呼んでもらいました。
浜田(田中哲司)という男性の弁護士。徹平は事の経緯を話します。当日の朝、徹平は就職面接に行くために電車に乗っていました。途中で履歴書を入れたかどうか不安になり、下車して確かめる事にしました。履歴書は忘れていましたが急いでいたため、そのままギュウギュウの電車に再び乗り込んだのです。ようやく乗り込んだもののスーツの裾がドアに挟まれている事に気付き、どうにかとれないかと悪戦苦闘します。となりの女性に睨まれたので軽く会釈し、すみませんと言いました。そんな中「やめてください」という声が聞こえましたが徹平は気に止めず、目的地の駅で下車しました。すると女子中学生が近寄ってきて「痴漢したでしょ」と声を上げます。近くにいた男や駅員に連れられて駅員室にやってきました。隣にいた徹平を軽く睨んだ女性もやってきて「挟まった上着の裾を引っ張っていただけで痴漢なんかじゃない」と言ってくれましたが、駅員は聞く耳もたず彼女の目の前でドアを閉めてしまいます。徹平は唯一の目撃者である彼女を追いますが見失ってしまいました。
徹平の説明を聞いた浜田弁護士でしたが、本当に無実でも無実になる保証はない、示談にすればそれでおしまい、などと衝撃的な発言をします。
それでもボクはやってないのネタバレあらすじ:承・協力者を集める
留置所に戻った徹平でしたが、刑事だけでなく検察官からも不当な扱いを受けます。みんな徹平を有罪にしたいかのようです。裁判官とやり取りをする拘留質問でも否認を続ける徹平に、10日の拘留が命じられました。
徹平が頼み、友人の達雄(山本耕史)に連絡が入ります。徹平の母親豊子(もたいまさこ)と共に差し入れを持って行きますが全て却下されてしまいます。豊子と達雄は痴漢冤罪事件を担当できる弁護士を探します。見つけてきたのは荒川(役所広司)という弁護士でした。
荒川の弁護士事務所から須藤(瀬戸朝香)という女性の弁護士が派遣されます。痴漢を嫌う須藤は今回の事件を断ろうとしますが、荒川に「本当に犯人だと確信したら辞めていい」と説得され、弁護を続ける事になりました。
後日、荒川が徹平の元にやってきて話を聞きます。荒川から色々とアドバイスされた徹平は本人が否認する限り拘留を続け、自白を迫る人質司法の事を初めて知ります。そして無実を勝ち取る確率が3%だという事も知るのでした。
豊子と達雄は力強い味方を得ます。佐田(光石研)という徹平と同じく痴漢冤罪で今もなお裁判で戦い続ける人物でした。起訴された徹平がどんな準備をしたらいいのか、どんな証拠を集めたらいいのかを教えてくれました。まずは唯一の目撃者である徹平の隣にいた女性を探すため動き出す事になりました。
それでもボクはやってないのネタバレあらすじ:転・無実の証明
とうとう裁判が始まります。第一回公判、徹平は検察側の証言に事実か否かを答えていきます。そして第二回公判、証人喚問が始まります。呼ばれたのは取り調べをした刑事でした。彼は「認めれば出してやる」と言ったことを、言ってないと言い、徹平が話した「ドアに挟まれている上着を引っ張っていただけ」という証言は聞いてないという始末でした。さすがに平然と嘘を並べる姿は荒川達をイラつかせ、徹平は悔し涙を浮かべました。第三回公判、次の証人は被害者である女子中学生でした。しかし彼女の証言はあまりにも曖昧なものでした。
このあと豊子が保釈金200万円を支払い、徹平は久しぶりに外に出る事ができました。しかし裁判はまだまだ続きます。裁判の途中で裁判長も新しく室山(小日向文世)に変わり、今までと違ったタイプでどうにも雲行きが怪しくなってきます。
荒川の提案で当時の電車内の再現ビデオを撮影することになり、その結果、実際触っていたとしても掴まれた右手がドアが邪魔になって抜けない事が分かり、徹平の左側から押していた男なら掴まれても抜く事が可能な事が分かりました。つまり、徹平が痴漢行為を行うこと自体に無理があるということです。
それでもボクはやってないの結末・突き付けられる現実と判決
第六回公判、荒川からの被告人質問です。次々と荒川の質問に答えていきます。しかし検察側から家宅捜索で見つかったアダルトビデオを提出されたり、室山裁判長から意地悪な質問をされ、徹平はついに激昂してしまいます。
再現ビデオを見ても裁判長からはたいしたコメントもありません。室山からは絶対に有罪にしてやるという気概すら感じてしまいます。そんな中、豊子や達雄が探していた唯一の目撃者である女性が見つかります。今まで名乗り出れなかったのも、彼女は留学していたためでした。その間もずっと徹平の事を気にしていたようです。
そんな彼女も第九回公判で証言することになりました。彼女の証言は当初から徹平が訴えていた内容とピタリと一致します。そして迎えた第十一回公判で、検察側と弁護側それぞれの立場での意見を述べて、まとめていきます。
判決を迎える前夜、眠れない徹平に豊子は声をかけます。「何もやってないんだから無罪に決まってる」。そして判決の日、信じられない判決が下されます。判決は有罪。懲役3か月執行猶予3年でした。
「信じられない」と達雄は叫びながら出ていきます。豊子はショックのあまり泣き出してしまいました。裁判長が判決理由を述べるも、とても理解できるものではありません。裁判長が最後に「この判決を不服とするものは14日間以内に控訴できる」と伝えると、徹平はすかさずこう答えました。「控訴します」。
以上、映画「それでもボクはやってない」のあらすじと結末でした。
「それでもボクはやってない」感想・レビュー
-
誰でも電車に乗る機会は、あると思いますが、私達の身にもいつこういったことに巻き込まれるか分らないので、非常に怖いですね。また、私人による現行犯逮捕というものもあるので、こういう場合は、逃げる以外に方法はないそうです。この作品は、序盤が絶望的な展開を見せ、後半で希望が見えてくるのですが、終盤でまた落してくるような展開になっています。ハッピーエンドで終わる映画が多い中、こういう理不尽な最後で尚且つこの後、主人公がどうなったのか分らない終わり方なのがすごく考えさせれる作品だと思いました。結末まで知ってしまった方でも、見て頂きたい作品なので、是非一度手にとって頂きたいです。
ありきたりな人生を送ってきた主人公の金子徹平が、ある日突然に留置場に入れられてしまい遂には被告人として裁判所に立たされてしまう展開には胸が痛みました。鉄平の無実を信じて最後まで共に戦う、家族や友人たちの絆には心温まるものがあります。日本の司法制度が抱えている問題点や矛盾などが、リアリティー溢れるタッチで再現されていて考えさせられました。