かそけきサンカヨウの紹介:2021年日本映画。『ふがいない僕は空を見た』などの作家・窪美澄が2014年に発表した短編集『水やりはいつも深夜だけど』収録の一編を映画化したヒューマンドラマです。父親の再婚に戸惑う主人公の女子高生が「家族」のありかたについて悩みながら成長していく姿を描きます。
監督:今泉力哉 出演者:志田彩良(国木田陽)、井浦新(国木田直)、鈴鹿央士(清原陸)、中井友望(鈴木沙樹)、鎌田らい樹(有村みやこ)、遠藤雄斗(宮尾数人)、石川恋(劇中劇:レマ役)、鈴木咲(国木田ひなた)、芹澤興人(須田)、海沼未羽、古屋隆太、鷺坂陽菜、和宥、辻凪子、佐藤凛月、梅沢昌代(清原絹枝)、菊池亜希子(国木田美子)、西田尚美(清原夏紀)、石田ひかり(三島佐千代)ほか
映画「かそけきサンカヨウ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「かそけきサンカヨウ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
かそけきサンカヨウの予告編 動画
映画「かそけきサンカヨウ」解説
この解説記事には映画「かそけきサンカヨウ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
かそけきサンカヨウのネタバレあらすじ:起
2020年3月。中学3年生の国木田陽(志田彩良)は級友の清原陸(鈴鹿央士)、宮尾数人(遠藤雄斗)、鈴木沙樹(中井友望)、有村みやこ(鎌田らい樹)と共に喫茶店『赤い風船』で語り合っていました。
卒業を間近に控える陽ら5人は既に同じ高校に進学することが決まっていました。陽たちが語り合っていたのは「自分史上最古の記憶」でしたが、陽だけは即答することができませんでした。
陽は映画関連の仕事をしている父・直(井浦新)と二人暮らしです。家事はいつも陽が担っており、そのためにいつもみんなより先に帰らねばならないのです。帰宅した陽は家事をしながら、自分の最古の記憶を思い起こしていました―――。
―――陽の最古の記憶は、赤ん坊の頃に母に背負われていた記憶でした。母は陽に「サンカヨウ」という花について語っていました。サンカヨウは白い花を咲かせますが、朝露や雨を吸うとどんどん透明になっていくというのです―――。
―――帰宅してきた直は、いきなり陽に大事な話があると切り出しました。直は何と仕事で知り合った美子(菊池亜希子)という女性と再婚するというのです。来日してきた海外の通訳をしている美子は夫に先立たれ、シングルマザーとして幼い娘・ひなた(鈴木咲)を育てていました。
かそけきサンカヨウのネタバレあらすじ:承
2020年7月。陽は高校に進学しており、直と再婚した継母・美子、妹となったひなたとの4人暮らしにもすっかり慣れていました。陽は引き続き家事を担っていました。
学校では陽は陸と共に美術部に、数人はバスケ部に入りました。沙樹は『赤い風船』でバイトを始め、みやこは週に4回の塾通いと土日のピアノ練習と英語学習に大忙しでした。それでも陽たち5人はスケジュールの間を縫って喫茶店に集っていました。
ある日、陸は陽たちに思いがけもない事実を打ち明けました。実は陸は心臓を病んでおり、夏休み時に手術するとのことでした。陽たちは見舞いに行くと約束しました。
陸の父は海外に単身赴任しており、現在の陸は母の夏紀(西田尚美)や祖母の絹枝(梅沢昌代)と3人暮らしです。この日も病院で検査をしてきた陸は帰宅するなり自室で横になり、地図で父が赴任していた世界各地の都市を眺めていました。
ある日、陸は陽の自宅に招かれ、8月に手術することになったと告げました。陽と陸は手術前に二人でどこかに出かけようと約束し、女性画家の三島佐千代(石田ひかり)の水彩画の個展に行くことにしました。
佐千代の絵はどこか陽が掻く絵と作風が似通っていました。佐千代は夫と小学生の子供がいるらしく、陽は佐千代の夫からポストカードを受け取りました。カードにはサンカヨウの絵が描かれていました。それを見た陽は突然態度を急変させ、陸をギャラリーに置き去りにして一人帰っていきました。
かそけきサンカヨウのネタバレあらすじ:転
