さよなら歌舞伎町の紹介:2014年日本映画。ラブホテルの店長である徹はプロミュージシャンを目指す彼女に一流ホテルで働いていると嘘をついている。そんな徹が働く歌舞伎町のラブホテルに集う5組の男女の人生が交錯する1日を描いた群像劇。
監督:廣木隆一 出演:染谷将太(高橋徹)、前田敦子(飯島沙耶)、イ・ウヌ(イ・ヘナ)、ロイ(アン・チョンス)、樋井明日香(高橋美優)ほか
映画「さよなら歌舞伎町」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「さよなら歌舞伎町」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「さよなら歌舞伎町」解説
この解説記事には映画「さよなら歌舞伎町」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
さよなら歌舞伎町のネタバレあらすじ1
冬の早朝。まだ寒さが沁みる時間に、ラブホテルの店長の徹は、自転車で歌舞伎町の街を走っていました。彼の頭の中を、今日の出会った人たちのことが、浮かんでは消えていきます。親や自分に内緒でAV女優をしていた妹。今日で仕事を辞めからとプレゼントをくれた、デリヘル嬢のヘナ。ヘナがデリヘル嬢である事を知りながらも、彼女へプロポーズした、夢追い人のチョンス。家での居場所を失い、家出をした雛子。雛子を風俗嬢にするつもりが、逆に惚れてしまい、風俗のスカウトから足を洗った早瀬。殺されてしまった、いつもホテルの前にいた名も知らぬタチンボ。廊下でSMプレイにいそしむカップル。
さよなら歌舞伎町のネタバレあらすじ2
そして、音楽プロデューサーと部屋へ入っていった、彼女で、メジャーデビューを夢見る沙耶。沙耶や妹へついていた一流ホテルのホテルマン、という嘘もばれてしまい、徹は、自分で感情の整理が出来なくなり、全ての物事から逃げ出すため、当てもなく自転車を走らせていました。すると、目の前に全力疾走する、パートの里美さんが現れます。どうして走っているのか、と尋ねると里美さんは「逃げてんの!」と叫びます。里美さんは過去に内縁の夫と傷害事件を起こしていました。
さよなら歌舞伎町の結末
時効成立まで警察に見つからないよう、息をひそめて暮らしていました。しかし、あと数時間で時効が成立する、という最悪のタイミングで、ラブホテルにやって来た刑事に見つかってしまい、命からがら逃走していたのです。そんな里美さんに、徹は自転車を譲ります。どこか希望に満ちた表情で走りゆく里美の背中を見て、徹は沙耶との別れ、そして故郷の東北へ帰ることを決意しました。そう、歌舞伎町という街との別れを決意したのです。
以上、映画「さよなら歌舞伎町」のあらすじと結末でした。
さよなら歌舞伎町について
ラブホテルを舞台に繰り広げられる群像劇。染谷将太演じる主人公の徹はラブホテルの店長として働いている。前田敦子演じる沙耶は徹の恋人であり、プロのミュージシャンを目指している。映画は同棲している二人の朝から始まる。徹は沙耶に自分が一流のホテルマンとして働いていると嘘をついており、沙耶はそのことに気付いていない。その日も沙耶に偽りながら、徹はラブホテルに出勤し、店長としての一日が始まる。
映画はラブホテルの中の映像がほとんどだが、そこに現れる人物は客も店員も様々な事情やクセを持った人たちばかりである。時効が明日に迫った夫婦である鈴木と池沢を演じるのは南果歩と松重豊。鈴木はラブホテルの店員としてパトカーのサイレンに警戒しながら働き、池沢は家の押し入れに隠れて生活する日々を送っているようである。
またほかの登場人物として、兄が働いていることを知らずにラブホテルにAV撮影に来た徹の妹の雛子や、家出少女と風俗スカウトマン、ホテルで密会を繰り返す不倫刑事カップル、韓国から来た彼氏に仕事のことを内緒にしている風俗嬢やその彼女に内緒でおばさんと関係を持つ彼氏、などが出てきてそれぞれの人間関係が描かれる。その中で、徹が雛子の存在に気付いたり、韓国人カップルが互いの秘密に気付いたりすることで物語は盛り上がりを見せる。
どこの人間関係を切り取っても見応えがあるが一応の山場は、音楽プロデューサーとラブホテルにきた沙耶とそこで働く徹が鉢合わせるところだろう。沙耶は売れるためにプロデューサーと寝るかどうかの選択を迫られる。徹は二人の部屋に入っていって止めようかと考えるが、結局できない。ただ沙耶も寝る選択をとることはしなかった。そうこうしていると、今度は鈴木が刑事に見つかってしまい、一時は拘束されるが自力で逃げ出して時効を迎える。と、それぞれの人物にまつわる様々なストーリーが次から次へと続いていく。観ていて飽きずに楽しめる作品である。
さよなら歌舞伎町のレビュー・感想
歌舞伎町という猥雑さを象徴する街にある猥雑感いっぱいのラブホを舞台に何組かの男女のカップルの人間模様を描いている。それぞれのカップルは独立した存在なのだが、このラブホとそこの店長を接点として関係性を生じて行く、そんなオムニバス的な作品。 様々なワケありカップルが登場するが、どの男女もチャーミングだ。夢に破れた若者と夢をがむしゃらに求める若者、逃亡犯とそれをかくまうカップルなどなど、それぞれの切実な背景に、ヘイトスピーチや3.11という現代日本が抱える問題がさらに絡まっていく。それでもなお、荒井晴彦の脚本は、登場人物達を信じているし、廣木隆一の演出は、そんな人物達を愛でている。そこがいい。 中でも、イ・ウンウ演じる韓国人デリヘル嬢への、廣木隆一の愛情は、一際強く熱い。ホテルの浴室で向き合う男女のシーンは、この映画屈指の名場面だが、監督の力の入れようが尋常ではないのがわかるし、その監督のこだわりに応えようとするウンウの演技も尋常ではない。そんな、人と人が出会うことで生まれる熱こそが、この映画の見所であり、主題でもあるはずだ。
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