映画「ちひろさん」解説
この解説記事には映画「ちひろさん」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ちひろさんのネタバレあらすじ：起
かつて風俗嬢だった過去を持つちひろはあてもなくこの海辺の町に流れ着きました。この町の弁当屋「のこのこ」の味に魅せられたちひろはこの店で働くようになり、自分の過去を隠そうともしないあっけらかんな性格と屈託のない笑顔でたちまち常連客の人気者となっていました。
ある日のこと、ちひろは小学生たちからいじめを受けていた浮浪者の男を助け、自分の弁当を分け与えて風呂までも貸しました。これまで一言も言葉を発しなかった浮浪者はこのことがきっかけでちひろに心を開き始め、それからというものちひろは浮浪者から教えてもらった廃墟の部屋で度々浮浪者と会うようになりました。
ところが、浮浪者はいつしか行方をくらまし、その代わりにこの浮浪者を“師匠”と崇めていた女子高生の“べっちん”こと宇部千夏と知り合いました。べっちんは部屋にあった漫画「地球へ…」にハマっており、ちひろとべっちんはよくこの漫画の話題で盛り上がっていました。
ちひろは近所の公園で遊んでいました。そんなちひろが気になった女子高生の“オカジ”こと瀬尾久仁子はこっそりと彼女を写真に撮ました。ちひろはこのことに薄々気づいていました。
ちひろさんのネタバレあらすじ：承
ある日、ちひろのもとに風俗嬢だった頃のの同僚バジルが訪ねてきました。バジルは店の近況について語り、ちひろが突然店を辞めたことで彼女を探している男がいること、独立のための資金を同僚に奪われて信用できる人間がもはやちひろしかいなくなったということを打ち明けました。
翌日、いつものように公園にいたちひろは小学生の佐竹マコトに絡まれました。マコトは誤ってちひろの腕を刺してしまいました。ちひろはそれでもマコトに弁当をあげ、かつて男に刺されたことがあると過去のことを打ち明けました。これを機にちひろとマコトは交流を持つようになりました。
オカジはちひろに会い、なぜ自分がちひろを追いかけ回しているのか理由を訊かないのかと尋ねました。ちひろは風俗嬢だった経験から、自分は相手の素性を知らなくても人のことを信頼できると答えました。オカジはちひろと知り合えたことに喜びましたが、その一方で大好きだったアニメへの関心が薄れ、そのことで同じアニメ好きな同級生たちとの関係がぎくしゃくし始めました。
行方をくらませていた浮浪者は、町の建物と建物の隙間にある小道で死亡していました。浮浪者の遺体を見つけたちひろは、夜に遺体を森の中へと埋葬しました。その後、バジルと合流して町の祭りに出向いたちひろは、金魚すくいの屋台を出している男がちひろがかつて働いていた風俗店店長の内海であることに気づきました。内海は妻との離婚を機に、趣味が高じて熱帯魚屋を立ち上げていました。
オカジは自宅では家族との会話がない孤独な日々を送っていました。そんなオカジは勉強が苦手なマコトに勉強を教えるようになり、ついでにマコトと一緒にちひろからご飯を分けてもらうようになりました。オカジは家族と囲む会話のない食卓が苦手だと語り、ちひろは家族であっても無理に打ち解けることはないと助言しました。ちひろはオカジに“宝の地図”を授けました。
そんなある日、ちひろのもとに弟の圭介から電話がありました。母が亡くなったとのことでしたが、ちひろは母の葬式に出るつもりはないことを伝え、仕事を口実に電話を切りました。
弁当屋にマコトの母・ヒトミが現れました。ヒトミはちひろが勝手にマコトにご飯をあげていることを責め立てましたが、当のヒトミはいつも夜勤の都合でマコトに冷たい食事を置いていくだけであり、マコトは毎日ひとり寂しく食事を食べるしかなかったのです。
オカジはちひろからもらった“宝の地図”の場所に行き、そこでべっちんと出会いました。オカジと同じ高校に通うべっちんは現在不登校であり、親に家を追い出される度にこの場所に来ていることを伝えました。それからというもの、オカジとべっちんは漫画を通じて少しずつ仲を深めていきました。
