ボクたちはみんな大人になれなかったの紹介:2021年日本映画。原作は“燃え殻”によるWeb小説。note運営のコンテンツ配信サイト・cakesに連載されたこの小説は、その後2017年に書籍化され、あいみょんや糸井重里・兼近大樹(EXIT)などに絶賛された。テレビ業界の片隅で働くボクの半自伝的恋愛小説であり、現代から1990年代に巻き戻っていく形で映画は展開していく。ボク・佐藤誠を演じるのは、ダンサーとしても活躍する森山未來。彼の忘れられない恋人・かおりを、体当たりの演技が評価されている伊藤沙莉が演じている。
監督:森義仁 脚本:高田亮 キャスト:森山未來(佐藤誠)、伊藤沙莉(加藤かおり)、萩原聖人(三好英明)、大島優子(石田恵)、東出昌大(関口賢太)、SUMIRE(スー)、篠原篤(七瀬俊彦)、平岳大(左内慶一郎)、片山萌美(いわい彩花)、高嶋政伸(恩田隆行)、ラサール石井(大黒光夫)ほか
映画「ボクたちはみんな大人になれなかった」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ボクたちはみんな大人になれなかった」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ボクたちはみんな大人になれなかったの予告編 動画
映画「ボクたちはみんな大人になれなかった」解説
この解説記事には映画「ボクたちはみんな大人になれなかった」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ボクたちはみんな大人になれなかったのネタバレあらすじ:起
深夜のゴミ置場に倒れ込む男ふたり。先に立ち上がった46歳の佐藤誠(森山未來)は、久しぶりに再会した男に帰宅を促し、昔つき合っていた彼女と別れた場所・円山町のホテル街の坂道へとやってきました。
2015年。
テレビ番組のテロップなどを制作する会社で働く佐藤は、担当する大黒光夫(ラサール石井)の番組の打ち上げパーティに来ています。そこで知り合ったグラビアアイドル(片山萌美)とホテルに入った佐藤は、彼女がこんな自分になりたくなかった、というのを聞きます。
パソコンには、かつての同僚・関口(東出昌大)から「うちの会社来たら?」というメールが入っていました。FACEBOOKを開くと、初めてつき合った彼女・かおり(伊藤沙莉)の現在の様子が目に入りました。幸せそうな結婚式の様子や仲間とのジョギング姿など、どれも“普通”の写真ばかりでした。
朝帰りすると、別れた婚約者・恵(大島優子)が険しい顔で待っていました。荷物を取りに来た彼女は、佐藤が結婚する気がなかったことをなじり、「私の時間を返してよ!」と叫んで出ていきました。
2011年。
震災後の需要と会社の引っ越しが重なり、佐藤は憔悴していました。でも今日は、恵とその母(原日出子)との顔合わせの日です。ひどい格好で遅れて現れた佐藤に、恵は不機嫌に文句を言うのでした。
2008年。
テレビ局へ納品しに行った関口が、ディレクターの恩田(高嶋政伸)を殴ってしまいます。不当に値切られたのが原因ですが、関口は社長の三好(萩原聖人)にこっぴどく怒鳴られます。心配する佐藤に関口は、「俺、辞めるから。子どもできたから」と言います。そして、「なんでもいいから抜け出せよ、こんなとこ」と言い放つのでした。
2000年。
佐藤は自分の部屋で、ワープロに小説らしき文章を打ち込んでいます。しかし、すぐに行き詰まった佐藤の頭に、「君は大丈夫。おもしろいもん」というかおりの言葉が浮かびます。
関口に誘われて、大黒の番組のパーティにやってきた佐藤は、そのバブリーな場の雰囲気になじめません。VIPルームでドラッグをやりながらシャンパンを飲む関口。そこに佐内という、スポンサー企業の怪しげな社長が何人かの女の子を連れて現れ、同意の上で持ち帰って良いと豪快に笑います。そして佐内自身は店で働く女と、廊下でキスをしていました。外に出て自動販売機で買った飲み物を飲んでいた佐藤の横に、さっき佐内とキスしていた女がやってきてタバコを吸い始めました。「絶望してる人見つけるの、得意なの」と女は言います。
