フィッシュストーリーの紹介:2009年日本映画。伊坂幸太郎の短編小説を原作にした作品です。1970年代の売れないパンクバンドの曲を中心に、様々な登場人物が交錯し、やがて地球の滅亡を救うという時空を超えた奇想天外な展開。劇中に登場するバンド「逆鱗」は出演者たちによって実際にCDアルバム「FISH STORY」を発表し、デビューをしました。
監督:中村義洋 出演:大森南朋(レコード屋の店長・岡崎)、石丸謙二郎(谷口)、濱田岳(雅史)、高橋真唯(晴子)、多部未華子(麻美)、森山未來(コック・正義の味方)、伊藤淳史(繁樹)、高良健吾(五郎)ほか
映画「フィッシュストーリー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「フィッシュストーリー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「フィッシュストーリー」解説
この解説記事には映画「フィッシュストーリー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
フィッシュストーリーの簡単あらすじ:起
2012年、地球への小惑星衝突が迫る中、とあるレコード店の店長は「この曲が世界を救う」と1枚のレコードを取り出します。それは名前も知られていない無名のバンドがかつて発売した「フィッシュストーリー」という曲でした。1982年、友人らと車を走らせていた雅史は、無音箇所から女性の悲鳴が聞こえるいわくつきの曲として、車内で「フィッシュストーリー」を流します。その後の食事会で知り合った女性から、雅史は「いつか世界を救う」と予言されますが、友人たちからはパシリのような扱いを受け、女性らとホテルに消えていく友人たちを尻目に、一人で帰らされることになります。その帰り道、フィッシュストーリーをかけていた雅史は無音部分で女性の悲鳴を耳にします。しかしそれはテープから聞こえてきたものではなく、実際に聞こえてくる女性の悲鳴でした。車から降りてあたりを確認すると、雅史は道端で襲われている女性を発見します。助けを求める女性ですが、襲っている男の剣幕にたじろいでしまう雅史。そのまま車まで引き返してしまいますが、思いとどまった雅史は落ちていた棒を手に取ると、女性を襲っている男に向かっていきます。
フィッシュストーリーの簡単あらすじ:承
2009年、進学校に通う女子高生の麻美は、修学旅行でフェリーに乗り東京へ来ていました。麻美は一度寝てしまうと大きな音でも起きることができず、東京で降りるはずがそのまま寝過ごしてしまい、北海道まで降りることができないことを知って途方に暮れてしまいます。そんな麻美を慰めてくれたのがフェリーのコックでした。彼は自らの半生を語り、自分が正義の味方になるために育てられた人間であることを話します。そこへ突然、銃を持った男たちが押し入り、船がジャックされてしまいます。船員に躊躇なく発泡する犯人たちに怯える麻美ですが、正義の味方を名乗るコックはシージャック犯たちに勇敢な姿で立ち向かっていきます。
フィッシュストーリーの簡単あらすじ:転
1975年、売れないパンクバンド「逆鱗」は新しい音楽プロデューサーとの音楽の方向性が合わず、岐路に立たされていました。次回が最後のレコーディングになることを知ったバンドのリーダー・繁樹は、自分たちを見出してくれた岡崎が偶然持っていた本から着想を得て、新曲の歌詞を書きます。音楽プロデューサーの意向を無視して自分たちの好きなようにレコーディングした新曲「フィッシュストーリー」は、曲の一部を無音状態にしたまま発売されることになります。バンドメンバーや岡崎たちは自分たちの曲がどこかの誰かに届いていることを想像しながら語り合うのでした。「フィッシュストーリー」は日本語で「ほら話」という意味になり、ほら話のようなことを想像して笑う彼らですが、「フィッシュストーリー」がいつか世界を救う。そんなことを夢見ていたのでした。
フィッシュストーリーの結末
