そこのみにて光輝くの紹介:2013年日本映画。愛を捨てた男と、愛を諦めた女。ひと夏の北海道函館市を舞台に、ある事件が元で仕事を辞めた男が、壮絶な過去を持つ女や仮釈放中の女の弟と出会い、抱えている傷にもがきながらも新たな人生を歩み始めようとしていました。
監督:呉美保 出演者:綾野剛(佐藤達夫)、池脇千鶴(大城千夏)、菅田将暉(大城拓児)、高橋和也(中島)、火野正平(松本)
映画「そこのみにて光輝く」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「そこのみにて光輝く」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
そこのみにて光輝くの予告編 動画
映画「そこのみにて光輝く」解説
この解説記事には映画「そこのみにて光輝く」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
そこのみにて光輝くのネタバレあらすじ:起
北海道函館市。とある鉱山で発破作業の仕事をしていた佐藤達夫(綾野剛)は、作業中の事故により目の前で同僚を失ったのを機に仕事を辞め、職に就かずパチンコ屋に通い飲み歩くなど自堕落的な日々を送っていました。ある日、いつものようにパチンコ台に座ると、隣に座っていた大城拓児(菅田将暉)という無邪気で人懐っこい男にタバコの火を貸してもらえないかと頼まれたのを機に知り合います。達夫はタバコの火のお礼にメシを奢るからと拓児に誘われ、海辺にある拓児の自宅を訪れます。そこはボロボロのバラック小屋で、拓児は脳梗塞で寝たきりの父、介護に疲れ切った母、姉の千夏(池脇千鶴)と共に暮らしていました。
そこのみにて光輝くのネタバレあらすじ:承
拓児の家庭は非常に貧しく、千夏は地元の有力者である中島(高橋和也)の愛人であり、自分の体を売って一家の生計を立てていました。さらに、拓児は数年前に人を刺して服役しており、現在は仮釈放の身だったのです。中島は妻子を持つ身でしたが、拓児に職を紹介する代わりに千夏を愛人にしていたのです。達夫と千夏は、互いの身の上話をするうちに次第に打ち解け、惹かれ合っていくのです。
そこのみにて光輝くのネタバレあらすじ:転
ある日、達夫は拓児と共に飲みに出かけました。拓児は達夫の過去を聞いて鉱山仕事に興味を持ち始め、達夫に山に連れて行ってほしいと頼みます。達夫は過去のトラウマを抱えながらも、かつての上司である松本(火野正平)に拓児の相談をします。達夫は千夏が体を売っていることや父親の性欲処理をしていることなど衝撃的な事実を知りながらも千夏を深く愛するようになりました。達夫と千夏は函館の海で熱いキスを交わし、深く求め合います。千夏は水産物の加工工場で職を得て、会社で冷凍イカなどを加工する仕事を始めました。新たな人生を歩みたい千夏は中島と決別する決意を固めますが、千夏は拓児の件で中島に弱みを握られていたのです。千夏は中島に車で連れ出され、暴行を受けてしまいます。
そこのみにて光輝くの結末
拓児は鉱山仕事という新たな目標ができ、これから人生をやり直そうと考えていました。そこへ中島に乱暴された千夏がボロボロになって帰ってきたのです。拓児は怒りをたぎらせ、夏祭りで仲間と飲んでいた中島の元へ向かいます。拓児は中島を問いただしますが、千夏を冷やかされたことに遂に怒りを爆発させ、焼き鳥の串で中島をメッタ刺しにしてしまい、そのまま夜の函館の街へ逃走します。事を知った達夫は、自宅アパートの玄関前にいた拓児を殴り、そして抱きしめるのです。夜明け前の函館の街を自転車で二人乗りで走ったのち、拓児は「俺、山へ行けねえや」と言い残して一人交番へ出頭していきました。そして、千夏の家に行った達夫を待ち受けていたのは、父親の首を絞めようとしていた千夏の姿でした。達夫は千夏を制止すると、二人で海辺を歩き出しました。二人の目の前には、眩しく輝く朝の太陽がありました。
登場人物たちのどうしようもなさに胸が詰まりそうになる一作。舞台は函館と思われる地方都市。日本全国の地方都市に住む人、特に経済的に苦境に陥っている人がよく描かれている。寝たきりの父親、ただ耐えるだけの母、いかにもな落ちこぼれヤンキーの弟。それをささえるヒロイン、無気力に生きる主人公。誰もが、現状に大きな不満を持ちつつも、その町から出られない。出る気力がない。この閉塞感に満ちた毎日に訪れる、唯一のそしてささやかな希望を描いたラストが非常に美しい一作。