哀愁しんでれらの紹介:2021年日本映画。カルチュア・エンタテインメントと蔦屋書店が主催する次世代のクリエイター発掘のためのコンペティション「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2016」でグランプリを獲得した企画を基に映画化したサスペンススリラー作品です。幸せを追い求める真面目な女性が誰もが羨むシンデレラストーリーを掴み取る過程と、そんな彼女が引き起こした社会を震撼させる凶悪事件を描きます。
監督:渡部亮平 出演者:土屋太鳳(福浦(泉澤)小春)、田中圭(泉澤大悟)、COCO(泉澤ヒカリ)、山田杏奈(福浦千夏)、ティーチャ(福浦一郎)、水石亜飛夢(広夢)、安藤輪子(恵美)、金澤美穂(志乃)、綾乃彩(白石礼奈)、中村靖日(青柳剛)、阿久津慶人(横山渉)、野洋しおり(来実)、正名僕蔵(亀岡)、銀粉蝶(泉澤美智代)、石橋凌(福浦正秋)ほか
映画「哀愁しんでれら」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「哀愁しんでれら」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
哀愁しんでれらの予告編 動画
映画「哀愁しんでれら」解説
この解説記事には映画「哀愁しんでれら」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
哀愁しんでれらのネタバレあらすじ:起
福浦小春(土屋太鳳)は児童相談所で働く26歳の女性です。小春の母親は彼女が幼い頃に家を出て行っってしまっており、小春は自宅で自転車屋「福浦サイクル」を営む父・正秋(石橋凌)、高校生の妹・千夏(山田杏奈)、祖父・一郎(ティーチャ)の4人で暮らしていました。千夏は東京の私立大学への進学を考えており、正秋は学費に頭を悩ませていました。
ある日、小春は職場の先輩・白石礼奈(綾乃彩)と共に児童虐待の疑いがある家を訪問しました。子供の安否確認を拒む母親を、千春は強引にも引っ張り出そうとしました。職場の上司・青柳剛(中村靖日)は「また苦情の電話がきそうだ」と注意しますが、小春は「子供の将来は、その母親の努力によって決まる」との持論を持っていました。
テレビのニュースでは、保護者が包丁を持って学校に乱入し、運動会をやり直せと校長らを脅した事件が報じられていました。小春は自分と家族を棄てた母と重ね合わせ、「あんな親にはなりたくない」との思いを募らせました。
その夜、小春を不幸のどん底に突き落とす出来事が起こりました。一郎が風呂場で脳梗塞を発症して倒れ、家族は火のついた蚊取線香を落としてしまったことにも気付かずに一郎を車で病院に連れていきました。しかし、車を運転する正秋は途中で酔っ払いの漕ぐフラフラな自転車を避けようとして自損事故を起こし、正秋は飲酒運転容疑で警察に連行されていきました。
小春と千夏は救急車を呼んで一郎に付き添いますが、小春は救急車の無線で自宅で火災が発生したとの情報を聞きつけました。小春は千夏に一郎を託して自宅に急ぎましたが、既に1階の店舗部分が焼け落ちていました。
憔悴しきった小春は、近くに住む恋人で売れないバンドマンの広夢(水石亜飛夢)のアパートに泊めてもらおうとしましたが、広夢は何と礼奈と愛し合っているところでした。茫然自失になった小春は夜道を徘徊していたところ、警報機の鳴る踏切の中の線路のど真ん中で泥酔した男が倒れているのを発見しました。間一髪で小春に助けられたその男は「お礼をさせてください」と名刺を渡し、タクシーで帰っていきました。
小春一家は焼け残った2階の住宅部分で生活することになりました。小春が出勤すると、小春が訪問した家の母親が小春に腕を引っ張られた時に痣ができたと抗議に来ていました。小春は広夢を奪った礼奈を睨みつけ、その場は嫌悪な雰囲気となりました。
