キリエのうたの紹介:2023年日本映画。『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』でコンビを組んだ監督・岩井俊二と音楽・小林武史が贈る音楽映画です。主演は2023年に解散した伝説のグループ「BiSH」の元メンバーで本作が映画初主演となるアイナ・ジ・エンドが務め、石巻・大阪・帯広・東京を舞台に歌うことでしか自らを表現できない路上ミュージシャンのキリエ(アイナ・ジ・エンド)と彼女を取り巻く3人の男女の13年に及ぶ魂の軌跡を豪華キャストと豪華楽曲提供陣で紡ぎだす、上映時間約3時間にも及ぶ大作です。
監督・脚本・原作:岩井俊二 音楽:小林武史 出演:アイナ・ジ・エンド(キリエ/小塚路花/小塚希)、広瀬すず(⼀条逸子(イッコ)/広澤真緒里)、松村北斗(潮見夏彦)、黒木華(寺石風美)、村上虹郎(風琴)、松浦祐也(波田目新平(ナミダメ))、笠原秀幸(松坂珈琲)、粗品(日高山茶花/サザンカ)、矢山花(イワン(幼少期の小塚路花))、光法(児童福祉司)、寺尾毅(児童福祉司)、サヘル・ローズ(教会のスタッフ)、たれやなぎ(柳)、林雄大(小笠原)、菊池泰生(森本和典)、櫻井健人(夏彦の中学の同級生)、木村都貴(夏彦の中学の同級生)、小尾颯(岡田)、acane(acane)、集団パラリラ(集団パラリラ)、橋本桃子(橋本桃子)、伊藤雅景(キリエバンドのメンバー)、奥貫圭一朗(キリエバンドのメンバー)、松浦千昇(キリエバンドのメンバー)、小林大和(キリエバンドのメンバー)、鈴木雄太郎(キリエバンドのメンバー)、山田蘭美(キリエバンドのメンバー)、林田順平(キリエバンドのメンバー)、氷見行崇(キリエバンドのメンバー)、市川和則(キリエバンドのメンバー)、鳥谷宏之(堀田刑事)、足立理(沢井刑事)、三木美加子(産婦人科医)、新井敬太(新宿中央公園の警官)、細井学(新宿中央公園の警官)、村角ダイチ(天王寺公園の警官)、馬塲由貴(天王寺公園の警官)、清水由紀(小塚家の客) 、山口詩史(小塚家の客)、深澤しほ(小塚家の客)、村中暖奈(小塚家の客)、牧野莉佳(小塚家の客)、武尊(通りすがりのキックボクサー)、豊満亮(暴漢)、七尾旅人(御手洗礼)、ロバート・キャンベル(マーク・カレン)、大塚愛(小塚呼子)、安藤裕子(沖津亜美)、鈴木慶一(潮見貞彦)、水越けいこ(潮見克子)、江口洋介(潮見加寿彦)、吉瀬美智子(潮見真砂美)、樋口真嗣(潮見崇)、奥菜恵(広澤楠美)、浅田美代子(広澤明美)、石井竜也(横井啓治)、豊原功補(イッコの元恋人)、松本まりか(イッコの元恋人のガールフレンド)、北村有起哉(根岸凡)ほか
劇中歌作詞・作曲者:アイナ・ジ・エンド、岩井俊二、小林武史、小田和正、井上陽水、忌野清志郎、さだまさし、米津玄師、あいみょん、七尾旅人、なかむらしょーこ、久保田早紀、優里、岩谷時子、いずみたく、橋本桃子、神山保志、GIRISほか
映画「キリエのうた」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「キリエのうた」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「キリエのうた」解説
この解説記事には映画「キリエのうた」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
キリエのうたのネタバレあらすじ:起
【2023年】
東京。
キリエは唯一無二の歌声を持つ路上ミュージシャンです。キリエは歌うこと以外は声をうまく発せず、歌うことでしか自分を表現できない女性です。キリエは周囲とのコミュニケーションを筆談で行っています。
