泣いたらアカンで通天閣の紹介:2013年日本映画。坂井希久子の同名小説が原作の第5回沖縄国際映画祭Peace部門出品作品です。「うっとおしいって、幸せやな」と、大阪・新世界の商店街を舞台に、しっかり者の娘と人情もろい父親が織りなす親子愛を、笑いと涙を交えて描いた浪速の人情喜劇です。2013年テレビドラマ番組優秀賞受賞作の映画版です。
監督:位部将人 出演:木南晴夏(三好千子)、大杉漣(三好賢悟)、鈴木亮平(亀谷雅人・カメヤ)、山口美也子(亀谷典子)、綾田俊樹(亀谷保)、茅島成美(三好辰代)、唐渡亮(ツレコミ)、大路恵美(佐藤美加)、長谷川朝晴(細野)、長谷川稀世(亀谷正子)、野村修一(ヒロキ)、東風万智子(三好芙由子)、あいはら友子(哲代)、田中圭(ラーメン評論家)、ほか
映画「泣いたらアカンで通天閣」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「泣いたらアカンで通天閣」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
泣いたらアカンで通天閣の予告編 動画
映画「泣いたらアカンで通天閣」解説
この解説記事には映画「泣いたらアカンで通天閣」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
泣いたらアカンで通天閣のネタバレあらすじ:1.もう最悪や!
舞台は大阪・新世界、通天閣が見下ろす下町商店街です。そのどん詰まりの廃れた商店街に一軒のラーメン屋がありました。その名は「味よし」です。味がいいのかと言えば、それは名ばかりでラーメンは不味く、お店は閑古鳥が鳴いていました。切り盛りしているのは、不器用で喧嘩っ早い父・三好賢悟(ゲンコ)と祖母・辰代です。店の二代目となったゲンコは、愛する妻・芙由子に先立たれて以来、不味いラーメンしか作れなくなり、近所の人たちからも味音痴とからかわれています。そんなお店を陰ながら支えているのは、しっかり者の一人娘こと三好千子(センコ)です。
「お客さん、ど~せ、この男の作ったまっずいラーメンにカチンときて、喧嘩しとるんやろうけど、金なんかいらんから、さっさと帰ってもらえます。こちとら、色々忙しんですわ。ゲンコ!」「はい…」「ちょっとこっちき!あんたはよりによって何を売っぱらってくれとんねん!」「預けただけや!心配すな!」「どこにそんな保障があんねや!」亡き母の唯一の形見であるオパールの指輪を向かいの質屋に入れたゲンコに、センコは怒り心頭します。そんなOLセンコも会社の上司と不倫関係に落ち、それを誰にも言えずに思い悩んでいました。
そんなある日、ゲンコは1人の子供を預かると言い出します。2週間もお母さんが帰って来ないため腹を空かして盗みを働く佐藤翔太(スルメ)を、人情もろいゲンコは放っておけないのでした。センコは心配しますが、ゲンコはどこ吹く風です。そんなセンコのもとに、幼馴染・亀谷雅人(カメヤ)が帰ってきました。カメヤは味よしの向かいの質屋「亀谷」の一人息子で、10年前に新世界の町を嫌って東京へ出て行き、銀行員となりました。しかし、カメヤはある不祥事に巻き込まれ、会社に居づらくなり、銀行を辞めて大阪に戻って来たのでした。凹んで帰ってきたカメヤをセンコは笑顔で迎えます。
「たいへんや!センコ!」センコを突然、不幸が襲います。なんと不倫相手の上司が身重の妻と子供を連れて店に現れたのです。「おい!どういうこっちゃ!その腹ぼては!内の娘はなんじゃったんじゃ!こら~!内の娘、もて遊びよって~!このドスケベがー!」ゲンコは怒りまくります。駆けつけたセンコの機転でその場は収束します。しかし、この事は瞬く間に新世界の街中に知れ渡ります。「最悪や~!」センコの心は大きく傷つきます。「我慢することあらへんで。泣いたらええやん」「泣いたらアカン。笑わなアカンねん、この町では…」カメヤは優しくそっと寄り添いました。センコはそんなカメヤの温かさに身も心も開くのでした。
泣いたらアカンで通天閣のネタバレあらすじ:2.お父ちゃんの味
