アナログの紹介:2023年日本映画。2023年に6年ぶりの監督作『首』(北野武名義)を発表する“世界のキタノ”ことビートたけしが2017年に自身初の恋愛小説として書き下ろした同名作品の映画化作品です。携帯電話による気軽な連絡が主流となった現代において、あえて“直接会う”というアナログ的価値観を貫く男女の恋愛模様を二宮和也(嵐)と波瑠のダブル主演で描きます。インスパイアソングは幾田りら(YOASOBI)が手がけています。
監督:タカハタ秀太 原作:ビートたけし 出演:二宮和也(水島悟)、波瑠(美春みゆき)、桐谷健太(高木淳一)、浜野謙太(山下良雄)、藤原丈一郎(島田紘也)、坂井真紀(浅井陽子)、筒井真理子(椎名順子)、宮川大輔(高橋俊和)、佐津川愛美(山下香織)、鈴木浩介(岩本修三)、板谷由夏(香津美)、高橋惠子(水島玲子)、リリー・フランキー(田宮)ほか
映画「アナログ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アナログ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「アナログ」解説
この解説記事には映画「アナログ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アナログのネタバレあらすじ:起
水島悟は東京の建築事務所に勤めるインテリアデザイナーです。40歳にして未だに独身の悟はいつものように事務所に出勤し、カタカナビジネス用語を多用する上司の岩本修三部長の会議に出席しました。その時、悟の携帯に小学校時代からの親友・高木淳一から電話がかかってきました。高木は岩本の発言を思わず「バカ部長のカタカナ演説」と言ってしまい、それを聞いた同僚たちは苦笑いしました。
悟は日本橋のレストランを手がけていましたが、同僚が言うにはどうやら今回も岩本の手柄になりそうだということでした。悟はいつも自分が出したアイデアを岩本の手柄にされてきましたが、何も言い返すことはありませんでした。
仕事が終わった悟は高木から飲みに誘われ、高木と共に小学生時代からの親友である山下良雄と3人でいつもの待ち合わせ場所である広尾の喫茶店「ピアノ」で待ち合わせることにしました。「ピアノ」は悟が内装を担当した店です。アナログながらも地道で丁寧な仕事にこだわる悟は窓扉の取っ手やトイレのペーパーホルダーなど隅々まで嗜好を凝らしていました。
一足先に店に着いた悟は、座席に岩本の記事が載っている雑誌を見つけました。そこに美春みゆきという女性が現れました。「ピアノ」マスターの田宮からこの店は悟が手がけたことを聞いたみゆきはその仕事ぶりを褒め、つい嬉しくなった悟もみゆきが大事に使い続けている母の形見のイタリア製のオーダーメイドのバッグを褒めました。悟はみゆきに一目惚れしました。
悟は入院中の母・玲子の見舞いに訪れました。玲子は悟の表情が明るいことに気づき、悟がみゆきに自分の仕事を褒めてもらったのだと言うと、その女性と結婚すればいいと勧めました。一方、みゆきも姉・香津美に悟のことを話していました。
アナログのネタバレあらすじ:承
悟は仕事帰りに立ち寄った「ピアノ」にみゆきの姿を発見しました。悟はコンビニで髭剃りを買い、徹夜明けで剃り残していた髭を急いで剃ると「ピアノ」に入りました。悟の髪や服はびしょ濡れでしたが、みゆきは悟からの食事の誘いを快諾してくれました。
悟とみゆきはレストランで楽しい時間を過ごしました。みゆきは海外の雑貨を扱う小さな商社に務めていると明かしました。悟はみゆきと連絡先を交換しようとしましたが、みゆきは実は携帯電話を持っていませんでした。みゆきは何もなければ毎週木曜日の同じ時間に「ピアノ」にいると語り、悟とみゆきは「お互いに会いたい気持ちがあれば、また会える」と再会を約束しました。
翌週の木曜日を目前に控えたある時、悟は出張で大阪に行くことに。大阪支社の高橋俊和部長と部下の島田紘也は悟の仕事ぶりに感心し、悟も木曜日に間に合うよう徹夜覚悟で仕事にあたることにしましたが、仕事上の些細なトラブルで結局悟は木曜日に間に合いませんでした。
次の木曜日。みゆきは「ピアノ」にいました。悟は先週行けなかったことをみゆきに謝罪しました。その後、悟はみゆき、高木、山下と共に焼き鳥屋に飲みに行きました。高木と山下は悟とみゆきの出会いを「アナログな付き合い」だなと感じました。みゆきは悟の自分の好きなものはクラシック音楽であることを打ち明けました。
玲子はガンが進行し、余命宣告を受けていました。悟は玲子に今度みゆきを連れてくると語りました。早くに夫を亡くし、女手一つで悟を育ててきた玲子は悟に幸せになれよと語りかけました。
悟とみゆきは毎週木曜日に会い、順調にデートを重ねていきました。そんなある木曜日、悟はみゆきをクラシックのコンサートに誘いました。みゆきはかつてバイオリンを弾いていたことを打ち明けましたが、コンサートの途中でみゆきは突然席を立ち、涙を流しながら悟に「ごめんなさい」と告げると会場から去っていきました。それから2週間、みゆきは「ピアノ」に姿を現しませんでした。
アナログのネタバレあらすじ:転
再び大阪に出張していた悟は玲子が危篤との知らせを聞き、急いで東京に戻りましたが玲子の死に目には間に合いませんでした。玲子の通夜は木曜日だったので、悟はみゆきに会えませんでした。
翌週の木曜日、悟とみゆきは「ピアノ」で会いました。みゆきは先日のクラシックコンサートを途中退席したことを謝罪し、悟を夜の海へ誘いました。みゆきは夜の海は昼の美しさがわかるから好きだというのです。玲子との思い出を振り返りながら涙ぐむ悟をみゆきは優しく抱きしめました。