2012年、小惑星の地球衝突まで残り数時間となったところで、人類は最後の作戦を行なおうとしていました。インドでは国籍を問わず選ばれた5人の有能な人材を乗せて、宇宙船が発射されることになります。彼らの活躍により小惑星は地球への衝突寸前に爆発し、人類は救われるのでした。その宇宙船の乗員には明晰な頭脳と計算力を持った人物として麻美も参加しており、「彼女のおかげで作戦が成功した」とパイロットが語ります。かつて彼女をシージャック犯から救った「正義の味方」を名乗るコックは雅史の息子であり、雅史は襲われていた女性を救い、のちに結婚して子どもをもうけ、強くたくましく育てていたのでした。地球最後の日とも言われたそのとき、レコード店でかかっていた曲「フィッシュストーリー」は、さまざまな時代を越えて世界を救っていたのでした。
以上、映画「フィッシュストーリー」のあらすじと結末でした。
詳細あらすじについて
この映画は、1953年、1973年、1975年、1982年、1999年、2009年、2012年の各エピソードが、入り乱れてストーリーが展開し、ラストにそれらがつながるという構成になっています。あらすじは、分かりやすさを重視し、各年ごとにまとめました。映画のおもしろさは失われますが、ご了承いただきたいと思います。
詳細あらすじ1.『FISH STORY』この曲が世界を救う。音楽が世界を救う
2012年、荒れ果てた、人っ子1人もいない商店街を、ある男(宗教家・谷口)が電動車椅子に乗ってのんびりと移動していました。空には巨大な火の玉(彗星)が飛んでいました。その男は路地に1軒のレコード店が店を開けているのを目にしました。その男は車椅子から立ち上がり、その店に入ると、店長と1人の青年のお客さんがいました。その男は店主に「何で店、開けてるの」と訊くと、店主は「レコード屋なんで」と当然のように答えました。お客の青年は1枚のCDを試聴して、店主に「パンクなんてバカにしてましたけど…」と楽しそうに尋ねてきました。店主はお客に1枚のレコードを薦めました。そのレコードのジャッケトには「FISH STORY 逆鱗」と描かれていました。店主は「このレコードは、まだセックスピストルズがデビューしていない、37年前、日本にパンクなんて言葉が入ってきてないとき、発売され、全然売れず廃盤になった1枚のレコード」と説明をしました。その様子を見ていた男は、卓上にあったTVをつけました。TVでは「彗星衝突まであと…津波のおそれがあります。避難してください…」と放送していました。男は「みんな避難してるよ。あと5時間で世界は終わるんだ」と言うと、お客は「分かりませんよ。…そうだ、アメリカが彗星に仕掛けた核爆弾が何か突然のショックで爆発して…」と反論しても、男はそれも否定しました。そのやりとりを聞いていた店主は「正義の味方が地球を救う。…5人いるんだ。ゴレンジャー」と何かを思いだしたように呟きました。お客はその店主の意見に賛同し、いろんな可能性を想像して話します。それでも男は「可能性なんてないない、10年前から分かってた…」と空を見上げて呟きました。店主はおもむろにその逆鱗の1曲目『FISH STORY』をかけました。「僕の孤独が魚だったら…巨大さと獰猛さに…鯨でさえ逃げ出す…きっとそうだ…きっとそうだ…♪」と静かに流れ始めました。店主は「この曲が世界を救う。音楽が世界を救う」と呟きました。
詳細あらすじ2.1953年、『フィッシュストーリー』発行
1953年、戦後間もない混乱期、多くに出版社では海外の本を翻訳して発行していました。その為、圧倒的に翻訳できる人が足りない状態でした。岡崎の叔母が勤めていた弱小出版社も例外でなく、社長はある本に版権を買ったものの、翻訳者がおらず頭を抱えていました。その時、ある1人の男がその出版社に営業マンとして雇ってもらおうと、やって来ました。社長は履歴書の写真とその男を見るなり、喜んで雇い入れました。その男の顔は彫りが深くてハーフのような顔立ちでした。社長はその男をハーフだと思いこみ、そして、最初の仕事として、海外の英語の本の原稿を渡し、それを翻訳するように言いました。しかし、実はその男はハーフでなく生粋の日本人で、英語なんて全然できませんでしたが、妻子を養うべく、その仕事を引き受け、家に帰り、子供が遊び回る中、辞書と格闘しながら、必死でその本を日本語に訳しました。