おもいで写眞の紹介:2021年日本映画。『おと・な・り』『君に届け』『ユリゴコロ』などを手がけた熊澤尚人監督が、自ら執筆した同名小説を映画化したヒューマンドラマです。主演を元「乃木坂46」の深川麻衣が務め、東京で夢破れて故郷の富山に戻ってきた主人公が遺影の撮影の仕事を通じて生きがいや新たな夢を見出す姿を描きます。
監督:熊澤尚人 出演者:深川麻衣(音更結子)、高良健吾(星野一郎)、香里奈(樫井美咲)、井浦新(居酒屋の大将)、今本洋子(千代)、古谷一行(柏葉雅俊)、吉行和子(山岸和子)、古川凛(音更結子(幼少期))ほか
映画「おもいで写眞」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「おもいで写眞」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
おもいで写眞の予告編 動画
映画「おもいで写眞」解説
この解説記事には映画「おもいで写眞」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
おもいで写眞のネタバレあらすじ:起
今年29歳になる音更結子(深川麻衣)は幼い頃に母が家を出ていき、故郷・富山の田舎町で祖母に育てられました。やがて高校を卒業した結子はかねてからの夢だったメイクアップアーティストになるため東京へ上京して専門学校に通い、晴れて憧れの職に就くことができました。
そんなある日、結子は突然理由を告げられずに解雇されました。それから間もなく、富山に残してきた祖母が孤独死したとの知らせが舞い込んできました。結子は上京してから全く戻っていなかった富山へと戻りました。
祖母の葬儀を営んだ結子は、参列者の一人からなぜ一緒にいてやれなかったのか責められました。自責の念に駆られる結子を親身になって気にかけてくれたのは幼馴染の同級生・星野一郎(高良健吾)でした。結子は祖母の四十九日が終わっても富山に留まりましたが、中々立ち直ることができず、ろくに再就職先も探そうとしませんでした。役場で働く一郎は結子を見かねてある仕事を紹介しました。それは「お年寄りの遺影写真を取る」ということでした。結子の実家は元々写真屋であったこと、祖母の遺影の写真がピンボケしたものしかなかったことに心残りがあったことから、結子は引き受けることにしました。
おもいで写眞のネタバレあらすじ:承
結子は今や高齢化が進む団地に向かい、一軒一軒を回って独居老人たちに遺影写真を撮らせてほしいとと声をかけましたが、誰からも「遺影なんて縁起でもない」と断わられてしまいました。嘘偽りが嫌いでお世辞すら言えない、融通の利かない性格の結子は中々地元の老人たちと会話を持つことができず、結子は一郎から団地でホームヘルパーをしている樫井美咲(香里奈)を紹介してもらいました。
結子は美咲が手伝いをしている高齢女性の山岸和子(吉行和子)に会いに行き、遺影撮影の話を振ってみました。すると、和子は行きたい場所で撮ることを条件に撮影に応じてくれることになりました。和子が指定した場所とは、和子が若かりし頃に勤めていた仕立て屋であり、結子はメイクアップアーティスト時代の経験を活かして和子の化粧を整え、撮影に臨みました。後日、結子の撮った写真の出来に満足した和子は「これは遺影写真じゃなくて“おもいで写真”だね」と感想を述べました。この言葉にヒントを得た結子は、ならば「遺影写真」という表現ではなく「おもいで写真」という呼び方を使おうと思いつきました。
結子は一郎の協力を得てチラシを作り、団地の一軒一軒に配って回りました。一郎が役所内にふれあいの場として設けた“団地カフェ”で和子が地元老人たちに結子の写真の腕前を絶賛してくれたこともあり、たちまち結子の元には「おもいで写真」を撮ってほしいという依頼が続々と舞い込むようになりました。
写真撮影だけでは食っていけない結子は地元の漁業協同組合のアルバイトも掛け持ちしており、仕事の合間を縫って次々と撮影を手がけていきました。亡き夫とよく買い物に行っていた店で撮影に臨む女性、大好きなボウリング場で撮影する人、若い頃に勤めていた消防署で、消防車を前に制服姿で撮影に臨む車椅子の男性などなど、様々な老人たちの「おもいで」を結子はカメラに刻み込んでいきました。一郎や美咲も結子に快く協力してくれました。そんなある日、結子は団地から倒れた老人男性が救急車に運び込まれる様を目撃しました。結子は孤独死が珍しいものではないことを思い知らされました。
おもいで写眞のネタバレあらすじ:転
もっと老人たちのことが知りたい結子は次々と写真撮影をこなしていきましたが、それでも団地に救急車が停まり、風呂場で倒れていた男性が運び出される様子を見た結子は、孤独死が珍しくないことを知りました。
