花戦さの紹介:2016年日本映画。華道発祥地、六角堂の池坊。元は仏前に備える花を工夫した物だったが、戦乱の世に花開き茶の湯と共に武家社会を彩っていった。その先駆けともなる専好の美学とは。鬼塚忠原作の著書『花いくさ』をもとに、豊臣秀吉と華道家元 池坊専好の伝説から着想を得たストーリーを描く時代劇映画。
監督:篠原哲雄 出演:野村萬斎(池坊専好)、市川猿之助(豊臣秀吉)、高橋克実(吉右衛門)、山内圭哉(池坊専伯)、和田正人(池坊専武)、森川葵(れん)、中井貴一(織田信長)、吉田栄作(石田三成)、竹下景子(浄椿尼)、佐々木蔵之介(前田利家)、佐藤浩市(千利休)、ほか
映画「花戦さ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「花戦さ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
花戦さの予告編 動画
映画「花戦さ」解説
この解説記事には映画「花戦さ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
花戦さのネタバレあらすじ:起・戦国に生まれた花の道
16世紀末、戦乱の時代、京都六角堂で華道が生まれた。僧として勤める池坊専好(野村萬斎)は、師匠や兄弟子に頼まれ、織田信長(中井貴一)の下で松を活ける事になった。家臣たちから酷評される中、信長はたいそう気に入ったが、松の接ぎ木が目の前で折れてしまう。それをフォローしたのは豊臣秀吉(市川猿之助)だった。
12年後、信長亡き後、豊臣の世になる頃、平穏になりつつある亰で六角堂池坊の執行は専好が継いだ。しかし、記憶力に難のある専好は指導には向いておらず、幼馴染の吉右衛門(高橋克実)がそれを手伝っていた。
花戦さのネタバレあらすじ:承・河原の娘
いつものように河原の遺体に花を手向け、経を上げていた専好は、まだ息のある少女(森川葵)を見つけ、寺に連れ帰った。しかし少女は何も食べようとせず、また口もきかなかった。そんな少女の部屋に専好は蓮の蕾の入った桶を置いた。ポンと音を立てて花開く蓮に、精気が戻った少女は、翌日専好が部屋に入ると、襖に蓮の絵を描いていた。口を利かずとも山へ花を採りに付いて来た少女に、毒のある花やそうではない花を教え、蓮の花から『れん』と名付け、尼寺に少女を預ける事にした。
ある日、吉右衛門の店の前に活けた花を目に留めた千利休(佐藤浩市)から庵に呼ばれて訪ねると、専好はそこで一輪だけ活けられた花に見入り、また自分の覚えの悪さを嘆いた。本音を語る専好と千利休は親しい間柄になった。同じ頃、内裏に上がることになった秀吉は、利休に金の茶室の製作を依頼した。
花戦さのネタバレあらすじ:転・千利休と秀吉
絵師として成長し、召し抱える話も出ていたれんが、尼寺から突然消えた。山の洞窟に篭って絵を描いていた彼女を見つけると、自分はお勤めができない身の上だと明かした。専好は山小屋に住まわせ、そこで絵を描くように手配した。
金の茶室が完成する頃、秀吉によって、天神さんの大茶会が行われた。そこでは、秀吉をはじめとした茶人が、市民たちがお茶碗を持ってくれば誰にでもお茶を点ててくれるというものだった。利休に花を頼まれた専好が、野点をしている側の木に花を活けているとそれが評判になり、秀吉の茶室よりも長蛇の列ができた。挙句、茶室が揶揄されているの聞いた秀吉は、十日続くはずの大茶会を中止してしまった。
天下を手中に収め、傲慢になっていく秀吉は、大徳寺の利休の像に難癖をつけ、怒った。
花戦さの結末:友の死
前田利家(佐々木蔵之介)から、利休が秀吉に詫びを入れるよう説得を頼まれた専好だったが、その甲斐も虚しく利休は切腹して晒し首にされた。花を活けられなくなっていた専好は、四十九日にやっと花を活け始め、評判になった六角堂は秀吉に目を付けられた。
同じ時、息子をなくした事を利休の呪いと噂されはじめた秀吉は、いよいよ傍若無人になり、自分を揶揄する者は街の衆、子供も構わず取り立て、晒し首した。そして、父が秀吉の絵姿を猿のように描いた絵師だとバレたれんも取り立てられ、専好に毒の花だと教えられた花を食べて自害した。
友や親しい人を亡くした専好は、秀吉に活けた花を寄進することで、その振舞いを諫めようと、もしもの時は六角堂の僧達に被害が及ばないように破門状を持って臨んだ。そして、かつて信長に寄進したような松と花、そして、れんの描いた猿の絵を送り、家臣たちに刃を剥けられながらも静かにそれぞれの趣を解いた。
信長や利休を思い出し、その真意を思った秀吉は、かつてのように接ぎ木が折れた事で腹の底から笑い、専好を咎める事はなかった。
日常が戻り、専好が河原で花を供えていると、れんを拾った場所で彼女と再会した。れんは専好に教えられていたように、仮死状態になる量の花しか食べていなかった。
以上、映画「花戦さ」のあらすじと結末でした。
花戦さのレビュー・考察:茶道と華道
千利休の活躍のおかげで、戦国時代と茶の湯に関して語られることは多くなった。しかし同じくして華道や香道などの発展も切り離すことはできない。また、戦国大名たちのステイタスとして美術全般が発展している。この作品では、華道の発祥の池坊と茶道の関り、架空ではあるものの、当時人気を博していた長谷川等伯をモデルにした絵師に関する話が盛り込まれており、戦の場面を描かずに、大名やそれを支える人々の頭脳戦が描かれている視点が大変面白い。
この映画の感想を投稿する