この国の空の紹介:2015年日本映画。戦争末期の日本を舞台に、19歳の田口里子が、妻子を疎開させて一人暮らしの男性の世話を焼くうちに、女性として目覚めていく。許されざる恋を二階堂ふみの主演で描いた。芥川賞作家である高井有一の谷崎潤一郎賞受賞作を映画化。
監督:荒井晴彦 出演:二階堂ふみ(田口里子)、長谷川博己(市毛孟男)、工藤夕貴(里子の母/蔦江)、富田靖子(里子の伯母/瑞枝)、川瀬陽太、利重剛、上田耕一、石橋蓮司、奥田瑛二、ほか
映画「この国の空」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「この国の空」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
この国の空の予告編 動画
映画「この国の空」解説
この解説記事には映画「この国の空」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
この国の空のネタバレあらすじ:起
昭和20年、東京 杉並。19歳の田口里子(二階堂ふみ)は、母親の蔦江(工藤夕貴)と杉並区の一軒家に暮らしていました。結核で亡くなった父親の残した遺産で、暮らしには不自由していませんでしたが、食べ物は手に入りずらく、いつもお腹を空かせていました。
里子は町内の事務所で働いています。隣近所では、疎開する人が多くなっていた頃、大雨が降ったせいで里子の家の防空壕が水びだしになって崩れてしまいます。母親と困り果てていると、隣家の市毛孟男(長谷川博己)が「自分の家の防空壕に入ればよい。」と声をかけてくれました。
市毛は、銀行の支店長をしている男で、徴兵検査には丙種合格だったため、召集されていませんでした。彼は、妻子を田舎に疎開させ、現在は一人暮らしをしています。
お言葉に甘えて、里子と母親は空襲の時は市毛の家の防空壕に避難させてもらうことになりました。防空壕だけでなく、市毛は女二人だけでは不自由だろうからと、色々手助けしてくれます。そんな市毛のことを、里子は好ましく思うようになりました。たびたび市毛の家を訪れ、何気ない会話をかわすようになる里子。
毎晩のように空襲警報が鳴り響き、寝不足の里子はある日、市毛の家に親戚から送られてきた干し餅を持って行きました。すると市毛から、家にあがるよう促されます。台所で干し餅を焼いて、二人で酒を飲みながら、この日は話をしました。
この国の空のネタバレあらすじ:承
そんな里子のところに、2月になって空襲で焼け出された横浜の伯母・瑞枝(富田靖子)が家に転がり込んできます。「夫も娘もみんな死んだ…」と話す瑞枝。しかし実際には、二人の死体を瑞枝が確認したわけではありません。
里子と蔦江は、「まだ死んだとは確定していない。」と励ましますが、瑞枝は「丸十日待ったが、二人とも帰ってこなかった…。」と暗い顔をします。家に住まわせてほしいと言われ、困惑を隠し切れない蔦江。食べるものもなく、里子と蔦江の二人で暮らしていくのでいっぱいいっぱいだからです。何かを言いかける蔦江を遮って、すかさず里子が「疲れているので、先に休んだほうがいい。」と、瑞枝を布団に誘導しました。
次の日、空襲警報が鳴り、里子が急いで家に帰ると、防空壕に入らないと言って蔦江を困らせる瑞枝の姿がありました。「防空壕なんかで焼け死ぬのは嫌!」と、駄々をこねる瑞枝。何とか防空壕へと連れていき、その時は何とか助かったのですが、その日の夜、たまりかねた蔦江が「いつまでここにいるつもり?」と尋ねます。
瑞枝は「身内でしょ?」と言いますが、横浜に住んでいた瑞枝が東京では配給がもらえず、食料がありません。二人での暮らしに精一杯だと訴える蔦江に、瑞枝は「部屋を与えてほしい。」と懇願しました。それを聞いた里子は、行く当てのない瑞枝がかわいそうになり、お金を家に入れてもらうかわりに、これまで通り一緒に暮らすことにしました。
夏になると、これまで東京で暮らしていた人のほとんどが疎開していきます。疎開する近所の人を、ヒマワリと里子が見送ります。家に帰ると、蔦江が瑞枝に「出て行って!」と話しているのが聞こえました。瑞枝が夕食のご飯を一人で食べていたらしいのです。すると瑞枝は、謝るどころか居直ってしまいます。行く場所がない瑞枝をかわいそうに思う里子は、喧嘩しないよう蔦江に伝えました。
この国の空のネタバレあらすじ:転
そんな時、里子は市毛から「自分の留守中に、家の風通しをしてくれないか?」と頼まれました。合鍵をもらって市毛の家に入った里子は、勝手に家の中を見て回ります。そして、思わず寝室を覗いてしまった里子は、布団が敷きっぱなしなのが気になり、布団を畳みました。
あくる日、食料と着物を交換してもらうために、蔦江と里子は田舎を訪れます。河原では子どもが遊び、里子と蔦江も入ることにしました。汗だくの里子に、蔦江は上着を脱げばいいと言いますが、里子は恥ずかしがって脱ごうとしません。すると蔦江は、「あんたも女になったのね。一番それを感じているのは、市毛さんよ。」と言います。
里子はそんな風には感じたことがないのですが、蔦江には市毛の行動から、彼も里子に興味があることを気付いていました。そして、蔦江は「市毛さんに気を許してはダメよ。気を許せば損するのは女。好きだと言えば、崩れておぼれてしまう…」と忠告します。
しばらくすると、市毛が戻ってきました。市毛から、会社にある米を一緒にとりに行かないかと誘われた里子は、市毛と二人で出かけることにしました。帰り道、神社の境内で昼食のおにぎりを食べていると、「女の人は、何をしていても美しく見える時期ってあるんですね。」と、市毛にじっと見つめられます。恥ずかしくなった里子が水を飲み、その後市毛に水の入った柄杓を差しだしました。
水を飲んだ市毛はスッと立ち上がり、里子をじっと見つめます。じりじりと迫る市毛。二人は激しく抱き合いますが、通りすがりの夫人から「ここは神社ですよ!」と、激しく叱責され、その場を後にしました。
この国の空の結末
家に帰り、昼間の出来事が忘れられない里子は、縁側で火照る身体を休めます。そして、たまらなくなった里子は、夜中にも関わらず、トマトをお裾分けすることにしました。里子の気持ちを悟った市毛は、家の中に入れて、二人はとうとう一線を越えてしまいました。
その時に、市毛から「友人に新聞記者がいて、もうじき戦争が終わる。」と告げられます。秋までに戦争が終わることに安堵する里子。
男女の関係を持った日から、市毛の家の戸がずっと閉まるようになります。妻のところへ疎開したのかと心配した里子は、市毛の会社に電話をすることにしました。市毛は会社に泊まり込んでいると知り、里子はホッとします。
しかしその日から昼夜とわず空襲警報が鳴るようになりました。東京にも新型爆弾が落ちるのではないかと噂が広がりますが、14日になると市毛が里子の家へとやってきました。市毛は、蔦江と瑞枝にも日本がもうじき降伏することを伝えます。「まだ近所には、黙っていてください。」と伝えると、市毛は帰っていきます。
市毛を家まで送っていった里子は、家にあがるよう促されましたが「今日は帰ります。」と断ります。戦争が終われば、市毛の妻子が帰ってきます。それは、市毛との恋の終わりを告げるものです。それでも市毛は、里子に無理やりキスをしました。里子は、「私の戦争がこれから始まるのだ。」と、思ったのでした。
そして、映画は茨城のり子の「わたしが一番きれいだったとき」を朗読して幕を下ろします。
以上、映画「この国の空」のあらすじと結末でした。
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