夢売るふたりの紹介:2012年日本映画。主人公の貫也と里子夫婦は小さな小料理屋を営んでいます。ある日、調理場からの失火が原因で、店を全焼させてしまう二人。このことがきっかけで、二人の運命が大きく動き出すことに…。「人間最大の謎は、男と女。心と性を揺さぶる衝撃のラブストーリー」というキャッチコピーで、火事で全てを失った夫婦が再起を図るため、結婚詐欺を繰り返していくという物語です。この作品はその劇中で、切なくも危うい男と女の“愛憎”をきめ細やかに描いたヒューマン・ラブストーリー映画となっています。
監督:西川美和 出演:松たか子(市澤里子)、阿部サダヲ(市澤貫也)、田中麗奈(棚橋咲月)、鈴木砂羽(睦島玲子)、安藤玉恵(太田紀代)、香川照之(外ノ池俊作/外ノ池明浩)、笑福亭鶴瓶(堂島哲治)、ほか
映画「夢売るふたり」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「夢売るふたり」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
夢売るふたりの予告編 動画
映画「夢売るふたり」解説
この解説記事には映画「夢売るふたり」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:1.プロローグ:市澤貫也と里子、悲劇の幕開け
大都会・東京、ある早朝の築地市場、小料理屋「いちざわ」の板前・市澤貫也はいつもように、食材の仕入れに来ていました。その頃、その「いちざわ」の常連客・睦島玲子は、不倫相手の外ノ池俊作と一夜を共にし、別れて会社へ向かおうとしていました。その時、玲子は背後で車の急ブレーキの音を耳にしました。振り返ると、外ノ池俊作が交通事故に遭い倒れていました。30代の独身女性・棚橋咲月は、ばたばたとした実家でいつものような朝を暮らしていました。ウェイトリフティング選手の皆川ひとみは、ひとりでいつものようにトレーニングに励んでいました。貫也は嫁で「いちざわ」の女将・市澤里子と仕入れを済ませると、一緒に自転車で築地を後にしました。その日の夜、貫也と里子の「いちざわ」は、開店5周年を迎え、お祝いの胡蝶蘭が飾られていました。いつものように、お店は繁盛しており、お客で賑わっていました。貫也は厨房で自慢の腕を振るい、里子は注文と接待で大忙しでした。そんな時、ちょっと貫也が厨房から目を離した隙に、カウンターにいた常連客の女性から叫び声が店内に響きました。驚いた里子と貫也が、その方を見ると、焼き鳥の炭火から炎が立ち上がり、その炎は勢いを増しカウンターを火で包み込もうとしていました。火事です。里子は必死で、お客さんを店外に避難させました。貫也は店内で火を消そうと、必死で厨房の深鍋を使い、水をかけて火事を収めようとしますが、火の勢いは止まりませんでした。しかも、焦った貫也は厨房の油の入った鍋を落としてしまい、その油に火が移り、もう厨房も火の海と化しました。小さいながらも貫也と里子の念願だった店「いちざわ」は、この日の火事で、焼け落ちてしまいました。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:2.酒に溺れた貫也、一夜の過ち
常連客の社長夫妻からは「時間をおかずに良い場所でやれ」と忠告され、全てを失った貫也と里子はお店の再建を考えました。里子は近所のラーメン屋でバイトをして、何とか生活費とお店の再建資金を貯めようと考えました。ラーメン屋の店長・中野健一は幸い優しい人物で、里子に丁寧に仕事を教えていきました。貫也も昔、働いていた料理屋の厨房に入りましたが、貫也の食材へのこだわりで「先代に顔向けできない」と言ったことから、喧嘩となり、その料理屋も辞めてしまいました。貫也はやる気をなくし、酒に溺れ始めました。貫也は焼け落ちた店の前で缶ビールを飲むというのが日課になりました。ある日、やることもない貫也がパチンコを打っていると、昔の板前仲間・日野洋太が突然、声をかけてきました。貫也は、独立してお店を持っていた日野に、思わず、火事で店が焼け落ちたことは言えず、ごまかして彼と別れました。