ちょっと思い出しただけの紹介:2021年日本映画。クリープハイプの尾崎世界観が、大好きな映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』にインスパイアされて作った楽曲『ナイトオンザプラネット』。盟友である松居大悟監督がその曲をもとに書き上げたオリジナル脚本がこの『ちょっと思い出しただけ』だ。松井監督や尾崎世界観とつき合いの長い池松壮亮と、初タッグとは思えないほど息ピッタリの伊藤沙莉が、別れから出会いまでの6年間を演じている。ジム・ジャームッシュ監督作品に出演経験のある永瀬正敏が、象徴的な役を演じているのも見どころのひとつだ。主題歌はクリープハイプ「ナイトオンザプラネット」
監督・脚本:松居大悟 キャスト:池松壮亮(佐伯照生)、伊藤沙莉(野原葉)、河合優実(泉美)、大関れいか(さつき)、屋敷裕政(ニューヨーク)(康太)、尾崎世界観(ミュージシャンの男)、市川実和子(牧田)、國村隼(バーのマスター:中井戸)、成田凌(フミオ)、永瀬正敏(ジュン)、神野三鈴(ジュンの妻)、鈴木慶一(ナグラ)ほか
映画「ちょっと思い出しただけ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ちょっと思い出しただけ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ちょっと思い出しただけの予告編 動画
映画「ちょっと思い出しただけ」解説
この解説記事には映画「ちょっと思い出しただけ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ちょっと思い出しただけのネタバレあらすじ:起
2021年7月26日(月)
目覚めた佐伯照生はサボテンに霧吹きで水をかけ、猫に餌をやり、ラジオから流れる曲に合わせて体操をします。家を出て抜け道の公園を通ると、いつもベンチに座っている男・ジュンが清掃中の主婦たちに邪魔者扱いされていました。「もうすぐ妻が来ますから」と彼は座り続けます。
職場である劇場に出勤した照生。彼の仕事は照明助手です。尊敬する先輩・牧田の下で、照生は仕事を任されるようになっていました。その日は舞踊の公演がおこなわれ、白い衣装で踊る女性・泉美を照生は照らします。
公演終了後、泉美は家族らしき人々に囲まれ労われていました。皆が帰り、ひとりで照明器具を片付けていた照生は、ステージの上で裸足になるとゆっくりと踊り始めます。
その頃、タクシードライバーの野原葉はひとりのミュージシャンを乗せていました。本来ならライブだったというその男は、コロナ禍で事務所が危ないのではと心配しています。そして、トイレに行きたくなったと言い出しました。
2020年7月26日(日)
照生は部屋で牧田とリモートで打ち合わせをしています。
葉は、自分のタクシーに透明の飛沫シートを設置していました。同僚の運転手たちは、待つしかないと弱々しく話しています。
2019年7月26日(金)
朝6時過ぎ、目覚めた照生は朝のルーティンをこなします。猫のモンジャがイタズラしていたところからは、茶色いバレッタが出てきました。
その頃、葉は車体を洗いながら流れてきたラジオの音楽に合わせて体を動かしていました。
昼間床屋に行った照生は、長かった髪をバッサリ切りました。バレッタはもう必要ありませんが、忘れずに持って出ました。
その夜の仕事はライブハウス。歌っているのはあのミュージシャンの男です。照生は、彼にあてるはずのライトをはずしてしまい牧田に怒鳴られます。終了してから謝罪した照生は、どこかで会ったことがあるかたずねますが男にはわかりませんでした。
