鈴木先生の紹介:2012年日本映画。武富健治の漫画が原作。テレビドラマの劇場版で、普通の中学教師が真面目に教育問題に取り組む姿を描いた作品。主演はドラマと同じく長谷川博己。同僚教師役に田畑智子。主人公の妻役は、臼田あさ美が演じる。生徒役には土屋太鳳、北村匠海に未来穂香がいる。
監督:河合勇人 出演:長谷川博己(鈴木先生)、臼田あさ美(鈴木麻美)、土屋太鳳(小川蘇美(2-A))、北村匠海(出水正(2-A))、ほか
映画「鈴木先生」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「鈴木先生」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
鈴木先生の予告編 動画
映画「鈴木先生」解説
この解説記事には映画「鈴木先生」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:プロローグ:鈴木先生、また妄想する
緋桜山中学校の体育館の壇上、鈴木先生は「生徒会選挙の結果を発表します。生徒会長に当選したのは、2年A組・小川蘇美」と選挙結果を発表しました。小川蘇美が鈴木先生の後ろから出てきました。彼女は挨拶をして「私は学校を良くするために、変えるべきところは変えていこうと思います。まず、第一に公約通り、先生と生徒との恋愛を自由とします!」と発表しました。わき上がる拍手の中、鈴木先生と小川は見つめ合い、そして抱き合い、キスをしようとしたそのとき、体育館の入り口が開き、鈴木先生の妻・麻美が鎌を持って鈴木先生を襲ってきました。ハッとベッドの上で飛び起きる鈴木先生、「またか…」と思い、台所に行くと、妻・麻美が朝食の支度をしていました。霊感の強い麻美は、鈴木先生の顔を見るなり、吐きそうになったので、彼は自分の見た夢がばれてしまったのかと思い、狼狽えて謝りました。しかし、それは誤解で、吐きそうになったのは麻美のつわりでした。ホッとした鈴木先生は麻美の背中を優しくさすり、食事を摂り、学校に出勤しました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:鈴木先生、生徒会執行部について話す
学校への出勤途中、鈴木先生は、脱却したはずの小川への妄想が夢になって今も現れることを頭の中で考えながら、出勤していました。そのことで頭がいっぱいだったためか、卒業生と肩がぶつかり、はたと気づくと、鈴木先生はもう学校の校門の手前まで来ていました。鈴木先生は、おでこに指をあて、自分であみ出した技「鈴木先生30の秘技」の1つである「校門をくぐった瞬間にクールで爽やかな教師に変身するの技」をかけ、校門をくぐった瞬間から明るく爽やかに生徒たちに「おはよう」と挨拶をして、学校に入っていきました。
その日は、各クラスで次期生徒会の執行部の立候補者を決めなければならない日でした。鈴木先生が担任する2年A組のホームルームでも、それを検討していました。「生徒会って面倒だよな」「誰がやっても同じ」などとそれぞれの生徒が勝手に自分の意見を友人と呟いていました。鈴木先生はそんな中、小川が黒板に向かっている姿を見ながら、頭の中で「小川病再発の対処法は、原点への再確認することだろう。俺が小川を特別視するのは、俺の実験に関わる“スペシャル・ファクター”であり、…事実、この半年で小川の存在によって、他の生徒たちも少なからず変革をとげている…そろそろ、次のステップに移行してもいい頃だ」と考えていました。立候補者なかなか出ないため、鈴木先生は、生徒たちに「おい、…確かに、生徒会はストレスも多い、面倒な仕事だ。だが、その分、理性や感情をおもいっきり鍛えられるいいチャンスだぞ」と言って、生徒たちに発破をかけました。すると、今度は役員立候補のなすり合いが始まりました。その時、突然、中村加奈が立ち上がって、「やってみようかな」と生徒会長に立候補しました。「ナカ、がんばれ」などと励ます生徒や「内申書目当て?」と冷やかし笑う生徒たちに、鈴木先生は「選挙は、政治は、と言い換えてもいいかもしれないが、両立の難しい二つの要素を両立させうる存在に、自らがなるところから始まる。…苦労をしただけのことは絶対出てくるぞ」とさらに発破をかけました。