ミュジコフィリアの紹介:2021年日本映画。『神童』『マエストロ』を手掛け、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を2度にわたり受賞している漫画家さそうあきらの同名作品を脚本・大野裕之(『太秦ライムライト』)、監督・谷口正晃(『時をかける少女』2010年版)のコンビで映画化した青春群像劇です。京都の芸術大学を舞台に、主人公の学生が様々な出会いを経て自分なりの音楽を追究していく姿を描きます。タイトルの「ミュジコフィリア」とは「音楽に情熱を注ぐ者たち」を意味しています。
監督:谷口正晃 出演者:井之脇海(漆原朔)、松本穂香(浪花凪)、川添野愛(谷崎小夜)、阿部進之介(青田完一)、石丸幹二(貴志野龍)、濱田マリ(椋本美也子)、神野三鈴(漆原君江)、山崎育三郎(貴志野大成)ほか
映画「ミュジコフィリア」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ミュジコフィリア」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ミュジコフィリアの予告編 動画
映画「ミュジコフィリア」解説
この解説記事には映画「ミュジコフィリア」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ミュジコフィリアのネタバレあらすじ:起
漆原朔(井之脇海)は京都の京都文化芸術大学・美術学部に入学したばかりの新入生です。入学式の日、大学に向かっていた朔はふと「子供の頃から物の形や色が音として頭の中に響いていた。俺に押し寄せていた音の流れ、京都の町。大好きだった音。あの音が思い出せない…」と想いを馳せていました。
朔は入学式に遅刻してしまい、大学に着くと既に式は終わっていた後でした。朔はその場に居合わせた風変わりな3年生の青田完一(阿部進之介)に頼まれるがまま、大きな荷物を鴨川まで運ぶよう頼まれました。
青田はこの大学のサークル「現代音楽研究会」の一員で、これからサークルの顧問である椋本美也子先生(濱田マリ)やサークル仲間たちと共に「鴨川を楽器にした演奏会」を開こうとしていました。青田たちは両岸に弦を這わせてハープにしようと考えており、興味を示した朔も作業を手伝いました。
その際、朔は幼馴染の谷崎小夜(川添野愛)が向こう岸でバイオリンを弾いているを見つけました。朔は小夜にほのかな想いを寄せているのです。
その後、演奏にも参加することになった朔は小夜もサークルの一員であることを知り、自らもサークルに入会しようと思いつきましたが、このサークルの創始者にして部長である貴志野大成(山崎育三郎)の名前を聞くなり、入会を止めて帰ろうとしました。
その時、鴨川に風が吹き、両岸にかけた弦が音を奏でました。それを合図にサークルの面々はそれぞれ思い思いの楽器を奏で始め、朔もその演奏の輪に加わり、ピアノを弾きました。朔の演奏を聴いた椋本先生は彼に音楽の才能があると感づきました。
ミュジコフィリアのネタバレあらすじ:承
朔はピアノ教室を営む母・君江(神野三鈴)と二人暮らしです。かつてチェリストを目指し、音楽大学に入っていた君江は今は亡き世界的な音楽家で大学教授だった貴志野龍(石丸幹二)と出逢い、龍が妻子ある身でありながら関係を持ったのです。やがて龍の子を身籠った君江はチェリストの夢を諦めて朔を産みました。
朔は幼い時に君江と離れて父・龍の元に引き取られました。龍の正妻との子が3歳年上のあの大成だったのです。それからというもの、朔は腹違いの兄である大成と共に音楽の英才教育を受けたのですが、朔は龍から才能がないとみなされてしまい、結局は君江の元に戻ることとなりました。それ以来、朔は龍や大成に対して消えないわだかまりを抱いていました。
翌日、朔は青田から声楽科のソプラノ歌手をスカウトしてくるよう命じられました。仕方なく声楽科に向かった朔は、そこで浪花凪(松本穂香)という女性と出会いました。実は凪は昨日、鴨川で朔がピアノを弾くのをたまたま見ており、凪は朔と意気投合してサークルに加わることにしました。
