ホムンクルスの紹介:2021年日本映画。山本英夫の同名漫画を、日本ホラー界を牽引する清水崇監督が映画化したサイコミステリーです。過去の記憶を失った主人公・名越進が第六感が得られる特殊な手術を受けたことをきっかけに様々な人々の抱える心の闇に触れていく様を描きます。
監督:清水崇 出演者:綾野剛(名越進)、成田凌(伊藤学)、岸井ゆきの(謎の女)、石井杏奈(女子高生1775)、内野聖陽(組長)、伊東茄那(奈々子)、ほか
映画「ホムンクルス」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ホムンクルス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ホムンクルスの予告編 動画
映画「ホムンクルス」解説
この解説記事には映画「ホムンクルス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ホムンクルスのネタバレあらすじ:起
その男、名越進(綾野剛)は古い車「マツダ・キャロル」で車上生活を送っていました。過去の記憶を失っており、住む家もない名越は高級ホテルの向かいにある公園にキャロルを留め、公園に住むホームレスたちと交流をしているかと思えば、金には困っていないのか、向かいのホテルの高層階のレストランで高級な料理を食べていました。
ホームレスたちはそんな名越を“あんちゃん”と慕いながらも、感情の起伏すら見せない名越をどこか恐れていました。
そんなある夜、名越がいつものようにキャロルの車内で過ごしていると、鼻ピアスやアクセサリーに身を固めた怪しげな男・伊藤学(成田凌)が近付いてきました。伊藤は自分は研修医であり、父は著名な医者だといい、名越に「頭蓋骨に穴を開けさせてほしい」と持ちかけてきました。伊藤は突っぱねましたが、それでも伊藤は「あなたじゃなきゃだめだ」と食らいついてきました。
翌朝、名越が公園のトイレに行っている間に、路上に留めていた愛車キャロルがレッカーでどこかへと移動されていました。落ち込む名越の前に再び伊藤が現れ、「あなたに生きる意味を与える」と告げてきました。
伊藤はなぜか名越が過去の記憶を失っていることを知っており、失われた過去を取り戻すために“トレパネーション”と呼ばれる手術の話を持ちかけました。それは頭蓋骨に穴を開け、脳に眠る潜在能力を開花させることで“第六感”が得られるというものであり、名越は“トレパネーション”を受けることに同意しました。
“トレパネーション”を受けた名越は、戻ってきたキャロルでいつものように過ごしていましたが、特に目立った反応が起こったわけではありませんでした。伊藤は名越を歌舞伎町の料理店に呼び出し、第六感が得られたことを実証するため、伏せたカードの図柄を当てるテストを受けさせました。
名越は右目を手で伏せ、左目だけでカードを見ると、直感で裏の図柄が見えるようになっていました。伊藤は“トレパネーション”が成功したことに喜びましたが、名越はただの偶然だと思いました。伊藤は明日から本格的なテストに入ると告げ、名越に自らの連絡先が入った携帯電話と手術痕を隠すためのニット帽を渡しました。
ホムンクルスのネタバレあらすじ:承
ひとり夜の歌舞伎町を歩く名越は、道行く人々がまるで奇妙な怪物のように見えてしまいました。薄っぺらい人、スカートが高速回転している女性、樹木と会話している女性、全身に大量のメガネをつけている人などなど…。名越は驚きのあまり、ヤクザの組長(内野聖陽)とぶつかってしまいました。
名越の目には組長が超合金ロボットの玩具のように見えてしまい、名越は組長と手下らにひと気のない路地裏に連れていかれ、小指を詰められそうになりました。その時、名越はつい「ダメだよ、自分の小指を切っちゃ」と組長に語りかけ、それを聞いた組長は思わず自らの小指を震わせると、名越の小指を切ることなくその場を立ち去っていきました。
翌日。名越は伊藤の元を訪れ、昨晩体験した奇妙な出来事を打ち明けました。伊藤は名越に奇妙な怪物の絵を見せ、名越の見たものは人間の深層心理が形になった“ホムンクルス”というものであると説明しました。
伊藤は次のテストとして、名越を女子高生専門の風俗店に連れて行きました。名越は店内の女子高生の中から、乾いた砂人間のようなホムンクルスを持つ“1775”(石井杏奈)という女に目を付けました。
伊藤は“1775”をカフェに連れ出し、名越はその様子を観察することにしました。すると“1775”の足から砂が流れ、向かいの席へと流れて人の形となりかけましたが、“1775”は伊藤と少し言葉を交わしただけですぐ立ち去っていきました。その際、伊藤は自分が童貞であることを“1775”に見抜かれ、激しく動揺しました。伊藤は名越に、戦利品として“1775”から巻き上げたスマホを渡しました。
その夜。名越はキャロル車内で“1775”のインスタグラムを見ていると、“1775”にはどうやら自傷癖があるようで「アナタとひとつになると全てが本物になる。アナタとひとつになるとアタシがひとつになる。早くひとつになりたい」とのメッセージが書かれていました。その時、名越のキャロルは昨晩のヤクザたちに取り囲まれ、名越はそのまま事務所へと連れて行かれました。
組長は名越に「昨晩、俺に何をした?」と詰め寄ると、名越は組長のホムンクルスである超合金ロボットの玩具の中に幼かった頃の組長が入っていることに気付きました。実は組長は幼い頃に弟が持っていた超合金ロボットの玩具を奪おうとし、誤って草刈り鎌で弟の小指を切断してしまうという事故を起こしていたのです。