「冗談やのうて、ゲンコさん、俺にラーメン作らせてくれへんかな~」ある日、このままでは味よしが潰れると思ったカメヤは言い出します。「上等じゃ!おどれ、そこまで言うなら、やってみさらせ!」「おう!完全再現したるわい!」カメヤは味よし先代のラーメンの味を思い出しながら、初めてラーメンを作ります。「うん、かなり近いで、これ!」「い~やっ!全然ちゃう!」センコは褒めますが、祖母は一喝しました。「そおか~」「ま、ま、ええコースはいってるんやろうけど、残念ながらボール1個分はずれてんねん、君の人生は!」味音痴のゲンコは、落胆するカメヤに勝ち誇ったように言い放ちました。
「お父ちゃんの味、取り戻してくれへんか?」祖母はそう言うと突然、心臓発作で倒れてしまいます。そのまま、祖母・辰代は眠るように息を引き取りました。しかし、辰代は今際の際で先代のラーメンの旨味の秘密を口にします。センコとカメヤはそれをヒントに先代の味を再現します。「メッチャ、旨い!」「ありゃま!こりゃま!ゲンコのラーメンと全然違うがな~」「昔の三好の味や!」この客の声を聞いたゲンコは、一人嬉し涙を静かに流します。しかし頑固で偏屈なゲンコは、カメヤとセンコが作ったラーメンを店で出す事を許しませんでした。
「この、人さらい!」その数日後、スルメの母親がスルメを取り返しに店にやってきました。「おい!なんや、このオバはん!心配やったら、なんで4カ月も子供放っとくねん!」「大きなお世話や!あんた、何様のつもりや!」「金さえ渡しとったら、それで親のつもりか!」ゲンコとスルメの母親は激しい口論となり、母親はパニック状態に陥ります。「やめろや、ゲンコ」このスルメの言葉にゲンコは一瞬怯みます。そして、スルメは母親に連れられ、あっさりと家に帰っていきました。しかし、ゲンコはスルメの事が心配で心配でたまりませんでした。「どんだけ良うしてあげても、人の子や。血つながった母親には勝たれへん。諦め」「ワシにはできんわ!誰の子とか関係あらへん!」センコの忠告も聞かず、頑固一徹・猪突猛進なゲンコはスルメのもとに日参するのでした。
泣いたらアカンで通天閣のネタバレあらすじ:3.なんやねん!
そんなある日、ゲンコが怪我をして本当の血液型が発覚します。それはセンコとゲンコが血がつながっておらず、本当の親子でないという事を明らかにするものでした。実はセンコは母・芙由子の不倫相手の子だったのです。芙由子に惚れたゲンコはそれでも、彼女に土下座して結婚し、センコを我が娘としてこれまで愛し、育ててきたのでした。
「センコ…、今まで黙とってゴメンね。お前はワシの娘や…。芙由子~!」「なんやねん!ビービー泣くな!やかましい!気色悪いねん!」「気色悪いって…そんな~」「顔が汚いんや!」「いや~、ほんまに汚いわ~」「へたくそな嘘つきよって!騙されたこっちの身にもなってみ!」「もう、しません!」「当たり前や!せやけどな、一度引き受けたからには、最後まで責任とってもらうし!嫁に行くまで私はこの店に居座ったるからな!」「センコ…結婚するんか?」「当たり前や!」驚愕の事実を知ったセンコは、涙をこらえて父・ゲンコに怒鳴りました。
そんな二人の声を耳にしたカメヤは、ある決意を固めます。また、その時、実はセンコ自身も妊娠していました。しかし、それは不倫相手との子なのか、カメヤとの子なのか分かりませんでした。「おおきに。ありがとう。産んでくれて…。愛してくれて…」不安を抱えていたセンコですが、自分の出生の事実を知ったセンコ自身もある決意をします。
「だいたいお前みたいな女、嫁はんにもろてくれる男がどこにおんねん!」「ほな、俺がもらいますわ」「おお、そうしてくれるか。ありがとう。…はいっ?」「はっ?」センコと結婚して味よしの三代目となる決意をしたカメヤは切り出しました。「アカン…。アカンもんはアカン!」「ゲンコがアカン言うても、私はする!」一度はお腹の子を独りで産んで育てる決意をしたセンコでしたが、カメヤの愛に打たれ、彼と結婚することを決意しました。
泣いたらアカンで通天閣のネタバレあらすじ:4.結婚する!