やがて朔は凪は自分と同じように自然の音を理解する人物であることを知り、互いの感性が似ていることに気付きました。
朔はサークルに入ったことで、一度は音楽から離れていたはずが再び向き合うことになりました。君江はそんな朔に鍵を渡し、龍が「音楽の道に迷ったら、この鍵で引き出しを開けろ」と言っていたことを明かしました。
ミュジコフィリアのネタバレあらすじ:転
季節は5月になり、現代音楽研究会は演奏会を開くことになりました。朔は青田に連れられ、青田の馴染みの店でクリップや消しゴムなどの文房具を調達しました。青田はそれら文房具をグランドピアノの弦に乗せてみせると、奏でた音色はまるで太鼓のような音だったりチェンバロのような音だったりと様々な音色が流れました。
5月の演奏会は成功のうちに終わり、朔は椋本先生から「君には作曲家の血が流れてる。曲を書きなさい」と勧められました。音楽への道に進む決心をした朔は龍の鍵を手にし、家中にある引き出しの鍵を開けようとしましたがどれも合いませんでした。君江はこの鍵は貴志野の家の引き出しであることを告げました。
一方、大成は有名だった龍の子ということから、大学の中では将来を有望視されていました。しかし、大成は才能に伸び悩んでおり、このままでは父のコピーで終わってしまうという危機感を抱いていました。大成は朔の憧れの人である小夜と交際していましたが、ここ最近は喧嘩が絶えず、小夜は大成と別れることを考えていました。
朔は小夜から大成との関係について相談を受けました。小夜は大成と一緒にいると音楽の楽しさがわからなくなると感じており、朔は小夜を上手く慰めてあけられずに深く苦悩しました。朔は鍵を手に大成のもとへ向かいました。
かつて龍のもとで音楽の手ほどきを受けていた朔と大成。大成は龍の言うことを素直に聞いて譜面通りの演奏を心がけていましたが、譜面通りに演奏するのが苦手な朔は即興で演奏するスタイルへと転じていきました。朔が龍から音楽の才能がないとみなされたのは、音楽へのスタンスの違いからきたものでした。
朔は大成に鍵を渡し、この家のどこかに合う鍵穴があるはずだと告げました。実は大成も朔と同じ鍵を受け取っていたのですが、大成は自分の才能への自信から鍵を捨ててしまっていたのです。朔と大成はこの鍵に合う引き出しを見つけ、開けてみるとそこにはオープンリールが入っていました。
ミュジコフィリアの結末
季節は秋を迎えようとしていました。朔は大学祭で披露する曲の作曲に取り掛かっていましたが行き詰ってしまい、凪とも些細なことで喧嘩となってしまいました。時を同じくして、大成は大学退学の危機を迎えていました。大成が作曲したグランプリ受賞曲に盗作疑惑が発覚し、大成は龍の未発表曲の一部を使ったことを認めました。
朔は小夜から大成がいなくなったとの連絡を受けました。朔は幼い頃に大成とよく遊びに行った場所へ向かい、そこで大成の姿を見つけました。その後、朔と大成は龍が遺したオープンリールを再生してみました。
そこには朔と大成が幼い頃、いつもと同じように交わしていた会話が録音されていました。大成は二人の会話の抑揚こそが龍の代表作「命」のヒントとなっていることに気付きました。このことを知った朔は大成と感動を分かち合い、これまで折り合いの悪かった朔と大成はこのことがきっかけで仲直りしました。
朔と大成は二人で演奏していると、それを聴いていた凪はこの二人なら良い音楽が生まれそうだと太鼓判を押しました。凪は鴨川で歌ってくると告げてその場を後にしました。君江から音楽はひとりではできないものだと言われた朔はこれからもずっと凪と一緒に音楽を奏でたいと決心し、凪のいる鴨川へと向かいました。そして朔と凪は一緒に歌い始めました。
以上、映画「ミュジコフィリア」のあらすじと結末でした。
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