そのことは今でも組長のトラウマとなっており、組長がグレてヤクザの世界に入るきっかけともなったのです。名越を通じ、改めて過去のトラウマと向き合った組長はヤクザの世界から足を洗うことを決断しました。
事務所を後にした名越は、公園で開かれたホームレスの飲み会に誘われました。この頃から名越は少しずつ過去の記憶と失われていた感情が戻り始めており、ホームレスたちに実は過去に保険の査定員をしていたことを明かしました。名越はついホームレス仲間の命の値段を査定しようとし、「命に値段があるか!」と張り倒されました。
その時、“1775”から名越に連絡があり、名越は“1775”をキャロルの中に招き入れました。“1775”のホムンクルスは実は砂ではなく、「ワタシはお前だ」などの無数のキーワードの集合体でした。名越はそのまま車内で“1775”と身体を重ね、その際に彼女が処女であることを知りました。ホムンクルスに振り回される名越とは裏腹に“1775”は満足したような表情を浮かべ、やがてホムンクルスは消滅していきました。
ホムンクルスのネタバレあらすじ:転
翌日。名越は自分の体に“1775”のホムンクルスが転移していることに気付きました。名越は伊藤の務める病院に行きましたが、待合室で待っていると今度は組長のホムンクルスまでもが転移していました。その時、名越は自分の前の席に顔のない女のホムンクルスを持つ謎の女(岸井ゆきの)と出くわしました。女のホムンクルスは名越に「空っぽ」と語りかけていました。
取り乱した名越は、伊藤から他人のホムンクルスが転移してしまっていることを告げられ、解決するには名越自身の深層心理のトラウマと対峙する必要があることを告げられました。そこで名越はキャロルの車内にある所持品を探ったところ、自身の保険査定員時代の名刺の裏に“奈々子”と書かれているのを発見しました。名越は失われていた過去の記憶の全てを取り戻しました―――。
―――保険査定員だった頃の名越は高給取りで、クラブで派手に飲み歩く日々を過ごしていました。そんな名越に「空っぽ」と声を掛けてきた女こそが“奈々子”であり、病院で出くわした顔のないホムンクルスを持つ女だったのです―――。
翌日。名越は再び奈々子に会いに行きましたが、奈々子もまた過去の記憶を失っていました。名越は奈々子をとあるマンションの一室へ連れて行き、名越と奈々子はかつて恋人関係にあり、この部屋で暮らしていたことを告げました。折しもこの日は日食の日でした。名越はそのまま奈々子とキスをし、一夜を共にしました。
その頃、伊藤は自分の腕にマジックペンで金魚の鱗のような模様を書き込んでいました。
翌朝。目覚めた名越の深層心理からはトラウマが消え去りましたが、その代わりにホムンクルスを見る能力が失われていました。名越は奈々子の額に自分と同じくトレパネーションの手術痕があるのを見つけ、急いで伊藤の元に向かいましたが彼は不在でした。
その時、名越のスマホに伊藤から連絡がありました。伊藤は奈々子にトレパネーションを施したものの何も起きなかったことを明かし、そして「今の現実は、自分の脳が作り出した、都合の良い幻想かもしれない」と語りました。電話を切った伊藤が向かったのは奈々子のところでした。
ホムンクルスの結末
名越は第六感を取り戻すため、そして伊藤の深層心理に向き合うために自らの額にドリルで穴を開け、自力でトレパネーションを施しました。そして名越は血だらけのままで奈々子の元に向かうと、奈々子は怯えた表情を浮かべながら衝撃の真実を明かしました。
実は、奈々子は本当の奈々子ではなかったのです。今まで奈々子と思われた女は本名を“チヒロ”といい、チヒロはかつて恋人の運転する車に同乗していた時に些細なことから口論となって車から降りたのです。その直後、恋人の車はたまたま路上に出ていた名越と本物の奈々子(伊東茄那)を撥ね、本物の奈々子を死なせてしまったのです。それ以来、チヒロは奈々子になりすまし、事故のショックで全ての記憶を失った名越と同居していたのです。
チヒロの過去を知ったのと同時に、名越は自らの本当の過去の記憶を取り戻していました。本物の奈々子は名越との間に身籠った子を流産してしまい、それでも自分に構ってくれず生活を改めようともしない名越を責めて口論となり、部屋を飛び出したところにチヒロの恋人の車に撥ねられたのでした。真実を知った名越は泣き続けるチヒロを抱きしめました。
名越がチヒロを寝かせつけると、リビングには伊藤の姿がありました。伊藤はチヒロの件は想定外だったと語り、名越にチヒロを“奈々子”として愛せるのかと挑発的に尋ねてきました。その時、名越の左目に見えたのは、透明な水が人の形となり、その中に1匹の金魚が泳ぎ回っている伊藤のホムンクルスでした。
伊藤は少年時代から父親に認められたいと願っていましたが、父親は我が子には興味も感心もなく、ただ飼っていた金魚にばかり愛情を注いでいました。ある時、伊藤は父の飼っていた金魚を殺してしまったのです。当時を思い出した伊藤は「あの人に見てほしかった。認めてほしかった」と泣きながら胸の内を明かし、名越は「俺たちは、自分のことしか見えていなかったんだ」と語りかけました。
翌日。伊藤は自らの額に穴を開けてトレパネーションを施し、血まみれのままで街を眺めていました。名越はチヒロをキャロルに乗せ、公園を離れていずこへと走り去っていきました。
以上、映画「ホムンクルス」のあらすじと結末でした。
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