すると、中村は小川に「一緒にやらない」と声をかえると、小川は「書記なら」と言って承諾しました。あとは副会長ですが、藤山が「俺、やります」と手を挙げました。藤山はみんなから「小川が出たから…」「下心、見え見え」などと冷やかしました。これでようやく、2年A組の生徒会役員の立候補者が決まりました。しかし、鈴木先生はあとで自分もやりたいという人は立候補すればいいと付け加えました。続いて、議題は文化祭での出し物についての検討になりました。予定としては、大きく分けて、演劇にするか模擬店にするかですが、真っ先に山口が手を挙げ、「演劇がやりたいです。…去年、鈴木先生から指導されて、とても感銘を受けました」と意見を出しました。鈴木先生は過去に演劇団体にいた経験があり、演劇には一家言を持っていました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:鈴木先生、平良を強引にエントリーする
職員室に戻ると、2年B組担任の桃井先生が席に戻って来ました。隣の席なので、鈴木先生が訊いてみると、「立候補者がなかなか出てこない」と悩んでいました。鈴木先生は、「選挙なんて、かっこ悪いというシャイを装う文化が、この国にはありますからね~」と言って、「平良はどうですか?」と訊くと、「人前に出るのはどうしてもダメ」と言われて断られたことを話しました。それを聞いた鈴木先生は、休み時間に「無理です、嫌です」と言う平良をあまり説得しようせず、「いやこれは決定だ。エントリーしとくからな」と言って立ち去りました。放課後、鈴木先生は2年B組の教室に、平良の友達たちから呼び出されました。平良もその教室にいました。友達たちは鈴木先生が彼女に生徒会役員に強引にエントリーしたことに腹を立てていました。鈴木先生は「平良は人望も厚い…立候補する身としては恵まれているんだ」などとエントリーした理由を説明しましたが、友人の神田は鈴木先生に詰め寄って、「幻滅しましたよ。よくそんながさつな事が言えますね!…恵まれているからがんばれということが、どんなに危険かわかってるんですか!」と言ってきました。それに対して鈴木先生は、「がんばれ、がんばれと無理強いし、過度な期待をよせることが、危険なことは、俺だってよくわかってる。だが、その考え方にとらわれてしまうこともまた危険なことなんじゃないか?がんばれ、がんばれと無理強いさせたからこそ、一歩を踏み出せる人間がいることも事実なんだ」と反論し、自説を曲げませんでした。そう言うと平良のところに行き、彼女に「お前が本当厳しい期待を望んでいる人間なのか、それとも本当にそっとしておいてほしい人間なのか、俺も確証があるわけじゃない。…俺を恨みながらでもいい、がんばれるだけがんばってみないか」と説得、励ましました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:鈴木先生、自分の教育メソッドを再検討する
その後、卒業生の白井義男が学校にやってきました。白井は元、不良でした。鈴木先生は白井が自分に相談に来たと思っていたのですが、職員室に入るなり、岡田先生のところに相談に行きました。鈴木先生は笑ってごまかしました。そして、白井は岡田先生と相談を終えると、鈴木先生に「鈴木さん訪ねてくる奴いるのかな。俺たち不良のこと相手にしなかったよな。…鈴木さん、訪ねてくる奴いる?ほとんどいないだろ。…本当の人の評価は時が経ってわかるものだよな。…」と言って職員室を出ていきました。鈴木先生は自分の教育メソッドについて改めて考えました。下校時間、学校の近くの公園に1人の青年がやって来ました。彼は卒業生の勝野ユウジです。勝野は公園の喫煙場所のベンチに座り、のんびりとたばこを吸っていました。すると、公園に卒業生の田辺満がとぼとぼとやって来ました。田辺は勝野の隣のベンチに座りました。勝野は彼に話しかけるように「秋だね」と呟き、2人は暫くそこで会話をするでもなく、ただ座っていました。その頃、副会長に立候補した藤山は、小川目当てかと、出水や岬たち5人の生徒たちに階段の所で囲まれ詰問されていました。藤山は小川目当てではない、彼女の事はもう吹っ切ったと言って、その場を立ち去りました。出水は追いかけようとする他の生徒たちを制し、「あいつは結局あっち側の人間なんだ」と言い放ちました。