半世界の紹介:2018年日本映画。「どついたるねん」や「亡国のイージス」、最近ではキューバとの合作「エルネスト」を撮るなど国内外で活躍する映画監督・阪本順治。今回は稲垣吾郎を主演に迎え、ずっとあたためてきたオリジナル脚本を映像化した。志摩半島の小さな町を舞台に、人生の折返し点にさしかかった男たちの現実、絶望、そして希望が描かれた本作は、第31回東京国際映画祭コンペティション部門で観客賞を受賞した。「稲垣くんがやったらおもしろいんじゃないか」という監督の狙いどおり、稲垣の演技が自然で、山で生きる男に見事にはまっている。
監督:阪本順治 キャスト:稲垣吾郎(高村絋)、長谷川博己(沖山瑛介)、渋川清彦(岩井光彦)、池脇千鶴(高村初乃)、竹内都子(岩井麻里)、杉田雷麟(高村明)、小野武彦(大谷吉晴)、石橋蓮司(岩井為夫)ほか
映画「半世界」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「半世界」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
半世界の予告編 動画
映画「半世界」解説
この解説記事には映画「半世界」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
半世界のネタバレあらすじ:起
二人の男、同級生の瑛介(長谷川博己)と光彦(渋川清彦)は、学生の頃に埋めたなにかを掘り出そうと、スコップを持って山道を歩いています。光彦の記憶をたよりに二人は目的の場所にたどり着きました…。
さかのぼること三ヶ月前、8年間音沙汰のなかった瑛介が突然町に帰ってきました。絋(稲垣吾郎)が質問すると、離婚して戻ってきたと言います。その日の夜、光彦も加わり絋の家で酒を飲む三人。帰宅した絋の息子・明(杉田雷麟)はそんな親父たちに嫌悪感丸出し、反抗的な態度をとるのでした。
翌日、家の片付けを手伝う絋と光彦。母との思い出の品を見つけた瑛介が泣き出し、二人は心配します。
一方絋の妻、初乃(池脇千鶴)は家計のこと、そして息子 明のことで頭がいっぱいです。絋が父親から継いだ“高村製炭所”は受注が減ってジリ貧、息子の高校進学も危うい状態です。その息子は悪い仲間からいじめられているようで、そのことを全く気にも留めない絋に初乃はいらだっています。
絋が光彦とスナックで飲んでいると、「お前は明に関心がない。それがバレてる」と指摘され、つい光彦に「子どももいないくせに!」と声を荒げてしまいます。光彦が怒って帰ると奈月ママ(菅原あき)が「仲いい証拠」と絋に声をかけました。
酔って帰ると家では初乃が布団に横たわり、身体が重いから服を脱がせてと言ってきました。そして急に初乃は起き上がって絋に覆いかぶさるとキスをします。いい雰囲気になったところで突然玄関をたたく音、騒ぐ声…。酔っぱらった光彦が押しかけてきたのです。絋はさっきの暴言を詫びつつ、「いまからセックス」と言い、光彦を追い返します。
半世界のネタバレあらすじ:承
瑛介は絋の仕事を手伝うようになりました。木の伐採から運搬、炭焼きまですべて一人でこなす絋に、「これ、一人でやってきたのか」と驚く瑛介。
夜、スナックで上機嫌の瑛介は、自衛隊の部下の話をします。その後、昔のように三人で海へ向かい、瑛介は持ってきたウイスキーを海にまきました。そして瑛介の発案でおしくらまんじゅうをして三人はバカみたいに盛り上がるのでした。
数日後、絋は警察署から明と出てきました。万引きをさせられた明は自分一人のせいにして、他の少年のことを黙っていました。これでやつらと対等になれたと信じているようです。「あいつらとは別れろ」絋の言葉を明は聞かず、バス停に歩いていってしまいます。しかし途中で父の方を振り返り、絋が自分の方を見ないのでがっかりします。
そんな絋は、取引先に契約を打ち切られたことを瑛介にこぼします。
「いつもおやじと比べられる」
そして明を食事に誘ってやってくれと頼みます。好物は…うどん、かな?と適当に答えるのでした。