ある時、派手な身なりの女性“イッコ”こと⼀条逸子がキリエの歌を聴いて感動し、住所不定で住む場所のない彼女を自分の自宅へと招きました。イッコ宅で一晩を明かしたキリエは、イッコの正体はかつて自分が高校時代の先輩で親友だった広澤真緒里であることに気づきました。イッコは自身の過去と本名は捨てたとのことでした。
イッコこと真緒里の母でスナックのママの楠美はかつての常連客で、大牧場の経営者だった横井啓治と交際していました。横井は東京の大学に進学する予定だった真緒里の学費を援助してくれるはずでしたが、横井は楠美と破局してしまったために真緒里は進学を諦めざるを得なかったのです。
イッコはキリエがどこの事務所にも所属せず、マネージャーもいないことを聞くと、自分がキリエのマネージャーになってあげると申し出ました―――。
キリエのうたのネタバレあらすじ:承
【2011年】(ここからは時系列順に追っていきます)
宮城県石巻市。
小塚希(きりえ)は石巻白百合女子高校に通う高校2年生でした。希は母・呼子、そして小学生の妹・路花と暮らしていました。呼子は夫を海の事故で亡くしていました。
そんなある日、希は中学生時代の同級生たちと一緒にいたところ、同じく同級生だった潮見夏彦と再会しました。仙台の高校に通っていた夏彦はかねてから想いを寄せていた希と交際を始め、やがて希は夏彦との子を妊娠しました。
夏彦は希にお腹の子を堕ろせとは言わず、呼子のもとに挨拶に出向いた時も妊娠してもらえたことから、夏彦は希との結婚を決意しました。しかし、仙台の大学への進学を目指していた夏彦は目の前の受験勉強に集中できなくなり、受験に失敗してしまいました。夏彦は他に受験していた大阪の大学に進学することになりました。
2011年3月11日。希は夏彦と久しぶりに会うため、学校を早退して自宅で身支度をすることにしました。希は夏彦と電話をし、夏彦は胸に秘めていた“あること”を打ち明けようとしたその時、日本の半分を巻き込んだ東日本大震災が発生しました。
夏彦は避難するよう促しましたが、希は路花を助けるために彼女が通う小学校へと向かいました。しかし、小学校には路花、路花を迎えに来たはずの呼子の姿はなく、希は家族でいつも通っていた教会にいるのではと考え、現地へと向かいました。そして途中で路花を見つけた希は電話を切ってしまい、これが夏彦との今生の別れとなってしまいました。その夜、夏彦の父・崇と母・真砂美は無事でしtが、夏彦は伯父・加寿彦の安否を確認しに行くと告げて希の捜索に向かいました。しかし、希と呼子は遂に見つかることはありませんでした。小塚家で唯一生き残った路花は姉の恋人である夏彦が大阪にいるはずだと考え、大阪行きのトラックに潜り込みました。
大阪。
路花は声を出すことができなくなっていました。行くあてもなく、古墳の近くで路上生活を送っていた路花は公園で弾き語りをしていた路上ミュージシャンの御手洗礼と出会い、歌を歌うことを教えてもらいました。声は出せないものの歌を歌うことはできた路花は天王寺公園で御手洗と一緒に路上で歌うようになり、その天性の歌声は人々を魅了するようになっていきました。しかし、警察に通報された御手洗は職務質問を受け、そのまま逮捕されてしまいました。
路花は再び孤独の身となりました。地元の小学生・岡田は一言も話さない、見覚えのない路花を見つけ、“イワン”というあだ名をつけました。やがて岡田の担任である小学校教師・寺石風美は路花の話を聞き、彼女を保護して自宅に連れ帰りました。
風美は路花の所持していたランドセルからある電話番号を見つけ、SNSで検索をかけてみました。すると、行方不明になったままの希を探し続けている夏彦のアカウントに辿り着き、風美は夏彦と直接対面しました。実は夏彦は大阪には行っておらず、震災を機に大阪への進学を断念すると地元でボランティア活動をしていました。
