弟とアンドロイドと僕の紹介:2020年日本映画。「究極の孤独」を題材にした、監督・阪本順治と主演・豊川悦司のタッグで贈る異色の人間ドラマです。常に孤独を抱え続け、自分の存在すら認識できないロボット工学者が自分そっくりのアンドロイドを作ろうとしていましたが、ある日突然腹違いの弟が訪ねてきて・・・。
監督:阪本順治 出演者:豊川悦司(桐生薫/僕)、安藤政信(山下求)、風祭ゆき(山下春江)、本田博太郎(臼井歓)、片山友希(少女)、吉澤健(山下栄一)ほか
映画「弟とアンドロイドと僕」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「弟とアンドロイドと僕」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
弟とアンドロイドと僕の予告編 動画
映画「弟とアンドロイドと僕」解説
この解説記事には映画「弟とアンドロイドと僕」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
弟とアンドロイドと僕のネタバレあらすじ:起
ここは陽の光も射さない暗い廃病院。孤独なロボット工学者の桐生薫(豊川悦司)はここでたったひとりで暮らしていました。薫はとある有名大学で講師をしているのですが、気難しさと取っ付きづらさから周囲から変わり者扱いされていました。
薫はかねてから自分自身の存在を認識できず、果たして自分は本当にこの世に存在しているのかと疑問に思い続けていました。それは右足の存在すらも認識できず、左足のみで生活していました。薫はたまに他人に会うなり「見えてますか?僕が」と問いかける日々を過ごしていました。
薫にはかねてからずっとやりたかったことがありました。それは自分自身にそっくりのアンドロイドを造ることでした。薫はこのアンドロイドをもうひとりの“僕”と位置づけて日夜開発に没頭し、“僕”は間もなく完成を迎えようとしていました。
薫が住む廃病院は、元々薫の父である山下栄一(吉澤健)が経営していた産婦人科でした。かつては評判の良い医者だった栄一も今や寝たきり生活を送っており、面倒を見ているのは現在の妻である山下春江(風祭ゆき)、そして栄一と春江との間に生まれた、薫にとっては腹違いの弟にあたる求(安藤政信)でした。
弟とアンドロイドと僕のネタバレあらすじ:承
そんなある日、病床の栄一がふと薫の名を呼んだことをきっかけに、求は薫の住む廃病院を訪れました。薫は赤の他人にそうしているように、「見えてますか?僕が…」と問いかけました。
薫は求と共に栄一が入院する病院に向かい、栄一の延命治療を求めました。しかし、求と春江は治療に消極的でした。
それからというもの、求は勝手に薫の研究室に入っては中の物を勝手にいじくるようになりました。求は元より薫のことを快く思ってはいませんでしたが、薫は求のことなど気にすることなく相変わらずアンドロイドの開発に勤しんでいました。
そんなある日、薫は駅でひとりの少女(片山友希)と出会いました。この少女は何と、薫がそうしているように「私が見えますか?」と尋ねてきました。この少女はいつしか度々薫のもとを訪れるようになり、薫も少女を邪険に扱うことはしませんでした。
やがて薫は遂に自らの分身となるアンドロイドを完成させました。その時、求がまたしても薫のもとを訪ねてきました。薫は完成したばかりのアンドロイドを「“僕”です」と求に紹介し、求は思わず何とも言えない表情を浮かべました。
薫は“僕”が完成したことで、生まれて初めてようやく自分自身の存在という器を認識できるようになりました。ところが、このことは求の中に激しい怒りと凶気を燃えたぎらせることとなりました。
弟とアンドロイドと僕のネタバレあらすじ:転
元々薫と求の父である栄一は正妻(薫の実母)がいましたが、栄一は愛人だった春江のもとに走り、正妻は自ら命を絶っていたのです。それでも、自分が愛人の子であることに負い目を感じ続けていた求にとっては、自らの存在を認識しないまでも幼い頃から要領が良く、傍から見れば苦労知らずで好き勝手に生きてきた薫の存在は非常に許しがたいものでした。
求が薫のもとを訪れるようになったのは、この実家の権利書を薫から剥奪することが目的でした。求は別れた元妻とやり直したいがために金を必要としており、元妻への執着は彼女の新しい恋人にも暴力を振るうほどでした。さらには求は植物状態のままの栄一にすらも早くいなくなってほしいと願っており、栄一の延命を望む薫との対立は決定的でした。
求は薫そっくりのアンドロイドである“僕”を見るなり、ナイフで首を落として破壊してしまいました。激昂した薫は求に掴みかかり、その首を絞めてしまいました。
薫はぐったり動かなくなった求を死んだものだと思い、冷蔵庫に隠すことにしました。薫は壊れた“僕”を燃やして処分しましたが、一度は芽生え始めていた自分自身の存在への認識が薄らいでいきました。それと同時に、薫のもとを訪れていた少女もまた人間らしい表情を失いつつありました。
弟とアンドロイドと僕の結末
そんな時、長らく寝たきりだった栄一が息を引き取りました。病院に駆けつけた薫はこれまでの自らの人生や実母のことなどが頭によぎり、栄一の亡骸に飛び付くと思わず首を絞めてしまいました。春江はただ・然として見つめるしかありませんでした。
その時、死んだはずの求が息を吹き返しました。冷蔵庫から這い出た求は薫のもとに向かい、そのまま薫を殺害してしまいました。
求は警察に追われる身となり、警察の現場検証が始まりました。薫の遺体が運び出されようとしている時にあの少女が姿を表しました。薫がこれまで全く意識していなかった右足からは、薫が認識しないまでも生きていた証を示すかのように赤い血が流れ続けていました。
少女は誰もいなくなった廃病院に入り、研究室へと立ち入りました。そこには薫にそっくりのアンドロイドが静かに置かれていました。少女はアンドロイドをそっと抱きしめました。
以上、映画「弟とアンドロイドと僕」のあらすじと結末でした。
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