鈴木先生は学校内の喫煙室で、ひとりたばこを吸いながら、白井に言われた事を思い出し。改めて自分の教育メソッドについて考えていました。そして、小川だって将来どうなるかと、風俗店で働く色気ムンムンの女性になった小川が、自分に「一晩で5人も相手すると疲れるわ。お客さんもどう?安くしとくわよ」とたばこを吸いながら誘ってくるという変な妄想をしてしまいました。たばこの火で火傷して、目が覚め、「何を考えてるんだ、俺は」と反省しました。そして、鈴木先生は過去の経験から、これは何か新しい問題が起こる暗示なのかもしれないと思いました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:天敵・足子先生が復帰してくる
その暗示が的中し、校長先生から、1学期の終わりに鈴木先生と教育方針の対立でヒステリーを起こし、心が壊れてしまった足子先生が、自宅療養を終えて、明日から復帰するという知らせがありました。翌日、足子先生は颯爽と学校に復職して、笑顔で職員室で挨拶をしました。先生全員が拍手で迎えましたが、足子先生の脳内で鈴木先生の存在を消すという能力を持って復職したようで、彼女には鈴木先生はいない者として扱われてしまいます。足子先生は、自分の席に着くなり、後ほど職員会議で提案したい事があると言ってきました。そして、職員会議が開かれました。足子先生は「生徒会選挙に文化祭、2学期は行事で目白押しです。毎年、その指導主任の私が休んでいるわけにはいきません」と言うと、生徒会選挙のあり方について提案してきました。彼女は「全員参加で実現する公正な選挙」と書かれた張り紙を貼り、投票率の低下に歯止めをかけましょうと呼びかけました。足子先生は「生徒会選挙は大人になってから本物の選挙に参加するための練習、つまり、社会学習の一貫です。白紙や悪ふざけのような投票を容認すべきではありません。…今年はこれを実行したいと思います。…責任をもった選挙をするよう指導してほしい」と先生方に呼びかけました。この意見を受けて、校長先生は多数決を採りました。鈴木先生は少し迷いましたが、挙手し、満場一致で足子先生の方針は可決しました。その後、喫煙室で、川野先生、江本先生と鈴木先生は、足子先生の提案について話していました。するとそこに桃井先生が来て、「鈴木先生、良かったんですか」と聞きに来ました。鈴木先生は、足子先生の意見に躊躇したのは「投票を拒否する側にも理由があるのかもと思いましたから…ただわからない時にはグレーゾーンを設けておくのも有りかなと…」と思ったからですと理由を話しました。学校内の掲示板に足子先生の「全員参加で実現する公正な選挙」と書かれた張り紙が張り出されました。それを出水、岬ら5人の生徒が不満そうに見ていました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:鈴木先生、演劇練習の意義を話す
ある日の2年A組のホームルームでは、山口が先頭にたち、文化祭の演劇『ひかりごけ』の練習をしようとしていました。しかし、生徒たちはあまり真剣に練習しようとしないので、山口は怒っていました。数人の生徒たちは「みんなで楽しくやればいい」「演劇は苦手」「興味がない」「自分は将来俳優になりたいわけじゃない」などの意見が出て、練習が中断してしまいました。その様子を見ていた鈴木先生は、生徒たちに演劇の練習をすることの重要性を「みんなはこの先、社会に出て、世の中を知る。それは思っていたほどいいものじゃないかもしれない。嫌な上司もいるだろう。もしかしたら、落ち込んで自分自身を見失うこともあるでしょう。そんなときは演じてみる。俺は教師という役を演じてる。演じてるうちに自分と役との境界がなくなってくる。自分自身を成長させる一つの手法なんだ。…この世の中は各々が役割を演じることで成り立っている部分もあるんだ。それに嫌な上司もまた嫌な上司を演じているだけかもしれない。そう考えれば、この世の中は、それほど悪いものじゃないだろ」と説明しました。鈴木先生の説明が終わるとちょうどチャイムがなりました。山口は放課後、公園で自主練習すると呼びかけました。放課後、山口を中心に2年A組の数名の生徒たちが公園で、演劇の練習をしていました。