夏彦は路花は何とかすると申し出、風美はとりあえず路花を藤井寺の児童相談所に連れて行きました。しかし、夏彦や風美から事情を聞いた児童福祉司は路花と夏彦は何の血縁関係もない他人だと断じ、夏彦と風美に何の説明もないまま路花を保護所へ預けてしまいました。その後の路花の行方は個人情報の保護との名目で一切明かされることはありませんでした。
キリエのうたのネタバレあらすじ:転
【2018年】
北海道帯広市。
真緒里の実家は祖母・明美の代から続くスナックでした。地元の愛国高校に通う真緒里はカラオケ店でバイトをしており、高校卒業後も4年間はカラオケ店で働いた後にスナックを手伝うことになっていました。しかし、いつしか真緒里はこの街を出て自らの手で運命を切り開きたいと思うようになっていきました。
石巻を去った夏彦は帯広に移り、横井の牧場で働いていました。夏彦は横井の紹介で真緒里の大学受験のための家庭教師を依頼されましたが、当初は大学受験に乗り気のなかった真緒里に追い返されました。しかし、東京の大学に進学する決意をした真緒里は改めて夏彦のもとで学ぶことにしました。
ある時、夏彦は真緒里の部屋でアコースティックギターを見つけました。このギターは真緒里の父が他の女と共に蒸発した際に家に置いて行ったものであり、夏彦はこのギターで弾き語りを披露しました。
路花は帯広の里親のもとに引き取られ、真緒里と同じ高校に進学していました。しかし、里親との折り合いが悪かった路花は夏彦が帯広にいることを知り、自ら夏彦に連絡を入れ、それ以来里親のもとには戻らず夏彦と一緒に過ごすようになりました。夏彦もまた路花のことを実の妹のように可愛がっていました。
夏彦は真緒里に路花の存在を明かし、彼女と仲良くしてやってほしいと頼みました。それ以降、路花と真緒里は親友同士となっていきました。ある冬の日、真緒里は祠の前で大学合格を祈願しました。路花も祈りを捧げましたが、何を祈ったかは真緒里には明かしませんでした。その後、二人は降り積もった雪の上に横になり、路花はかつて小田和正がリーダーだった伝説のバンド・オフコースの「さよなら」を口ずさみながら真緒里を見つめていました。
やがて真緒里は無事に東京の大学に合格しました。そのお祝いの後、真緒里は父のギターを路花に譲ることにしました。夏彦は真緒里が路花と仲良くしてくれたことに感謝し、路花の母と姉は東日本大震災の津波に飲まれたことを打ち明けました。
ある時、夏彦のもとに宮城県の児童相談所の児童福祉司・沖津亜美が訪ねてきました。路花と帯広の里親を引き合わせた沖津は里親の通報によりやってきたことを告げ、このままでは夏彦は誘拐罪に問われると脅してきました。夏彦は路花が児童相談所の職員たちに連れて行かれる様をただ見送ることしかできませんでした。この日以降、夏彦と路花は再び音信不通となりました―――。
キリエのうたの結末
【2023年】
東京。
路花は亡き姉の名を受け継いで“キリエ”と名乗り、この大都会で路上ライブをして生きていました。“イッコ”と名を変えた真緒里はキリエのために青いライブ衣装や高価な機材を買い与えるなどしてマネージャーとして始動していました。イッコは自らキリエの路上ライブの投げ銭のサクラも買って出、キリエの音楽を聴く聴衆は少しずつ増えていきました。
「キリエ」のトレードマークとなる青色のライブ衣装や、決して安価ではない機材たちを路花に買い与えた真緒里。真緒里自身が路上ライブでの投げ銭の“サクラ”役を務めた甲斐もあり、「キリエ」の路上ライブは以前と比べると遥かに好反応を得られました。
イッコの自宅の家主は彼女の元恋人でしたが、その元恋人が新たなガールフレンドを家に連れ込んできたのをきっかけにイッコとキリエは新居を探すことにしました。やがてキリエとイッコは、イッコの知人でIT会社社長の“ナミダメ”こと波田目新平の家に暫しの間居候することにしました。