「あの…、一つご報告したいことが…」「お前はクビじゃ」「センコは妊娠4カ月になります」「誰の子じゃ!」「僕の子です。まだまだ未熟な…」「じゃかましー!アホンダラー!だいたい順番が違うじゃ!」「俺がセンコのこと幸せにします。あんたにでけて、俺にでけんことあるかい!」憤ったゲンコに殴り倒されたカメヤは、ゲンコに言い放ちました。
「わしゃ、絶対認めへんからの」と言い放つゲンコに、二人の姿を見たセンコは歩み寄ります。「地球が滅亡しても、お前のことだけは守ったるって…。嬉しかった~。ありがとう。せやけどな、お父ちゃん。もうそろそろ、バトンタッチみたいや。お父ちゃん、私、結婚する」センコは幼い頃の想い出を語り、父・ゲンコに自身の決意を静かに話しました。布団にくるまりゲンコは涙を流しました。
センコとカメヤは結婚の準備にかかりました。「結婚式はやったほうがええ。なあ、ゲンコ~!あんたも綺麗な花嫁さん、見たいやろ~」「金は…お前らの新居のために使ったらええ。式は…ここでやったらええ!」これまで頑として反対していたゲンコの言葉に、二人は驚き、喜びました。「お前ら二人に任せといたら、いつまでも盛り上がらへん」とカメヤの両親は、善は急げとばかりに、今度の日曜に結婚式を挙げることにしました。
泣いたらアカンで通天閣の結末:5.この町が好きや
そして結婚式の日がやって来ました。ゲンコはスルメの家で大事件に巻き込まれますが、幸い一命を取り留め、無事二人の結婚式が味よしで開かれます。「なんやの?あれ…」「コントやで…」美しいウエディングドレス姿のセンコの横には、味よしの調理服に平ざるを持ったゲンコが神妙な面持ちで立っていました。そして、式は途中までつつがなく進みます。
「それでは誓いのチューをお願いします」「ちょと待たんかい!」「なんや、往生際が悪い」「こら!おっさん、気持ちよ~チューさせたらんかい!」「せんでもええねん、そんなもん!」「したいやんか~」「なんやったら、結婚もやめるか?」「まだ、そんな事言うとんか~」「もうええは、次、いこ!」「えっ?ええんか?」ヘンコな父・ゲンコは突如、我儘な事を言い出しますが、センコは機転を利かせて式を勧めます。
次はいよいよセンコからゲンコへの手紙です。それはセンコが小学3年生の時に書いた作文で、父・ゲンコがこっそり大切に隠し持っていたものでした。意外な展開にゲンコは感動し、涙します。「ゲンコ、私、知ってんで」「何をや?」意外なセンコの言葉に、ゲンコは驚きます。センコはゲンコが先代の味を知りながらも、祖母を悲しませないため、ワザとそのラーメンを作らなかったことを知っていたのでした。
「センコはアホやな。誰に似たんや?」「ゲンコに決まってるやん。あんた、私のお父ちゃんやろ」「そやな。お前はワシの娘やしな」「うん!」「おい!カメヤ!お前…幸せにせんかったら…」「待たんかい!なんで急に内の倅に偉そうにしとるんじゃい!」ゲンコは涙を見られないよう、新郎にカメヤにくってかかりました。「ゲンコ~!」そこにあのスルメが駆けつけて来ました。ゲンコのひたむきな愛情はスルメに届いていました。ゲンコはスルメを抱き上げ、大喜びします。
こうしてセンコはカメヤとめでたく結婚します。ゲンコはスルメは引き取り、味よしで育てることになりました。センコは通天閣に登り、呟きます。「この町が好きや」と。
以上、映画「泣いたらアカンで通天閣」のあらすじと結末でした。
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