勝野と田辺はベンチに座って、その様子を眺めて「あの頃、俺たちも未来は輝かしいものだと思ってたよな」「どこで間違えたのかな」と話していました。すると練習に夢中になった河辺が1人、勝野たちの所に近づいてきました。他の練習中の女生徒たりが、そんな河辺に気付き、勝野たち二人を不審者であるかのように見て、河辺を連れ戻しました。何とも言えない嫌な雰囲気を感じ、帰ろうとした引き籠もりの田辺に、勝野は「ちょっとずつでも、外出る習慣を増やしていかないと、また、逆戻りだぞ。ここは、誰もがいていい公園なんだから」と優しく諭しました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:謎、出水正が生徒会長に立候補する
ある日の2年A組のホームルームで、突然、出水正が、生徒会会長に立候補すると手を挙げました。続いて、彼の友人の岬勇気が彼の応援責任者に名乗り出ました。ちょっと不穏な雰囲気が漂う教室で、会長立候補者・中村の応援責任者の入江が、既にA組からは中村が立候補しているので、2年A組はみんなまとまって中村を応援し投票しようと、みんなにアピールしました。それを見ていた鈴木先生は、入江のアピールを制して「選挙というのは人間関係やしがらみで投票するものではない。また、他人にそれを強要したり、そういう雰囲気をつくることもいけないんだ。自分の頭で考え、自分の意思で投票する。その一票は他の誰でもない自分自身が責任を負う一票だからだ…」と生徒たちに選挙で投票するという意義について説明して、出水の立候補を認めました。鈴木先生は、人前に出たがるタイプではなく、生徒会の興味があるようでない出水正が突如、立候補したこと、続いて岬が応援者として名乗り出た2人の一連の団結した行動に不信感と何らかの企みを感じました。職員室で鈴木先生は、同じ学年の先生にこの2人の行動に何か目論見があるのではないかと相談しました。そのとき足子先生が職員室に入ってきました。足子先生は自分の選挙に対する思いが生徒たちに伝わってきたようで嬉しそうでした。その様子を見て、鈴木先生はさらに出水たちの動機と企みを知ろうと思いました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:鈴木先生、公園について考える
そう考えていたときに、鈴木先生のところに、山口が走ってきました。山口は、演劇の練習を公園でしているが、そこに不審者がいて危なそうということを伝えに来ました。その話を耳にした足子先生は、至急、職員会議の開催を求め、職員会議で公園に不審者がたむろしないように、喫煙所の撤去するという提案をしてきました。鈴木先生は、「請求に撤去するのはどうかと。これから私がついて練習をするようにしますから」と言いましたが、足子先生の耳には入ってきません。桃井先生が「撤去についてはもう少し調査して慎重にしないと」と鈴木先生の意見の援護をしました。その意見に校長先生も「学校として撤去を申し出るには調査が必要」ということで、当面は公園で練習するときには、先生が必ずついて練習することになりました。ある日の放課後、公園で鈴木先生と生徒達が文化祭の演劇の練習をしていると、勝野と田辺がいつものように、喫煙所のベンチに座っていました。また、生徒たちから不審者を見るような目で見られている雰囲気を感じた田辺は、いたたまれなくなって「帰るよ」と呟き、帰ろうとしました。彼を追って席を立ち、帰ろうとする勝野と田辺を見て、鈴木先生は駆け寄り、「すいません。お騒がせしちゃって…」と言うと、勝野は「迷惑でしょ」と言うので、鈴木先生は「いや、僕も公園ぐらい息抜きできる場があっていいと思うので」と思いを伝えました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:鈴木先生、出水の立候補の謎に近づく
