欲動の紹介:2014年日本映画。女優や映画プロデューサーとして活動する杉野希妃の自身2作目となる長編監督作の官能ドラマです。三津谷葉子と斎藤工をダブル主演に迎え、全編インドネシア・バリ島でのロケを敢行、心臓の病を抱えて余命幾ばくもない男とその妻が男の妹の出産に立ち会うため向かったバリ島での日々を、人間の生死や男女の性愛の狭間で揺れ動く夫婦の心理を交えて描きます。
監督:杉野希妃 出演者:三津谷葉子(ユリ)、斎藤工(千紘)、杉野希妃(九美)、コーネリオ・サニー(ワヤン)、トム・メス(ルーク)、高嶋宏行(木村)、松崎颯(イキ)ほか
映画「欲動」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「欲動」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
欲動の予告編 動画
映画「欲動」解説
この解説記事には映画「欲動」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
欲動のネタバレあらすじ:起
ここは民族音楽「ケチャ」が鳴り響くインドネシア・バリ島。千紘(斎藤工)と妻のユリ(三津谷葉子)は、現地に住む千紘の妹・九美(杉野希妃)の出産に立ち会うためにバリ島に降り立ちました。
九美はこの島でオランダ人のルーク(トム・メス)と国際結婚をしており、千紘とユリは空港まで迎えに来てくれたルークの車に乗って、九美夫妻の家に向かいました。
長旅に疲れた千紘はしばし休憩を取りました。実は千紘は重い心臓の病を患っており、余命幾ばくもない状態でした。それでも少し体調の回復した千紘はユリ、九美、ルークと共に夕食の食卓を囲んで語り合いました。
千紘が九美と会うのは九美が結婚して以来であり、九美は家族にはろくにルークのことを紹介していませんでした。臨月を迎えていた九美は大の病院嫌いであることから、出産は自宅に助産師を招いて行うことを決めていました。九美はユリが看護師であることから、ユリが出産に立ち会ってくれたら心強いと語りました。
千紘とユリとの出会いは、千紘がスキューバダイビングのインストラクターをしていた頃でした。客だったユリが溺れそうになったのを千紘が助けたのがきっかけでした。千紘は心臓の病が原因でインストラクターの職を辞めていたのです。この時、その場にいた誰もがあえて千紘の病のことを語ろうとはしませんでした。
その夜、中々寝付けないユリは同じく眠れなかった九美と会話を持ちました。千紘もまた九美と同じく病院嫌いであり、九美もユリもある程度の覚悟は決めていました。
欲動のネタバレあらすじ:承
翌日、千紘とユリはルークと九美に連れられて観光に繰り出しました。一行はタマン・アユン寺院などを廻り、千紘とルークは不老不死の言い伝えがある「聖なる泉」で沐浴をしました。千紘は果たしてどれくらい効果があるのかと思いました。
その後、一行は棚田の広がる田園地帯を歩き、地元の赤装束の楽団を撮影していた日本人カメラマンの木村(高嶋宏行)と出会いました。一行が楽団の演奏を聴いている間、千紘は一人でふらりと散歩に出かけました。
戻ってきた千紘は九美に自分がいなくなったら母の面倒を頼むと告げ、ユリには「お前の人の死に慣れている感じが嫌だ。日本に帰りたくない」と言い出しました。やりきれなくなったユリはその場を離れ、九美から責められた千紘はルークに「こんなわがままな日本人女と結婚していいのか」と言い出しました。
一方のユリは木村から飲みに誘われ、そのままクラブへと繰り出しました。ゲイである木村はパートナーのイキ(松崎颯)をユリに紹介しました。クラブの客のひとりであるワヤン(コーネリオ・サニー)という男がユリに目をつけ、口説こうと近付いてきました。
やがて踊っていた木村とイキはクラブの奥で交わり始め、帰ろうとしたユリはワヤンに無理やりトイレに連れて行かれてレイプされそうになりました。ユリはワヤンにビンタをくらわし、夜遅くに九美の家に戻りました。
欲動のネタバレあらすじ:転
翌日、千紘はいままで打ち明けていなかったことをユリに語り始めました。それは千紘がまだユリと出会う前の話で、海外で地元民のダイバーとコンビを組んでいた千紘は夜中に一緒に潜った際、暗闇の深海でパニックを起こしてダイバーにしがみつき、結果としてそのダイバーを死なせてしまったのです。
千紘は今でもそのことが脳裏から離れられず、「俺はあの時みたいに一番近くの人間を引きずり込むのが怖い。俺は死にそうになったらお前にしがみつくと思う。だから、せめて死ぬ時は一人がいい」と本音を打ち明けました。ユリはどうしていいのかわからなくなりました。
ユリは木村とイキに誘われ、闘鶏場で鶏の闘いを観戦しました。ユリは木村から、「人間は理性があって様々な欲望を抑えられるが、それも考えものだ。本能に忠実な動物の方が理にかなっている」との持論を述べられました。
その夜、ユリの前にワヤンが現れ、ユリは誘われるがままにワヤンと共に海に向かいました。そしてユリはワヤンから関係を求められ、欲望のままにワヤンと抱き合いました。やがて夜が明け、ユリの中には虚しさだけが残っていました。
その頃、千紘は九美から日本に帰るよう説得されていました。千紘が持ってきた心臓病の薬はもうそろそろ切れそうになっていたためでしたが、千紘はせめて最期くらい自分で決めさせてほしいと伝え、「人は誰からも愛されなくなった時、本当の意味で消える」と語りました。九美から「私が生きている間は安心だね」と返された千紘は、なんだか心の憑き物が取れたような感じがしました。
一方、イキからコーヒーを奢ってもらったユリはふと「いなくなるってどんな感じなんだろ」と呟きました。それを聞いたイキは「いなくなるのは、自然なことだよ」と答え、ユリは納得して帰路につきました。
欲動の結末
ユリが帰り着いた時には、既に九美が産気付いていた最中でした。助産師とユリは九美に付き添い、最終的には千紘も手伝いました。そして九美は無事に元気な赤ん坊を出産、ユリはそれを見て新たに生まれ来る命もあれば、千紘のように消えゆく命もあることに複雑な心境を覚えました。
ユリは千紘が寝ている寝室に向かい、上半身裸になると千紘を求めました。しかし、ユリは自らの過ちに気付き、途中で止めて泣き出しました。千紘はそんなユリを抱きしめると二人は生まれたままの姿となり、千紘は心臓に負担がかかるのも厭わずにユリと激しく愛し合いました。
命がけのセックスを終えた千紘はユリと共に眠りにつきましたが、軽い発作を発症しました。程なくして発作はおさまりましたが、千紘は思わずユリにしがみつきました。
その後、千紘とユリは夜明け前の海辺を歩きました。千紘は一人で海に入っていき、ユリにも「こっち来いよ」と呼びかけましたが、ユリは海に入ることなく、いつまでも立ち尽くすのみでした。
以上、映画「欲動」のあらすじと結末でした。
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