仕事がなかなか見つからない貫也は、必死にラーメン屋で働く里子を見て、次第に卑屈になり、自暴自棄になっていきました。その頃、交通事故に遭った不倫相手の俊作を見舞いに来た玲子は、兄とそっくりの弟で医者の外ノ池明浩と会いました。明浩は兄・俊作からの伝言「万が一会えず仕舞いになったら」を玲子に伝え、札束の入った封筒を渡しました。それは手切れ金でした。その夜、貫也はやけ酒を飲み過ぎ、駅のベンチで寝てしまい、最終電車に乗り損ねてしまいました。ふと、目を覚ました貫也は、その横に、ある女性が酔ってぐったりと座っているのを目にし、声をかけました。それは、「いちざわ」の常連客の一人・玲子でした。玲子もやけ酒を飲み過ぎ、最終電車に乗り損ねてしまいました。玲子は自分の嘔吐で貫也の服を汚してしまったので、貫也を家に連れていきました。玲子に連れられ貫也は、彼女の家に行きました。心の傷を負った男と女、二人はその傷を埋めるように一夜を共にしました。貫也は玲子に「店が再建できるかどうかわからない。夫婦関係もどうなるかわからない」と自然に心の中にあった思いを吐露しました。そんな貫也を見た玲子は、不倫相手の俊作からの手切れ金を渡そうとしました。貫也は、始めは断りましたが、玲子の「どうしても」という願いに折れ、その大金を受け取り、家に走って帰りました。「絶対に返すから」という言葉を残して…。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:3.里子の変貌
里子は貫也がそんな事をしていたとは知らず、一晩中、探し回りました。そんな里子の元に、貫也が大金を持って、嬉しそうに駆け込んで帰って来ました。貫也は里子に「昔の厨房仲間にばったり会った」と嘘をつき、大金の入った封筒を里子に渡し、「これで物件だけでも押さえて、準備始めよう」と言いました。お金のことより、貫也のことを心配していた里子は、安心しましたが、貫也の服の臭いで貫也が嘘をついていることに気づき問い詰めました。貫也ははぐらかしましたが、里子がその封筒を開けてみると、その中には大金と一緒に、一通の絶縁状が入っていました。貫也が一晩、玲子と共にしていたことを知った里子は、怒り心頭し、その札束をガスコンロで焼き始めました。そして、里子は朝風呂に入っていた貫也に、その札束を投げつけました。鬼の形相をした里子に、貫也は恐れおののきました。風呂場で水浸しになった1万円札を数えながら、里子は貫也に、玲子に何をしたのかを問い詰めました。貫也は何も言えませんでしたが、里子は貫也が玲子に昨晩、言ったことを全部、見通していました。「なるほどね…」と言い里子は、これまで見たこともない異様な様子に変貌しました。そんな里子の姿に、貫也は戦慄を覚えました。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:4.里子と貫也の金儲けの策略「結婚詐欺」
貫也と里子は、料亭「しま津」で働くことになりました。貫也は厨房で自慢の腕を振るいました。里子は接客係として働きました。そこにある日、30代でまだ独身の棚橋咲月が妹・佐伯綾芽と来ていました。妹は仕事一辺倒な姉・咲月にしきりに結婚話をしますが、咲月は興味のない振りをしていました。実は咲月は、結婚できていない自分にコンプレックスを感じていました。里子はそんなお客の話を接客しながら、聞いていました。もう泣きそうな咲月の様子を見ていた里子は、こっそり厨房の貫也に白手ぬぐいを渡しました。里子の予想通り、咲月は妹が席を立ったとき、涙を流し始めました。貫也はすぐに咲月に手ぬぐいを出してあげ、優しく接してあげました。その貫也の優しい振る舞いに、咲月の心が大きく揺れ動きました。これは里子が考えた金をつかみ取る策略でした。里子は貫也に「この都会の暗い地面には、自分の光を失った星たちが、たくさん落ちて散らばっている。あなたが完璧な男である必要なんてないのよ。ただ、物事には万に一つのタイミングがあるの。そこをつかみ取りさえすれば、あなたは星たちを照らす小さな太陽になれるはず。