おらおらでひとりいぐもの紹介:2020年日本映画。第158回芥川賞と第54回文藝賞を受賞した若竹千佐子の同名小説を『横道世之介』『モリのいる場所』の沖田修一監督が映画化したヒューマンドラマです。夫に先立たれ、娘との疎遠になった一人暮らしの老女は心の中でかつての自分や様々な人々と故郷の東北弁を交えての会話を楽しむようになっていきます…。
監督:沖田修一 出演者:田中裕子(桃子)、蒼井優(桃子(青年期))、東出昌大(周造)、濱田岳(寂しさ1)、青木崇高(寂しさ2)、宮藤官九郎(寂しさ3)、田畑智子(桃子の娘)、黒田大輔(警官)、山中崇(医師)、岡山天音(車メーカーの営業)、三浦透子(桃子の同僚)、六角精児(桃子の心の声「どうせ」)、大方斐紗子(桃子の祖母)、鷲尾真知子(図書館の司書)ほか
映画「おらおらでひとりいぐも」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「おらおらでひとりいぐも」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
おらおらでひとりいぐもの予告編 動画
映画「おらおらでひとりいぐも」解説
この解説記事には映画「おらおらでひとりいぐも」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
おらおらでひとりいぐものネタバレあらすじ:起
令和の現代。都会の片隅で一人暮らしをしている老女がいます。今年74歳になる桃子(田中裕子)です。雨の日、桃子はこたつに座り、一人で茶をすすっていたところ、天井からネズミが走る音が聞こえてきました。桃子の脳裏には若き日の自分(蒼井優)が亡き夫・周造(東出昌大)と共に過ごした頃の姿が浮かび上がってきました。
桃子はなんだか自分の頭がおかしくなってきたのではないかと不安げになっていたところ、突然自分と同じ格好をした三人の男(濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎)が現れ、こたつを囲んで笑ってきました。
三人の男は桃子の故郷の東北弁で「大丈夫だぁ、おらだぢがついでる」と語りかけ、何者なのかと問う桃子に我々は桃子で桃子は我々だと返してきました。実はこの三人男の正体は桃子の心の寂しさが擬人化して現れたものであり、やがて桃子と三人男はジャズを奏でて踊り始めました。
翌朝。桃子の枕元には彼女の朝専用の擬人化男、通称“どうせ”おじさん(六角精児)が現れました。“どうせ”に起こされた桃子はいつものように朝食の支度を始め、いつものように薬を飲み、いつものように腰に湿布を貼りました。
おらおらでひとりいぐものネタバレあらすじ:承
桃子は病院の診察を受けに行きました。満員の待合室で散々待たされた桃子はいつものように問題ないことを告げられ、その後図書館に本を返しに向かいました。図書館の司書(鷲尾真知子)はいつものように桃子を習い事に誘いましたが、桃子はいつものように断りました。桃子は図書館で古代生物などの図鑑を見ながら、日々の日課である自作の“地球46億年ノート”作りをしていました。
帰宅した桃子を出迎えたのはいつもの寂しさ三人衆でした。桃子は三人衆と賑やかに過ごし、そしていつものように翌朝“どうせ”に起こされました。テレビには東京オリンピックに関するニュースが流れており、桃子はふと1964年に開催された最初の東京オリンピックの頃を思い出していました…。
…若き日の桃子はとある組合長の息子と勝手に婚約させられそうになり、故郷の東北を飛び出して逃げるように夜行列車で東京に向かいました。その後、そば屋での住み込みの職を得た桃子は何とか標準語に慣れようと悪戦苦闘している時に、堂々と東北弁をしゃべっていた周造と出逢いました。意気投合した二人はトントン拍子に結婚しました…。
…桃子は周造に先立たれた哀しみを紛らわすかのように“脳内歌謡ショー”を催しました。故郷の古いしきたりから逃れ、“新しい女”になるはずだったのがいつしか自分も結局はしきたりに流されてしまったことを桃子は振り返り、周造の死によって“愛よりも自由”という心境に達したことも振り返っていました。
おらおらでひとりいぐものネタバレあらすじ:転
そんなある日のこと、桃子の元を娘(田畑智子)が孫を連れてやってきました。かねてから疎遠状態に陥っている娘は孫の塾の費用の名目で桃子に金をせびり、その言葉に桃子は以前に自分が“オレオレ詐欺”に引っかかった時のことを思い出しました。
ある秋の日。桃子はいつもの朝を迎えたはず…でした。ところがその日は、あの寂しさ三人衆や“どうせ”おじさんの姿がありませんでした。朝食の支度をする桃子は、目玉焼きを作ろうと割った卵に黄身が2個入っていることに気付きました。弁当を作った桃子は山歩きの恰好でいつもの道を歩くことにしました。途中の公園で桃子は男の子に声をかけられ、いつしか手を引かれて子供たちの秘密基地に招かれました。桃子の脳裏には若かりし頃の記憶が蘇ってきました…。
…桃子は誰もいない林の中を歩いていました。そんな桃子の後をあの寂しさ三人衆たちがはしゃぎながら追いかけてきました。しばらく歩き続けていた桃子でしたが、やがて「こんなに寂しい秋になるとは思わなかった」と座り込んでしまいました。そんな桃子に手を差し伸べたのは、若き日の周造でした。周造に導かれるように再び歩き出した桃子の目の前にはいつしか長い階段が現れ、そこには幼き日の桃子の姿がありました。階段を登った先には見晴らしの良い場所があり、桃子がそこで弁当を広げていたところ、今度は周造と楽しそうに会話を交わす若き日の桃子の姿がありました。そして三世代の桃子は“どうせ”おじさんや子供たちに見守られながら周造が眠る墓に辿り着き、途中で摘んだ花を飾ると三人で町を見下ろしていました。三人の表情は穏やかでした。
おらおらでひとりいぐもの結末
季節は移ろい冬へ。桃子は厳しい冬の暮らしに耐えながらも、寂しさ三人衆たちと共に変わらぬ日々を送っていました。しかし、その日常は毎日同じように見えながらも実は少しずつ変化していました。
桃子は以前に図書館の司書から勧められた習い事にもチャレンジすることにし、寂しさ三人衆たちと共に節分やひな祭りなどを楽しんでいました。寂しさ三人衆はいつまでも桃子と一緒にいると語りました。
そんなある日。桃子が寂しさ三人衆たちとダンスに興じている時、壊れた人形を手に孫が訪れてきました。孫は桃子に「誰と話してるの?」と問いかけ、桃子は寂しさたちについて語ろうとしました。孫はそんな桃子に理解を示し、祖母には見守ってくれている存在がいることに気付きました。孫は桃子の娘もまた桃子と同じように東北弁がうつっていることを教えてあげました。
孫の人形を直してやろうと意気込む桃子は、親から子へ、子から孫へ受け継がれる絆みたいなものを感じ取っていました。
以上、映画「おらおらでひとりいぐも」のあらすじと結末でした。
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