あのこは貴族の紹介:2020年日本映画。『ここは退屈迎えに来て』などの小説家・山内マリコの同名小説を、『グッド・ストライプス』で新藤兼人賞金賞を獲得した岨手由貴子が監督と脚本を務めて映画化したヒューマンドラマです。門脇麦と水原希子をダブル主演に迎え、都会生まれの箱入り娘と地方から上京して自力で道を切り開く女性、二人の境遇の異なる主人公の出会いと生き方を描いていきます。
監督:岨手由貴子 出演者:門脇麦(榛原華子)、水原希子(時岡美紀)、高良健吾(青木幸一郎)、石橋静河(相良逸子)、山下リオ(平田里英)、佐戸井けん太(榛原宗郎)、篠原ゆき子(榛原麻友子)、石橋けい(岡上香津子)、山中崇(岡上真)、南出凌嘉(岡上晃太)、高橋ひとみ(青木知子)、奥瀬繁(青木謙次郎)、津嘉山正種(青木幸太郎)、銀粉蝶(榛原京子)ほか
映画「あのこは貴族」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「あのこは貴族」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
あのこは貴族の予告編 動画
映画「あのこは貴族」解説
この解説記事には映画「あのこは貴族」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
あのこは貴族のネタバレあらすじ:起
榛原華子(門脇麦)は東京都渋谷区の高級住宅地・松濤の裕福な開業医の家に生まれ、今日まで何一つ不自由のない生活を送ってきました。
華子は27歳の時、結婚まで考えていた交際相手にフラれてしまいました。毎年高級ホテルの一室で行われている榛原家の新年会には長姉・香津子(石橋けい)とその夫・真(山中崇)、次姉・麻友子(篠原ゆき子)ら一家が集結していました。この食事会で交際相手を紹介する予定だった華子は破局したことを認め、一家は華子に新たな婚約者を探すためのお見合いを勧めてきました。
華子の同級生たちは次々と結婚していき、今や華子の周りで未だに独身なのはバイオリニストの相良逸子(石橋静河)ぐらいしかいなくなっていました。逸子は焦りを見せる華子に、理想の結婚相手はじっくり探すべきだと助言しました。
華子は家族に勧められた相手との見合いや知人からの紹介など次々と色々な男たちにアタックしてみましたが、いずれも不発に終わりました。そんな時、華子は真の紹介で弁護士の青木幸一郎(高良健吾)という男と出会い、江戸時代から代々続く名家の出で振る舞いの上品な幸一郎に惹かれていきました。
華子は幸一郎と交際を始め、程なくしてプロポーズを受けました。喜んで受け入れた華子でしたが、たまたま見てしまった幸一郎のスマホの着信欄に「時岡美紀」なる人物の名を見つけ、一抹の不安を覚えました。
あのこは貴族のネタバレあらすじ:承
その女、時岡美紀(水原希子)は富山県出身で、慶応義塾大学に合格したのを機に上京しました。同郷の友人である平田里英(山下リオ)も同じ大学に入りました。
美紀は最初のうちは東京での新生活に胸を弾ませていましたが、次第に大学内部には美紀ら庶民出身者と金持ち連中との間に見えない格差があることに気付いていきました。そんなある日、美紀は大学の講義室で当時の同級生だった幸一郎と出会いました。幸一郎は半ば強引に美紀から授業のノートを借り、それっきり返すことはありませんでした。
美紀は東京の水に慣れようと務めていましたが、富山の父親が失業してしまい仕送りも途絶えてしまいました。美紀は自力で学費を稼ごうとキャバ嬢として働き始めましたが、結局は退学することとなりました。そんなある日、美紀の働くキャバクラに幸一郎が客として訪れ、まさかの再会を果たした美紀と幸一郎は男と女の関係になりました。しかし、幸一郎は美紀との将来を考えることはありませんでした。
やがて美紀は25歳の時に客からイベント企画会社の仕事を斡旋してもらい、美紀はお水の世界から足を洗って就職することにしました。そんなある日、美紀は高校の同窓会に出席するため久しぶりに富山に帰省してきました。故郷の商店街はすっかり寂れており、シャッター街と化していました。美紀は同窓会で久々に里英と再会しました。大学を卒業した里英は富山に帰って地元企業に就職していましたが、近々仕事を辞めて再び東京に行き、そこで起業する夢を抱いていました。美紀は里英としばし楽しいひと時を過ごしました。