…嘘を言ったりする必要なんてないのよ。これまでずっと背負い込んできた現実をさらけ出すのよ。…目映い星たち、その煌めきにほんの少しだけ、色をつけてあげましょう。そうすれば、みんなきっと、あなたのために輝いてくれるわよ」と言い含め、貫也に寂しい女心の隙に入り込み、そんな女性たちから金を取るという結婚詐欺をはたらかせようとしていたのでした。咲月はその術中にまんまとはめられてしまいました。咲月は貫也とつき合い始めました。いつの間にか、貫也の働く「しま津」のカウンター席には、貫也を訪ねて、咲月以外に2人の女性が来るようになりました。その女性たちは貫也と里子の術中に、はめられていました。ある日の夜、貫也は付き合っていた松山和子という女性が、お店の再建資金として大金を渡そうとしてきたところを、張り倒して断り、泣かせて、直ぐに優しく接し、最終的にその大金を証文付きで受け取るという形を取りました。貫也は完全にその女性からの信頼を勝ち取り、騙されたという気持ちにさせませんでした。貫也はいつしか、アメと鞭を使い分ける堂にいったプロの結婚詐欺師となっていました。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:5.貫也と里子、「しま津」を辞め、逃げる
ある晩、咲月は貫也とデートの帰り、電車の中でお店の再建資金の話をしてきました。まだ、そんな話はしていなかった貫也は驚きましたが、咲月自身もお金で貫也の今の家庭を壊すことに躊躇いを感じていました。2人の会話を前の席でこっそりと聞いていた里子は、家に帰ると、貫也に咲月に電話をかけさせました。そして、里子は咲月の心を動かし、お金を出すような、泣き落としの台詞を書き、それを貫也に読ませました。次の日、貫也はついに咲月から大金を騙し取りました。貫也と里子は「しま津」を辞めました。そして、2人は、これまで騙し取ったお金の入った袋と証文を、家の壁に張り、「一日も早くお店始めて、これ、倍にして返そうね」と言って、再起を図る決意をしました。その夜、咲月が「しま津」に行くと、貫也を訪ねて5人の女性がカウンター席にいました。「しま津」を辞めたと聞かされた5人の女性はみんな、貫也は嘘をつける人ではないと完全に信じきっていました。しかし、結婚願望が強かった咲月は、完全に騙されたと思い、もう、がっくりしました。貫也は俄然やる気が出し、隅田川のある物件に目をつけました。そして、そこをお店にするように決意しました。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:6.貫也と里子、崩れ行く夫婦の関係
「しま津」を辞めた貫也と里子は、ハローワークに行き、ある居酒屋の店長と接客を任せてもらうお店を紹介してもらい、そこで働くことに決めました。その時から、里子は貫也の「妹」となり、そのように振る舞うようになりました。ただ、その店は2人が想像していた店とはほど遠く、地元の常連客だけがたむろする、寂れた居酒屋でした。里子は出会い系サイトで女性を探し、貫也にその女性から金を騙し取るようにし向けていきました。そして、里子自らも、そういう寂しい女性がいないか、婚活パーティーに出向き、探しました。そして、里子はある女性に目をつけました。その女性は、オリンピック代表を目指すウェイトリフティング選手の皆川ひとみという女性でした。里子は貫也を連れて、ひとみの試合を観戦しに行き、次第に貫也とひとみは仲良くなり、ひとみは貫也を家に招き入れるほど親密になっていきました。里子はひとみの図体のでかさなどを見て、彼女と付き合っている貫也を「気の毒」と憐れみました。憤った貫也は、里子に「お前の目に映っている世界のほうがよっぽど気の毒だ」と言い放ちました。ある晩、貫也は出会い系で知り合った女性・輝美とベッドを共にすると、お金を受け取り、帰ろうと外に出ました。そこで貫也は偶然、客からキャンセルされた風俗嬢・太田紀代と知り合いました。その頃、里子は自慰で寂しさを紛らわせていました。そして、里子は本当に真摯で真面目なひとみから、どうやって金を騙し取るか考え、ある策を立てていました。