明に対するいじめは止まず、通りかかった瑛介は少年たちを威嚇して明を助け出します。家の庭で、自衛隊仕込みの戦い方を明に伝授し、そのあと二人でごはんを食べに行きました。そこで、絋がよく親父さんに殴られていたことや、必死だから余裕がないこと、それだけ大変な仕事をしているんだということを話すのでした。
半世界のネタバレあらすじ:転
今日も絋と瑛介が車で仕事に向かっていると、光彦の自動車販売店がヤクザな客に襲われているところに遭遇します。慌てて車を降り、殴られていた光彦たちを助けると、瑛介は容赦なく襲いかかり、相手を半殺しにしてしまいます。絋が必死に止め、我に返った瑛介はそこから立ち去ってしまいます。
その夜、絋が瑛介の家に行くと、ガラスが割れ、瑛介の手は血だらけでした。「自分がよくわからない」と言う瑛介。「何があったか聞いていいか?」と言う絋に、「帰るところなんてなかった。それだけ」
一人海辺にたたずむ絋のところに明がやってきます。「あのときなぜ振り向かなかった?」と問う明に、「ずっと背中を見ているのが怖かった…って答えでいいか」と絋。
翌日、瑛介はいなくなっていました。
数日経ち、目撃情報を頼りに絋はどこかの漁港に瑛介を探しに行きます。船上で作業する瑛介に「ウイスキーを海にまいた理由がわかったよ」と告げる絋。それは瑛介の部下が海で自殺したから、でした。責任を感じている瑛介に、「関係ない」と絋は叫びます。しかし瑛介は、「オレの…、おまえたちの責任だ!」と叫び、「ああ、世界を知らないからな」と絋は答えます。帰れと言われた絋は「こっちも世界。いろいろあんだよ」と。すると瑛介は「海の上にいると落ち着くんだ」と笑うのでした。
光彦に瑛介のことを報告し、今日は初乃と二人、炭焼小屋で作業しています。火を見ながらおだやかに話す初乃。「おとうさんはおとうさん。あなたはあなた」
今日も一人、絋は炭の音を感じながら山にいます。同窓会に出かける初乃が作った弁当には“おバカ”の文字。それを見て絋は初乃に電話を掛けますが留守電でした。
弁当を食べようとすると急に胸が苦しくなり、絋は地面に倒れ込んでしまいます。
そのころ明は、父の作った炭を片手に、瑛介に教えてもらったとおり戦っていました。あとはリーダーの“堅田”だけになり身構えていると「行っていいよ」と言われます。「おもしろかったから」と堅田は言います。「俺も前の学校でおまえみたいだったから…」
半世界の結末
初乃は同窓会には行かず、炭の売り込みに行っていました。帰りの電車で絋が倒れたことを知り、病院にかけつけると絋の意識はなく、初乃は「明日には起きてね。同窓会、行かなかったよ」と言うのがやっとでした。
翌日、瑛介の働く漁港に光彦が一人でやってきました。「瑛介!絋が、もたなかった」
慌てて駆け出す瑛介。「オレがあのまま手伝っていれば…」また自分を責める瑛介を光彦がいさめます。
絋の先輩である葬儀屋の仕切りで絋の葬式がおこなわれています。初乃は取り乱し、そんな母を支え明は気丈に振る舞います。ショックを隠せない瑛介と光彦は、天気雨の降る中、棺を乗せた車を見送るのでした。
(オープニングシーンに戻る)
瑛介と光彦は、昔埋めた缶を掘り出しました。隠れて吸っていたタバコ、三人の生徒手帳、卒業式のあとに撮った写真が出てきました。ひとしきり確認すると光彦が、「これ、戻そうか。まだ続くんだから」と言うのでした。
山から降りてきた二人。「また会おうや」と光彦。瑛介は、「気づいたよ」
あの写真には三人の手が、三角形の描かれた手が写っていました。光彦がよく言っていた“三人は三角形。正三角形なんだ” でも描かれていたのは二等辺三角形。「オレが気つかったんだよ」
絋の最後の留守電メッセージが流れます。………
初乃と明はこれからどうするか話しています。
明「ボクサーもいいかな」
初乃「ボクサー!?あんたにはとても無理」
何ヶ月か何年かのち、慣れた感じで炭焼小屋にやってくる明。
明はぶら下がっているサンドバッグを打ち始めるのでした。
以上、映画「半世界」のあらすじと結末でした。
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