あのこは貴族のネタバレあらすじ:転
華子は幸一郎の実家へ挨拶に赴きました。そこで華子が見たのは、自分の家よりも遥かに強大な幸一郎の一族の力でした。幸一郎の一家は代々政治家を輩出している家柄であり、祖父の幸太郎(津嘉山正種)は興信所を使ってあらかじめ華子の情報を調べ上げていました。あっけらかんと「別に普通のことだ」と言ってのける幸一郎の態度に、華子はまたしても不安を覚えました。それでも幸一郎の一家は華子との結婚を許し、それからはトントン拍子に結婚の準備を進めていきました。
その頃、東京に戻っていた美紀はとあるパーティーに出席していました。美紀はパーティーでバイオリンを弾いていた逸子に目を留め、逸子に自分の連絡先を教えようとしましたがあいにく手元に名刺はありませんでした。そこで美紀はたまたまこのパーティーに出席していた幸一郎から名刺をもらい、その裏面に連絡先を書きました。幸一郎と美紀が親密そうな様子だったことに気付いた逸子は華子にそのことを伝え、美紀に幸一郎の婚約の件は知っているのかと尋ねましたが、美紀は一切そのことを知らされていませんでした。
やがてパーティー会場に華子が現れ、華子は期せずして美紀と対面を果たしました。美紀は華子に幸一郎とは別れると告げ、幸一郎にそのことを伝えました。幸一郎は今まで一度も美紀の出身地すら訊いたことがないなど終始ドライな関係でしたが、美紀にとっては幸一郎は東京での数少ない友達だったのです。
こうして幸一郎と決別した美紀は、上京してきた里英を自宅マンションに泊めることにしました。里英と共に東京の街を行く美紀の表示は吹っ切れたかのように生き生きとしていました。
やがて華子は幸一郎と結婚式を挙げ、新婚生活をスタートさせていましたが、それは華子にとって決して思い描いたような幸せなものではありませんでした。姑からは早く子を作るよう急かされましたが、そんなに簡単にできるものではありませんでした。一方、美紀は里英から一緒に起業しようと持ちかけられ、快く引き受けました。
あのこは貴族の結末
幸太郎が亡くなり、盛大な葬儀が営まれました。その席で華子は、幸一郎が政治家の伯父の秘書になると聞かされ、それまで一切その話がなかったことに驚きました。しかし、幸一郎はそんな華子の不安を聞いてあげようとはしませんでした。
華子は真に連絡を取り、夫婦生活の悩みを打ち明けましたが、真は幸一郎の家は名家であり、華子が産むであろう子供が男の子であれば、その子も家を継いで政治家になるであろうと語りました。実家からもプレッシャーをかけられた華子は精神的に疲弊していき、心の隙間を埋めるために部屋にプランターを設け、野菜でも育てようかと考えました。ところが、そのことを知った幸一郎の反応は「買ったほうが早くない?」とつれないものでした。
ある日、華子は姑に強制的に不妊外来へ行かされました。その帰り道、華子はタクシーの車窓から偶然にも美紀の姿を見かけました。華子は美紀の自宅マンションに招かれました。美紀の部屋は東京タワーを真正面に眺められる位置にあり、華子は生まれてからずっと東京に住んでいたにも関わらず一度も見たことのない景色に感嘆しました。
美紀が里英と共に起業することを聞いた華子は素直に凄いと口にし、華子が悩みを抱えていることに気付いた美紀は「どこで生まれたって最高って日もあれば、落ち込む日もある。大事なのはそれを話せる相手がいることではないかな」と声をかけました。
美紀の一言で幸一郎と真摯に向き合う決意を固めた華子は、意を決して幸一郎に夢はないのか尋ねてみました。すると幸一郎は華子こそ夢はあるのかと返し、名家に生まれた自分は自分のやるべきことを普通にやるべきだと素っ気なく述べました。完全に幸一郎を見限った華子は離婚を切り出し、周囲の反対にも揺らぐことはありませんでした。その頃、美紀は里英と東京駅の付近を散策しながら、互いの夢について語り合っていました。
それから1年後。華子は逸子のマネージャーとなっていました。逸子のコンサートの日、華子は偶然にも幸一郎と再会しました。幸一郎が久々に見た華子の表情は、結婚生活を送っていた時よりも生き生きとしていました。
以上、映画「あのこは貴族」のあらすじと結末でした。
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