それは、里子がガンに冒され、それを直すためのお金という名目で騙し取るというものでした。里子はある晩、お店に来たひとみに、こっそりと自分がガンであることを耳打ちしました。その翌日、ひとみは貫也に「お見舞い」金を渡してきました。それを見た里子は落胆しました。ひとみは「まともな感覚」と言い貫也は、里子の今回のやり方のほうが「エグイ」と言い放ちました。それを聞いた里子は「お店のため」「お金が足りん」と開き直ってきました。そんな里子に貫也は「お前の“足りん”は、“金”やなくて“腹いせ”の“足りん”」だと言い、「お前はこれまで俺とおった中で、今が一番いい顔しとる」と言い放ちました。その言葉を聞いた里子は、手に持ったグラスを貫也に投げつけようとしましたが、思い止めました。貫也と里子、2人の心の間に深い溝ができたような雰囲気が立ちこめました。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:7.貫也、風俗嬢・太田紀代から騙し取る
ある日、貫也はひとみの家に訪ねると、ひとみは里子のガン治療のための費用のことで、色んな保険等を使えばいいとアドバイスをしてきました。貫也はそんなひとみに業を煮やし、出ていこうとしました。ひとみは貫也を引き止めようと腕をつかみましたが、その拍子に貫也は壁にぶつかり、倒れてしまいました。ひとみの力に貫也は少し脅えた表情を見せてしまいました。そんな貫也を見たひとみは、「私は怪物じゃない」と言い、泣き崩れました。貫也はひとみの家から出ていきました。貫也はその晩、風俗嬢・紀代の家に行き、妹・里子の治療費のことを話ました。紀代は自分で用立てできるお金120万を、直ぐに貫也に出してくれました。貫也は紀代に「いつもそうして来たんだろ」と問うと、紀代は「いいの、いいの」と笑ってごまかしました。その時、ドアをノックする音がしました。その音を聞き、紀代は脅えました。紀代が逃げてきたDV夫でチンピラの太田治郎でした。治郎はドアを蹴破り、入ってきました。貫也と紀代は治郎に抵抗し、紀代は治郎に風呂で熱湯シャワーを浴びせ、軽度の火傷を負った治郎は何とか静かになりました。すると、治郎は貫也に紀代を幸せにできるのかと聞いてきました。2人の男同志の間で紀代の取り合いのような会話が始まりました。その様子を見ていた紀代は「私は今が幸せだよ。自分で自分の人生の落とし前つけられれば、誰に褒められなくてもいいもの」と言い、紀代は治郎に自由にさせて欲しいと嘆願しました。治郎は紀代を諦め、出ていきました。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:8.貫也、躊躇いながらも皆川ひとみから大金を受け取る
翌朝、貫也は紀代から受け取った120万の通帳と印鑑を、家に持って帰り、妻・里子と眠りました。ある日、ようやく資金のめどがついた貫也と里子は、目をつけていた隅田川沿いの物件を押さえに行きました。そして、厨房に必要な金物を近くの商店街で買いました。その日、ひとみがトレーニング中に膝を怪我した知らせが、貫也のもとに入りました。貫也はひとみを見舞いに病院に行きました。ひとみの膝の怪我は、日常生活には問題ない怪我でしたが、選手としては致命的な怪我で、オリンピック出場の夢は諦めざるを得ませんでした。ひとみはコツコツと貯めた300万という大金を、貫也に渡そうとしました。しかし、貫也はそれを受け取ることを、心から躊躇いました。貫也はひとみに「夢を諦めるのは俺のせいか」と涙を流しながら、その300万を受け取りました。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:9.貫也、偶然か運命か、木下滝子と出会う
