ミッドナイトスワンの紹介:2020年日本映画。『全裸監督』『身体を売ったらサヨウナラ』などの内田英二が企画・原作・脚本・監督を手がけ、約5年間に渡って練り上げた構想を映画化したヒューマンドラマです。ショーパブにつとめる一人のトランスジェンダー(体は男性、性自認は女性)と親に見捨てられたバレリーナ志望の少女の心の交流を描き、難役を演じ切った主演の草彅剛は日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞、作品自体も日本アカデミー賞の最優秀作品賞に輝くなど数多くの映画賞を受賞しています。
監督:内田英二 出演者:草彅剛(凪沙/武田健二)、服部樹咲(桜田一果)、上野鈴華(桑田りん)、水川あさみ(桜田早織)、根岸季衣(武田和子)、田中俊介(瑞貴/野上剣太郎)、吉村界人(キャンディ)、真田怜臣(アキナ)、佐藤江梨子(桑田真祐美)、平山祐介(桑田正二)、田口トモロヲ(洋子ママ)、真飛聖(片平実花)ほか
映画「ミッドナイトスワン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ミッドナイトスワン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ミッドナイトスワンの予告編 動画
映画「ミッドナイトスワン」解説
この解説記事には映画「ミッドナイトスワン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ミッドナイトスワンのネタバレあらすじ:起
新宿の片隅にあるニューハーフショークラブ「スイートピー」。凪沙(草彅剛)は楽屋でメイクを施し、真っ白な白鳥のチュチュに身を包むと同僚たちと共に夜のステージへと上がっていきました。
もうすぐ40歳になろうとしている凪沙は、身体は男性、性自認は女性のトランスジェンダーです。出生名・武田健二として生まれ育った凪沙は30代に入ってから自分は“女”として生きていこうと決意していましたが、そのことは故郷・広島に住む母・和子(根岸季衣)に打ち明けられないでいました。
ある日、凪沙の元に和子から電話が掛かってきました。凪沙はいつものように“男”の音色で応対しましたが、凪沙の従姉妹(和子の妹の娘)・早織(水川あさみ)が娘を育児放棄しているということで児童相談所の指導が入り、一時的に“叔父”である凪沙に娘を預かってほしいと告げられました。凪沙は内心嫌がりながらも、養育費が出るということで渋々引き受けることにしました。
凪沙は待ち合わせ場所の新宿駅に向かうと、そこでは早織の中学生になる娘・桜田一果(服部樹咲)が無表情で待っていました。一果は凪沙が女性の恰好をしていることに困惑しましたが、それでも凪沙は何とか一果とコミュニケーションを取ろうと試みました。ところが、凪沙は一果が自分が“男”だった頃の写真を持っていることに気付き、取り上げて破り捨てると、実家にこのことをバラしたら殺すと冷たく言い放ちました。
その日から凪沙と一果の奇妙な同居生活が始まりましたが、子供が嫌いな凪沙と深く心を閉ざしたままの一果は決して打ち解け合おうとはしませんでした。
ミッドナイトスワンのネタバレあらすじ:承
一果の母・早織は元暴走族で、19歳の時に一果を出産し、キャバクラ嬢として働きながらシングルマザーとして一果を育てていました。しかし、沙織はいつしかネグレクトに陥り、家にはろくに帰らず一果を虐待するようになっていきました。和子ら親戚はそんな一果を見かね、彼女を早織から引き離すと凪沙の元に預けることにしたのです。
一果は凪沙に連れられ、転校先の学校へ通い始めました。しかし、同級生たちは凪沙の容姿をバカにし、ブチ切れた一果は悪口を言った男子生徒に椅子を投げつけました。担任は一果に何かあったのかと尋ねるも彼女はまったく答えず、凪沙に電話をかけるも繋がらず、仕方なく凪沙宛ての手紙を一果に託すことにしました。
一果は下校途中、たまたま近くのバレエ教室に通う少女たちとすれ違いました。少女たちに興味を持った一果は導かれるかのようにバレエ教室に向かい、そこで少女たちが可憐に踊る姿を見て心を奪われました。バレエ講師の片平実花(真飛聖)は一果に気付き、彼女に入会案内を渡そうとしましたが、一果は慌ててその場から逃げ出してしまいました。帰宅した一果は凪沙から学校でトラブルを起こしたことを責められ、二度と迷惑をかけないでと告げられました。
数日後、一果はバレエ教室の体験入学を受ける決心をしました。しかし、レッスンを受けるのには金がかかり、衣装も靴も持っていませんでした。そんな時、一果はバレエ教室に通う同級生の桑田りん(上野鈴華)に声を掛けられ、りんは月謝を払えないという一果のために自分の使い古しの衣装と靴を分け与えてくれました。更にはりんは一果に秋葉原での怪しげなバイトまで紹介してくれ、何とか月謝を払えるだけの稼ぎを得た一果はバレエ教室に通い始めました。
ミッドナイトスワンのネタバレあらすじ:転
一果はバレエに生き甲斐を見出し、次第にその素質を実花に認められるようになりました。一果はりんに心を開き、二人は友人となっていきましたが、りんは才能を開花させていく一果に嫉妬心を覚えるようになっていきました。元々はかつて自身もバレリーナだった母・真祐美(佐藤江梨子)に押し付けられる形でバレエを始めたりんでしたが、バレエに賭ける想いは一果と同じだったのです。