ついに出来上がった『フィッシュストーリー』というタイトルの本は発行されましたが、1冊も売れず、すぐに書店から全部返本されてきました。原因は内容が全く違うからでした。「fish story」は英語で「ほら話」という意味なのですが、翻訳した男は文字通り直訳して「魚の話」だと思い込み、その本を翻訳してしまったのでした。だから誤訳だらけの本となっていたのでした。これが原因で岡崎の叔母が勤めていたその出版社は倒産してしまいました。彼女は記念にと思い、『フィッシュストーリー』の本を1冊、拝借しました。
詳細あらすじ3.1973年、パンクバンド“逆鱗”、プロになる
1973年、あるキャバレーでバンド“逆鱗”が歌っていました。この時代では、ビートルズが解散してロックは知られていても、世間で「パンク」という言葉すら知られていませんでした。彼らの歌はパンクで、誰にも理解されず、お客から「もっと静かな曲をやれ」「うるさい」などと罵倒されました。逆鱗のリーダー兼ベースの繁樹は、客の要望に応えて、仕方なく『長崎は今日も雨だった』を弾き始めました。ギター・亮二、ドラム・鉄矢がそれに続き、ヴォーカル・五郎が、静かに歌い始めました。しかし、最初は良かったのですが、なんだかしっくりこないギターの亮二が、しびれを切らしパンクにきりかえました。そのノリに合わせて、全員が演奏しました。また、客から罵倒され、キレたリーダー・繁樹が演奏を止め、客に飛びかかりました。続いて、ギター・亮二、最後にヴォーカル・五郎が客に飛びかかり、その場で格闘が始まりました。その様子を静かに興味深そうに見ていたレモンレコード株式会社の岡崎憲夫は、“逆鱗”の曲に魅了され、楽屋で彼らに「理解されるには時間がかかるだろうが、お前たちの道は間違っていない。プロにならないか。世界中にお前たちの音楽を届けようよ…」とスカウトしました。
詳細あらすじ4.1975年、逆鱗『FISH STORY』を歌う
1975年・パンクの先駆者『セックスピストルズ』デビューの1年前、“逆鱗”のメンバーはスタジオで、自分たちの曲にプロデューサー・谷が勝手にキボードを入れ、これで売れると言っている様子を見て、呆れていました。その夜、川原でメンバーは集まり、今後の話をしました。ギター・亮二は「なんでキボード乗せなきゃならないんだ」と激怒していましたが、リーダー・繁樹は冷静でした。そんな繁樹を見て、亮二は「変わったな。昔は一番過激だったのに」と言うと、繁樹は「プロになったら、仕方ないんだ。レコード会社、事務所との打ち合わせ、取材、全部俺がしないといけない」と愚痴りました。亮二の怒りは収まらず、「俺はそこらで魂のこもらないギター鳴らしてるそんなバンドもどきにはならないからな」と言って帰っていきました。それからおもむろに五郎が繁樹に「事務所で社長と岡崎さんの話、聞いたんだ。社長は才能のない奴らに3枚もアルバム作らせる筋合いはないと言ってた。岡崎さんは、あと1枚だけと言うのが精一杯だった」と盗み聞きしたことを吐露しました。すると、ドラム・鉄矢が「次も売れないよ。…何より厄介なのは、俺たちは自分たちの音楽が正しいと信じている。…次の仕事探さないと。食っていかないといけないからな」と言って帰っていきました。繁樹と五郎だけが残り、繁樹は「またアマチュアに戻るか」と言って、2年前キャバレーで出会った彼女を連れて家に帰ると、岡崎が待っていました。繁樹は酔っぱらって潰れている彼女を寝かすと、岡崎さんから「五郎から聞いただろ」と言うと「社長は五郎だけなら契約する。バンドとしては明日のレコーディングが最後だ」と告白しました。繁樹は五郎から聞いていたのは、明日のレコーディングが最後という事だけだったので、驚きました。すると、寝ていた彼女がすくっと立ち上がり「五郎は繁樹を裏切ろうとしてる」と怒り、暴れ始めました。繁樹は彼女をなだめ、吐きそうになった彼女をトイレに入れました。岡崎は「良かったら、やるよ。叔母の家から拝借してきたんだ」と言って1冊の本を繁樹に渡しました。