二重のまち/交代地のうたを編むの紹介:2019年日本映画。小森はるかと瀬尾夏美は東日本大震災のボランティアをきっかけに岩手県に引っ越して、人々の記憶や記録を受け渡す活動を始めた。2018年、震災のことやかつての町のことが話されることも減った陸前高田市で、15日間4人の若い旅行者が人々に話を聴き、彼らの話を語り直し、さらに、思い出の多い「下の町」の上に、かさ上げ工事で「上の町」ができた2031年の未来の人々を、瀬尾が描いた物語である「二重のまち」を朗読するというワークショップが行われた。そのワークショップから生まれたこのドキュメンタリー映画では、人々と会い、『二重のまち』の各章に関係する場所を歩き、人々の経験を継承する営みに参加し、語り合う4人の若者の姿が映し出される。
監督:小森はるか、瀬尾夏美 出演者:古田春花、米川幸リオン、坂井遥香、三浦碧至、ほか
映画「二重のまち/交代地のうたを編む」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「二重のまち/交代地のうたを編む」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
二重のまち/交代地のうたを編むの予告編 動画
映画「二重のまち/交代地のうたを編む」解説
この解説記事には映画「二重のまち/交代地のうたを編む」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
二重のまち/交代地のうたを編むのネタバレあらすじ:起
2031年春。
ワークショップの4人の参加者の一人である古田春花がバスに乗っている。陸前高田には2回来たことがあった。1度目は幼児の時で記憶は曖昧だが、楽しい体験であったことだけが思い出される。2回目は震災後の小学生の時、がれきの多い町を見た。
そして今、古田春花はかさ上げ工事の済んだ町にやってきた。一つ年上の二人の女子高校生と普通に話をし、公園で遊び、彼女たちの話したことを他の参加者に物語る。あの日、一人は学校を休んでいて、一人は学校で地震を体験した。近しい人が死んだり家を失ったりという体験はしていない二人だった。高校を出て町を出るが、いつか戻ってきたいと言う。
古田春花は「二重のまち」春の章を朗読する。上の町に住む親子。下の町の懐かしい思い出を話す父。父は息子を公園の石碑の裏の入り口から下の町へと連れていく…。
二重のまち/交代地のうたを編むのネタバレあらすじ:承
2031年夏。
流木の長い枝を持って海沿いを歩いている三浦碧至。大地震の時に山形県の中学校を卒業しようとしていた彼は、買ってもらうはずの携帯電話の入荷が震災のせいで遅れたことを覚えていた。
彼は、再建した自宅の敷地にそれまで住んでいた仮設住宅を移築した一家を訪れ、夕飯におじゃましながら話を聴く。二人の息子のうち弟が彼と同い年だった。卒業式の練習等で帰宅が遅くなったせいで、生徒たちは新築の体育館で寒さをこらえてあの日の夜を過ごしたことが語られる。たった15年間過ごした場所だが、故郷が消えてしまったことを嘆く。
坂井遥香が訪れた家。幼い息子のお母さんは読書家だったが、震災でフィクションが読めなくなったという体験を話す。ご近所はどこも花壇を花できれいに飾っていたが、母を亡くしたため、彼女は花を枯らしてしまったと言う。
米川幸リオンは雨の中、元消防団員の墓参りに付き合い、続いて消防団では恒例だったというホルモン焼を味わう。津波で家族を亡くした、今は亡くなっている元消防団長についての思い出話。彼が自殺するのではと心配したと言う。タバコを吸う量が増えた団長の目に、被災地支援で届けられたタバコの箱が触れないようにした。
米川幸リオンが「二重のまち」夏の章を朗読する。男がかつての下の町の、にぎやかだった夏の祭りの山車について回想する。彼はかさ上げの後、上の町でなく下の町に残ることを選んだ。今でも上の町の祭りの音だけは聞こえ、上の町の人々の新しい営みを喜ぶ。
二重のまち/交代地のうたを編むのネタバレあらすじ:転
2031年秋。
古田春花は多数のプラスチック容器に次々とお弁当を盛りつける手伝いをしている。このお店の女性も津波で家族を亡くしている。
坂井遥香が「二重のまち」秋の章を読む。祖父母の家に行き、祖父がする海や山の不思議な話や、祖母の歌う歌を聴くのが好きな孫。孫はいつか祖父母のことばを語り継ごうと思う。
二重のまち/交代地のうたを編むの結末
2031年冬。
三浦碧至が自動車に同乗し、元消防団員が消防団員の慰霊碑を訪れるのに付き合う。
三浦は、息子を亡くした父親と話をした経験を踏まえて、前置きの話をしてから、「二重のまち」冬の章を朗読する。上の町に子や孫と住んでいる父親は、亡くした息子を思ってかさ上げした土地の端に行って海を見る。
三浦は戸外の公園で老人たちを前に朗読をしている。他のワークショップの参加者も聴いている。町に夕方の音楽が流れるとき、朗読もまた夕方のチャイムが鳴る場面で結ばれる。
ワークショップを終えて4人は白い部屋で語り合う。人の話を受け取ることの難しさと、それでも話を伝えたいということが話し合われる。
彼女の住む大阪に帰っていた坂井遥香が電車に乗っている。やがて電車を降りた坂井は川べりの道を歩いていくのだった。
以上、映画「二重のまち/交代地のうたを編む」のあらすじと結末でした。
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