ちひろさんのネタバレあらすじ：転
弁当屋の店長・尾藤の妻の多恵は病気で入院していました。ちひろは目が見えなくなった多恵の見舞いに、素性を隠して度々通っていました。
そんなある日、ちひろは立ち寄ったラーメン屋で、店員に言いがかりをつけていた客に掴み掛かっている弁当屋の常連客・谷口を見かけました。その後、谷口はちひろに、自分は暴力を振るう父をバットで殴って家出したという過去を明かしました。ちひろは「自分が死ぬことを考えるくらいなら父親を殺せば良い」と語り、自宅に谷口を誘って体を重ねました。
バジルは内海の熱帯魚屋で働き始めました。バジルはちひろに恋愛観を訊いてみましたが、ちひろは恋愛をする気がないと返しました。
マコトはヒトミのために花束を用意していましたが、ヒトミはこれがちひろの入れ知恵ではないかと腹を立てました。ヒトミはちひろのもとを訪れて文句を言いましたが、ちひろは「自分の子のことも分かっていない」と返しました。
ある日、ちひろは内海に誘われ、かつてお世話になった元風俗嬢の“チヒロ”の墓参りに向かいました。ちひろは幼少期、真夜中にひとりで外にいたところを何度もチヒロに助けられていたのです。ちひろは自分のことを信頼していても体を求めてこない内海のことを父親のようだと思いました。翌日、バジルはちひろの家を訪ね、ちひろが内海と一緒に外出していたことを問い質しました。内海に想いを寄せているバジルは男女の“友情”なんかあるわけないと怒り、ちひろはバジルは人を見る目がないと言い返しました。
その後、バジルは内海に誘われて二人きりで飲んでいました。バジルは内海にちひろの過去を尋ねてみると、内海はちひろが風俗店の面接に現れた日のことを振り返りました。当時のちひろの靴はボロボロであり、ちひろは面接に落ちたら死を考えているのではないかと感じ取っだことから彼女を雇い入れることを決めたのです。
ある夜、マコトは自宅の鍵を無くして入れなくなりました。見かねたオカジはマコトのためにおにぎりを作り、一緒にヒトミが帰ってくるのを待ちました。やがて帰ってきたヒトミはオカジを家に招き入れ、マコトの一番の大好物だという焼きそばをごちそうしてくれました。オカジは家族との会話はなくとも料理上手な母・みつ子の料理だけはいつも美味しくい食べているつもりでしたが、ヒトミの作ってくれたこの料理に思わず涙を流しました。
ちひろさんの結末
ちひろは退院近い多恵を無断で病院の外へ連れ出しました。多恵は実はちひろの素性に気づいており、ちひろは多恵がまだ元気で働いていた頃の弁当屋に初めて訪れた際に多恵と会話をしたことで、多恵に強く惹かれるようになったと打ち明けました。実家との関係が既に崩壊していたちひろは、多恵が母親だったらどれだけ良かったかと心境を語り、多恵は過去があるから今のちひろがあるのであり、今のちひろが好きだとちひろを抱きしめました。
やがて多恵が退院しました。ちひろは尾藤、オカジ、べっちん、マコト、内海、バジルと共に退院祝いのパーティーを開きました。その場が盛り上がりを見せるなか、ちひろはひとりこっそりその場から抜け出しました。するとちひろに多恵から電話がありました。多恵は孤独を愛するちひろがいずれこの町を去ってしまうことを予感しており、「あなたはどこででも孤独を大切にできる」とちひろを引き留めました。
数ヶ月後、ちひろはこの町から姿を消していました。仕事に復帰した多恵は尾藤と共にちひろがいた頃を懐かしんでいました。
ちひろは別の土地の牛牧場のもとで働いていました。牧場の農夫はちひろに前の職は何かと尋ねると、ちひろは素直に「弁当屋です」と答えました。
以上、映画「ちひろさん」のあらすじと結末でした。
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