生徒会役員選挙が近くなり、候補者たちは各々、選挙活動を始めました。出水は「出水です。全ては立ち合い演説会のときに」と言うだけの挨拶でした。また、選挙ポスターも当選しようという意気込みが感じられないものでした。鈴木先生は益々、出水の立候補の動機を知る必要があると思いました。鈴木先生は、東小学校で生徒会長を決めるときに、記名投票で選挙をしたときの事件が出水の立候補の動機ではないかと思いました。それは、東小学校で出水の親友のワタリという生徒がいて、そのワタリは真面目で生徒会にも熱心で誰もが彼の当選を信じ願っていたそうでしたが、結果は当時、テレビの人気子役をしていた生徒が当選し、そのショックでワタリは登校拒否になり、今も不登校児専門学校に通っているという事件でした。ある日、鈴木先生が妻と食事をとっていると、テレビで、ある公園で児童に強制猥褻した犯人が捕まったというニュースが放送されました。鈴木先生は嫌な予感がしました。案の定、翌日、職員会議で足子先生が公園の喫煙所撤去を学校で申し出ることを強く要請しました。数日後、田辺は勝野と共に公園に行く道中で、田辺は、中学校のとき不良だった同級生たちが今は成功しているという噂話を母親から聞かされて、「もう、頭がおかしくなりそうだよ」と勝野に嘆いて座り込んでしまいました。勝野はそんな田辺に「家に籠もらずに出て来いよ」と慰めました。そして、2人が公園に行ってみると、今まで唯一の息抜きの場所であった喫煙所が撤去され、「不審者出没注意」という看板まで立てられていました。鈴木先生と川野先生は、校内の喫煙室で公園の喫煙所撤去について話をしました。2人は世の中を息苦しくする手伝いをするのはたまりませんねと言うと、川野先生は「私はもう、キレて犯罪に走る若者を心の底から叱りとばせないです。…」と呟きました。鈴木先生は「公園に逃避する若者を、僕は他人には思えない。…」と吐露すると、川野先生は「あなたにもそんな時があったんでしょ。…そんなとき、公園で遊ぶ女の子を見て、良くない妄想をすることもあったんでしょ」と言って、2人は笑いました。川野先生は「結局は人間ですよ。人間自身が成長しなければ、何も変わりません。それこそが我々の仕事です」と言いました。鈴木先生も同感しました。鈴木先生は足子先生のあの張り紙を見て、これが出水の動機だと感じました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:生徒会選挙立ち合い演説会始まる
いよいよ生徒会選挙立ち合い演説会の日が来ました。各候補者、立派な演説をして、順調に演説会は進んでいきました。そして、2年A組の中村の演説が始まりました。中村は最初緊張しすぎて、失敗してしまいます。しかし、クラスメイトの励ましの声で落ち着きを取り戻し、開き直って見事に演説を終えました。さあ、問題の出水の演説の番です。先生方は何か起きるといけないので、配置につきました。出水は、「僕がこの場に立っているのは、今行われようとしている生徒会選挙に異をとなえるためです。…僕が生徒会長になったらこの生徒会選挙を改正します。…僕が本当に批判したいのは、みなさんではありません。僕が怒りを覚えるのは、そんな不真面目な投票者の1票と真剣な投票者の1票を全く同じ重さでカウントするこの選挙のシステム、そのもの、そして、闇雲に投票率を上げようとし、不真面目な人たちに投票を強要する学校側の方針です」と熱弁しました。その後、岬が東小学校時代の選挙のことを話し、選挙をボイコットしてきた理由を述べ、足子先生の張り紙を破り捨てました。すると、足子先生が「君たちの言いたいことはわかります。ではこれに変わる優れた選挙があるの」と反論しましたが、出水と岬は、このシステムでしかたがないのなら、投票を拒否する権利も認めてほしい、闇雲に取り締まらないで欲しい」と足子先生を論破しました。立ち合い演説会が終わり、職員室に戻ると、足子先生は、自分が論破されたことを忘れるという能力で「いい演説会でした」と言い普段通りの様子を保っていました。他の先生方がその姿に驚いていると、平良が鈴木先生を呼びに来ました。平良は廊下で鈴木先生に「私を逃げ場のないところまで追いつめていただいて、ありがとうございました」とお礼を言って、帰っていきました。翌日、勝野が外に出ると、引きこもり仲間の友人・田辺が金属バットで母親を殴ったそうでした。勝野は部屋で中学校のアルバムを見て、そして、勝野は生徒たちが下校する時間に中学校の校門の前に立ち、昔を思い出していました。その時、勝野は小川から「こんにちは」と声をかけられました。ちょっと2人は会話し、別れました。勝野は小川の後ろ姿を見ながら「かわいそうに」と呟きました。その後、勝野は撤去された公園の喫煙場所に行き、「ミツル、もうすぐ俺もそっちに行くからな」と何かを決意しました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:鈴木先生、勝野ユウジの凶行に立ち向かう