その後も悟とみゆきは毎週木曜日に「ピアノ」で会い続けていました。秋になり、みゆきは悟に自分のお気に入りの場所である小さな教会を案内されました。みゆきはクリスマスの時期にまた来たいと言いました。
これまで悟とみゆきは夜に会っていたのですが、この木曜日は休日だったので初めて昼間に会いに行きました。二人は海に行き、そこで落ちていた凧を拾って遊びました。悟とみゆきは凧の糸で糸電話を作り、悟は糸電話を通じてみゆきに告白しました。みゆきも何かを告げようとしましたが、その声は波の音にかき消されてしまい、何を話していたのかはわかりませんでした。
みゆきへのプロポーズを決意した悟は高木と山下の協力を得て婚約指輪を購入しました。次の木曜日、悟は指輪を持って「ピアノ」へと向かいました。しかし、みゆきはその日は急用で早めに帰宅せねばならず、悟は来週ちゃんと話したいことがあると告げました。みゆきも悟に話があると返しました。
翌週の木曜日。悟は指輪を持って「ピアノ」に行きましたが、みゆきはとうとう姿を表しませんでした。さらに次の木曜、その次の木曜と1ヶ月以上になってもみゆきは現れず、フラれてしまったのかと思った悟は「ピアノ」に行くことをやめました。ちょうどこの時、悟は大阪支社に1、2年常駐してくれないかと頼まれ、迷いながらも引き受けることにしました。
1年後。悟はみゆきへの思いを断ち切るかのように大阪で働き続けていました。ある日、わざわざ大阪に来てくれた高木と山下が悟のもとを訪れ、どうしても話したいことがあると切り出しました―――。
―――ラジオ局で働く山下の妻・香織は局で要らなくなった大量のCDを持ち帰りました。その中の1枚のジャケットに何とみゆきと酷似した女性がいることを知った山下はすぐさま高木に連絡し、香織の仕事のツテで香津美と連絡を取り、これまで悟が知る由もなかったみゆきの過去を知ることとなったのです。
実は“美春みゆき”は本名ではなく、彼女の正体はかつて数々の国際コンクールを総なめにした経歴のある天才バイオリニストの古田奈緒美だったのです。奈緒美は20歳の時に留学先で知り合ったドイツ人ピアニストのミハエル・チューリングと結婚し、ナオミ・チューリングの名義でヨーロッパで活動していたのですが、ミハエルの死を機に日本に帰国し、音楽業界から引退していたのです。その後、奈緒美は自らの経歴を隠すために“美春みゆき”という偽名を名乗り、知り合いの輸入商社で働くようになったのです―――。
―――高木と山下は続けて、みゆきがあの日「ピアノ」に行けなかった理由を明かしました。今から1年前のあの木曜日、みゆきはタクシーで「ピアノ」に向かう途中で交通事故に遭い、意識不明の重体となっていたのです。
強い衝撃を受けた悟は高木と山下のツテで香津美に会いに行きました。みゆきは今や意識こそあるものの、脳障害と下半身麻痺により意思の疎通ができない状態であることを告げられました。悟は病床のみゆきと対面を果たしました。しかし、みゆきは悟の呼びかけに反応することはありませんでした。
アナログの結末
悟は東京に戻ったついでに久しぶりに「ピアノ」に立ち寄りました。そこに香津美が現れ、みゆきの部屋から見つけたという日記を見せてきました。悟は「読んだら忘れる」との条件で日記に目を通しました―――。
―――ヨーロッパから帰国したみゆきはなかなか日本での暮らしに馴染めないでいたところ、ふと立ち寄った「ピアノ」を心から落ち着ける場所だと気に入ったのです。みゆきは「ピアノ」を手がけ、自分の過去に無理に触れないでくれていた悟にいつしか心を惹かれるようになっていたのです。
玲子の通夜の時、みゆきは高木から玲子の訃報を知らされていたのです。そして翌週の海に行ったあの時、みゆきが糸電話越しに話したメッセージは「私、悟さんと生きていきたい」でした。さらに日記には、みゆきはいつか悟に聴かせるために久しぶりにバイオリンを手にしたことが綴られていました―――。
―――香津美はみゆきが事故の直前に携帯電話を買っていたことを明かしました。数日後、悟は再び香津美のもとを訪れ、介護の勉強をするからみゆきの傍にいさせてほしいと頭を下げました。香津美はこれは自分たち家族にとって一生続くことだと断ろうとしましたが、悟の決意は変わりませんでした。
悟は建築事務所を辞めて独立し、みゆきの家の近くの海の見える場所に自らの事務所を構えました。悟は今まで避けてきたデジタルな仕事・・・リモート通話や3DCGを駆使したデザインなどにも挑戦し、かつての上司だった岩本の力も借りて仕事も軌道に乗り始めました。
悟は毎日仕事を終えるとみゆきの家に行き、彼女を車椅子に乗せて海辺を散歩するのが日課となりました。そしてクリスマスの日、悟はみゆきをあの小さな教会に連れ出し、未だに無反応のままのみゆきにプロポーズしました。
1年後。悟はみゆきを連れていつものように海辺を散歩していました。その時、動かないはずのみゆきの手が悟の手に触れました。悟はみゆきが反応を示したことに驚くと、みゆきは「今日、木曜・・・」と呟きました。悟はこれからずっと木曜日だと言いながら涙を流し、みゆきはそっと悟の涙を拭いました。悟の脳裏には、みゆきがステージの上で悟のためにバイオリンを弾いている光景が浮かび上がっていました。悟は「帰ろうか」とみゆきと共に帰路につきました。
以上、映画「アナログ」のあらすじと結末でした。
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