繁樹はパラパラとページをめくり、最初のページに目をやるとそこには「僕の孤独が魚だったら、巨大さと獰猛さに、鯨でさえ逃げ出す」という言葉に惹かれました。繁樹はその夜、その本から引用して歌詞を作りました。次の日、繁樹はその歌詞を見せると、メンバーは盗作にならないかと危惧しますが、岡崎は大丈夫と言い、逆鱗メンバーは歌詞に曲をつけ、演奏しました。メンバーは「これおもしろいよ、いいよ、この曲」と評価しましたが、プロデューサー・谷は「この曲、バラードにしよう。その方が売れる」と言い出しました。ギター・亮二はキレて文句を言いました。リーダー・繁樹はついにキレ「うるせーぞ、この坊ちゃんプロデューサー!」と言い、岡崎の意見を訊くと、彼は「売れないな」と答えました。繁樹とドラム・鉄矢は「どうせ、これが最後。好きにやらせてください」とお願いしました。岡崎はそれを受け、彼らに一発録りでいくことを条件に、彼らに好きに演奏させ、レコーディングしました。演奏が始まり、1番が終わり、ギターの間奏に入ったとき、ヴォーカル・五郎が「岡崎さん、これ誰かに届くのかな…届いてるのかよ…これすっげーいい曲なのに…誰にも届かないのかよ。嘘だろ。…届けよ、誰かに。頼むから」と思わず愚痴をこぼしました。それでもノリノリで演奏をし終え、メンバーは満足でした。ただ、五郎の独り言の部分をどうするかで、議論になりました。岡崎は「とりなおさない。…あれよりよくならない。…そこだけカットしよう。…無音にしよう。…せっかくだから、変なことやろう」と言い、1分間、無音にすることになりました。収録が終わり、メンバーは居酒屋で、あの曲のタイトルを「フィッシュストーリー」にすることにしました。繁樹は歌詞の意味を聞かれ「何か哲学的な意味があるんだよ。深い意味があるんだよ。きっと誰かに届くよ」と言いました。そこに岡崎が息子を連れてきました。岡崎はメンバーにこの本の著作権は大丈夫である理由を説明しました。「戦後の混乱期、叔母の勤めていた弱小出版社が…」と話し、「だから、訳が無茶苦茶なんだよ。意味無いんだよ。フィッシュストーリーも“魚の話”と勘違いしてるし…」と岡崎は言いました。英語に弱い繁樹に、五郎は「英語で“フィッシュストーリー”は、“ほら話”っていう意味だよ」と教えました。岡崎は「いいタイトルだ。そして、フィッシュストーリーは…きっといつか誰かの心に届く。俺はそう信じている」と評価しました。メンバーは無音の部分にした効果について話をし始めました。岡崎は「想像してみろよ。例えば…」と言い出し、メンバーを巻き込み、想像しだします。「この曲を喫茶店で聴いていた男がいて、無音の部分で女性の声を聞き、ヘッドフォンを外しその女性と話す、そして、彼女と男は恋をし、2人は結婚して、子供を産み、その子供が凄く偉い人になり、第3次世界大戦をくい止め、ノーベル平和賞を取る」という想像話をして、盛り上がりました。メンバーも岡崎も「無いな、無い、無い」と言って、笑って乾杯しました。最後に岡崎は「俺たちがこの時代で届かなかった思いが時空を超えて、つながってるんだ。…フィッシュストーリーはいつか世界を救う」と予言しました。その間、岡崎の息子は、TV番組「ゴレンジャー」を見損ねて、隣のテーブルでオムライスを食べていました。
詳細あらすじ5.1982年、彗星衝突まであと30年~運命の女性との出会い~
1982年、気弱な大学生・雅史は、友人の健太郎と悟と車で、女子大生との合コンに車で行く途中でした。雅史が運転する車中で、健太郎は呪いのレコードマニアの悟のコレクションを聞きながら、盛り上がっていました。健太郎はその中に“逆鱗”『FISH STORY』というカセットを見つけました。悟は、この中の『FISH STORY』という曲には、1番から2番に入る間のギターの間奏部分で1分間だけ無音の部分があって、その部分に女性の悲鳴が聞こえる奴にだけ聞こえるという呪いのレコードマニアの間では伝説の曲だと説明しました。健太郎は俄然聞きたくなり、強引にそのカセットを入れて聴きましたが、結局何も聞こえず、がっかりしました。運転している雅史は、逆にほっとしていました。そして、合コン会場に着き、合コンが始まりました。