ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-の紹介:2020年日本映画。『さよならドビュッシー』で『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した中山七里の犯罪サスペンス小説を、綾野剛と北川景子のダブル主演で映画化したクライムサスペンスです。主人公の刑事二人は終末期の患者を狙った連続不審死事件を追ううちに、闇サイトで依頼してきた患者を安楽死させる通称「ドクター・デス」という医者の存在を知ることに…。
監督:深川栄洋 出演者:綾野剛(犬養隼人)、北川景子(高千穂明日香)、岡田健史(沢田圭)、前野朋哉(室岡純一)、青山美郷(青木綾子)、石黒賢(麻生礼司)、松原正隆(馬籠健一)、ホーチャンミ(馬籠小枝子)、田牧そら(犬養沙耶香)、柄本明(寺町亘輝)、木村佳乃(雛森めぐみ)ほか
映画「ドクター・デスの遺産 BLACK FILE」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ドクター・デスの遺産 BLACK FILE」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-の予告編 動画
映画「ドクター・デスの遺産 BLACK FILE」解説
この解説記事には映画「ドクター・デスの遺産 BLACK FILE」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ドクターデスの遺産 BLACK FILEのネタバレあらすじ:起
雨が降る夜。馬籠大地(歳内王太)という少年が公衆電話から警察に通報しました。大地は「お父さんが殺された」と泣きながら訴えていました…。
警視庁捜査一課・麻生班の刑事・犬養隼人(綾野剛)は、腎不全で入院中の娘・沙耶香(田牧そら)の見舞いをしていました。犬養は妻に先立たれ、男手ひとつで沙耶香を育てていました。そこに犬養の相棒である刑事・高千穂明日香(北川景子)が現れ、犬養は高千穂と共に大地の父・健一(松原正隆)の不審死事件を追うことになりました。
健一の住むアパートには誰もおらず、犬養と高千穂は近所の住民から健一の葬儀が営まれているとの情報を得ました。葬儀場に着いた犬養と高千穂は、健一の妻・小枝子(ホーチャンミ)から「健一は病気で死んだ」との証言を得ましたが、大地の通報内容では健一は「悪いお医者さん」に殺されたとのことでした。
犬養は大地から事情を聞くと、大地は「全然知らないお医者さんが来た後で、お父さんが急に静かになった。その後、いつものお医者さんが来て、お父さんが死んだと言った」と証言しました。
犬養と高千穂は火葬される寸前だった健一の遺体を回収し、鑑識に回すため後輩刑事の沢田圭(岡田健史)と共に車に乗せました。犬養は小枝子に、健一が死んだその日に往診に来た医師が二人いたことをなぜ言わなかったのか問いました。その後、犬養は病院で人工透析を受ける沙耶香の元に向かい、自分の腎臓を移植できないことを悔やんでいました。
健一は肺がんで闘病中であり、当初の死因は心不全とされていました。しかし、解剖の結果、健一の体内からは塩化カリウムと麻酔薬が検出され、健一のアパート周辺の防犯カメラの映像を分析すると、主治医が来る1時間前に別の男性医師と女性看護師が来ていたことが判明しました。
二人の顔までは判別できませんでしたが、麻生班は殺人の疑いがあるとして小枝子を事情聴取することにしました。犬養と高千穂の取り調べを受けた小枝子は「もう限界だった。痛み止めが効かず、健一は何度も殺してくれ、楽にしてくれと叫んでいた。三人で死のうと思ったが、あの“お医者さん”が救ってくれた」と証言しました。
ドクターデスの遺産 BLACK FILEのネタバレあらすじ:承
健一は自動車部品工場を経営していましたが、健一の肺がんもあって4年前から経営が傾いていました。健一の死亡保険金はわずか10万円であり、健一の頼みを聞き入れた小枝子はとある闇サイトで安楽死の依頼をしたというのです。
男性医師と女性看護師から塩化カリウムを注射された健一は「幸せな人生をありがとう」と言い残して息を引き取り、男性医師らは1時間後に主治医を呼ぶよう指示していました。その直後に大地が帰宅してきたのです―――。
―――小枝子が依頼したのは「ドクター・デスの往診室」という闇サイトでした。高千穂ら麻生班の面々は早速サイトを見てみると、トップページには「人には生きる権利と、死ぬ権利が平等にあるのです」と書かれてあり、安楽死希望者の連絡を促していました。どうやら無報酬のようです。
