きらきら眼鏡の紹介:2018年日本映画。『津軽百年食堂』『虹の岬の喫茶店』などの原作者である森沢明夫の同名小説を『つむぐもの』などの犬童一利監督が映画化したヒューマンドラマです。千葉県船橋市を舞台に、恋人を亡くした心の傷を背負い続ける男と恋人が余命宣告を受けた女が1冊の本を介して知り合ったところから始まる、愛するものの死と残されたものの再生を描いたストーリーです。
監督:犬童一利 出演者:金井浩人(立花明海)、池脇千鶴(大滝あかね)、安藤政信(木場裕二)、古畑星夏(松原弥生)、杉野遥亮(小山田孝之)、片山萌美(秋野正枝)、志田彩良(未希)ほか
映画「きらきら眼鏡」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「きらきら眼鏡」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
きらきら眼鏡の予告編 動画
映画「きらきら眼鏡」解説
この解説記事には映画「きらきら眼鏡」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
きらきら眼鏡のネタバレあらすじ:起
千葉県船橋市の東葉高速鉄道・北習志野駅に勤務する25歳の鉄道員・立花明海(金井浩人)は、いつものように駅の仮眠室で目覚め、同僚と他愛ない話をしながら支度をし、いつものように駅ホームでの勤務に就き、いつものように同僚たちと食事をしながら他愛無い話に耳を傾けていました。
そんなある日、明海は古本屋に古本を買いに行くと、ワゴンセールの商品の中に「死を輝かせる生き方」なる本が置いてあるのに気付きました。仮眠の間を惜しんでの読書が趣味な明海は早速その本を買い、駅のロッカールームで読もうとすると、本の中には「京葉総業 庶務 大滝あかね」と記された名刺が挟まっているのを見つけました。名刺があったページには「自分の人生を愛せないと嘆くなら、愛せるように自分が生きるしかない。他に何ができる?」という一文に赤線が引いてありました。帰宅した明海は、大量の酒を飲みながら恋人・未希(志田彩良)からのメールを見返していました。最後にメールが送られてきたのは3年前の2014年8月31日、ちょうど明海の誕生日でした。
明海は名刺の連絡先にメールを入れ、大滝あかね(池脇千鶴)本人と喫茶店で直接対面することにしました。あかねは本を取り戻してくれたことに感謝の意を伝え、産業廃棄物処理場で働いていることを明かしました。あかねは通勤に北習志野の路線を使っており、明海を自分の職場に遊びにきてほしいと誘いました。あかねは雲ひとつない青空を見上げて「なんて綺麗」と感動し、「空しか見えないんですけど?」と首をかしげる明海に「夏の空って気持ち良くないですか? 私、大好きなんです」と語りました。明海とあかねは互いに赤線が引かれている一文に惹かれていましたが、明海はまだ自分の生き方を見つけられずにいました。
きらきら眼鏡のネタバレあらすじ:承
後日、明海はいつものように駅のホームで働いていたところ、出勤中のあかねと再会しました。あかねは満員のラッシュアワーも「エネルギーをもらえるから」と苦にしていませんでした。明海の同僚・松原弥生(古畑星夏)は落とし物をしたという乗客の対応をしており、それを見たあかねは「きっと大切なものなんだろう。見つかるといいな」と語りました。
その後、明海は先日の約束通りあかねの職場に招待されました。あかねは数多くのゴミが仕分けされている現場を案内し、「ゴミって人間が生きてる証だなあって。私ね、“きらきら眼鏡”をかけることにしているんです。見たもの全部を輝かせる眼鏡」と語ると、その場に落ちていた紐で指輪を作って見せました。あることで深く心に傷を負っていた明海は、純粋無垢で明るいあかねに少しずつ心を開いていきました。
そんなある夜、あかねと一緒にストリートライブを観に行った明海は、意を決して「昔、恋人が死んだんです」と打ち明けました。高校時代からの恋人だった未希はあの夏の日に海の事故で亡くなったのです。この日は明海の誕生日だったのですが未希は旅行に出かけており、拗ねた明海は未希のメールに返信しなかったのです。明海は「今は全然平気です。思い出すこともないです」と強がってみせました。別れ際、あかねは明海に何か言いたそうでしたが、結局言い出せませんでした。
