滑走路の紹介:2020年日本映画。32歳の若さでこの世を去った歌人・萩原慎一郎のデビュー作にして遺作となった『歌集 滑走路』を原作に、今をもがきながら生きる人々の苦悩と希望を、2005年・2017年・2029年の3つの時代を舞台としたオリジナルストーリーで描いた群像劇です。
監督:大庭功睦 出演者:水川あさみ(川瀬翠)、浅香航大(鷹野裕翔(2017年))、寄川歌太(須羽隼介)、木下渓(天野翠)、池田優斗(鷹野裕翔(2005年))、吉村界人(雨宮)、染谷将太(明智幸雄)、水橋研二(川瀬拓己)、坂井真紀(須羽陽子)、池内万作(石橋)、杉山ひこひこ(西岡)、佐藤貢三(風間)、天野はな(光井まひる)、山中良弘(小泉)、小林喜日(上田大輝)、増澤リオ(関谷達也)、小林諒音(土屋)、澁谷麻美(日高)ほか
映画「滑走路」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「滑走路」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
滑走路の予告編 動画
映画「滑走路」解説
この解説記事には映画「滑走路」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
滑走路のネタバレあらすじ:起
(本作は3つの時代で構成されているため、時系列で追っていきます)
【2005年 中学生編】
中学2年生の須羽隼介(寄川歌太)は成績優秀で学級委員長を務めていました。そんなある日、隼介は幼馴染の鷹野裕翔(池田優斗)が少年グループからいじめを受けていることを知り、助けてあげたのですが、今度は自分がいじめの標的になってしまいました。
最初のうちは決していじめに屈することのなかった隼介でしたが、裕翔までもがいじめに加担してしまい、心が折れてしまいました。それでも隼介はシングルマザーとして女手一つで自分を育ててくれた母・陽子(坂井真紀)にこのことを相談できずにいました。
そんなある日、隼介は校舎の廊下に飾られた1枚の絵に心を奪われました。隼介はその場に偶然居合わせた、この絵を描いた同級生の天野翠(木下渓)と言葉を交わしました。やがて隼介は図書館で勉強していた翠を見かけ、勉強を手伝ってあげることにしました。
その甲斐あって翠は無事テストを乗り切ることができ、隼介の力になりたいと考えるようになりましたが、隼介はいじめが酷くなることを恐れていました。
裕翔は不登校になりました。裕翔のことについて思い悩んでいた隼介は翠から勇気をもらい、引き籠っている裕翔のもとを訪れて一緒に前を向いて歩きだそうと励ましましたが、裕翔はそんな隼介を突き放してしまいました。
やがて翠は家族の都合により福岡へ転校することになりました。隼介は翠が描いた絵を学校から持ち出し、翠を乗せた車に向かって思いの丈を叫びました。
滑走路のネタバレあらすじ:承
【2017年 厚生労働省官僚編】
12年後。25歳になった裕翔(浅香航大)は厚生労働省で若手官僚として働いていました。しかし裕翔はここのところ睡眠障害に悩まされ、心療内科でカウンセリングを受ける日々を送っていました。担当医の風間(佐藤貢三)からは仕事量を減らすようアドバイスを受けた裕翔でしたが、なかなかそうすることもできず、仕事への情熱をすっかり失っていました。
そんなある日、非正規雇用の待遇改善を目指すNPO団体『ほっとシェル』の石橋代表(池内万作)が厚生労働省に陳情に訪れ、非正規雇用の待遇を機に自殺した人たちのリストを渡してきました。何とか対応した裕翔でしたが、内容に納得しない上司の西岡(杉山ひこひこ)は裕翔を叱咤してしまいました。
裕翔の同僚である雨宮(吉村界人)はこの仕事に疲れ果て、退職することを明かしました。雨宮からこの仕事への意義について問われた裕翔は、石橋が持ってきたリストに再び目を通してみました。すると、裕翔は自分と同い年で自死した非正規雇用の青年、イニシャルS・Sのことが気になり、死の真相について調べることにしました。
裕翔はS・Sの元恋人で看護師の光井まひる(天野はな)や元同僚の明智幸雄(染谷将太)らから聞き取り調査を行い、その結果S・Sが裕翔の幼馴染だった須羽隼介であることに気付きました。
あの時、隼介に助けられた裕翔でしたが、自分だけ逃げてしまったことに深い負い目を感じていたのです。裕翔は隼介の母・陽子のもとを訪れました。
陽子は幼き日の隼介を映したビデオを見ていました。裕翔はかつて隼介のカバンから抜き取った教科書を返そうとしましたが、陽子はそれを拒むと「隼介に代わってあなたが生きなさい」と隼介の人生を裕翔に託しました。
滑走路のネタバレあらすじ:転
【2029年 芸術家夫婦編】
さらに時は流れ、37歳になった翠(水川あさみ)は切り絵作家として活動していました。油絵作家で高校の美術教師でもある川瀬拓己(水橋研二)と結婚していた翠は作家の仕事だけでは食っていけず、パートをしながら創作活動を続けていました。翠の仕事に理解を示す拓己は家事の手伝いや金銭面などで彼女をサポートし続けていました。
やがて翠は才能を認められるようになり、高齢出産となる前に子供がほしいという気持ちが強くなっていきました。最初のうちは「翠の好きなようにすればいい」と言ってくれた拓己でしたが、来年の必須科目から美術が外されそうになったことから失業の危機に陥り、次第に苛立つ時間が増えていきました。
最近妊娠した同世代のデザイン製作会社の担当者・日高(澁谷麻美)に影響を受けた翠は妊活について拓己に相談しましたが、拓己は「どっちでもいい」とそっけない対応を取ってしまいました。それでも翠は仕事に没頭する傍ら妊活を始めましたが、とうとう拓己は仕事を失ってしまいました。
拓己は自室に引き籠ってしまい、翠は懸命に励まそうとしましたがどうすることもできませんでした。そんな翠の脳裏によぎったのは、中学生時代の隼介との思い出でした。
滑走路の結末
やがて翠は妊娠しましたが、拓己は相変わらず「どっちでもいい」と素っ気ない対応しか取りませんでした。失望した翠はお腹の子を堕ろす決意をしましたが、自分の作品を見た中学生時代の同級生から久しぶりに連絡が入りました。翠はそこで隼介が自ら命を絶ったことを知りました。
翠は拓己に中絶の意思を伝えましたが、拓己はまるで他人事のように「翠が決めたことなら」としかいいませんでした。すっかり絶望した翠は拓己に見切りをつけ、離婚することにしました。
数年後。翠は個展を開いていました。個展には拓己も訪れ、翠は久しぶりに再会しました。翠も拓己もまだ再婚はしていませんでした。拓己がその場を去った後、翠の傍らには幼い息子が寄り添っていました。
以上、映画「滑走路」のあらすじと結末でした。
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