野火の紹介:2014年日本映画。大岡昇平の同名小説の1959年版(市川崑監督)に続く2度目の映画化作品です。太平洋戦争中のフィリピンを舞台に、極限まで追い詰められた日本軍兵士たちの狂気と悲劇を描いています。原作に惚れ込んだ塚本晋也が監督・脚本・製作・主演を兼任しています。
監督:塚本晋也 出演者:塚本晋也(田村一等兵)、リリー・フランキー(安田)、中村達也(伍長)、森優作(永松)、中村優子(田村の妻)ほか
映画「野火(2014年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「野火(2014年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
野火の予告編 動画
映画「野火(2014年)」解説
この解説記事には映画「野火(2014年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
野火(2014年)のネタバレあらすじ:起
太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島。もはや日本の敗戦は時間の問題でしたが、それでも現地の兵士は戦い続けていました。
そんな中、肺の病を患った一等兵の田村(塚本晋也)は上官から野戦病院に行くよう命令され、そこは食料の不足している場所で、しかも行ってみると死を待つ人々ばかりがいて、田村の症状などたいしたことはないとばかりに入院を拒否されてしまいます。やむなく部隊に戻るも上官から再度病院に行くよう殴られ、入隊を拒否。結局田村は病院にも部隊にも、居場所も行く場所もなく途方に暮れるばかりでした。
そんなある日、部隊と病院の間をうろうろしていた田村は野戦病院の近くで、同じように病院の周りをうろついていた安田(リリー・フランキー)と永松(森優作)という二人の兵士と出会います。足を怪我している安田、その安田から煙草を餌に永松は安田の子分のように扱われていました。安田は永松を利用して田村が持っていた僅かばかりの芋を盗もうとしています。
その夜、野戦病院は敵軍の攻撃を受けて廃墟と化してしまいました。
野火(2014年)のネタバレあらすじ:承
完全に行き場をなくしてしまい、途方に暮れた田村は一人で島を彷徨い歩きます。休息をとりながら誰もいない原住民の村に立ち入りますが、そこでボートで遊んでいた男女二人に声をかける田村。しかし女の方がパニックになってしまい叫びだしたので、やむなく女を射殺すると男は逃げていきました。その女の死体のそばで見つけた教会の地下倉庫の入口から地下倉庫に入り込んだ田村は、そこにあった塩を盗んで村を離れました。
その後、奇跡的に生き残っていた日本兵3人と出会った田村は、先日まで所属していた部隊が全滅したこと、生き残った兵士はパロンポンへの集結命令が出ていることを知りました。自信過剰気味にも見える伍長(中村達也)と部下達は田村の持っている塩に気付き、それを目当てにしたのか、田村を仲間にして一緒に連れていくことにします。
伍長らは笑いながら「俺たちはニューギニアでは人肉を食っていた」と自慢げに語っていました。気味の悪い事を言っている伍長達でしたが、どこか信頼できる振るまいに、田村は安心していました。やがて一行はパロンポンを目指してジャングルを潜り抜ける作戦を立てます。
しかしそこを抜けるには、必ず通らないといけない丘がありました。そこは見晴らしがよく敵であるアメリカ軍からは一目瞭然です。パロンポンを目指すには必ず通るこの場所を、危険にさらされても通る必要があったのです。
野火(2014年)のネタバレあらすじ:転
伍長はなるべく目立たないようにと作戦実行を夜に行うと指示します。そして夜になると、作戦を決行しようとした田村達と同様に周りに潜んでいた日本軍の生き残り達も動き出します。しかしその動きを先読みしていたアメリカ軍から容赦ない攻撃が仕掛けられて、日本軍は壊滅に追いやられてしまいます。
奇跡的に生き残り、辛うじて動く事の出来た田村は瀕死の重傷を負い、今にも死んでしまいそうな伍長を発見します。伍長は「俺が死んだら自分の腹の肉を食え」と田村に告げると、そのまま死んでしまいます。
とはいえ食べろと言われて簡単に食べられるものではありません。やがて食料も塩も尽きて極限の飢餓状態に陥った田村は、蝿が飛び交っている目の前の死体に幻覚を見ました。食べるしかないのか…いまだ田村は葛藤と戦います。そしてとうとう意識を失った田村は、生き残っていた永松に助けられます。永松は田村に水と“猿の肉”を与えました。
その後、永松に連れられて安田とも落ち合うことの出来た田村でしたが、まんまと口の上手い安田の口車に乗せられて、所持していた唯一の手榴弾を奪われてしまいます。田村は永松に連れられて共に食糧の猿を探して回りますが、猿は一匹も見つかりませんでした。
それどころか永松が撃っていたのは同じ日本兵だったのです。田村が永松から渡され食べていた“猿の肉”とは、実は死んだ日本兵の人肉だったのです。
野火(2014年)の結末
田村から唯一持っていた手榴弾を安田に取られてしまった事を聞いた永松は、血相を変えて安田の元に行こうとします。すると永松が危惧した通り、安田は田村と永松めがけて手榴弾を投げてきたのです。手榴弾が田村の近くで爆発します。爆風に巻き込まれた田村は肩の肉の一部がちぎれてしまいます。
しかし田村はなんとちぎれた自らの肉を手に取り、それを口に入れて食べましまいました。田村は生きるための葛藤と未だ戦っています。安田の行動により安田の裏切りに気付いた田村と永松。永松は一緒に安田を殺してその肉を食べようと提案してきました。
そんな事出来るはずがない、しかし生きるためには仕方のないことなのか…田村が混乱し難色を示していると、永松は迷いなく安田を射殺、殺した安田の死体をまるで猿でも刻むかのように手際よく切り刻み、そしてその肉にしゃぶりつき食べ始めました。
「お前も必ず俺を食うはずだ」永松は安田を食して血にまみれた顔で田村に話します。永松は完全に狂気に取りつかれていました。その姿に怒りを感じた田村は、永松に銃口を向けます。そして反射的に襲いかかろうとする永松に向けて引き金を引きました。
終わった安堵感を感じる間もなく、隙をみた現地人が田村に一撃を食らわせ、田村はそのまま意識を失ってしまいます。
あれから数年の月日が経ち、無事に戦争から帰還することのできた田村は東京郊外に住み、自らの経験談を手記として執筆していました。戦争の後遺症なのか田村の心の中にはあの戦場での風景が繰り返されています。
夕食を出した妻が見る田村の食事の姿、あの「猿の肉」を執拗に切り刻むように食する姿は妻の目には異様に映ります。田村がふと窓の外を見ると、あの頃のようにポツポツと野火が立ち上っていました。
以上、映画「野火」のあらすじと結末でした。
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