映画「マイスモールランド」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
マイスモールランドの紹介：2022年日本映画。国家を持たない民族・クルド人。難民申請をしても中々受け入れられない彼らにスポットをあてたのは、是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」の川和田恵真監督だ。自らもミックスルーツの彼女が主役のサーリャに選んだのは、ViViの専属モデルで5カ国のマルチルーツを持つ嵐莉菜。映画初出演、初主演とは思えない演技を披露している。また、彼女と心を通わせる少年に『MOTHER マザー』で多くの新人俳優賞を受賞した奥平大兼。サーリャの家族役として嵐の本当の父や妹弟もオーディションを経て出演している。
監督・脚本：川和田恵真 出演：嵐莉菜（チョーラク・サーリャ）、奥平大兼（崎山聡太）、アラシ・カーフィザデー（チョーラク・マズルム）、リリ・カーフィザデー（チョーラク・アーリン）、リオン・カーフィザデー（チョーラク・ロビン）、藤井隆（太田武）、池脇千鶴（崎山のり子）、韓英恵（小向悠子）、サヘル・ローズ（ロナヒ）、平泉成（山中誠）ほか
この解説記事には映画「マイスモールランド」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
とある公園でクルド人の結婚の儀式がおこなわれています。そこに参加していた17歳のサーリャは、「次はあなたの番ね」と言われ違和感をおぼえます。儀式で手のひらにつけた赤い塗料がなかなか落ちず、サーリャは気分が晴れません。
友だちにはドイツ人ということになっているサーリャ。成績は優秀で推薦も狙えますが、部活をやめてしまったことが残念だと面談で担任の先生に言われます。放課後、サーリャは自転車で埼玉の川口から川を渡り東京へ行き、そこのコンビニでアルバイトをしています。
店長に手のひらが赤いことを指摘されると、同じくバイトをしている少年・聡太がかばってくれました。勤務時間が終わっても働いている聡太に声をかけると、店長が身内だから仕方ないといいます。
1階がコインランドリーになっているアパートの自宅に戻ってきたサーリャ。そこでは数人のクルド人が洗濯していました。大家に声をかけられたサーリャは、洗濯機の使い方を彼らに注意してほしいと頼まれます。クルドの言葉と日本語の両方ができるサーリャは、周囲の人間からいろいろな雑事を頼まれているのでした。
部屋に入ると父と妹・弟が待っています。クルドの料理を作り、床に座って家族でいっしょに食べるのが習慣なのです。帰りが遅いと父が母国語でいうと、部活だったからとサーリャも母国語で答えます。すると日本語しか話せない妹が不快感を示す、それが最近の日常になっていました。
父は数人のクルド人といっしょに解体現場で働いています。サーリャは放課後、弟ロビンの通う小学校に向かい、担任の小向先生と話します。小学校の先生になりたいとサーリャが目標を語るとかつて担任だった小向は喜びますが、ロビンが全くしゃべらないと学校での様子を心配そうに伝えます。
ロビンは自分のことを＜宇宙人＞と言ったというのです。帰り道、合流した父はロビンに、「オレたちの国、ここにある」と胸をたたき、「いつでも、どこにでもある」と微笑むのでした。
ある日、サーリャたち家族の難民申請が不認定となり、在留カードが無効になってしまいます。仮放免の状態となり働くことを禁じられてしまいました。協力者である弁護士の山中に泣きつくと、とりあえずルールを守って今後のことを考えましょうという返事。自由に埼玉県を出ることすらできなくなってしまいました。
学校では、友だちのまなみは卒業後彼氏と同棲すると言い、詩織はサーリャに大学生になったらルームシェアしようと無邪気に話しかけます。複雑な気持ちでサーリャは県境を越えバイトに向かいます。
帰りに聡太と川原に行ったサーリャは、いままで誰にも言ったことのなかったクルドについて彼に話します。よく知らないながらも真剣に話しを聞いてくれた聡太との距離はあっという間に縮まります。
美大を目指す聡太と川原でアート作品をつくるサーリャ。突然の雨にサーリャの家に駆け込んだ聡太ですが、帰宅した父が驚いて「誰？」と声をあげてしまいます。事情を説明しいっしょにごはんを食べて聡太は帰りますが、クルド人の若者ウェラットとサーリャを結婚させたがっている父は彼のことをよく思わなかったようです。
大阪の大学のオープンキャンパスに行く聡太はサーリャを誘いますが彼女はそれを断ります。本当は埼玉を出てはいけないこと、小さい頃日本に逃げてきて、戻ればつかまってしまうことなどを話し、「しょうがない…」と言うと「しょうがなくない！」と聡太は怒ってくれました。
サーリャはクルド式の挨拶といって聡太と頬と頬を合わせます。＜こんにちは＞と＜さようなら＞の意味だといいますが、そのどちらなのかは教えてくれませんでした。ふたりは県境の橋の上で、そのプレートに赤い塗料を塗った自分たちの手型を押し付けます。そしてサーリャは「やっぱ大阪いっしょに行きたい」と言うのでした。