ゴールデン街の行きつけのバー・レイニーで飲んでいる佐藤や関口たち。佐内とキスしていた女・スー(SUMIRE)に連絡先を聞いていた佐藤は、皆にたきつけられて彼女を呼び出します。近所に住んでいてすぐにやってきたスーは、職業不詳で英語・韓国語を話し、中国語は勉強中。歌もうまく、店内は盛り上がります。ママのナナちゃん(篠原篤)にスーを送るように託された佐藤は、いい雰囲気になって彼女の部屋へと上がり込みます。
ほどなくして彼女の携帯電話がなり、仕事が入ったとスーは謝ります。実は、部屋は佐内が借りていて、スーはそこで売春をさせられていたのです。中国人の客を見送ったあと、スーは外で待っていた佐藤の姿を見つけて抱きつきます。そしてスーは、自分には何もないけど、こんな毎日でもキライじゃないんだ、と話すのでした。
ほどなくして佐藤たちは、テレビのニュースで佐内が逮捕されたことを知ります。売春がおこなわれていた場所としてテレビに映ったのは、あのスーの部屋です。佐藤はスーに電話をかけますが、もう使われていませんでした。
ボクたちはみんな大人になれなかったのネタバレあらすじ:承
1999年大晦日。
円山町のラブホテルで新年を迎えた佐藤は、ベッドにいるかおりに一緒に住まないかと持ちかけます。「いや、なんか、ほんと、普通だなーと思って…」とかおり。翌朝、坂道の分岐でかおりは、「今度、CD持ってくるからね」と言って別方向へ歩いていきますが、それが最後になるとはこのとき佐藤は思っていませんでした。
1998年。
佐藤の部屋の郵便受けには、買い付けのためインドに行っているかおりからのポストカードが届いていました。
狭い事務所でこき使われている佐藤は、宮嶋徹(奥野瑛太)という暴力団の男が銃撃で死んだニュースを見て、その男に見覚えがあると思いました。
原付バイクでテレビ局に納品に行った佐藤は、ディレクターの恩田に遅い!と怒鳴られ、3割引けよ、と言われてしまいます。帰り道、佐藤は大声で歌いながら事務所に戻りました。
キャバクラ接待から戻った社長の三好は佐藤に、食えるようにしてやるから結婚しろよ、と言ってきます。彼女がそういう“普通”を馬鹿にしてるんで、と佐藤は答えます。
1997年。
まだ従業員が佐藤と関口しかいない頃。仕事が忙しい最中、佐藤のポケベルにかおりからの連絡が入ります。レンタカーを借りたから、行き先を決めずにドライブしようと言うかおり。急に休めないと困惑する佐藤に、「ほんと、普通だよね」と不満そうなかおり。関口が気を利かせて「行ってくれば」と後押ししてくれたので、佐藤はあてのないドライブに出かけました。
カセットテープやMDで好きな渋谷系の音楽を聞きながら、流行りのレンタカーを走らせるふたり。畑の中の道で休んでいた佐藤は、使い捨てカメラでかおりの寝顔を写します。目を覚ましたかおりは、夕陽の美しい光景に車から飛び出し、佐藤に「おいでよ!」と手招きするのでした。
順調に渋谷でデートを重ねるふたり。円山町のラブホテルの常連となり、フロントのおばあちゃんに差し入れする仲に。シネマライズ渋谷で映画を観たり、タワーレコードでCDを買ったり…。遠い国からやってきた古着にロマンを感じるかおりは、佐藤が流行のブランド物を着ることを嫌い、古着屋で自分好みの服を選んで着せたりしていました。
1996年。
激務で疲労が溜まっていた佐藤は、納品前にバイクで転倒してしまいます。路上に散らばった物を拾っていると、一台の高級車が停まりました。降りてきたのは暴力団の若手らしい男です。車内から「宮嶋、早くしろ!」と怒鳴られながら、男は拾うのを手伝い、佐藤の心配をしてハンカチで止血してくれました。
いつものラブホテルで、佐藤はかおりに仕事に対する不満を話しています。かおりは中島らもの小説を引き合いに出し、佐藤の身体にも他人の文字が残っているはずだから、小説とか書いてみたら?と勧めてきました。俺には何もないよ、と佐藤が言うとかおりはこう言います。
