愛の風景の紹介:1992年スウェーデン,デンマーク,フランス,イギリス,ドイツ,イタリア,ノルウェー,フィンランド,アイスランド映画。スウェーデンを舞台に、裕福な家庭に育った少女と貧しい家庭の出身で牧師を目指す青年との格差を超えた恋愛模様を宗教的に、叙情的に綴ったドラマです。元々はテレビ用だったものを劇場用に再編集して上映した作品であり、本作を手掛けたビレ・アウグスト監督は1988年 『ペレ』に続いて自身二度目となるカンヌ国際映画祭のパルムドールを獲得しています。
監督:ビレ・アウグスト 出演者:サミュエル・フレイレル(ヘンリク・ベルイマン)、ペルニラ・アウグスト(アンナ・オカーブロム)、マックス・フォン・シドー(ヨハン・オカーブロム)、ギタ・ナービュ(カリン・オカーブロム)、モナ・マルム(アルマ・ベルイマン)、レッナールト・ユールストローム(ノーデッソンズ)、レナ・エンドレ(フリーダ・ストランドバーグ)、チェーヴェ・イェルム(フレデリック・ベルイマン)、ビョルン・キェルマン(エルンスト・オカーブロム)、ボリェ・アールステッド(カール・オカーブロム)ほか
映画「愛の風景」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「愛の風景」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
愛の風景の予告編 動画
映画「愛の風景」解説
この解説記事には映画「愛の風景」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
愛の風景のネタバレあらすじ:起
スウェーデン・ウブサラ。裕福な家庭のオカーブロム家の末娘アンナ(ペルニラ・アウグスト)は、兄のエルンスト(ビョルン・キェルマン)たちと共に育てられました。年老いたアンナの父は病を患っており、アンナは将来看護師になるため学校に通っていました。
そんなある日、オカーブロム家では親戚たちを集めたパーティーが開かれ、エルンストは友人のヘンリク・ベルイマン(サミュエル・フレイレル)を連れてきました。貧しい母子家庭で育ったヘンリクは牧師になるために神学校に何とかして通っていました。アンナとヘンリクは初対面の時から互いに惹かれ合ってしまいますが、ヘンリクにはフリーダ(レナ・エンドレ)というレストランでウエイトレスとして働く年上の恋人がおり、アンナの母もまた貧しいヘンリクを快く思っていませんでした。
それでも、アンナはエルンストの協力を得てヘンリクと密会を重ね、ヘンリクもまた自らアンナの家を訪ねるようになっていきました。
そんなある日、ヘンリクがアンナの家を訪ねると彼女は不在であり、アンナの母から別れの手紙を書いて出て行けと命じられました。ヘンリクはやむなく言われた通りにし、手紙を読んだアンナは泣きながら二度とヘンリクには会わないと決心しました。
しかし、それでもヘンリクはアンナへの想いを捨てることが出来ず、彼を見かねたフリーダは自ら身を引く決意をするとアンナに会いに行き、もはや自分ではヘンリクの沈んだ気持ちを救うことはできないのでどうか彼を助けてあげて欲しいと頼みました。これを機にヘンリクとアンナは再び愛し合うようになりましたが、周囲はそれでも貧しいヘンリクとアンナとの交際に反対し続けていました。
愛の風景のネタバレあらすじ:承
ある日、アンナは風邪を引いたのか中々咳が止まらなくなりました。心配に思った両親が診察を受けさせたところ、アンナは肺結核に罹ったことが判明、アンナは自然豊かなスイスの療養所で治療を受けることとなりました。
アンナはエルンスト宛の手紙にこっそりヘンリク宛の手紙を同封、エルンストを通じて渡してもらおうとしましたが、あいにく手紙が届いた時にはエルンストは家を長期留守にしていました。手紙を開封したアンナの父は娘のヘンリクへの想いの強さに心を打たれますが、それでもヘンリクを認めようとしないアンナの母はアンナの回復を待って1ヶ月のイタリア旅行に連れていくことにしました。
