エゴイストの紹介:2022年日本映画。2020年に亡くなったエッセイスト・高山真の自伝的小説『エゴイスト』が映画化された。監督は『ハナレイ・ベイ』『Pure Japanese』の松永大司。また映画やテレビドラマの脚本だけでなく小説やエッセイなどで活躍する狗飼恭子も脚本をつとめた。主人公・雑誌編集者の浩輔に2021年『孤狼の血 LEVEL2』で第45回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞した鈴木亮平。その若き恋人・龍太を『THE LEGEND&BUTTERFLY』(2023年)で明智光秀役に抜擢された宮沢氷魚が繊細に演じている。
監督・脚本: 松永大司 脚本:狗飼恭子 出演:鈴木亮平(斉藤浩輔)、宮沢氷魚(中村龍太)、阿川佐和子(中村妙子)、中村優子(斉藤しず子)、和田庵(中学時代の浩輔)、ドリアン・ロロブリジータ(浩輔の友人)、柄本明(斉藤義夫)ほか
映画「エゴイスト」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「エゴイスト」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「エゴイスト」解説
この解説記事には映画「エゴイスト」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
エゴイストのネタバレあらすじ:起
女性雑誌の編集者である斉藤浩輔(鈴木亮平)は仕事も乗りに乗っている30代。ゲイである彼は同じゲイの仲間たちと居酒屋に集まっては飲んで盛り上がります。少し緩んできた身体をからかわれた浩輔は、仲間にすすめられてパーソナルトレーナーに連絡を取ってもらいます。
母の命日に田舎の実家に帰った浩輔は、ブランド服に身を包み、かつて自分をいじめていた同級生に見せつけるようにして歩きます。そんな浩輔も、ひとり暮らしの父にはそろそろいい人はいないのか?と言われてしまい適当にごまかします。
ある雨の日、時間ギリギリにやってきたトレーナーの中村龍太(宮沢氷魚)は美しい青年でした。真面目な仕事ぶりの龍太はちょっとドジなところもあり、浩輔は好感を持ちます。母と二人暮らしの龍太は独学でトレーナーの勉強をしており、いまはまだバイトしないと食べていけないと言います。
別の日。トレーニング帰り、浩輔は龍太に寿司折を手渡します。それは以前、龍太が買おうとしてあきらめていたもので、浩輔はお母さんへのお土産だといって無理やり押し付けます。しばらくして龍太はいきなり浩輔にキスし、その理由はお礼ではなく、浩輔が魅力的だからだと言います。
ふたりは浩輔の部屋にやってくると服を脱ぎ熱いキスを交わします。浩輔のベッドになだれ込むと龍太主導で愛し合い、ふたりでシャワーを浴びたあと、龍太は伏せられていた浩輔の母親の写真を見つけます。中学生のときに母を亡くした浩輔は、親孝行している龍太をうらやましがります。一週間後の約束を確認して龍太は帰っていき、ふたりはうれしそうに手を振り合います。
浩輔はトレーニングに励み、彼の部屋で愛し合い、帰りにお土産を渡すのがうれしい習慣になっていました。ゲイの仲間にもうれしそうに報告し、路上ではひと目もはばからず手をつなごうとして年下の龍太にたしなめられる始末です。
この日も帰りにお土産を渡そうとすると突然「もう終わりにしたいんです」と龍太が言ってきました。嫌いになったのでないならなんで?とたずねる浩輔に龍太は思いつめた顔で、高校中退してからずっと〝売り〟をやっていて、割り切ってうまくやれていたのに浩輔に出会ってから辛くなってしまったと打ち明けます。この仕事でしか母親を養うことができないから、と言って龍太は去っていきます。浩輔は龍太に電話をかけ続けますが、龍太は出てくれませんでした。
エゴイストのネタバレあらすじ:承
それから浩輔は〝売り〟のサイトを調べ始めます。来る日も来る日も裸の男性たちの写真を見続け、ついに龍太だと確信の持てる画像を見つけました。
一方、龍太は浩輔からの電話を無視し、割り切って「仕事」をし続けています。
ある日、龍太が「仕事」のためホテルの一室に向かうと、そこには客として浩輔が立っていました。浩輔は龍太に思いを伝え、彼ら母子を支えるため月10万円で専属になってほしいと提案します。龍太は号泣しその提案を受け入れるのでした。
龍太が廃品回収の仕事を始めたため浩輔はひとりでトレーニングに励むことに。疲れた身体を浩輔の部屋で休めていた龍太は、夜中にも厨房の洗い場での仕事をいれていました。浩輔は心配しますが、龍太は母親に本当の仕事について話せることがうれしいと笑います。そんな龍太に浩輔は、もう着なくなったジャケットを一着プレゼントしました。
ある日、いつになく地味な服装の浩輔は龍太とともに彼のアパートを訪れます。龍太の母・妙子に招待されたからで、彼女は手作り料理で浩輔をもてなしてくれました。あたたかな母親の味に浩輔は安らぎをおぼえ、三人で写真を撮るなど楽しい時間を過ごしました。そして帰宅した浩輔は、お土産に渡された手料理のタッパーウェアを冷凍庫にしまうのでした。