「君は大丈夫だよ。おもしろいもん」
ボクたちはみんな大人になれなかったのネタバレあらすじ:転
1995年。
佐藤は焼き菓子の工場で、外国人らと一緒に働いていました。芝居をやっているという七瀬(篠原篤)は、一回見に来てよと誘いますが佐藤は断っています。休憩時間にアルバイトの求人情報誌を見ていた七瀬は、文通希望欄の内容を読み上げ始めます。“犬キャラ”というペンネームに反応した佐藤は、それが小沢健二のファーストアルバムのことだと説明します。そのページをもらった佐藤は、帰宅後悩みながら犬キャラに手紙を書きました。
すると後日、きれいな封筒に入った手紙が犬キャラから届きます。好きな音楽などについて何度かやりとりしたあと、ふたりはラフォーレ原宿でおこなわれているイラストレーター・MAYA MAXXの展覧会を見に行く約束をします。目印はWAVEの袋。
初めて会ったふたりはちょっと大人っぽい喫茶店に入り、ぽつぽつと話し始めます。好きなアニメの話や服の話など、個性的な彼女の考え方に佐藤は惹かれていきます。その帰り、彼女は“かおり”という名前を教えてくれました。
かおりに応援され、佐藤は三好の立ち上げる会社に応募し、関口とともに採用されました。公衆電話で報告すると、お祝いにラブホテルに行こうとかおりは言います。戸惑いながらも「よろしくお願いします」と答える佐藤。
工場を辞める佐藤に、七瀬は花束を渡します。佐藤は去っていき、他の外国人従業員たちは七瀬に追わなくていいのか声をかけます。「俺に好きだって言われても迷惑でしょ?」と七瀬は力なく答えました。
一方、バイト終わりのかおりと待ち合わせしていた佐藤は、ふたりで円山町のラブホテル街を歩いていきます。少し路地を入った安めのラブホテルにチェックインすると、ぎこちない様子でテレビを見たり、バスルームを使ったりして、そのあとようやくふたりは結ばれます。宇宙空間のような星空の天井の下で、かおりは「うれしいとき、悲しい気持ちになるの」とつぶやくのでした。
ボクたちはみんな大人になれなかったの結末
2020年。
佐藤は部下の黒崎と、テレビ局の人間、計4人でオンラインでの打ち合わせをしています。先方の要望と少し違うものを作ってしまった黒崎をフォローしつつ、うまく相手を誘導した佐藤は、打ち合わせのあと黒崎に無茶しないよう伝えます。しかし黒崎は、「適当にやると自分がダメになる気がする」と答え、飲みに誘う佐藤を逆にたしなめるのでした。
コロナ禍の町で、これ以上飲まないよう店から帰らされた佐藤が歩いていると、1軒の店から「二度と来るな!」とひとりの男が追い出されていました。よく見るとそれは七瀬でした。ゴールデン街の店を閉めてしまった七瀬は、うまくいかない人生を送っているようです。
「あんたホント、やらしい大人になったわね」と言って七瀬は佐藤につかみかかります。ふたりはゴミ置場に倒れ込み、七瀬は「私には何もない。みんな私を置いていくの」と泣き出します。佐藤は「うちくる?」と言ってみますが、七瀬はその中途半端なやさしさに怒り、悲しげな顔でタクシーを停めると佐藤を押し込みました。
佐藤はラジオから流れる小沢健二の『彗星』を聞きながら、車窓に1995年からの過去の映像を見ています。円山町近くでタクシーを降りると、かおりと最後に別れたあの坂道へやってきました。廃墟となったラブホテルを見ながら、あの時間の止まったような星空の部屋での会話を思い出す佐藤。かおりのバイト先を通り過ぎ、かつてふたりで歩いた道を歩き、やがて佐藤は走り出します。
思い出される顔は、恵、関口、七瀬、スー、三好、恩田…、そしてかおり。
走って行き着いたのはラフォーレ原宿の前でした。初対面のふたりを思い出し、佐藤はつぶやきます。
「ほんと、普通だわ」
以上、映画「ボクたちはみんな大人になれなかった」のあらすじと結末でした。
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