帰宅した陽は、ひなたが自分の部屋にあった1冊の本を破いてしまったことに気付き、激怒しました。この本はあの佐千代の画集でした。ひとり部屋に籠もり、泣き晴らした陽のもとに直が寄り添い、陽がまだ3歳の時に離婚した実母について語り始めました。
陽の実母はあの佐千代でした。とにかく一日中絵を描くことが好きな佐千代は陽が生まれてからも絵を描き続け、しまいには直との関係もこじれて離婚に至ったのです。
陽はギャラリーに出向いた際、佐千代は自分の存在に気付いていなかったと思い込んでいましたが、実は佐千代は陽の存在に気付いており、戸惑ったために目を反らしたのだそうです。佐千代からメールを受け取っていた直は陽が望めばいつでも佐千代に会えると話したうえで、これからも陽と美子とひなたと4人で暮らしていきたいと伝えました。
陽はひなたに怒ったことを謝り、ひなたも本を破いたことを謝りました。陽は美子と語り合い、ひなたが自分の妹になってくれて嬉しかったと言いました。美子は満足げな笑みを浮かべました。
陽は改めて佐千代と対面し、美子にも佐千代と会ったことを伝えたうえで「これから美子さんのことをお母さんと呼んでもいい?」と尋ねました。美子は感激して陽を抱き寄せました。
陽は陸に先日途中で帰ってしまったことを謝り、今度は陸の行きたいとこへ行こうと呼びかけました。陸は自分史上最古の記憶について、母と共に海外赴任に向かう父を空港で見送りに行った時のことを語りました。あの時不安だったと語る陸を見て、陽は陸の手術が無事に成功するよう願いました。
陸の手術は無事成功し、陽たちも見舞いに訪れました。陸は陽との会話を通じ、陽が美子のことをいつしか「美子さん」から「お母さん」と呼んでいることに気付きました。
やがて退院した陸は学校通いを再開するなど少しずつ日常生活を取り戻そうとしていましたが、美術部には顔を出さなくなっていました。
かそけきサンカヨウの結末
陽は意を決して陸に告白しましたが、陸は「よくわからない」と答えを保留しました。その後、陸は数人がバスケ部で走っているのを見て自分も走りたくなり、走ってみたのですが術後間もないため胸の苦しみを訴えて座り込んでしまいました。
たまたま居合わせた美子は陸を家に招き入れました。陸は美子に、今の自分は一体何をしていいのかわからないという悩みを打ち明けました。美子は自分の仕事を例に挙げ、自分は映画を作ることはできないけど映画を作る側と映画を好きな人との橋渡しはできると思ったと自らの体験を語りました。
そのうえで美子は陽が佐千代とメールのやり取りをしていることを明かし、陸は先日のギャラリーの女性が陽の実母であることを初めて知りました。
陸は美子から、来週の土曜に陽の誕生会があるので来てほしいと招待されました。一方、陽は直の仕事の関係で、ある劇の映像を2種類に演出した映像を見ることになりました。
劇中のレマ役の女性(石川恋)が相手に対して三角関係は自分の死で解決すると語りかけるシーンで、バックの音楽が異なるバージョンでした。陽は、最初の映像は“恋愛”という感じで、2番目の映像はは“友情”という感じを受けたと感想を述べました。
陸は学校から帰ろうとする際、靴箱に手紙があることに気付きました。それは陽からの誕生会の招待状でした。帰宅した陸は夏紀に父のところへ行くべきだ、寂しくないのかと問いました。
陸は夏紀と普段から口やかましい絹枝との関係を心配していましたが、夏紀は絹枝が口やかましいのは早産して陸に負担をかけてしまったことを悔いていた自分への叱咤激励と絹枝なりの愛情表現であることを話しました。それを聞いた陸は嬉しい気持ちになりました。
陽の誕生会にはいつもの仲間たちに混じって陸も参加しました。佐千代からもお祝いのメールが届き、喜んだ陽は佐千代に電話をかけて感謝の意を伝えました。
陸は電話を終えた陽に、自分はまだやりたいことを見つけられていないがために陽との間に距離を作ってしまっていたことを打ち明けました。そして陸は陽を描いた絵を誕生日プレゼントとして贈り、いつか一緒にサンカヨウの花を見に行こうと呼びかけました。陽は快く応じ、「行こう、絶対」と約束しました。
以上、映画「かそけきサンカヨウ」のあらすじと結末でした。
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