いのちの停車場の紹介:2021年日本映画。医師で作家の南杏子が2020年に発表した同名小説を、『ふしぎな岬の物語』以来となる監督・成島出と主演・吉永小百合のコンビで映画化した社会派ヒューマンドラマです。吉永はデビュー64年目・映画出演通算122作目にして初めてとなる医師役を演じ、在宅医療・終末期医療の現場を通じて「命のしまい方」とは何かを問いかけていきます。
監督:成島出 出演者:吉永小百合(白石咲和子)、松坂桃李(野呂聖二)、広瀬すず(星野麻世)、南野陽子(若林祐子)、柳葉敏郎(宮嶋一義)、小池栄子(寺田智恵子)、伊勢谷友介(江ノ原一誠)、みなみらんぼう(柳瀬尚也)、泉谷しげる(並木徳三郎)、森口瑤子(宮嶋友里恵)、松金よね子(並木シズ)、佐々木みゆ(若林萌)、石田ゆり子(中川朋子)、田中泯(白石達郎)、西田敏行(仙川徹)ほか
映画「いのちの停車場」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「いのちの停車場」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
いのちの停車場の予告編 動画
映画「いのちの停車場」解説
この解説記事には映画「いのちの停車場」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
いのちの停車場のネタバレあらすじ:起
白石咲和子(吉永小百合)は東京の大学病院救急救命センターに勤める救命救急医です。ある日、とあるトンネルで大規模な事故が発生、咲和子が務める救急救命センターにも数多くの重傷者たちが搬送されてきました。
そんな中、病院のアルバイト事務員・野呂聖二(松坂桃李)が病院近くで車に撥ねられた少女を連れてきました。咲和子はトンネル事故の重傷者たちの手当てで手が離せず、野呂は自分がまだ医師免許を持っていないことを承知の上で、少女に自らの手で点滴を打つことを決断しました。
免許を持たない野呂の医療行為は大学病院の上層部の間で問題となりました。野呂は大学医学部を卒業したものの、肝心の医師国家試験に落第し続けていたのです。咲和子は「野呂くんは人間として正しいことをした。責任なら現場の責任者である私が取る」と野呂を庇い、自ら責任を取って病院を退職しました。
東京を去り、故郷・金沢に帰ってきた咲和子を出迎えたのは、年老いた父・達郎(田中泯)でした。咲和子が降り立ったバス停は、咲和子が幼い頃に亡き母と一緒に達郎を迎えに行っていた思い出の場所でした。
咲和子が再出発の場として選んだのは、在宅医療・終末期医療専門の「まほろば診療所」でした。咲和子は院長・仙川徹(西田敏行)としっかり者の訪問看護師・星野麻世(広瀬すず)に温かく出迎えられ、訪問診療医として再出発することとなりました。
仙川は事故で車椅子暮らしとなりながらも持ち前の陽気さを失わず、患者たちから慕われていました。麻世は事故死した姉の子を育てながら、恩人である仙川のもとで働いていました。
いのちの停車場のネタバレあらすじ:承
咲和子は麻世と共に、患者の家を診察すべく訪問して回りました。「まほろば診療所」の患者は末期の肺ガンを患う芸者の寺田智恵子(小池栄子)、脳出血で入院後は在宅治療を送っている胃瘻患者の並木シズ(松金よね子)、脊髄損傷で四股麻痺となったIT企業社長の江ノ原一誠(伊勢谷友介)、小児ガンを患う8歳の少女・若林萌(佐々木みゆ)、末期の膵臓ガンを患う元高級官僚の宮嶋一義(柳葉敏郎)の5人です。
誰よりも仕事に強いこだわりを持つ智恵子は「芸が出来なくなったら芸者は終わり。私の人生もおしまい」と最期まで芸者であり続けることを決意しました。シズが夫の徳三郎(泉谷しげる)と暮らす家はすっかりゴミ屋敷となっていました。
徳三郎はシズを介護する日々に疲れ果てていましたが、「シズは他人に世話されるのが嫌いなんだよ」と咲和子がホームヘルパーを雇うべきだという提案を一蹴、あくまでも在宅治療にこだわる姿勢を示しました。
江ノ原は、いくらでも金を出すから在宅医療で自分を蘇らせてほしいと頼んできました。江ノ原は自分が決して諦めない姿を社員に見せようと考えていました。萌は小さな体で何度も抗がん剤治療に耐え続けてきましたが、効果はなく、萌の母・祐子(南野陽子)はそれでも次々と新薬を使った治療で娘の延命を図ろうとしていました。
宮嶋はせめて最期は故郷の金沢で迎えようと、妻の友里恵(森口瑤子)と共に帰郷していましたが、宮嶋にとって唯一気がかりなのは、高校卒業後に家出したっきり戻ってこない息子のことでした。