高千穂は、「ドクター・デス」のモデルになったのは健一と同じ方法で130人も安楽死させたロシア系アメリカ人医師のイワン・ケヴァニコフ(実在の人物であるジャック・ケヴォーキアンがモデル)であると指摘し、もしあのまま健一が火葬されていれば真相は闇に葬られていたところだったと語りました。
麻生班の班長・麻生礼司(石黒賢)は、健一の件は氷山の一角にすぎないと断言しました。健一は生前に残したDVDで「私は穏やかな死を望んでいる」と語っていましたが、犬養は「例え依頼者が死を望んだとしてもこれはれっきとした殺人だ」と断じました。
麻生から捜査を命じられた犬養と高千穂は、サイトにあるコメント欄を詳しく分析した結果、依頼者は健一の他にも数名いたことが判明しました。依頼者の証言をもとにドクター・デスと思しき人物の似顔絵が作られましたが、依頼者たちはドクター・デスを庇っているのか、似顔絵はいずれも特徴が異なるものでした。
犬養と高千穂は依頼者の中から、難病を患う息子・正人の安楽死を依頼した岸田聡(中村シユン)から事情を聞くことにしました。岸田は「息子は眠るように安らかに逝った」と証言し、犬養は「息子の死を願うのか?」と詰め寄りました。正人は生前にDVDを撮っており、岸田はこのDVDはドクター・デスが撮影したのだと証言しました。
警視庁の分析室でDVDを調べたところ、画面に映る金属製の容器に撮影者の顔が写り込んでいたことが判明、更に分析してみると撮影者は元看護士の雛森めぐみ(木村佳乃)であることが判明しました。
雛森は5年前に勤めていた病院を辞め、2年前から小田急線・町田駅近くの養鶏場で働いていました。犬養と高千穂の聴取を受けた雛森は、経済的に困窮していた時にドクター・デスと思しき人物から臨時バイトとして雇われたと証言、「注射した薬は鎮痛剤だと思っていた、安楽死については全く知らなかった」と容疑を否定しました。
雛森はドクター・デスの名は“田中一郎”だと答え、依頼者の証言による異なる似顔絵については「分からない」としか答えませんでした。
雛森はこれまで健一や岸田の件を含めて8件に帯同したと語り、「報酬は1回につき2万円、薬のラベルは剥がされており、何の薬かはわからなかった」と証言、自分は人殺しの手伝いなどしていないと反論しました。
雛森の自宅を家宅捜索しても何の証拠も見つからず、麻生はとりあえず雛森を泳がせることにして釈放することにし、麻生班の刑事・室岡純一(前野朋哉)と青木綾子(青山美郷)に見張りを命じました。犬養は雛森に何かあったら連絡してほしいと名刺を渡しました。
その際、雛森は「家族からは感謝された。患者たちはとても幸せそうだった。その顔は美しかった」と語り、その発言に違和感を覚えた犬養は沙耶香のことを話すと「沙耶香は絶対に安楽死を望まない。ドクター・デスはサイトで自分を神のように思っているが、薄汚い連続殺人犯だ」と断じました。雛森は「もしあなたの娘さんが早く楽になりたいと望んだら?」と問うと、犬養は「そんなこと言うわけねえだろ」と突っぱねました。
その後、犬養が沙耶香の見舞いに行くと、沙耶香は同室の男の子の患者が亡くなったことで悲しんでいました。帰宅した犬養は妻の遺影を見つめながら、妻と沙耶香と三人で湖畔のコテージに行ったことを思い出していました。
ドクターデスの遺産 BLACK FILEのネタバレあらすじ:転
室岡と青木は雛森が住む安アパートや養鶏場を張り込みました。一方、かつて似顔絵捜査官だった高千穂は犬養に、「依頼者はドクター・デスを庇って嘘をついている。最初に質問された人相で嘘をつき、似顔絵が似ていないと本当のことを言う」と自らの経験に裏打ちされた持論を述べました。
犬養と高千穂は特徴の似通っていない似顔絵を改めて分析し、それぞれの特徴を繋ぎ合わせて再度似顔絵を作成した結果、岸田はまさしくそっくりだと白状しました。警察は直ちに似顔絵を使った手配書を配りました。
テレビのニュースでも安楽死事件が報じられるようになりました。鑑識は、依頼者の家全てで都内で3ヶ所からしか採れない凝灰質粘土を検出しました。刑事たちは手分けして聞き込みを行い、沢田はそのうちの1ヶ所である江戸川河川敷付近でタクシー運転手から似顔絵の男を目撃したとの証言を得ました。
この似顔絵の男とは、橋の下に住むホームレスの寺町亘輝(柄本明)であり、沢田は駆け付けた犬養や高千穂と共に寺町を逮捕しました。
寺町には前科がありました。かつて介護施設の職員だった寺町は末期がんを患う入所者の首を絞めて殺害して懲役7年の判決を受け、5年前に刑期を終えて出所していました。寺町は「俺は何にも知らねえよ。証拠あるのか?」と開き直っていたところ、室岡と青木から雛森が行方をくらましたとの知らせが舞い込んでいました。寺町が逮捕されてもなおドクター・デスのサイトはまだ機能していました。