昼夜仕事に明け暮れる龍太は、浩輔の部屋のソファで眠り込んでいます。彼を気づかい、その荒れた手にハンドクリームを塗る浩輔。帰り際、浩輔から封筒に入った現金を受け取ると龍太は申し訳なさそうに必ず返すと言いますが、浩輔は笑って「いいから」と送り出します。しかし外に出た龍太には母が倒れたとのしらせが…。
妙子はヘルニアが悪化し手術することに。浩輔は病院にいる龍太のもとへ駆けつけ、彼を励まします。自分の母親に何もできなかったと感じていた浩輔は後日、不安そうな龍太に「これ使って」とお金を渡します。またそれとは別に、退院後の通院を考えて中古車を買うと提案します。さすがにそれは申し訳ないと龍太は言いますが、ふたりで頑張ろうと言って龍太は話を進めます。
ある日、ふたりは珍しく部屋でシャンパンを飲みくつろいでいます。浩輔は亡くなった母の話をし、龍太は天国でいつか会えるかもしれないとほほ笑みます。龍太は浩輔を動画に撮ったりしながら幸せな時間を過ごし、やがて眠ってしまった龍太のことを浩輔は愛おしそうに撫でていました。
翌朝は龍太がコーヒーを淹れ、もうひとつイスを置いてここでコーヒーを飲みたいと話します。そして納車されたら海へドライブに行こうと提案するのでした。
エゴイストのネタバレあらすじ:転
日曜日の朝、妙子はお弁当を作りながら、起きてこない龍太に声を掛けます。そのころ浩輔は納車された軽自動車に乗り込み、ウキウキしながら龍太を待っています。中々来ないので龍太のスマホに電話をかけると、出たのは妙子でした。電話口の彼女は龍太が死んでしまったと言っていて浩輔は混乱します。
龍太の通夜会場にやってきた浩輔は、焼香後泣き崩れ、通夜ぶるまいの部屋で休んでいました。参列客が帰ったあと、やってきた妙子に浩輔は謝ります。あなたに謝られたら龍太が一番悲しむと妙子は言い、かつて龍太もふたりの関係を悟った妙子に「ごめんなさい」と謝ったといいます。でも妙子は、大事なひとができたのならそれが一番いいと伝え、龍太も「浩輔さんに救われたんだ」と話していた、と改めて浩輔に礼を言うのでした。
命日でもないのに実家に帰った浩輔は、父のすすめでその晩は泊まることに。父の作った晩ごはんをふたりで食べながら、浩輔は母が病気になって大変だったかとたずねます。大変だと思ったことはないが、一度だけ泣きながら「別れてほしい」と言われたことがあるという父。「俺の事嫌いだったら別れてやるけどそうじゃないならそんな事二度と言うな」と答え、そして「出会っちゃったんだからしょうがない。このままやっていくしかないだろ」とふたりしてボロボロ泣いたと父は話します。
久しぶりに妙子のアパートをたずねた浩輔。玄関の花鉢は枯れ、部屋の照明は切れていました。龍太の遺影に手を合わせて線香をあげた浩輔は、妙子に出されたお茶を飲みながら龍太にしていたように妙子の生活も援助したいと申し出ます。少し驚いた妙子はその提案を断りますが、なかったことにできないという浩輔の思いを汲んで最終的にそれを受け入れます。そしてお互い、もう「ごめんなさい」は言わないようにしましょうと約束します。
エゴイストの結末
それから浩輔は妙子のもとを訪れては身の回りの世話をし、彼女のすすめで龍太の部屋に泊まるまでの間柄になっていました。浩輔は減り続ける銀行口座の残高を気にし、あるとき妙子に同居を持ち掛けます。しかし、そんなことをしたらバチがあたる、私の我儘を聞いてほしい、と断られてしまいます。
次の訪問時、迷った末に高級梨を買ってアパートに行くと返答がありません。近所の人に一週間前位から入院していると聞き、浩輔は病院に駆けつけます。同室の女性に「息子さん?」と聞かれ否定するふたり。説明を求める浩輔を外に連れ出した妙子は、ステージ4の膵臓癌であることを伝えます。もう長くないという妙子に浩輔は「ごめんなさい」と謝り妙子を困惑させます。
自分が龍太をたくさん働かせ、そのせいで妙子の癌の発見が遅れたと自分を責める浩輔に妙子は「あなた、何も謝る必要ない」と諭します。「あなた、龍太も、私のことも愛してくれたでしょ?」そういう妙子に答えられない浩輔。かろうじて「僕は、愛が何なのかよくわかんないです」と言うと「私たちが愛だと思っているんだから、それでいいんじゃない?」と逆になぐさめられてしまいます。
日に日に弱っていく妙子を見舞う浩輔。笑顔を作り病室に入ると同室の女性がまた「息子さん?」と聞いてきます。浩輔が否定しようとすると妙子が「そうなんですよ。自慢の息子なの」と答えます。浩輔は花を花瓶に入れるため洗面所に向かい、感情を抑えようと必死で化粧直しをしています。
病室に戻ると妙子が「天国では浩輔さんのお母さんが、龍太の面倒みてくれてるわね、きっと」と言い、一瞬ためらったのち浩輔も同意します。
帰宅した浩輔は、以前妙子から持たされた料理を冷凍庫から取り出し、あたためて食べています。
別の日。病室の妙子は酸素マスクをつけたまま眠っています。浩輔が帰ろうとしていると、目を開けた妙子が「まだ、帰らないで」と言い、浩輔は「はい」と答えるのでした。
以上、映画「エゴイスト」のあらすじと結末でした。
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