一果は凪沙には内緒でバレエを続けていたのですが、ある時バレエ教室で発表会が開かれることになり、一果は高額な参加費を工面するためいかがわしいバイトに手を出してしまいました。一果は警察に保護され、凪沙は初めて一果がバレエを習っていることを知りました。凪沙は一果を厳しく問い質そうとし、一果の才能を高く評価する実花の声にも耳を傾けようとはしませんでした。
そんな時、一果はその場から走り去り、自傷癖持ちの一果は思わず腕を噛んでしまいました。それを目の当たりにした凪沙は一果もまた人には言えぬ深い悩みや生きづらさを抱えていることに気付き、このことがきっかけで凪沙と一果は少しずつ心を通わせ合うようになっていきました。
凪沙は自分の生きている証を一果に伝えようと、彼女を「スイートピー」に連れて行きました。いった。凪沙は白鳥の衣装をまとい、一果に飾らないありのままの姿を見せましたが、泥酔した客が同僚たちに絡んできたことをきっかけに店内は乱闘騒ぎとなってしまいました。その時、一果はステージに駆け上がり、美しい舞を踊り始めました。これにはその場にいた誰もが心を奪われ、一果に見とれていました。
騒動から数ヶ月後。りんは足の怪我が元でバレエ教室を辞めていました。凪沙は一果にバレエを続けさせるため安定した職に就くことを決意、長く伸ばしていた髪を切り落とし“男”として新たな仕事に就きました。凪沙にとってはもはや一果はかけがえのない存在となっており、そのためには性転換手術のために貯めていた貯金をも切り崩すことも厭わなかったのです。しかし、一果は凪沙が自分のせいで本来の自分を押し殺しているのだと思い込み、深く悩みました。
そんな時、早織が一果を連れ戻すために上京してきました。元の地獄に戻りたくない一果は必死に逃げ出し、凪沙のアパートに閉じ籠りました。この日は早織は一旦一果の引き戻しを断念して帰っていきました。
翌日は一果がバレエコンテストに参加する日でした。不安のあまり一人トイレで腕を噛む一果にりんから連絡があり、応援していると伝えてきました。そして迎えた本番、ステージで軽やかに踊る一果に合わせるかのように、りんは別のビルの屋上で踊っていました。そして踊り終えたりんはそのまま屋上から飛び降り、自ら命を絶ちました。
りんの死を知らぬ一果の前に早織が現れ、彼女を連れ去ろうとしました。“女”の姿に戻っていた凪沙は動揺のあまりその場から逃げ出してしまい、一果はそのまま広島へと連れて行かれました。
ミッドナイトスワンの結末
それから1年後。一果は早織に厳しく監視され、凪沙への一切の連絡とバレエを禁じられていました。再び無気力な日々に戻った一果はある日突然早織の男に連れられ、和子の家に連れて行かれました。そこにいたのは全てを知って泣き崩れる和子、そしてタイで性転換手術を受けて戸籍上正式に“女”となった凪沙の姿がありました。凪沙は自分が女になったことでようやく一果の“母”になれると言い出し、激昂した早織は凪沙に掴みかかって家から追い出してしまいました。
その後、早織は凪沙に負けたくない一心で一果に再びバレエを習わせることを許可しました。一果ははるばる広島まで来てくれた実花の指導のもと再び踊り始めました。
やがて一果は中学校を卒業しました。一果は卒業したら凪沙に会いに行ってもいいと早織から許可を得ており、喜びを胸に荷物をまとめて東京へと向かいました。一果は実花の計らいもあってイギリスのバレエ学校に奨学金付きで留学することも決まっていました。
りんの墓参りをした一果は凪沙の行方を探しましたが、既に凪沙は一果と過ごした思い出のアパートを引き払っており、消息もわからない状態でした。それでも一果は必死で凪沙を探し、凪沙のかつての同僚だった瑞貴(田中俊介)に居場所を教えてもらいましたが、再会した凪沙はこれまでの無理が祟って体調を崩しており、かなり衰弱しきっていました。一果は献身的に凪沙に寄り添い、身の回りの世話をしました。
ある日、自らの命がもう長くないことを悟った凪沙は一果に海へ行きたいと言い出し、一果は願い通りに凪沙を静かな海へと連れて行きました。凪沙は一果に踊ってほしいと頼み、美しい踊りを魅せる一果を見て「綺麗」と微笑みました。一果が踊り終えた時、凪沙は既に息を引き取っていました。
一果は天国で凪沙とりんが待っていてくれていると思い、迷わず海へと入り始めました。一果が肩まで水に浸かったその時、彼女の背後から1羽の白鳥が飛び立ち、それは太陽に向かって飛んでいき、やがて見えなくなっていきました。
以上、映画「ミッドナイトスワン」のあらすじと結末でした。
「ミッドナイトスワン」感想・レビュー
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一果は死なないですよね。
死んだら外国のコンクールに出ていないでしょ。 -
見かけで人を判断する、おぞましさ、心の狭さを言いたかったのだろうか。自分の機嫌で人に優しくしたり、暴言を吐いたりする大人になりたくない。なにがあろうとも、自分を大切にする美しい心を忘れず生きていきたいと思った。
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様々な社会問題を背景に、
それらを背負った人々の強い生き方と、
交錯する様子が描いてある。見終わった後、また見返したい、自分と
向き合ってみたいと思える作品でした。
オススメ作品! -
草なぎつよしの演技に引きずりこまれました
何気なく 見てただけなのに
最後は涙を流してました
なるほど…全員死ぬ、悲劇なのですね。
しかしバレエの才能ある人が死に追いやられるのは…もったいない。