躊躇いながら受け取ったお金を持ち病院を出ようとした貫也の前に、一人の老人が救急で運ばれてきました。そして、そこに一人の男の子が立っていました。貫也はその男の子が気になり、病院前で遊んであげていました。するとそこにその子の母親がタクシーで現れました。その女性はなんと、あのハローワークで受け付けをしてくれた女性・木下滝子でした。その男の子は、恵太でした。奇遇な再会をした貫也は、シングルマザーの滝子を助け、恵太の遊び相手となり、家で食事を作ってあげたりしました。その頃、隅田川の物件ではお店造りが始まっていました。その様子を見に行くのは里子だけで、貫也はお店よりも、滝子の家に入り浸りになっていました。ある日、貫也は里子に、滝子の家の事情を話して「他人に甘えて楽をすること覚えてしまうと、人間って元に戻れない」と言い、滝子からお金をまた騙し取ろうという雰囲気を漂わせました。貫也は里子に、お店の開店時間の6時には戻ると言い、愛用の包丁を持って出ていきました。里子はそんな貫也の姿を見て、もう自分の所に戻って来ないのではないかと不安に駆られました。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:10.騙された女・棚橋咲月の憎しみ
里子は思わず、貫也を追い、お店の外に出て、貫也の後ろ姿を見送りました。その様子をこっそりと車からビデオカメラで写していた2人の男たちがいました。その男は、堂島哲治という男で、堂島探偵事務所の主でした。堂島は密かに棚橋咲月から依頼を受け、貫也と里子の動向を探っていたのでした。堂島は貫也と里子は2人でつるんで結婚詐欺をしていることを、咲月に報告しました。堂島は、貫也が何人から詐欺で金を巻き上げたのか、金を返したのかで年数は変わるが、5~10年の刑務所暮らしになるだろうと咲月に伝えました。その上で、堂島は咲月にどうしたいのかと尋ねました。咲月はその年数は何が基準になっているのかと堂島に逆に聞き返してきました。堂島は、それぐらいの刑務所暮らしで貫也が“更生する”だろうという尺度だと答えました。咲月はそれのことを堂島から聞きましたが、納得がいきませんでした。咲月は「誰のために更生するんですか?社会のためですか?本人のためですか?私には関係のないことですよ。…家族が笑うんですよ。結婚ちらつかされて、既婚者に金を貢いで…みっともない」と愚痴をこぼしました。咲月は自分が“結婚ができない女”と思われることが、どうしてもイヤだったのでした。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:11.貫也と里子、離れ行く心
その日の夜、お店に6時には帰ると言っていた貫也は、帰って来ませんでした。お店は貫也と里子の努力もあり、以前と違って、繁盛するようになっていて、その夜も満席状態でした。里子は一人でお店をきりもみする状態で、てんやわんやしていました。結局、貫也はその夜、帰って来ませんでした。次の日、雨の降る中、里子は貫也が行っている滝子の家に様子を伺いに行きました。その滝子の家は、父・金山寿夫が製本工場の中のアパートの一室でした。里子はその一室に入ると、台所のまな板の上に、貫也愛用の包丁が置いてありました。里子は貫也を探しました。すると貫也は、その製本工場で働いていました。その姿を見た里子は憤り、アパートに戻り、貫也の包丁を握り、貫也のもとに行こうとしました。その時、下から階段を上がってきた子供・恵太と鉢合わせになり、里子は思わず、包丁を地面に落としてしまい、階段から下へ転げ落ちてしまいました。大事にはならなかった里子は、恵太に手を貸してもらって立ち上がりました。差してきた赤い傘も忘れ、びしょ濡れになりながら里子は、その場を立ち去りました。いつしか雨は止み、空は晴れてきました。里子は呆然としながら、街を彷徨っていると、ある横断歩道で、偶然、貫也が最初に大金を受け取った女性・睦島玲子を見かけました。玲子も里子に気が付き、彼女は軽く里子に会釈をするとそのまま、去って行きました。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:12.咲月の復讐