生徒会選挙の投票日、勝野ユウジは学生服姿で2年A組の教室に入り込みました。数人の生徒がそこにいました。勝野はその数人の生徒に「この中で一番真面目な女子は誰」と言い、1人の女子生徒にナイフをつきたてました。そこに鈴木先生がなかなか来ない生徒の様子を見に行かせた小川が入ってきました。勝野は小川が標的だったようで、小川の顔を見ると「来てくれたんだね。こっち来て」と言い、小川に名前を聞き、「やっぱり君じゃなきゃ、ダメだ。小川蘇美ちゃん、今から君をレイプします」と言って教室に立てこもりました。
心配した鈴木先生が教室に行くと、公園にいた男がナイフで生徒を脅して、小川が上着を脱いでいる場面でした。鈴木先生はこれは事件だと思い、教室に入り、公園にいた男を説得にかかりました。まず鈴木先生は勝野の心を少しでも静め話し合おうとしました。すると小川も「私も聞きたいです。どんなひどい行為でもちゃんと話を聞こうって心がけているから」と言いました。勝野はその言葉を聞き、「先生、本当にいい子育てましたね。俺もそうでしたよ。満もね、…でもさ、社会に出たら使い物にならなかった。…満なんて対人恐怖症で引きこもりになった。おかしいよね!…公園にぐらい息抜きできる場所があるべきじゃなかったのかね、先生!俺たちの居場所はもうどこにも無くなった。…あんたたちが好きな純粋で真面目な生徒なんて社会に出たら淘汰されるだけなんだ。…この小川さんなんて気の毒過ぎるよ。…助けてあげないと。…俺、心を鬼になって、レイプするよ。…」と目に涙を貯めながら、叫び狂い、小川にナイフを突きつけました。鈴木先生は、勝野に「学校教育における君の主張は、俺の考えととても近い。…学校教育は不良や問題児に手が掛かる分、手の掛からない普通の子たちの心の摩耗の上に成り立っている。…小川だって、君が思っているほど柔じゃない。純粋で真面目だが強かで逞しい面も持っている。君が汚してやる必要がない生徒だ。…この社会は真面目な人間が損をするしくみになっている。そのシステムでしかたがないのなら、せめて避難する場所、逃避する権利を認めてほしい。彼は生徒会選挙でそう主張したんだ。…俺は教育だけが世界を変えられると思ってる。こいつら自身が少しずつでも、世界を変えてくれると信じてみようじゃないか」と説得しながら、勝野に近づいて行った。そして、鈴木先生は勝野からナイフを取ることに成功しました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:小川、勝野に立ち向かう
しかし、勝野はスタンガンで鈴木先生を倒して、完全に発狂し、鞄から鎌を持ち出し、小川を連れて学校の屋上に行きました。この事件は学校中に知れ渡りました。同級生たちや先生方が集まって来ました。勝野は虚無感と薄ら笑いをし、解放されたかのように「空がこんなに青いなんて知らなかったよ。…どんどん集まれ。…おい、クラスメイト来いよ。…わめけ!騒げ!」と叫びますが、同級生も小川も何も言わず、静かにしていました。勝野は小川を脅しますが、小川は勝野に「私もあそこにもあなたの挑発にのってわめく人もいないし、あなたの望み通り騒ぎを大きくしようとする人もいないわ。…ただ冷静な自分を演じているだけ。自分を成長させる方法のひとつだって、先生に教わったの。みんなそれを実践しているの。…あなたは自分が壊れることを許した。…」と冷静に力強く語りました。勝野はそれを「さすが、俺の見込んだ子だ。益々犯しがいがあるよ。…」と言って小川に近づいていきました。小川は「そう簡単にできると思わないでください。私は全力で抵抗しますから。…私には、私の体に、自分自身のため以上の責任がある!」と勝野にきっぱりと言い放ちました。すると、生徒たちが「小川さんを返してください」と一斉に声があがりました。勝野は「静かにしろよ!」と泣き叫び、ついに小川に飛びかかっていきました。そして、鎌を小川に向けて振り上げたとき、足子先生が勝野の腕に飛びかかり、彼を制し、「やるなら、この私をやりなさい!」