キリエは他の路上ミュージシャンと共演し、イッコの知人である音楽プロデューサーの根岸凡に才能を認められました。キリエは路上ミュージシャン仲間の松坂珈琲を通じてギタリストの風琴と知り合い、風琴はキリエのサポートを買って出るようになりました。キリエの音楽活動が順調に進んでいたある日、イッコは連絡用のスマホを残してキリエの前から姿を消しました。
キリエはイッコ不在のまま音楽活動を続け、根岸からメジャーデビューを目指すためにも事務所に入るべきだと勧められました。ところが、ナミダメの家に戻ったキリエは、ナミダメが警察から連絡を受けていたことを知りました。実はイッコは結婚詐欺に手を染めており、ナミダメも数ある被害者のひとりだったのです。ナミダメはキリエもこのことを知っていたのかと問い詰め、やり場のない怒りをキリエにぶつけようとしましたが、思い留まるとここから出ていくよう告げました。その直後、キリエは過呼吸の発作を起こし、大声で「お姉ちゃん!」と泣き叫びました。
ナミダメの家を出たキリエは引き続き音楽活動を続けていましたが、ある日イッコの行方を追っていた新宿南警察署の堀田刑事と沢井刑事によって署に連れていかれ、事情聴取を受けることになっていました。夏彦もキリエの身元引受人として署に呼び出され、キリエと夏彦は再会を果たしました。その後、夏彦はキリエのギターの先生としてキリエの路上ライブに飛び入り参加し、ライブ終了後にキリエと夏彦はこれまでのことを謝りました。夏彦は自分のこれまでの不甲斐なさを痛感して涙を流し、キリエは夏彦を抱き寄せました。
松坂は路上ミュージシャン仲間を集めて新宿中央公園で「路上主義・新宿中央公園フェス」を催すことにし、キリエも出演することになりました。キリエはリハーサルに励む一方、根岸もキリエのデモテープをレコード会社に送ったところ好反応を得ていました。根岸はキリエにいつまで業界人でも何でもない素人のイッコを待ち続けるのかと尋ね、キリエはそれでも今は楽しい時間を過ごしたいと返しましたが、根岸はそんな時間は永遠には続かないと諭しました。
寝床のないキリエは駅前の路上で夜を明かすことにしました。そこにイッコが現れ、二人はそのまま電車に乗って海辺へと繰り出しました。警察に追われる身となったイッコはホテルを転々とする日々を送っていたのです。キリエは震災の津波の記憶は微かにしか覚えていないものの、死んだ両親や姉は今でも海にいる気がすると語りました。イッコは自分だけのために歌ってほしいと頼み、キリエはイッコに歌を贈ると幼少期に習っていたバレエを披露しました。
「路上主義・新宿中央公園フェス」当日。フェスには松坂の仲間であるacane、集団パラリラ、以前にキリエとあいみょんの「マリーゴールド」をセッションしたことのある橋本桃子らが出演しました。キリエの出番が近づくなか、イッコは花屋でキリエに贈るための花束を買っていました。ところが、会場の新宿中央公園に向かう途中、ナイフを手にした男が「真緒里!」と叫び、イッコを刺しました。男はすぐさま通りがかったキックボクサーとその仲間たちに取り押さえられましたが、イッコは血まみれのまま会場へと歩き始めました。
キリエはイッコの受難を知らぬまま歌い続けていました。フェスは実は無許可であり、近隣からの苦情を受けた警察が中止を要請しましたが、それでもキリエは歌い続けました―――。
―――いつものようにネットカフェで寝泊りしていたキリエはいつものように路上に出かけ、そしていつものように歌い続けていました。
以上、映画「キリエのうた」のあらすじと結末でした。
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