その頃、貫也は恵太と一緒に食事を作っていました。貫也は愛用の包丁がないことに気付き、探しながらも、切れ味の悪い滝子の包丁で食材を切っていました。恵太は、貫也の包丁が地面に落ちていたことを思い出し、取りに行きました。その時、そこに見知らぬ男・堂島がやって来ました。堂島は「市澤さん、棚橋咲月って、あなたの彼女ですよね」と言ってきました。貫也は驚き、素性を明かさない堂島に素性を聞くと、堂島は咲月のおじさんと言ってきました。貫也は堂島に案内され、アパートから下に降りていくと、そこには咲月が待ちかまえていました。怒り心頭の咲月は、驚き逃げようとする貫也を、轢き倒し、ぼこぼこに殴りつけました。貫也はただ「ごめんなさい」と呟くしかありませんでした。その様子を見ていた堂島は、このままだと咲月が暴行罪になりかねないので、間に入り、咲月を貫也から引き離しました。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:13.貫也、殺人未遂犯に…
堂島は、倒れてぼこぼこにされた貫也の介抱をしようとしました。すると、背後から「行くぞ!やあ~~」と子供の声がしました。堂島は強い衝撃を背中に受け、動きが止まり、倒れ込みました。貫也が驚き、堂島の背中を見ると、恵太が自分の愛用の包丁で堂島の背中を突き刺していました。貫也は、このままだと恵太が人を刺したことになると思い、「離しなさい!」と恵太に言い、恵太から包丁をとりあげました。貫也は恵太に「ありがとうね。助かった」と呟きました。しかし、その姿は貫也が包丁を持ち、男を刺し、恵太を人質にとっているような様子でした。アパートの階段の上から、里子が忘れていった赤い傘が落ちて来ました。貫也がアパートの上を見ると、恵太の祖父が「離せ!」と貫也に叫んでいました。貫也は「違います。違う」と言いましたが、その声は届きませんでした。恵太はその場で泣き始めました。ふと、貫也が工場の入り口の方を見ると、滝子が立っていました。恵太は泣きながら、母・滝子のもとに走り込みました。事情が分からない滝子も、祖父と同じ目で貫也を見ました。工場に女性の叫び声が響き渡りました。もう、顔面血だらけの貫也は、逃げることはできませんでした。
夢売るふたりのネタバレあらすじ:14.貫也、ついに逮捕される
貫也は警察に逮捕され、貫也は恵太を庇い、自分が包丁で堂島を刺したことにしました。元ヤクザで入れ墨を入れていた堂島は、駆けつけた刑事・東山義徳に真実を明かさず、貫也に刺されたことにしました。その頃、里子は貫也と始める隅田川沿いの出来上がったばかりの新店舗で、バイト先のラーメン屋の店主・中野健一と2人で飲んでいました。中野は里子にプロポーズをしようとしました。しかし、その時、里子の目に、隅田川沿いにこちらに走ってくるパトカーの赤い光が飛び込んできました。危険を察知した里子は、中野に「すみませんけど…私、約束が」と言い、色々な資料を持ち、その店舗の裏口から急いで立ち去りました。ひとり店内に残された中野のもとに、警官たちが里子を探して入ってきました。里子は全力疾走で、資料をまき散らしながら、走り逃げました。
夢売るふたりの結末:貫也と里子、そして騙された女たちのその後
逮捕された貫也は、刑務所で服役していました。貫也が騙した皆川ひとみは、ウェイトリフティング選手を引退し、コーチになっていました。太田紀代は、結局、元の夫・太田治郎と一緒に暮らすことになりました。木下滝子は、息子・恵太を連れ、以前の生活に戻りました。棚橋咲月は、実家を離れ、一人暮らしをすることにしました。最初に貫也にお金を貸した睦島玲子は、仕事と家の平凡な暮らしをしていました。ある晩、玲子が帰ってポストを開けると、「いちざわ」の封筒がありました。その中にはあの時、貫也に貸した現金が入っていました。里子は家を引き払い、そのまま逃げて素性を隠し、ひっそりと大間の漁港で働いていました。服役中の貫也は、与えられた大きな厨房で大鍋をかき混ぜる仕事に精を出していました。ふと、空を見ると、そこに二羽のカモメがつかず離れず、飛んでいました。そんなカモメの声を聞きながら、里子は何かを見据えたように、漁港で汗を流すのでした。
以上、映画「夢売るふたり」の詳細あらすじ解説でした。
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