その街のこども 劇場版の紹介:2010年日本映画。1995年1月17日に起きた阪神淡路大震災。震災に運命を変えられた少年と少女が、震災から15年の節目に故郷へ帰ってきます。父親が復興工事で儲けたことから、先生や友人達に疎外された勇治。親友を失った悲しみを未だ乗り越えられない美夏。ひょんなことから2人は出会い、一晩かけて神戸の街を歩き通すことになります。自分の過去、そして未来へ向き合う、巡礼の旅。阪神淡路大震災から15年を機にNHK総合テレビでドラマとして放映されたものを、再編集して劇場版にしたものです。
監督: 井上剛 出演者: 森山未来(中田勇治)、佐藤江梨子(大村美夏)、津田寛治(沢村)、白木利周(ゆっちの父)、中川光子(たこ焼き屋)
映画「その街のこども 劇場版」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「その街のこども 劇場版」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
その街のこども 劇場版の予告編 動画
映画「その街のこども 劇場版」解説
この解説記事には映画「その街のこども 劇場版」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
その街のこども 劇場版のネタバレあらすじ:起
広島行きの新幹線の座席に座る、沢村と勇治。建築設計会社の先輩後輩です。明日は広島で新しい高層マンションの建設説明会。出張に乗じて広島で遊ぼうと、1日早く東京を出てきました。日本人離れしたスタイルの良い女性が通路をすり抜けていきます。彼女に興味をもつ先輩の沢村。新幹線が新神戸駅を発車しようとした時、勇治は突然思い立って荷物を掴み、新幹線を飛び降ります。勇治は、神戸に住んでいた小学生時代に、阪神淡路大震災を経験しました。明日は、震災からちょうど15年目の1月17日なのです。同じく新神戸で降りたあの女性の顔写真を撮ってくるよう、電話で沢村に命じられた勇治。女性の周りをうろついていると、女性のほうから声をかけてきます。
その街のこども 劇場版のネタバレあらすじ:承
女性の名前は大村美夏。勇治より3つ年上です。幼少期を神戸で過ごし、震災を経験。その後東京へ引っ越して、今日13年ぶりに神戸へやってきたとのこと。同じような境遇の2人は、互いに親近感を覚えます。居酒屋で飲食しながら、震災の記憶を語る2人。しかし、話していくうちに、震災に対する思いの違いが明らかになります。美夏は親友を失いましたが、勇治は身近な人を失っていません。当時1本2000円の焼き芋や、1本1000円の大根を売る輩に憤ったという美夏。震災後、父が屋根の修理で大もうけした勇治は、「それは賢い人への嫉妬心だ」と言い放ちます。怒って店を出ていった美夏ですが、コインロッカーに一緒に荷物を入れたことを思い出し、慌てて戻ってきます。すでに勇治は店を去った後。聞いていた美夏の電話番号はデタラメ。勇治はコインロッカーの前でやむなく美夏を待っていましたが、美夏が戻ってきたのは終電がなくなった後でした。
その街のこども 劇場版のネタバレあらすじ:転
三宮に行きたい美夏。おばあちゃんの家に寄って、明日の早朝には、東公園で行われる慰霊祭に参加したいのだそうです。自由奔放な彼女に振り回され、勇治も一緒に三宮まで歩いていくことになります。途中、勇治の住んでいた街にさしかかりました。父親が修理代金を吊り上げたおかげで、先生や友人から嫌われ、疎外された苦い思い出が、否応なしに蘇ります。父親への恨み節が噴出する勇治。今の自分への不満も。震災を実体験していながら、建築コストに振り回され、本当に耐震性の高い建物を作れない現状。美夏が心の中にズカズカと踏み込んできて、すべて図星なので、勇治は余計に苛立ちます。
その街のこども 劇場版の結末
一方の美夏。三宮の高台にあるおばあちゃんの家に寄った後、思い出の地を巡りながら、なかなか言い出せなかった親友の話を始めます。親友の住んでいたマンションが震災で倒壊し、親友とその母、妹が犠牲に。一人残された父親は、家族を失ったショックから変貌していきました。「真面目に生きていても幸せになれるとは限らない」という事実を、美夏は恐れました。15年かけて出した結論は、「辛いときには、辛くならないよう皆で工夫したらいい」というものでした。美夏の言うことが正しいと理解しつつも、自分には無理と思う勇治。その後、偶然にも親友の父親が独りで住むアパートの前へ。勇治に背中を押され、美夏は父親のもとを訪れます。長時間の滞在の後、親友の写真をもらって出てきた美夏。号泣しています。ベランダでは親友の父親がいつまでも手を振っていました。慰霊セレモニーの会場の前で抱擁を交わす2人。2人の間には、一晩の間に特別な感情が芽生えていました。「一緒に行かない?」と誘う美夏に、「また来年」と応えて去っていく勇治。集まった人々がともした灯で「1.17」の文字が浮かび上がりました。エンドロールが流れるバックで、子ども達の笑い声や日常の喧騒が聞こえます。神戸の人々は、震災を乗り越えて今日も生きていくのです。
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