鈴木先生の紹介:2012年日本映画。武富健治の漫画が原作。テレビドラマの劇場版で、普通の中学教師が真面目に教育問題に取り組む姿を描いた作品。主演はドラマと同じく長谷川博己。同僚教師役に田畑智子。主人公の妻役は、臼田あさ美が演じる。生徒役には土屋太鳳、北村匠海に未来穂香がいる。
監督:河合勇人 出演:長谷川博己(鈴木先生)、臼田あさ美(鈴木麻美)、土屋太鳳(小川蘇美(2-A))、北村匠海(出水正(2-A))、ほか
映画「鈴木先生」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「鈴木先生」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
鈴木先生の予告編 動画
映画「鈴木先生」解説
この解説記事には映画「鈴木先生」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
鈴木先生のネタバレあらすじ:起
緋桜山中学2年A組の担任・鈴木(長谷川博己)は、毎晩同じ夢に悩まされていました。それは、受け持つクラスの女子生徒・小川蘇美(土屋太鳳)の夢です。生徒会長となった小川が公約にした「教師と生徒との恋愛を自由化」。全校生徒が見守る前で小川と鈴木はキスをしようとします。すると妊娠した妻・麻美(臼田あさ美)が、鎌をもって襲ってくるという恐ろしい夢です。
鈴木は独自の教育メソッドを駆使して、理想のクラスを作ろうとしています。その上で必要な存在が小川で、真面目で誠実な彼女の魅力に取りつかれた鈴木は、小川に対して良からぬことをついつい妄想する癖があります。
この日は文化祭の出し物と、生徒会選挙に向けてクラスで話し合いが持たれました。明るくハキハキとした中村加奈(未来穂香)が生徒会長に立候補し、小川は書記に立候補することが決定。みんなで二人を応援しようと一致団結する中、不満そうな顔をする出水正(北村匠海)がいました。
その日の夕方、学校の卒業生である白井(窪田正孝)がひょっこり顔を出します。てっきり自分に用事があるのかと思った鈴木ですが、白井は別の教師に相談があって来たのでした。落ち込む鈴木に白井は追い打ちをかけるように、「あんたに相談しに来る奴なんているの?あんたはいつも優等生ばかりを相手にして、俺らみたいな不良は相手にしなかったもんな。」と告げます。
しかし鈴木が白井に対してあまり深く関わらなかったのには、理由がありました。彼のようなたくましい人間は一人で生きていける。一見普通に見える生徒のほうが、目をかけてやる必要があると考える鈴木。彼の行う教育実験が功を奏しているかは定かではありません。結果が出るのは生徒たちが大人になってからの話で、そんなことを考えつつも鈴木はまたも小川との変な妄想をするのでした。
鈴木先生のネタバレあらすじ:承
後日、出水が生徒会長に立候補したいと言い出します。「同じクラスから二人も生徒会長に立候補するとややこしくなる。」との声が出ますが、立候補は自由だと出水は言い切ります。そんな出水を見て、鈴木はなぜ彼が今更生徒会長に名乗り出たのか気になりました。
出水は成績優秀ですが、人前に出たがる人物ではありません。生徒会に興味があるわけでもなさそうですし、何かを企んでいるのではないかと疑う鈴木。もしやテロをしようと企んでいるのではないかと、鈴木は桃井先生(田畑智子)に相談し、周囲の教師にも出水のことを監視してもらうことにしました。
この頃、鈴木のクラスは文化祭の出し物である演劇の練習を生徒たちだけで公園でしていました。しかし公園は喫煙する人で溢れており、練習しずらいと生徒が鈴木に相談します。するとその話を横で聞いていた足子先生(富田靖子)がこのことを問題視し、職員会議が開かれる事態となりました。
鈴木が生徒たちだけで公園で練習をさせていたことも問題があるが、公園で喫煙を許すこと自体に問題があるのではないかと訴える足子。公園に喫煙所があるから怪しい人たちがたむろするのだとして、喫煙所撤去を訴えます。しかしこの日は、公園で練習する生徒たちに鈴木が付き添うことで話は収まりました。
後日、鈴木は出水の出身小学校で行われた生徒会長選挙の噂を耳にします。出水の親友は、生徒会長に立候補し、彼も応援していました。当選確実と思われたのですが結果は落選。そのせいで出水の親友は登校拒否となり、今でも学校に通えない状況になっています。
その日の夕方、妻の麻美と夕食をとっていた鈴木は、テレビのニュースで、公園で児童へのわいせつ事件が起きたことを知ります。翌日、足子先生が公園の喫煙所の撤去を再び訴え、公園で喫煙することはできなくなるのでした。
鈴木先生のネタバレあらすじ:転
生徒会選挙のための演説会が行われます。全生徒が体育館に集められ、立候補者の話を聞くことになりました。小川や中村の演説を終えると、次は出水の番になります。彼は開口一番、「生徒会選挙に異議を唱える!」と発言し、生徒をざわつかせます。「自分が会長になれば、選挙のやり方を見なおす。」と公約。
