正欲の紹介:2023年日本映画。発行部数50万部を突破した、朝井リョウの同名小説を映画化。他人に理解して貰えない性癖を持つ主人公たちが、苦しみ藻搔いた末に手に入れた幸せの矢先にある事件が起こります。多様性を重んじる今の世の中に問いかける作品です。
監督:岸善幸 出演:稲垣吾郎(寺井啓喜)、新垣結衣(桐生夏月)、磯村勇斗(佐々木佳道)、佐藤寛太(諸橋大也)、東野絢香(神戸八重子)、山田真歩(寺井由美)、岩瀬亮(矢田部陽平)、ほか
映画「正欲」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「正欲」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「正欲」解説
この解説記事には映画「正欲」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
正欲のネタバレあらすじ:起
コップから溢れる水を見ながら、会社員の佐々木佳道は思っていました。世に溢れている情報は生きる人たちのためにあって、明日死のうとしている自分のためのものではないと。
広島のショッピングモールで働く桐生夏月は、ありきたりな毎日を過ごしています。家に帰るとお気に入りの動画を見て快楽を得て、水浸しの部屋のベッドに寝転ぶ夏月は、水に浸かっていました。
エリート検事である寺井啓喜は、不登校の息子のことで妻と口論が耐えません。当たり前の事が出来ないことに耐えられない啓喜は、学校に行かずユーチューバーになるという息子や、それを認める妻が理解できないでいます。
ある日、啓喜は同僚の越川からとある事件の記事を見せてもらいます。それは、水を出しっぱなしにして蛇口を盗んで捕まったフジワラサトルのものでした。水を出しっぱなしにするのが嬉しかったと語るフジワラサトルは、水に性的興奮を得ていたのではないかと語ります。
そんな奴がいるはずないと、やはり理解できない啓喜。家では息子に今の自分を理解してほしいと訴えられます。
正欲のネタバレあらすじ:承
大学生の神戸八重子は、ミスコンのイベントに問題意識を持った人たちで集まり、企画したダイバーシティフェスという多様性を重視したイベントに取り組んでいました。大学のダンスサークルで諸橋大也と出会った八重子は、大也と関係を深め、極度の男性恐怖症の八重子にとって唯一の触れることのできる関係になっていました。
夏月を同級生の西山が訪ねます。同級生の結婚式に呼ばれた夏月は、気乗りはしませんでしたが同じく同級生の佐々木佳道が地元に帰ってきていることを知り、もしかしたら会えるかもしれないと参加を決めます。
夏月の脳裏に中学生時代の記憶が蘇ります。それは、同級生が水を出しっぱなしにして逮捕されたフジワラサトルの記事を笑っていましたが、夏月はどこかモヤモヤしていました。古い蛇口を工事するからと知った夏月は、欲求が赴くまま禁止された水道に向かうと、そこには同じクラスの佳道がいました。あまり話したことのない2人でしたが、蛇口を捻り互いにびしょ濡れになるまで水飛沫を浴び、それだけで互いを理解できたのです。
その後、再会を果たした2人。しかし夏月は佳道が何不自由なく暮らしているように見えて不満に思います。そして大晦日の夜、夏月は佳道の家のガラスを割って逃げます。車に細工し、ガードレールの看板を目掛けてアクセルを踏みました。その瞬間、目の前を自転車に乗った人影が飛び出してきました。
正欲のネタバレあらすじ:転
びっくりしてブレーキを踏んだ夏月は、看板直撃とはならず車は止まります。自転車に乗っていたのは佳道でした。どうにもならない感情に苦しむ2人は、自殺して苦しみから逃れようとしたのです。
しかし、自分のその感情を理解してもらえる相手がいたことを知り、互いに必要不可欠な存在になっていきます。「この世界で生きていくため手を組みませんか?」プロポーズとも取れる佳道の言葉と、それを受け入れる夏月。そこに愛はありませんでした。
夏月と佳道は横浜に引っ越し、穏やかに暮らします。
啓喜は息子のYouTubeが幼児わいせつ動画にあたり、配信停止になったことを知りました。それは視聴者のリクエストに答え、風船割りや公園での水遊びをしていたことで起こりました。やはり理解できない啓喜は、妻の由美を責め立てます。その啓喜が理解できない由美は、息子を連れて出ていくことを決意します。
佳道はいつも愛用している水の動画にコメントをくれるフジワラサトルに興味を持ちます。きっと自分たちと同じ水フェチに違いない、そう解釈した佳道は、同類を救うために彼にコンタクトを取ろうとします。
フジワラサトルのハンドルネームを利用していたのは諸橋大也でした。佳道と大也は同じ動画サイトで知り合った、コバセと名乗る水フェチと一緒に水動画を撮ることにしました。3人は公園に集まり、そこにいた子供たちと一緒に水動画を撮ります。
正欲の結末
いい大人たちが子供たちと水遊びをする、このある種異様な風景は、コバセにとってもう一つの意味がありました。それは、コバセこと矢田部陽平は水フェチで濡れた服が大好きだと話す小児性愛者だったのです。
ある日、夏月が帰ってくると、家の前にパトカーがとまっていて、夫の佳道が警察に連行される姿を目の当たりにしてしまいます。
この事件は児童買春担当の啓喜が担当となりました。自宅から証拠となる映像が見つかった矢田部は有罪なのは仕方ないとして、残りの2人はただ水が好きだっただけだと訴えます。啓喜にとって理解できない供述に、悩ましい気持ちになります。
そんな啓喜の態度に大也は諦めたような言動をし、「分かち合ったことのない気持ちを理解してもらえる人と分かち合うことが罪なのか?」と佳道は悲しそうに問います。
その後、啓喜は佳道の妻である夏月と面会する機会があったので「ありえないと思いますが、水に特別な感情を?」と問うと、「必死で生きてきたものを、ありえないで片付けられたことはありますか?あなたが信じなくてもそういう人間はたしかにいます。」と夏月は静かに答えました。
そして調停中だから伝言は出来ないと言う啓喜に、夏月は「私はいなくならないから、と伝えて下さい。」と言いました。それは啓喜が知りようがなく、持つこともないありえない深い繋がりだったのです。
以上、映画「正欲」のあらすじと結末でした。
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