哀愁しんでれらのネタバレあらすじ:承
店を失った正秋は再就職先を探すのに苦労していました。糖尿病を患う正秋はインシュリンの注射が欠かせず、小春に健康な人がインシュリンを打つと低血糖で死亡すると教えました。小春の稼ぎだけでは一郎の入院費や千夏の学費をまかなうなど到底無理であり、千夏は進学を諦めて就職すると言い出しました。
小春は友人の志乃(金澤美穂)が働く喫茶店で同じく友人の恵美(安藤輪子)に会いました。一児の母である恵美は現在双子を妊娠中であり、志乃は「一番の成功の秘訣は夢を全て捨てること」と小春にアドバイスしました。恵美から新しい出会いはないのかと問われた小春は踏切で男を助けた話をしました。名刺に記載されていた男の名は「泉洋クリニック院長 泉澤大悟(田中圭)」でした。恵美から「白馬に乗った王子様より、外車に乗ったお医者様」と言われた小春は早速大悟に連絡を取ることにしました。
大悟は先日のお礼にと小春を愛車ベンツで高級ブティックに連れて行き、高価なドレスや靴などをプレゼントしてくれました。その後、小春と大悟は喫茶店で身の上を語り合い、小春は広夢と別れたことを話しました。大悟は前の妻との間に今年8歳になる小学2年生の一人娘・ヒカリ(COCO)をもうけていましたが、妻は数年前に浮気相手と一緒にいたところ交通事故に遭って死亡していたのです。大悟はヒカリと馬刺しを食べに行く約束をしており、小春も一緒に行かないかとを誘いました。
大悟の自宅は海に面した豪邸であり、ヒカリはドッジボールのボールが目に当たったということで眼帯をしていました。小春は大悟やヒカリと共に有名な馬刺し店に行き、小春はヒカリの眼帯にサインペンで少女漫画のヒロインのような眼を描いてあげました。初めは人見知りで気難しかったヒカリでしたが、あっという間に小春と打ち解けていきました。
大悟は正秋に葬儀社の仕事を斡旋し、一郎を知り合いの大きな病院の特別室に転院させたうえで入院費まで肩代わりしてくれました。この病院の院長は大悟は良い人(小春)を見つけたことを喜び、大悟の前の妻は最低な女だったと振り返りました。更に大悟は千夏の家庭教師までも引き受け、小春は次第に大悟に惹かれていきました。ヒカリは同級生の横山渉(阿久津慶人)のことが好きだと小春に打ち明け、大悟には内緒にしてほしいと頼みました。
大悟は小春の家族に「僕ができることは何でもする」と約束し、正秋はぜひとも小春を後妻にもらってくれないかと頼みました。未だに小春に未練のある広夢は自作の歌を贈り、「僕には小春しかいない」と謝罪しましたが、小春はもはや広夢など眼中にありませんでした。
大悟は小春に「俺ももうすぐ41歳。ヒカリには母親が必要だ」とプロポーズしました。ヒカリの誕生日、小春は手作りの筆箱をプレゼントし、ヒカリは大喜びしました。小春は大悟のプロポーズを受け入れ、ヒカリの立ち会いのもと大悟と共に役所に婚姻届を出しました。
高級老人ホーム暮らしを送る大悟の母・美智代(銀粉蝶)は小春が母の愛情を知らずに育ったこと、大悟の前の妻が母親失格だったことを引き合いに「母の愛情を知らないあなたが母になれるの? “母になる”ことと“母である”ことは違う」と厳しい言葉をかけました。それでも小春は、自分はヒカリの母になる覚悟を決めていました。
小春と大悟は教会で結婚式を挙げ、三人は幸せな家庭を築き上げた、はずでした…。
哀愁しんでれらのネタバレあらすじ:転
小春は仕事を辞め、専業主婦として大悟とヒカリのために尽くそうと奮闘していました。そんなある日、小春は喫茶店で志乃や恵美と会い、恵美から「出会ってから1ヶ月のシンデレラ・ストーリー」と羨ましがられました。しかし、志乃は「シンデレラの物語って怖くない? 一晩舞踏会で踊っただけでしょう? (ガラスの靴の)足のサイズしか知らないのに、結婚して大丈夫?」と意味深な言葉で小春に忠告しました。