2年の療養生活で健康を取り戻したアンナはイタリア旅行の最中に父の訃報を電報で知りました。アンナの母は哀しみに暮れる彼女に、父の意向を無視してヘンリク宛の手紙を燃やしてしまったことを明かしました。父の葬儀を終えたアンナはヘンリクに会いに行きましたが、既に寄宿舎は引き払われていました。アンナは途方に暮れますが、たまたま寄宿舎に立ち寄ったヘンリクと運良く再会することができ、改めて愛を確認し合った二人は結婚を決意しました。
ヘンリクはスウェーデン北部の極寒の田舎町フォルスボーダの小さな教会に新米牧師として赴任することとなり、アンナも同伴しましたが、これまで暮らしていた実家とは真逆の狭くみすぼらしい家に絶句しました。ヘンリクは町の教会で質素な結婚式を挙げたいと考えていましたが、アンナは一生のことだからとストックホルムの大聖堂で盛大な式を挙げたいと望み、ヘンリクは渋々アンナの望みを受け入れました。
愛の風景のネタバレあらすじ:転
やがてアンナとヘンリクとの間には男の子のダグが生まれました。ヘンリクは町の牧師としての務めに励み、アンナは看護師の知識を生かして町の人々の医療にも力を注ぎました。
フォルスボーダの町を仕切る工場主ノーデッソンズ(レッナールト・ユールストローム)の工場の労働者たちは常にノーデッソンズとの間の労働争議が絶えず、双方は対立状態にありました。そんなある日、ヘンリクが労働者たちに教会を会合の場として提供したことをきっかけにヘンリクとノーデッソンズとの間には溝が生まれ、ノーデッソンズは労働者の家族たちに教会の行事に参加しないように圧力をかけました。アンナは町の人々が教会に足を運ばなくなったことに孤独感を感じていました。
ある嵐の夜、ヘンリクとアンナの元に養父母の元から家出してきた少年ペトロスが転がり込んできました。ヘンリクとアンナはペトロスを一晩家に泊まらせ、翌日にも養父母の元に送り返すことにしましたが、ペトロスは家庭内で虐待を受けており、彼を見かねたヘンリクとアンナは当分の間ペトロスを預かることにしました。
そんなある日、ヘンリクは教区の司祭から、今度開設される王立病院の専属の宮廷牧師に大抜擢されたとの朗報を受け取りました。ヘンリクはアンナを伴って早速ストックホルムの王宮に出向き、女王と面会しました。アンナは宮廷牧師の官舎としてあてがわれる予定の豪邸の設計図を見せてもらって大喜びしましたが、どうしてもフォルスボーダの労働者たちを見捨てることが出来ないヘンリクは宮廷牧師の話を断ってしまいました。
愛の風景の結末
ヘンリクとアンナの息子ダグが5歳を迎える頃、アンナは2人目の子供を宿していました。ペトロスは家事を手伝ったりダグの面倒を見たりしていましたが、かつて養父母から受けた虐待のトラウマからどうしてもアンナに懐けずにいました。
そんなある夜、アンナはヘンリクに、ペトロスのことを快く思っていないことを打ち明けました。その話を聞いてしまったペトロスは不安に襲われ、ダグを家から連れ出して凍てつく川へと走り出しました。駆け付けたヘンリクとアンナはペトロスに川に投げ捨てられようとしていたダグを助け、ヘンリクは我を忘れてペトロスを何度も何度も殴り続けました。ペトロスは養父母の元に送り返されましたが、もはや精神的に完全に参っていたアンナはダグを連れて母の待つ実家へと帰っていきました。
ヘンリクはアンナの決断を受け入れるしかなく、一人この地に残って引き続き牧師としての務めを全うすることにしました。ところがその矢先、工場の赤字と倒産の危機に耐えかねたノーデッソンズが自殺を遂げ、工場は閉鎖されて職を失った労働者たちは次々と町を離れていきました。
ヘンリクはフォルスボーダを去り、ストックホルムに戻りました。そこではアンナは母やダグと穏やかな日々を過ごしていました。アンナへの想いを捨て切れないヘンリクは彼女の実家を訪れ、母やダグと共に公園を散歩しているアンナの元に向かいました。母はダグの手を引いて公園の奥へ歩いていき、ヘンリクはベンチに腰掛けたアンナの脇に寄り添いました。臨月を迎えていたアンナはもう戻れないと言いますが、ヘンリクはそんなアンナに「戻らなくていい。宮廷牧師の職を引き受ける事にした」と伝えました。アンナはヘンリクとやり直したいことを伝え、ヘンリクとアンナはようやくストックホルムで家族水入らずの生活を始めることになりました。
以上、映画「愛の風景」のあらすじと結末でした。
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