弥生は先日の客に落とし物を処分したことを伝えると、客は突然「ゴミじゃない!」とキレて駅のホームで暴れ出しました。弥生は明海に助けてくれたお礼として食事に誘いますが、明海は「全然助けてないですよ」と断りました。その後、明海はあかねと一緒に浜辺へ行き、あかねは自分には木場裕二(安藤政信)という恋人がいることを明かしました。裕二は肺ガンで余命宣告を受けており、この日二人が見た曇り空はまるであかねの心境を物語っているかのようでした。
ある日、明海とあかねは古本屋に行きました。あかねはこの古本屋が自分と明海を引き合わせてくれたと感謝し、「古本って出会いだと思うの。誰かが読んでた大切なものが、また誰かの大切なものになったり」と語りました。その後、あかねの自宅に招かれた明海の元に地元の友人から同窓会の誘いの電話がありましたが、明海は乗り気ではありませんでした。未希が死んだあの日、未希は他の友だちと行動を共にしており、今でも地元には後ろめたい気持ちがあったのです。未希の死は吹っ切れたと強がる明海でしたが、彼の本心を察したあかねから「行ったらいいんじゃない? 時間って命と同じだから。もたもたしてると時間切れになっちゃうよ」と背中を押されて同窓会に行くことにしました。
しかし、盛り上がっていた友人たちは明海が来ると妙にしんみりとなり、会話もどうしても未希のことが話題になりました。女友達はあの日、未希と一緒に海に行ったことを今でも後悔していましたが、悪酔いして「人間いつ死ぬかわからない」と説教を始めた明海に女友達の一人が「なに被害者ぶってるの。未希が死んで悲しいのはあんただけじゃないよ。未希はあんたのことを愚痴ってた。だからあの日も海に行ったんだよ。あんたのせいなのよ!」と言い放ちました。
帰宅した明海は「俺が殺したっていうのか?」と深く落ち込んでいたところにあかねから電話がありました。あかねは明海が大量のやけ酒をあおっていることに気付き、夜空を見上げながら「私、雨の夜より月の明るい夜の方が寂しい感じがする。雨の夜だと、きっとみんなも寂しい思いをしていると思えるからかな。でも月の夜ってなんだか自分だけが取り残される気がして。でもいいの、寂しい時間も幸せを深くするための大切な時間だから」と語り、裕二が明海に会いたいと言っていることを伝えました。
きらきら眼鏡のネタバレあらすじ:転
明海はあかねと共に、船橋総合病院に入院中の裕二の見舞いに出向きました。37歳の裕二は余命1年を宣告されていましたが、それでも仕事に復帰したいと強く願っていました。裕二は明海があかねと仲良くしてもらっていることに感謝すると、先祖代々から受け継がれてきた“命のリレー”が三人を不思議な縁で引き合わせたことを語りました。あかねが買い物に行っている間、裕二は明海に「あかねは“感動の天才”だから」と評しましたが、明海はあかねの“きらきら眼鏡”が今にも壊れそうになっていることに気付いていると語りました。裕二は明海に「君はあかねに惚れてる?」と問いかけましたが、明海は「今は答えたくありません」と言葉を濁しました。
気丈に働くあかねに、同僚の秋野正枝(片山萌美)が明海に会ってみたいなと話しかけました。明海、あかね、正枝、明海の親友・小山田孝之(杉野遥亮)は砕氷船「しらせ」の入港イベントに出かけ、正枝は明海に「あかねに惚れてるの?」と尋ねてみますが明海は何も答えませんでした。一方の裕二は決して生きる望みを捨てずに治療に専念してきましたが、思ったよりもガンの進行は早く、医師からも既に手遅れだと宣告されてしまっていました。
ある日、列車が運転見合わせとなり、明海ら北習志野駅の駅員たちは客たちのクレームに対応していました。疲れた駅員たちは客の事情など自分たちに関係ないと本音を言いますが、明海は「自分は当事者じゃなかったから声を挙げなかった。そして自分が当事者になった時、誰も声を挙げなかった」とある詩の引用を語り、同僚は明海の様子にあまりにも抱え込み過ぎているのではないかと心配しました。