ある日、小春はいつものように弁当作りをしている時、結婚指輪が邪魔になったので外しました。その後、家の掃除をしていた小春は、いつもは鍵がかかっている部屋のドアが開いていることに気付き、中に入ってみました。その中には、瞳が描かれていない小春ら三人の家族の肖像画、大悟の自画像、兎の剥製などが飾られていました。この部屋は大悟が自らの宝物を集めた趣味の部屋であり、戻ってきた大悟は兎の剥製は以前飼っていたペットであり、三人の肖像画は完成してから見せたかったなどということを説明しました。
大悟から指輪をしていないことを指摘された小春は家中を探し回りましたがなぜか見つかりません。そこにヒカリが学校から帰宅し、台所を探してもなく、家中を探す。ヒカリの部屋の中を探している時、ヒカリが帰って来て、小春がくれた筆箱を渉に盗られたと言い出しました。大悟は以前ヒカリの目にドッジボールのボールをぶつけたのも渉で、ヒカリは渉にいじめられているのではないかと疑いました。
翌日、大悟は小春を連れて学校に出向き、教頭の亀岡(正名僕蔵)や担任教師にクラスで窃盗があったことを訴えました。この学校の校医を務めている大悟は近々行われる予定のインフルエンザワクチンの集団接種の打ち合わせに行っている間、小春は担任から「ヒカリがお弁当を作ってもらえなくて毎日泣いている」と思いもよらぬ言葉をかけられました。
その夜、渉は母に連れられて泉澤家を謝罪に訪れましたが、渉は頑なに「やっていない」との一点張りでした。渉たちが帰った後、大悟は渉の素行の悪さに腹を立てました。小春は、渉に想いを寄せているヒカリが気を引こうとしているのではと話し、ヒカリはおねしょをするなど最近“赤ちゃん還り”の傾向があることを大悟に打ち明けましたが、大悟はまともに取り合ってくれませんでした。
二人の会話はヒカリに盗み聞きされており、ヒカリは小春が約束(ヒカリが渉のことが好きなのを大悟に内緒にしておくこと)を破ったとして、小春に反抗的な態度をとるようになっていきました。小春は正秋にヒカリの反抗のことを相談しますが、正秋は医師の大悟が心配ないというのなら心配ないと取り合ってくれませんでした。
ある日、小春は再び美智代の元を訪れました。美智代は自分が老人ホーム暮らしを送っていることを「大悟に嫌われているから捨てられた」と語り、大悟は小学生時代にいじめられていたことを明かしました。美智代は母なりに対処していたつもりでしたが、ある日大悟は「母さんは何もしてくれない」と反発し、美智代は思わず大悟を叩いてしまったのです。それ以来、大悟の左耳は聞こえなくなってしまったと美智代は明かし、小春に「あなたは愛される母親になっているの?」と問いました。
小春が家に帰ると、家のトイレが詰まってしまっていました。小春は業者を呼んで修理してもらい、トイレの詰まりの原因がヒカリが盗まれたと言っていた筆箱が配管に詰まっていたことに気付きました。小春は誰にも知られぬよう、家の前の海へ筆箱を投げ捨てました。
その頃、ヒカリの小学校では、放課後にヒカリの同級生の来実(野洋しおり)が、教室の窓辺で机の上に立って窓の外を見ていました。渉と仲良しの来実は渉と一緒に勉強する約束をしており、そのことを知ったヒカリは来実の背後にそっと近づいていきました。
哀愁しんでれらの結末
その夜、窓から転落死した来実の通夜が営まれていました。小春はヒカリに黒い靴を履かせようとしましたが、ヒカリは赤い靴を履くと言って聞きませんでした。仕方なくヒカリを赤い靴で参列させた小春は参列者から非常識だと陰口を叩かれ、葬儀会場で働いていた正秋からも注意を受けました。その後、小春はヒカリとファミレスで食事に行き、その際にヒカリはスマホのゲームをしながら「来実ちゃんはいつも邪魔ばかりするの。だからゲームオーバーになったんだね」と呟きました。小春は大悟にヒカリの様子がおかしいことを相談しますが、大悟は聞く耳を持ってはくれませんでした。