と勝野に叫びました。すると勝野は今度は足子先生を殺そうとしました。そこに小川が背後から飛びかかりましたが、その際、勝野の鎌が小川の首あたりを切りました。小川はひるまず、得意の空手の上段蹴りを放ち、勝野の顔を蹴りました。勝野がふらふらしている間に、小川は屋上のフェンスによじ登り、逃げようとしました。すると隣の校舎の屋上に鈴木先生がいました。小川はフェンスを越えて、隣の校舎の鈴木先生のほうにジャンプしました。奇跡的に、鈴木先生は小川の手をつかみ、彼女を助けることができました。勝野はそれを見て、気力を失い、持っていた凶器の鎌を落とし、そこを先生方に取り押さえられました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:すべて落ち着くところに落ち着く
小川の首の切り傷も、鈴木先生、足子先生の傷も幸い軽傷でした。事件を起こし警察に連れて行かれる勝野に、鈴木先生は「俺も一歩間違えればお前のようになってしたかもしれない。無理して世間に恥じる必要も詫びる必要もない。お前自身の、もし存在するのなら、お前が好意を寄せる一部の人間の為にでいい、甘んじて罰を受けながら、これからのことをじっくり考えて来い。…お前もまた世界を変える一人のはずだ!」と言いました。勝野はパトカーの中で泣きました。鈴木先生は命がけで勝野に向かって行きケガをした足子先生にお礼を言いました。足子先生は脳内で鈴木先生の存在を消さず、「いえ、当然のことですから」と言いました。生徒会選挙の結果が出ました。それは先生方の予想と全く違う結果でした。他の先生方が対策を考え当惑している中、鈴木先生だけは「別に無茶苦茶でも最悪でもないと思いますよ。どんな結果であろうと、責任は自分たちでとらせなければなりません」ときっぱりと言いました。選挙結果が張り出されました。生徒たちにとっても、それは意外な結果でした。出水が生徒会長に当選したのでした。公約で選挙システムを変えると言った出水は、戸惑いました。そんな出水にみんなが励ましました。中村は「あんた、やんなきゃいけないんだよ!文句言ってるだけなら、単なる不満分子だ」と言って、出水に決断を促しました。出水は決心しました。これで新生徒会執行部は、生徒会長は出水、副会長は平良、書記は小川と決まりました。まず最初の仕事として、出水は文化祭を開催させてもらえるように、先生と保護者を説得することですと答えました。
鈴木先生の詳細あらすじ解説:エピローグ:鈴木先生は先生を演じ続ける
文化祭の練習も大詰めで、体育館で生徒たちの演劇の練習を見ていた鈴木先生は、女子生徒から「鈴木先生の生徒が訪ねてこないのは、それぞれの場所で一生懸命がんばっているからなんだね」と言われました。鈴木先生は授業をしている最中にこう思いました。「俺たちはときには滞り、後退し、道を踏み外しそうになりながら、なんとかかんとか、少しずつ成長していく。こいつらは教えられる人間を演じながら、折に触れ、色んな事を教えてくれる。そして俺たちはこいつらに教えられながら、先生を全身全霊で演じていく。世界は変わりつつある。そう信じて、今日も俺は教え続ける」と。
以上、映画「鈴木先生」の詳細あらすじ解説でした。
シン・ゴジラで大ブレイクし、大河ドラマ「麒麟がくる」の主演を務める長谷川博己の初主演ドラマ。
麒麟がくるにもこの映画のゲストである風間俊介が出ているので感慨深いです。
これまで実験だと言って革新的な指導をしてきた鈴木先生ですが、ある意味これまでの教育課程そのものが実験であり、その失敗作かのような扱いを受ける勝野を始めとした、社会にうまく適当できなかった人たちの責任の所在という銃口が学校に向けられた瞬間が痛切です。
それっぽい正しい事を言って、それが説得力を持って上手くいってしまう主人公補正の強い鈴木先生だからこそ、この答えの出ない問いに当たった時にどうするのか、どうせざるをえないのかが明確に描かれていました。
最後に鈴木先生が勝野にお前もまた世界を変える一人のはずだ!と投げかけたこの台詞は、とても空虚な言葉で、学校はどうすることもできず、ただ生徒自身が自力で人生を変えて、世界を変えていくしかないという、いつもの鈴木式の出る幕ではない現実が重くのしかかるラストです。