相手は津田塾大の女子大生3人でした。健太郎は雅史を「こいつ、運転手。いないものと思えばいいから」と説明します。気弱な雅史は何もいわず、そのまま、合コンの話にも入らず1人でぽつんとしていました。合コンで、悟はここにくる車中で呪いの音楽を聴いてきたことを話すと、話題は霊感の話になりました。すると由紀と綾が、晴子は霊感が強いと言い出しました。晴子は、始めは「信じない人に言ってもバカにされるだけだから」と言って断りますが、悟と健太郎に「信じる」と言われ、仕方なさそうに言いました。「今日、私と会う男はいつか世界を救う重要な役を担う男」と。そして、仲間外れ状態の雅史は、トイレの前で、晴子に「あなたは今日、運命の女性と出会う。…あなた一度でも何かに立ち向かったことある?立ち向かわないと、運命の女性は他の人のものになる」と告げられます。コンパが終わり、雅史は晴子を車で送ろうとしますが、健太郎もついてきました。健太郎の言われるまま、車を運転し、止めると、そこはラブホテルでした。健太郎は、嫌がる晴子を「2次会行こう」と強引に誘い出しました。それを見ていた雅史は健太郎を止めようとしますが、健太郎から「帰っちまえ!」と一喝され、すごすごと車に乗って、1人山道を運転して帰りました。雅史は車中で気弱な自分に怒り、ハンドルをドンドンと叩きながら運転していると、その振動でカセットが自動的に入り、『FISH STORY』が流れ始めました。雅史は止めようとしますが、止められず、曲はあの無音の部分に入りました。その時、雅史は「キャー」という女性の悲鳴を聞きました。雅史は車を止めて、山道の路地のほうに入ると、倒れた自転車と散乱した荷物があり、その先にエンジンがかかったままの車が1台ありました。その先の暗闇から音がするので、雅史が車のライトをつけると、そこには女性をレイプしようとしている男がいました。その女性から「助けて」と言われましたが、男ににらまれ、雅史は一旦、その場から離れようとしました。しかし、晴子から言われた言葉を思い出し、棒切れを拾ってレイプ犯に立ち向かっていきました。雅史はその男にやられそうになりますが、その女性が岩を持って、レイプ犯の頭を殴り、結局、雅史がその女性を救ったような形で2人は逃げました。こうして、雅史は「運命の女性」と出会い、2人は愛し合い、結婚しました。やがて、2人の間には1人の男の子が生まれました。雅史はその男の子を“正義の味方”になるように育てようと決心します。
詳細あらすじ6.1999年、『ノストラダムスの大予言』恐怖の大王襲来、7の月
1999年、健太郎と悟は、1982年に合コンで会った晴美に言われた「今日、私と会う男はいつか世界を救う重要な役を担う男」という言葉を信じ、会社を辞めてある島に来ていました。彼らは「ノアの方舟」の宗教家・谷口を信じ、島に来ていたのでした。宗教家・谷口は沈む真っ赤な太陽を見ながら「これが最後の太陽です」と言いました。しかし、翌日、真っ青な空に太陽が燦々と照りつけ、夏真っ盛りのいい天気でした。健太郎はキレて、谷口を責めました。そこに谷口の側近2人(スズキとタナカ)は、谷口を裏切り、「私たちは最初から言っていたのです。1999年に予言が書かれた時期と今とは、10年ずれているので、恐怖の大王襲来は2009年…私たちはその為にノアの箱船を…こいつは偽物です」と集まった信者に言いましたが、信者たちは怒り、2人と谷口をぼこぼこにします。宗教家・谷口は、それでもめげず、今度は「2012年に何かが起こる」と言い出しました。
詳細あらすじ7.2009年、シージャック勃発!“正義の味方”が少女を救う