選挙率を上げるために、選挙では全校生徒に投票をさせるやり方がとられています。しかしこのやり方が本当に正しいのかと問う出水。選挙に出る者の中には、内申書の点数稼ぎのためや、演説が上手い者がいます。そんな彼らが選ばれるのは、おかしいのではないかと訴える出水は、次に投票する生徒たちの問題について語ります。選挙に興味がない者も投票することで、きちんとした選挙結果にならず、「もっと君たちも考えて投票するべきだ!」と出水は訴えます。
すると生徒たちからたくさんのヤジが飛んできます。すると「僕が本当に怒りを覚えるのは、学校側の方針です。」と、出水は小学校時代の苦い思い出を語り、適当な投票結果のせいで落選した親友の話をしました。すると足子先生が、「もし投票したい人がいなければ、該当者なしと書けばいいのよ。」と出水に語りかけます。「もし今の選挙方法が嫌なのであれば、何か他にいいやり方がある?」と問いかける足子。出水は、「投票したくない自分たちのような者を、そっとしておいてほしい。追い詰めないでほしい!」と言い返し、たくさんの生徒たちが出水に拍手を送るのでした。こうして演説会は終わり、明日は投票日です。
一方その頃、公園の喫煙所が撤去されたことを知って、居場所をなくした人物が二人いました。ここを憩いの場としていたひきこもりの田辺(浜野謙太)と、彼の中学時代の同級生で無職の勝野(風間俊介)です。二人は社会からはじき出され、公園だけが唯一の息抜きの場所でした。そんなある日、田辺が家庭内暴力を起こして警察に連行されていきます。それを知った勝野はやるせなくなり、社会に仕返しをもくろむのでした。
鈴木先生の結末
ついに投票日となりました。生徒たちが体育館に向かう中、制服を着た勝野が学校に不法侵入し、小川を人質に立てこもります。異変を感じた鈴木が教室に向かうと、勝野から脱ぐよう要求された小川が服を脱ぎ始めていました。
鈴木は勝野に目的は何かと問います。勝野は学生時代に教師が望むような良い子を演じていたが、社会に出た時に全く役に立たなかったと話します。大人になって成功しているのは不良だった者ばかりで、「公園が自分の居場所だったのに!」と訴えます。純粋で真面目な生徒は社会に出たら何の役にもたたず、間違った教育のために作りだされた自分のような者は被害者だと話す勝野。
すると鈴木は勝野の話はよくわかると語りかけ、彼に徐々に近づいて行きます。一瞬心を許したかに見えた勝野ですが、これは罠で鈴木をスタンガンで失神させ、次に鎌を持った勝野は小川を連れて屋上へと駆けあがって行きました。
「今から公開レイプをする」と宣言する勝野。恐怖を感じているであろう小川ですが、彼女はじっと勝野を見据えて彼の挑発に乗りません。これは、冷静な自分を演じるよう鈴木からの助言を実践しているのです。純粋で真面目な小川と、彼女を思い必死に助けをこう生徒たちを見て、勝野はたまらなくなり、そのまま小川に襲い掛かります。足子先生が小川を助けようとしますが、怒った勝野が鎌を振り上げて小川も足子もケガをしてしまいます。
驚いた勝野に小川が蹴りを入れるのですが、このことで苛立った勝野が逃げる小川を屋上の端まで追いつめ、小川は逃げ場所を失ってしまいました。すると、向かいの建物から鈴木が小川に手を差し伸べます。鈴木を信じた小川は思い切って屋上から飛び、鈴木は小川の手をとり、なんとか救い出すことに成功するのでした。
警察に連行される勝野に、鈴木は「罪を反省したらまた社会に戻って来い、お前も世界を変える一人のはずだ!」と声を掛けます。パトカーの中で勝野は、涙が止まりませんでした。
そして後日、投票結果が出ます。出水が会長に選ばれ、選挙を批判するために立候補した彼は動揺しますが、みんなから背中を押されて生徒会長を引き受けることにします。生徒たちの成長を見て、世界が変わりつつあるのではないかと思う鈴木は、今日も学校で生徒たちと向き合い奮闘するのでした。
以上、映画「鈴木先生」のあらすじと結末でした。
続いて、より詳細なネタバレあらすじを解説します。
シン・ゴジラで大ブレイクし、大河ドラマ「麒麟がくる」の主演を務める長谷川博己の初主演ドラマ。
麒麟がくるにもこの映画のゲストである風間俊介が出ているので感慨深いです。
これまで実験だと言って革新的な指導をしてきた鈴木先生ですが、ある意味これまでの教育課程そのものが実験であり、その失敗作かのような扱いを受ける勝野を始めとした、社会にうまく適当できなかった人たちの責任の所在という銃口が学校に向けられた瞬間が痛切です。
それっぽい正しい事を言って、それが説得力を持って上手くいってしまう主人公補正の強い鈴木先生だからこそ、この答えの出ない問いに当たった時にどうするのか、どうせざるをえないのかが明確に描かれていました。
最後に鈴木先生が勝野にお前もまた世界を変える一人のはずだ!と投げかけたこの台詞は、とても空虚な言葉で、学校はどうすることもできず、ただ生徒自身が自力で人生を変えて、世界を変えていくしかないという、いつもの鈴木式の出る幕ではない現実が重くのしかかるラストです。