夜の商店街を歩いていると、友達と飲んでいた後輩の泉美に声を掛けられます。彼女は話がしたいらしく、照生は行きつけのバー・とまり木に連れていきます。泉美は海外で踊るという夢を語り、照生はケガでダンサーの夢を諦めたと話します。泉美は驚き残念そうな顔をしますが、その後は気分良く酔い常連客のフミオと大きな声で話し始めます。その様子を照生やマスターはあたたかく見守っていました。
一方、合コンに参加していた葉はそのノリについていけません。タバコを吸いに外に出ると、ライターを貸してくれた男・康太に話しかけられ、関西弁の勢いで押されるままに連絡先を交換してしまいます。そして気がつくと、康太と一夜を共にしていました。「一生幸せにするんで」と調子のいいことを言っている康太の言葉を聞きながら、葉はタバコを吸っていました。
ちょっと思い出しただけのネタバレあらすじ:承
2018年7月26日(木)
照生は目覚めると、まだ小さなモンジャに餌を与えて家を出ました。ケガした照生は足を引きずっています。ダンススタジオに着くと、仲間たちが練習する傍らでバーにつかまってリハビリをします。
浮かない顔で運転していた葉は、客の小学生に励まされ複雑な表情を浮かべています。
練習後、仲間たちに医者からもう踊るなと言われたと涙目で告白する照生。動揺する彼に、仲間たちも気を遣っているようです。
スタジオを出ると、葉が迎えに来ていました。助手席に照生を乗せて車を走らせる葉は、2週間も連絡しなかったと彼を責めます。どんなに心配したか、照生がどんな状態でも好きだから支えたい、と。でも照生の考えは違っていました。こんな自分のことはきっと好きではないはず。自分でも自分のことがわからないので、気持ちを整理して先の目処を立ててから会いたかったのだと言います。
「ずっと会話になんてなってなかったのかもね、ずっと」
一緒に考えたい葉とひとりで決めたがる照生。意見は平行線のまま、言い合いはエスカレートしていきます。
「もういい」葉は照生を降ろし、いっしょに食べるはずだったケーキを無理矢理持たせて車を出しました。そして、照生が追いかけてこないことに腹を立てます。
照生はその辺に腰掛けると道行く人々を眺め、その会話を聞きながら自分の誕生日用のケーキをひとりで食べるのでした。
ちょっと思い出しただけのネタバレあらすじ:転
2017年7月26日(水)
一緒に寝ている照生と葉。
朝、照生が目覚めると枕元に誕生日プレゼントが。葉がくれたのは茶色のバレッタでした。それを髪に付け、ルーティンをこなして出かけるふたり。公園にいるジュンに花の鉢をプレゼントし、その後照生のバイト先である水族館に出かけます。
休館日の今日はふたりで忍び込んで秘密のデートです。この星にふたりだけしかいないような感覚に包まれたふたりは大きな水槽の前で踊り、抱き合います。警備員の足音にあわてて逃げ、隠れてキスをするふたりをシロクマが見つめていました。
その後、タクシーを私用で走らせる葉は、助手席に乗せた照生と「ナイト・オン・ザ・プラネットごっこ」を始めます。セリフを真似て盛り上がるふたり。
夜は屋上で花火をし、街の夜景を眺めながら照生は葉への思いを強く意識していきます。
部屋のソファで『ナイト・オン・ザ・プラネット』を観ながらショートケーキを食べている葉。となりに座る照生はケーキのイチゴを食べながら、「来年の誕生日、プロポーズしよ」とつぶやきます。それを聞いた葉は再度確認しようと聞き直しますが、照生はそれをはぐらかします。ふたりは楽しそうにじゃれ合い、そして愛し合います。
日付が変わり、照生が寝ているうちに仕事に出かけた葉。
数時間後、改めて花束を持ってダンススタジオへ迎えに来た葉が見たのは、泉美からプレゼントを渡され2ショット写真を撮っている照生の姿でした。雨の中、花束を投げ捨てて走り去る葉の姿を見かけた照生ですが、追いかけても彼女を見つけることはできませんでした。
葉がいつもの公園近くでタクシーを停めていると、ジュンが雨の中ずぶ濡れで立っています。妻が傘を取りにいっているというのですが、葉は自分の傘をジュンに渡すと彼の妻を探しに走っていきます。照生からの連絡も無視して走り回り、葉が公園に戻った頃には無事に会えたジュンとその妻が傘をさして待っていました。