2009年、1隻の「神戸発、東京経由、苫小牧行き」のフェリーが修学旅行の女子高生を乗せて、東京に向かっていました。その女子高校生・麻美は、船のベンチに座り、居眠りをしてしまいました。フェリーは東京に着き、女子高生はみんな降りていきました。しかし、麻美は居眠りをしていて、フェリーを降り損ねてしまいました。彼女は一度眠ると、全く音が聞こえなくなり、なかなか起きないのです。フェリーは東京を発つと次の目的地・北海道の苫小牧に向かっていました。麻美は救出用浮輪を手にして、フェリーから飛び降りようとしますが、周囲の人たちから止められました。1人だけ残された麻美は、泣きながらフェリーの中に座っていました。すると、1人の若い男性コックが、フルーツタルトを持って、麻美を慰めようとしてやって来ました。そのコックは、彼女が北海道まで笑えるように、自分の話をしました。「実は私は“正義の味方”になりたかったんです。…父からそう教えられたんです。…大事なのは職業や肩書ではなく、『準備』だと言うんです。強い肉体と動じない心。それを身につける準備こそが必要だと。だから、私は子供の頃から筋力トレーニングばかりでした。おまけに禅修行まで。…中島敦の『弟子』という小説を知っていますか?…悪は本当に報いを受けているのか。善人が勝利を得たという例を最近ほとんど聞かないじゃないか。…正義は昔から敵わなかったんですよ。…」とコックは語り、注文のパイの焼き上がる時間になったので、「この話の続きは後で」と言って、彼は厨房に入っていきました。この話を聞いていた前の席の老夫婦は、麻美に「正義の味方とはね…」と笑いながら、声をかけてきました。その直後、「乗客の皆様…今後の行動はお近くの銃を持った男の指示に従ってください」というアナウンスが流れました。フェリーがシージャックに遭ったのです。数人の男が銃を持って、乗客の席に乱入してきました。リーダー(宗教家・スズキ)が前に出てきて、「皆さん、…この船は今からノアの箱船になります。…気をつけてください。私たちの仲間はあっちにもこっちにもいます。…抵抗しなくても撃つかもしれないけど」と告げ、脅しました。怯える乗客を見ていたリーダー・スズキは、アップルパイを運んできたコックと目が合いました。コックはパイを持ったまま、あっという間に、近づいてきたシージャック犯1人を倒すと、残り3人を倒し、リーダー・スズキまで倒しました。乗客から拍手がわき起こりました。そんな彼を見て、麻美と老夫婦は「正義の味方…本当だったんだ」と呟きました。その時、麻美の後ろの席の男(タナカ)が銃を取り出し、麻美の頭に銃を突きつけ、「最初の犠牲者はやっぱり女子高校生でしょ」と言って、コックの右肩を撃ち抜きました。その男はコックを座席に縄で縛りつけました。縛られたコックは麻美に“正義の味方ができるまで”の続きの話をしました。彼は、子供の頃から、毎日、庭でバーベルを上げ、映画『ベスト・キッド』のような空手のトレーニングをして、ついには道場で目隠しをして、次々とかかってくる大人の空手家4人を簡単に倒すまでの実力をつけました。また、心を鍛えるため滝にうたれる修行もしていました。いじめっ子を倒すと暴力はいけないと先生から叱られ、その度に母親に泣きついていました。どうしてこんな修行をするのかと自問自答していましたが、それでも彼は父親が好きでしたと語りました。実は、このコックは、1982年は気弱な大学生だった雅史の息子でした。コックは、「私は今、父にとても感謝しています。…“正義の味方”はこんなもの」と言うと肩の骨を外し、縄抜けをしました。そして、コックは立ち上がり、アッという間にシージャク犯1人倒すと、麻美に「あなたが助かってよかった」と言い、外した骨を入れ戻しました。彼は麻美に「それでは行ってきます。礼なら父に」と言うとデッキに集まっているシージャック一味に、たった1人で立ち向かっていき、全員をなぎ倒しました。麻美の命は助かりました。
詳細あらすじ8.2012年、地球を救うため「音楽が国境を越えるように、国境を越えて集まった」5人
2012年、彗星衝突、世界の終焉が刻々と近づいてきました。半年前にアメリカの「アルマゲドン作戦」も、宇宙船が彗星に核爆弾を埋めただけで、不発に終わり、その宇宙船も帰還できませんでした。