やがて結子の「おもいで写真」を機に団地の住人たちの輪が広がっていき、一郎は結子のおかげで地元の住民たちが活気づいてくれたと感謝しました。しかし、結子は自分は何もしていないと浮かない表情でした。そこで一郎は「おもいで写真」の数が50人を突破したことから、写真が100人に到達したら団地カフェで写真の展覧会を開こうと提案しました。和子からも励まされた結子は目標に向かってやる気を出していきました。しかし、この頃から写真撮影の依頼者の数は頭打ちになっていき、結子は焦りを覚えました。団地にはまだまだ写真撮影に応じてくれない者たちが数多くおり、役所も団地に住む老人を全員把握しているわけではありませんでした。
そこで結子は団地のどの部屋に誰が住んでいるのか把握しようと思いつき、和子や協力者たちの助けを借りて団地の居住者リストを作りました。その矢先、掃除をしていた和子が転倒して怪我をしてしまいました。和子は結子には怪我を見られたくないと会うことすら避けるようになりました。やがて和子は老人ホームに入居することになり、結子と別れを告げました。
その後も結子は聾啞者の靴職人、夫の死を受け入れられない老夫人などの撮影を手がけていきました。そんな時、撮影依頼者の一人に認知症の疑いが浮上してきました。検査の結果は特に異常はないとのことでしたが、結子は真実がはっきりするまでは写真を撮らないと決め込みました。一郎は「思い出話が本当か嘘かなんて大事ではない」とたしなめますが、結子は「嘘のおもいで写真は撮りたくない」と突っぱねようとしました。一郎は結子の頑固な態度が人付き合いが苦手な原因であり、東京での仕事が上手くいかなくなった理由ではないかと指摘しました。
地元には見晴らしの良い高台がありますが、結子にとってはそこは苦手な場所でした。かつて結子の祖母は、結子の母はよくこの高台で結子に子守歌を歌って聞かせていたのだと語っていました。しかし、母に捨てられた記憶しかない結子は祖母の話が嘘だと思い込んでいたのです。その後、結子は美咲から、一郎は東京で働く話を受けており、今は保留していることを知らされました。
おもいで写眞の結末
結子は足の悪い柏葉雅俊(古谷一行)という男性から、妻が経営していた写真館の前で撮影してほしいとの依頼を受けました。その際、柏葉は事情があって妻とは別々に暮らしていたと語りました。しかし、その写真館は今ではすっかり更地になっていました。近所の住民から話を聞いた結子は、柏葉の妻は既に店を畳んで弟の元に行ったこと、そして柏葉は以前に妻を捨てて別の女性と駆け落ちし、それ以来一切連絡がなかったことを知りました。柏葉の過去に自分を捨てた母の姿を重ね合わせた結子は、怒って柏葉をその場に置き去りにしてしまいました。
その後、柏葉は再び結子の元を訪れ、妻に謝りたいと言い出しました。結子は渋々柏葉の妻の弟の家へ向かいましたが、柏葉の妻は既に亡くなった後でした。柏葉は妻の墓前で泣き崩れ、結子も深く落ち込んでしまいました。
そんな結子を慰めようと、一郎がたい焼きを買ってきてくれました。結子はかつて自分が高校生だった頃を思い出しました。結子は高校時代に一郎と付き合っていたのですが、初めてのデートの際に図書館近くのたい焼きの美味しい店で待ち合わせた結子はいつまで経っても一郎が来ないことに腹を立てて別れたのです。その真相は、二人が互いに店の名前を勘違いしていたことであり、一郎は別の店でずっと結子が来るのを待っていたのです。
結子は柏葉を慰めようと、そのたい焼きを持って柏葉の家を訪れました。柏葉に見せてもらった写真の中では、柏葉の妻が手話で「私はあなたを待っています」とのメッセージを残していました。
遂に「おもいで写真」が100枚を突破、約束通りに団地カフェで写真展が開かれました。訪れた人たちは誰もが笑顔を浮かべており、和子も老人ホームから外出許可をもらってわざわざ駆け付けてきてくれました。和子から「おばあちゃん、喜んどるよ」と声をかけられた結子は、思い出の高台で自分に子守歌を歌っていたのは母ではなく祖母だったことを思い出しました。結子は写真展を訪れた柏葉に、妻はずっと柏葉のことを待っていたと語りかけました。
結子は思い出の高台で祖母から教わった子守歌を口ずさんでいました。そこに一郎が現れ、東京行きの話は断ったと結子に伝えました。一郎はこの町が好きだと言い、これからも結子と一緒に「おもいで写真」を撮っていきたいと語りました。二人は故郷の景色を見ながら笑い合いました。
以上、映画「おもいで写眞」のあらすじと結末でした。
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