小春は翌朝、ヒカリのお弁当のおにぎりに、梅干の代わりに5円玉や磁石などの異物を混ぜてみました。帰宅したヒカリの弁当箱は空になっており、ヒカリはおにぎりについてただ「おいしかった」と答えるのみでした。
夫に浮気された恵美が小春の元を訪れ、離婚するつもりであることを明かしました。小春は子供のことを考えるべきだと忠告しました。小春には千夏から受験への過度なプレッシャーを大悟からかけられていると電話で相談がありましたが、小春にはもはやアドバイスを送る気力もありませんでした。
小春は再び大悟の趣味の部屋へ入りました。そこには「family」と書かれたスケッチブックがあり、そこには大悟の前妻らしき女性とヒカリ、そして顔を黒く塗り潰された小春らしき女性の絵が描かれていました。そこにヒカリが現れ、小春は驚いた拍子に兎の剥製を落として壊してしまいました。ヒカリは大声で大悟に言ってやると脅し、小春は思わずヒカリの頬を叩きました。
このことを知った大悟は小春に母親としての自覚がないと烙印を押し、小春を家から追い出してしまいました。小春は泣きながら引き留めようとするヒカリに、かつて母に捨てられた自分自身の姿を重ね合わせました。ヒカリを振り切って出ていった小春は実家に戻りましたが、家族が仲良く団らんする場に入り込むことができませんでした。
小春は踏切の中に入り、線路の上に横たわりました。電車が近づくなか、小春の脳裏に浮かんだのはこれまでの三人の生活のことでした。そこに大悟が現れ、小春を線路から助け出すと、小春の薬指に再び結婚指輪をはめて「帰ろう」と優しく声をかけました。
小春は大悟の趣味の部屋で、ヒカリとの母娘としての絵を描いてもらいました。大悟は今まで瞳が描かれていなかった三人の肖像画に青い瞳を描き、リビングに飾りました。
翌日、ヒカリが泣きながら泥だらけの足で学校から帰宅し、靴を誰かに盗られたと訴えました。小春は大悟と共に学校に乗り込み、校内放送でヒカリの靴を盗ったのは誰かと呼び掛けました。慌ててやってきた亀岡教頭が小春と大悟をなだめ、職員室へ案内すると、そこへ渉が現れて「ヒカリが来実を突き落としたのを見た」と証言しました。小春は「うちの子がやるわけない」と反論しますが、小春は来実の通夜の日にヒカリが発した「来実ちゃんは邪魔ばかりするからゲームオーバーになった」との発言を思い出しました。
帰宅後、大悟と小春はヒカリに来実を突き落としたか問いました。ヒカリは泣き出して「学校に行きたくない」と言い出し、小春はヒカリを殴ろうとした大悟を止めました。大悟は趣味の部屋にあった宝物全てを海岸に持っていき、火をつけて燃やしました。大悟は「ヒカリ以外は何もいらない」と言いました。
大悟らの家の窓ガラスには「人殺し」とスプレーで落書きされ、石まで投げ込まれました。小春は大悟を「ヒカリは良い子だから」と慰めると、ヒカリを守るために大悟にある提案をしました。
翌日、ヒカリの小学校ではインフルエンザの集団予防接種が行われようとしていました。大悟は小春を助手にして、全校児童全員に注射をしていきました。その最中、ヒカリの同級生の女子が小春に手紙を渡してきました。それはヒカリに宛てたものであり、中には「ヒカリちゃんが殺したんじゃないってみんな知ってるよ」と書いてありました。小春はその手紙を捨てました。
注射の中身は小春の提案により全てインシュリンにすり替えられていました。誰もいない教室で小春は教壇に立ち、大悟の見守るなかヒカリ一人だけを相手に授業を始めました。学校の至るところには、注射で命を落とした児童たちの屍が転がっていました。小春は思いました。女の子は漠然としたひとつの恐怖を抱えている。私は幸せになれるのだろうか、と…。
以上、映画「哀愁しんでれら」のあらすじと結末でした。
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