“逆鱗”をスカウトした岡崎の息子が店主をしているレコード屋で、1人の若いお客は、「僕は例え今日、世界が終わろうとしても、自分の好きなレコードを聴き続けたい」と言いました。宗教家の谷口は、「この世界の終焉を10年も前から知っていたので、やりたいことは全部やってきた。全部、借金だけど、返す必要もない。胃がんも骨まで転移して、もう末期癌になっている。もう思い残すことはない」と半ば嬉しそうに言いました。かかっていた“逆鱗”の『FISH STORY』の1番が終わったところで突然、無音になりました。驚いたお客に店主は、「わざと無音にしてるんだ。…これには特別な意味がある」と言いました。彗星衝突まであと5時間をきったところで、ミサイルを搭載したインドの宇宙船「アルン」が、出発しました。その目的は半年前にアメリカが埋めた不発の核爆弾を、この核ミサイルで爆発させ、彗星を粉々にするというものでした。このミッションが成功させるには、非常に高度で複雑な計算が必要で、成功率は0.000013…%の確率でした。このミッションに集まった5人は全員、宇宙飛行経験がありませんでしたが、各国から各分野のエキスパートで、地球を救うために集まったのでした。この5人は「音楽が国境を越えるように、私たちも国境を越えて集まった」という声明を出しました。お客と店主は「今、5人って言ったよな…5人の正義の味方が世界を救う」と確かめ合いました。店主は昔、レコード会社に勤めていた父に連れられたお店で、オムライスを食べていたときに、父がそういう話をしていたのを思い出しました。
詳細あらすじ結末:2012年、『FISH STORY』が世界を救った。音楽が世界を救った。
彗星衝突、世界の終焉まであと1時間、インドの宇宙船「アルン」内では、1人の数学の天才的能力をもった日本人女性が、アメリカの宇宙船が埋めた核爆弾にミサイルを命中させるための非常に複雑・高度な計算をやっていました。そして、アルンは彼女の計算結果をもとにミサイルを発射しました。ミサイルは見事に核爆弾に命中し、彗星は粉々に砕け散りました。地球は救われました。その計算をした日本人女性は「麻美」でした。
以上、映画フィッシュストーリーの詳細あらすじ解説でした。
フィッシュストーリーのキャスト・スタッフ
監督:中村義洋
脚本:林民夫
原作:伊坂幸太郎
音楽プロデュース:斉藤和義
出演者
1975年:「逆鱗」のリーダー兼ベース・繁樹(伊藤淳史)
1975年:「逆鱗」のヴォーカル・五郎(高良健吾)
2009年:シージャックに巻き込まれた女子高生(多部未華子)
2012年:宇宙飛行士・麻美(多部未華子)
1982年:気弱な大学生・雅史(濱田岳)
2009年:コック・正義の味方(森山未來、少年時代:岩井進士郎)
2012年:レコード屋店長 / 岡崎の息子(大森南朋)
1975年:岡崎(大森南朋)
1999年・2012年:谷口(石丸謙二郎)
1975年:「逆鱗」のギター・亮二(大川内利充[DRIVE FAR])
1975年:「逆鱗」のドラム・鉄矢(渋川清彦)
1975年:レコードプロデューサー・谷(眞島秀和)
1975年:繁樹の彼女・波子(江口のりこ)
1975年:岡崎の息子(原正幸)
1975年:クラブのマスター(山下敦弘)
1982年・1999年:雅史の友人・健太郎(山中崇)
1982年・1999年:雅史の友人・悟(波岡一喜)
1982年:予知をする女子大生・晴子(高橋真唯)
1982年:晴子の友人・由紀(加藤侑紀)
1982年:晴子の友人・綾(井上佳子)
1982年:強姦魔(滝藤賢一)
1982年:運命の女性(大谷英子)
1999年・2009年:シージャック犯・スズキ(芦川誠)
1999年・2009年:シージャック犯・タナカ(野仲イサオ)
2009年:フェリー乗客・好青年(田村圭生)
2009年:フェリー乗客・老夫婦(上田耕一、草村礼子)
2012年:客(恩田括)
2012年:アナウンサー(金井淳郎)
1953年:出版社の社長(中村有志)
1953年:ハーフじゃなかった男(岡田眞善)
1953年:岡崎の叔母(浅野麻衣子)
70年代のパンクバンド、80年代の気弱な大学生、シージャックに巻き込まれた女子高生など様々な時代の様々な人たちのストーリーが入り乱れていて、一見無関係な話に見えたけど、ラストにかけてそれぞれの関係などが明らかになっていき「こんなふうに繋がっていたのか!」と良い意味で鳥肌。一見何気ない人々の人生が少しずつ繋がっていき、最終的に地球を救うことになるという展開に胸が熱くなりました。