帰宅すると父が怒っていました。二度と聡太に会うなという父。サーリャは初めて反発し、クルド式の食事の作法も否定します。父に平手打ちされ、サーリャは部屋にこもってしまいました。
翌朝、学校へ行くためサーリャが外に出ると、彼女の自転車がなくなっていました。
ある日、不法就労がばれて父が収監されてしまいます。山中弁護士は、司法に正当性を訴えていくしかないといいますがそれでは時間がかかりすぎます。父は「ふたり（妹と弟）を頼む。クルドのみんなも。お前がしっかりしなさい」と言い、サーリャはうなずくしかありませんでした。
サーリャは弟を連れて聡太の家に遊びにいきます。聡太の母は、本当は普通の職業についてほしい、でも聡太が幸せになれればそれでいいと言います。ひょんなことから父親が収監されていることを話さなければならなくなり、サーリャはすべてを打ち明けます。戸惑いながらも食事をすすめ、またいつでも遊びに来て、と聡太の母は笑って言ってくれました。
帰宅するとロヒムが心配して来てくれました。彼女の夫も2年間収監されたままです。ロヒムは口止めされていたけど、父がサーリャを大学に行かせるために働いていたと話し、手紙を書いてあげてと言うのでした。
サーリャは不法就労だったコンビニをやめさせられることになりました。店長は同情しながらも、聡太ともう会わないでほしいと言ってきました。あいつの母親が心配して…と言われ、サーリャは無表情で店をあとにします。追いかけてきた聡太に「ごめん。大阪には行けない。行きたくなくなった」と言い放つサーリャ。
サーリャが山中弁護士と面会に行くと、父は本国に帰ることにすると言い出しました。勝手に連れてきて今度は置いていくの？と怒るサーリャ。
担任との面談で、サーリャは推薦が取り消しになったと言われます。在留資格がないと、一般入試を受けて合格しても通うことが許されないというのです。別の大学、別の道を目指して頑張ろうと言う担任に、サーリャは「もうがんばってます！」と気持ちをぶつけるのでした。
サーリャはその後、友だちの詩織が自分の代わりにその大学に推薦されることを知ります。その様子をみていたまなみはサーリャをパパ活に誘います。彼氏と別れたというまなみはどこか自暴自棄になっているようでした。
サーリャが帰宅すると大家が待っていて、家賃が二ヶ月払われていない、退居してもらうと言ってきました。サーリャは進学のために貯めていたバイト代を出しますがまだ足りません。クルド人の仲間、そして不本意ながらサーリャに思いを寄せているあのウェラットに借金をしてしのぎました。
その後、サーリャはひとりでパパ活をしてみました。相手の男は更にサービスを要求し、プラス3,000円で5分間のハグをすることに。しかし途中で耐えられなくなったサーリャはその場を飛び出してしまいます。
アパートに帰ると心配した聡太がたずねてきました。なにか役に立ちたいと封筒に入れたお金を持ってきた聡太。それを受け取らずサーリャは涙を流します。そんなとき、弟ロビンが帰ってきていないと妹が声を上げます。三人は手分けして弟ロビンの名前を呼びながら探し回ります。ようやく見つかった弟は、家族みんなの石を探して歩き回っていたといいます。
サーリャと妹、弟、そして聡太の4人で、毎年家族や仲間と来ていた川原に遊びにやってきました。サーリャが聡太に、父が何考えてるかわからないと言うと、聡太も母親がわからないと言います。サーリャは、聡太が幸せでいることが一番だって言ってたよと以前聞いたことを伝えます。そしてポツリと「うまくいかないね」
向かい合うふたり。サーリャはあの挨拶をして聡太から離れようとしますが、その手を聡太が引き寄せました。
サーリャが父の帰国を止めてほしいというと山中弁護士は、実は外国人だけど日本で生まれた子にビザがおりたことがある、と話し始めます。それには父親の帰国が条件だと知った父が、帰ることを決断したのだと。
面会に行くと父は、クルドの家にはオリーブの木があり、お母さんはそこで眠っていると言います。帰ったらあぶないと心配するサーリャに、お母さんのそばに行くんだ、と父。日本に来る前にそのオリーブの木をいっしょに植えたと話し、今何が思い浮かぶ？とサーリャにたずねます。
とっさに、家族4人で楽しく食べたラーメンだと答え、すする真似をする父と娘。面会終了時刻になり、父はサーリャの自転車は仕事現場にあると教えてくれました。そしてクルドの言葉で「＜あなたたちの未来に 光がありますように＞」と語りかけるのでした。
サーリャは夕暮れ時の川原で向こう岸を見つめています。
帰宅すると、妹と弟が床の上に大きなジオラマを作っていました。弟ロビンは例の拾ってきた石を並べ、「これがパパ、ママ、アーリン、サーリャ、そうた、ぼく」と説明します。
その夜、サーリャは髪を洗いながら、父の言った言葉をつぶやいていました。＜あなたたちの未来に 光がありますように＞
以上、映画「マイスモールランド」のあらすじと結末でした。
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