その夜、葉はひとりでバー・とまり木にいました。落ち込む葉にマスターは淡々と愛について語り、自分は片思い中だと微笑みます。それから葉は意を決して照生のバイト先へ向かい、驚く彼に自分の気持ちをぶつけます。
帰りはふたりでタクシーに乗り、先にひとりで降りようとする葉に照生は「伝えたら壊れちゃうんじゃないかと思って…」と言い掛けます。ちゃんと伝えようとする照生に対し、葉は「恋愛映画みたい」と茶化してしまいます。続けられなくなってしまった照生が「何でもない」と言うと、突然タクシーの運転手が「何でもないことないでしょう。言えるうち言った方がいいですよ」と声を掛けふたりを驚かせます。
メーターを止めた運転手は気を利かせて車から出ていきました。照生は訥々と葉への思いを口にし、その唇に葉はついばむようなキスをしていきます。次第に言葉は出なくなり深くキスをするふたり。すると突然、葉が続きの言葉を催促します。「えー?」と困惑する照生…。
ちょっと思い出しただけの結末
さらに遡ること一年前。あの部屋には見知らぬ夫婦が暮らしています。でも公園のベンチには変わらずジュンが座っています。
葉は、友人のさつきが主演を務める舞台を観劇しています。ステージ上に数人のダンサーが現れ、群舞を踊ります。関係者とともに初日の軽い打ち上げに参加した葉は、さつきに感想を求められ「良かったよ」と答えます。さつきが離れひとりになってしまった葉に話しかけてきたのは、先程ステージで踊っていた照生でした。
本音の感想を言ってほしいという照生に葉が「ダンスが芝居に合っていない」と言うと、照生は自分が振付をしてステージで踊ってもいたと話します。そんなとき、照生の誕生日を祝うサプライズケーキが登場し、葉はいたたまれずに部屋を出ていきます。
室外に出た葉はオートロックで締め出されてしまい、しばらく経って戸締まりをしていた照生に発見されました。彼に助けられた葉はお礼にビールをおごり、ふたりは飲みながら夜の商店街を歩いていきます。
葉の辛口な批評に凹んだという照生に、以前演劇をやっていたと話す葉。道端ではミュージシャンの男がギターを弾きながら歌っています。ほろ酔い気分のふたりはその場で踊りだし、照生は葉を抱きかかえてクルクルと回ります。
再び2021年。
葉は、客のミュージシャンがトイレに行きたいというので高円寺の劇場の前でタクシーを停めます。自分も車を降りると、劇場内から聞こえてくる音に導かれるように中に入っていき、暗いステージの上で踊っているのが照生であることに気づきます。
照生が気配を感じて顔を上げると、そこに立っていたのは迷い込んできたミュージシャンの男でした。彼を出口に連れて行くと、外に停車しているタクシーが目に入ります。
「どこかで会ったことあります?」そう男に聞かれ、照生はやさしい笑みを浮かべながら「はい、何度か」と答えました。
タクシーは走り出し、いつの間にか午前0時を過ぎて日付が変わっていました。
照生はバーでマスターに「何考えてるの?」と聞かれ、「何も考えてない。ちょっと…」と答えます。マスターは新たな想い人らしき客の男とケーキを作り、照生の誕生日を祝ってくれました。
明け方、葉は仕事を終えて帰宅し、ベランダで朝日を見ていました。部屋の中からは赤ん坊を抱っこしたパートナーの康太が顔を出します。急に食べたくなってケーキを買ってきたけど食べるのは明日にすると言う葉。康太は「おやすみ」と言って部屋に入っていきました。
その頃照生は家に帰り、開け放たれた部屋の窓から昇る朝日を見つめていました。
以上、映画「ちょっと思い出しただけ」のあらすじと結末でした。
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