それぞれの事情を抱える患者たちと接しながら、今まで“命を救う”現場の最前線に立ってきた咲和子は、これまでとは違う診療所の方針に困惑していました。仙川の方針は身体の治療だけではなく、患者の意思を尊重し、患者や支える家族に寄り添う医療を重要視しているのです。
いのちの停車場のネタバレあらすじ:転
そんなある日、東京から野呂が「まほろば診療所」を訪ねて来ました。咲和子を慕う野呂は自分も「まほろば診療所」で働かせてほしいと言い出し、仙川は野呂を受け入れ、この日から野呂も「まほろば診療所」の一員として働き始めました。野呂は働きながら、医師免許を取るべきか悩んでいました。
そんなある日、咲和子の元に旧友の中川朋子(石田ゆり子)が訪ねてきました。咲和子はプロの女流囲碁棋士として大成した朋子との再会を喜びましたが、朋子は人知れずガンと闘っていました。5年前に手術をしたのですが既に転移しており、もうガンと闘い続ける意思すら失いかけていました。
咲和子はかつてのように朋子に接し、一緒に懐かしい場所を廻り、「まほろば診療所」の仲間たちと一緒に食事をしました。咲和子たちに勇気をもらった朋子は再びガンと闘う気力を取り戻し、咲和子とまたの再会を誓って去っていきました。これが朋子との今生の別れとなることも知らずに…。
やがて金沢にも冬が訪れ、そして新年がやってきました。麻世も咲和子の自宅でおせち料理作りを手伝っていましたが、年賀状を出しに行こうとした達郎が玄関先で転倒して大腿骨を骨折するという重傷を負ってしまいました。
かねてから歩くのも億劫になっていた達郎は、手術後のリハビリも上手くいかず、日に日に体は衰弱していきました。達郎はこの頃から“自分のいのちのしまい方”について意識するようになっていきました。
咲和子は仲間たちと共に患者一人ひとりと向き合ううちに、患者の“自分らしい生き方”について思いを巡らすようになっていました。診療所の面々は麻世の提案でゴミ屋敷と化しているシズの家の大掃除に取り掛かりました。
すっかり綺麗になった家を目の当たりにした徳三郎は「シズが元気だった頃のようだ」と大いに喜びました。それからしばらくしてシズは自宅で生涯を終え、徳三郎は咲和子から「よく一人で面倒を見ました。シズさんもきっと感謝してますよ」と声をかけられて号泣しました。
宮嶋はとうとう最期の時を迎えようとしていました。友里恵は何度も息子に電話をかけましたが、一向に繋がりませんでした。そこで咲和子は咄嗟の判断で野呂に息子のフリをさせ、野呂は戸惑いながらも臨終間際の宮嶋に「父さん」と語りかけました。友里恵は夫が笑ったことに気付き、野呂は宮嶋の姿にいつしか自分の父の姿を重ね合わせていました。
いのちの停車場の結末
萌の余命も間もなく尽きようとしていました。萌の最期の願いは、絵本で読んだ“海の神様”にお願い事をするために海に行くことでした。萌は来世は人魚として生まれ変わりたいと願っていました。萌とすっかり心を通わせ合っていた野呂は彼女の願いを叶えてあげることにし、咲和子、野呂、麻世は萌と両親を海へと連れて行きました。
両親は楽しそうにはしゃぐ萌の姿に笑顔を浮かべ、「病気でごめんね」と謝る萌を「病気でも病気じゃなくても萌は私たちの宝物」と抱きしめました。萌が亡くなったのはそれから間もなくのことでした。
医師になるべきか迷っていた野呂は、仲間たちから医師になるべきだと背中を押され、再び医師国家試験に挑む決意を固めました。野呂は免許を取ったら必ず戻ってくると誓い、東京へと戻りました。
それからしばらくしてのことでした。咲和子が帰宅すると、自殺を図った達郎が倒れていました。達郎は次々と襲い来る病魔に耐え切れず、咲和子に「頼む、殺してくれ」と迫りました。意を決した咲和子は診療所に向かい、カルテを整理し始めました。
咲和子のただならぬ決意を感じ取った仙川は「安楽死はこの国では犯罪なんだ。もう少し一緒に考えよう」と説得しましたが、咲和子は「父の命は誰のものなのでしょうか。父の願いなんです」と決意は揺らぐことはありませんでした。
咲和子は達郎を伴い、雪が降る夜道へと繰り出しました。そして二人は思い出のバス停で夜を明かしました。雪はいつしかやみ、空には朝陽が昇り始めました。「綺麗だ」と呟く達郎の姿に、咲和子は思わず泣き崩れました。
以上、映画「いのちの停車場」のあらすじと結末でした。
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