裕二の病状は悪化していき、それでも務めて明るく振舞おうとしたあかねに当たり散らしては「明海くんと行動すれば?」と吐き捨てました。その後、あかねに誘われて釣り堀に行った明海は、裕二や正枝ら周囲の声に「そんなにみんなが言うのなら、いっそのこと僕たち付き合っちゃいますか?」と打ち明け、その直後に「冗談です」と否定してみせました。
お盆休みの予定は何も決めていないという明海に、あかねは未希の墓参りに行くことを勧めました。
一緒に明海の故郷である小さな漁村を訪れたあかねは、朝市を楽しむなど一見楽しそうな表情でしたが、明海はどうしても未希との思い出が脳裏から離れませんでした。明海は墓参りは自分一人で行くと語り、「未希さんってどんな人だったの?」とのあかねの問いかけに答えませんでした。そんな明海は未希との思い出の神社で立ち尽くして涙を流し始め、あかねは「明海くん、ごめんね。こんなことすべきじゃなかったよね。私、明海くんを使って試してたの。大事な人を失っても時間が経てば乗り越えられるのかなって。最低な私、本当にごめん」と涙ながらに打ち明けました。明海は無言のまま、結局墓参りに行くことなくあかねを残して一人帰っていきました。
きらきら眼鏡の結末
船橋に戻った明海は弥生に飲みに誘われ、帰り際に衝動的に弥生の唇を奪いました。そして明海、明海の故郷の旅館に泊まったあかね、病院の裕二は同じ満月の夜空を見つめていました。
ある日、裕二は気丈に看病してくれるあかねに「別れよう。もう疲れたんだ」と切り出しました。それでも必死で明るく振舞おうとするあかねでしたが、もはやどうすることもできませんでした。
それぞれ重苦しい日々を過ごしていたある日、駅にまたもやあの客が落とし物を尋ねてきました。客の大切なものとは亡くなった母が絵を投稿した半年前の新聞であり、弥生は探し出すことを約束しました。明海は弥生に先日のことを詫びましたが、勤めて明るく振舞う弥生の姿に心を痛めました。その夜、一人でストリートライブを見ていた明海は電話で裕二に呼び出されました。
病室に入った明海に、裕二は「あかねは元気にしてる?」と尋ねました。あの日以来、明海はあかねと完全に交流が途絶えていました。裕二はあかねと別れたと告げると、自らの死期を悟って「明海くんにお願い事があって。あかねのことをよろしく頼む」と伝えました。明海は「何言ってるんですか。あかねさんのこと今まで縛り付けて、苦しめて、傷つけて捨てて後はよろしくなんて。あかねさんの気持ちは…。大事な人を失くすというのはどういう気持ちか考えたことあるのかよ!」と感情を露わにしました。想いを受け止めた裕二は「俺が死んだらいつまでもあかねの中で大事な人で在り続ける」と語った後、「いいよな、明海くんは生きてるから…。俺、死にたくねえよ…」と本音を打ち明けました。
裕二のあかねへの深い愛を感じ取った明海は未希を想って一人涙し、彼女からの最期のメールに「ありがとう」と返信しました。翌日、明海は久しぶりにあかねと会い、一緒に浜辺へ出かけました。あかねは明海に「どうやって生きていけばいいのかわからない」と本心を語り、明海が「じゃあどうするんですか?」と問うと、あかねは一人海へと入っていきました。明海は必死であかねを止めると、「裕二さんのところへ行こう。裕二さんはずっといますから」と優しく諭しました。明海は「海っていいですよね」と語りかけ、あかねを裕二の元へ向かわせました。あかねは泣きながら裕二の最期を看取りました。
秋になり、あかねは明海と共に公園を歩いていました。ここはあかねが初めて裕二とデートした思い出の場所でした。どこか寂しげなあかねの様子を明海が気にしていると、若いカップルがそばを通りがかりました。それぞれの亡き恋人と重ね合わせる二人。明海は「あかねさん、きらきら眼鏡かけてます?」と尋ねてみました。あかめの笑顔に安心した明海はここで彼女と別れて帰路につき、ふと空を見上げて思いを馳せました。空は初めてあかねと歩いた時のように雲ひとつない快晴でした。
以上、映画「きらきら眼鏡」のあらすじと結末でした。
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