犬養と高千穂は雛森のアパートに向かいました。このアパートは市の区画整理で取り壊しが決まっており、住民は今や雛森ただ一人でした。雛森の部屋の隣部屋のドアノブが真新しいのを不自然に思った犬養と高千穂は中に突入、部屋の至る所に安楽死した被害者たちの顔写真が吊るされているのを発見しました。ドクター・デスの正体は雛森であり、寺町はダミーとして利用されていただけだったのです。
寺町は再度の取り調べに対し、雛森はひと月に一、二度はやってきて時間と場所を知らせ、自分はただついていくだけだったと証言しました。寺町は雛森の素性については何も知らず、被害者に対しては「俺と違って全く苦しまずにあの世に送る事が出来た。見るたびに涙が止まらなくなる」とこぼしました。
ドクターデスの遺産 BLACK FILEの結末
雛森は白衣を着て沙耶香が入院している病院に潜入し、沙耶香のドナーが見つかったことを確認しました。雛森はカウンセラーの“石川”だと騙って沙耶香に近付き、彼女にハーブティーを飲ませながら「父親は刑事と看病と家事で限界になり、沙耶香の存在が重荷となっている。沙耶香はドナーを待っているが、自分が生きるために人の死を願っている。父を苦しみから解放するのが沙耶香の本当の幸せだ」とささやきました。ハーブティーには睡眠薬が混ぜられており、沙耶香は意識を失いました。
沙耶香が目を覚ますと、病室にはドクター・デスのサイトが表示されているタブレットが置かれていました。雛森の口車に乗った沙耶香はタブレットを通じてドクター・デス(雛森)に連絡を取り、「大好きなお父さんにこれ以上苦しい思いはさせたくない。希望の場所は一番楽しかった場所」と書き込みました。
沙耶香の書き込みを確認した雛森は犬養に電話をかけ、「無理やり生かされている患者を苦しまずに逝かせるのが私の使命。私は救世主だ」と自分の正当性を主張しました。犬養は雛森に「お前はただの快楽殺人者だ」と言い放ち、雛森の通話の音声を解析した結果、雛森が電話をかけた場所は病院の屋上からであることを突き止めました。
その頃、雛森は沙耶香に「あなたの依頼、承りました。地下駐車場に迎えに行く」とメールを送っていました。沙耶香は言われるがままに地下駐車場に向かいましたが、途中で死ぬことが怖くなり、犬養に「ごめんなさい、お父さん。ドクター・デスに連絡した。私のせいで辛い思いして。お父さんと生きていく。助けてお父さん」と助けの電話をかけました。その直後、沙耶香は雛森に連れ去られました。
犬養と高千穂が病院に駆け付けた時には、既に沙耶香の姿はありませんでした。犬養の電話に雛森から連絡があり、「娘の旅立ちを見送りたいなら、“家族の思い出の場所”に一人で来るように」と伝えてきました。犬養は一人で車に乗り、一家の思い出の場所である河口湖畔のコテージに急ぎました。高千穂もバイクで犬養の後を追いました。
コテージに着いた犬養は、ベッドで寝かされている沙耶香を発見しました。沙耶香の腕には点滴がつけられており、雛森が持つスイッチを押せば塩化カリウムが注入される仕組みになっていました。犬養は沙耶香の点滴を外そうとしましたが、背後から現れた雛森によって首に麻酔を打たれました。
雛森は「私を薄汚い殺人者と罵った。お前さえいなければもっと多くの人を救えた」と語り、犬養にさらに注射を打とうとしてもみ合いとなりました。そこに駆け付けた高千穂が雛森に銃口を向け、雛森を逮捕しました。高千穂は救急車を手配しました。
意識を取り戻した犬養は、高千穂から「事件は解決し、沙耶香も無事」だと聞かされました。犬養はよくあのコテージの場所がわかったなと感心すると、高千穂は以前に沙耶香から教えてもらったと明かしました。
雛森の事件はマスコミに大々的に報じられ、雛森は少なくとも35人もの安楽死を行ったことが明らかになりました。独房に収監された雛森は、それでもなお自らの行いが正しかったと振り返っていました。
沙耶香は犬養が作ってくれた弁当を食べながら、「もっともっと生きたい。大人になって、お父さんよりも素敵な人を見つけないと」と語りました。
その後、犬養と高千穂は元気に学校に登校する太一と、起訴猶予処分となった小枝子が我が子を見送る様を見つめていました。
以上、映画「ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-」のあらすじと結末でした。
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