劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~の紹介:2018年日本映画。月刊LaLa連載中の「夏目友人帳」は、妖(あやかし)とその姿を見ることができる夏目貴志との心温まる、そして時に切なく、時に悲しい物語たちである。2008年からはテレビアニメの放送も始まり、現在まで6期が放送されている人気シリーズとなっている。今回は初の劇場版として、原作者緑川ゆき監修により完全新作のストーリーが練り上げられた。おなじみのクラスメイトや妖たちに加え、この作品のために考えられた津村母子(おやこ)と夏目との交流が美しく丁寧に描かれている。
総監督:大森貴弘 監督:伊藤秀樹 声優: 神谷浩史(夏目貴志)、井上和彦(ニャンコ先生・斑)、小林沙苗(夏目レイコ)、藤村歩(夏目貴志:少年時代)、村瀬歩(結城大輔)、伊藤美紀(藤原塔子)、伊藤栄次(藤原滋)、堀江一眞(田沼要)、佐藤利奈(多軌透)、木村良平(西村悟)、菅沼久義(北本篤史)、沢城みゆき(笹田純)、石田彰(名取周一)、島本須美(津村容莉枝)、高良健吾(津村椋雄)ほか
映画「夏目友人帳 うつせみに結ぶ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「夏目友人帳 うつせみに結ぶ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~の予告編 動画
映画「夏目友人帳 うつせみに結ぶ」解説
この解説記事には映画「夏目友人帳 うつせみに結ぶ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~のネタバレあらすじ:起
夏目貴志は同級生と5人で帰る途中、追ってくる影を見かけ、皆と別れてまこうとしますが、六本腕の妖怪に押さえつけられてしまいます。それを助けてくれたのはニャンコ先生とさっきの影。もんもんぼうというその妖は、名前を返してほしくて五丁町からやってきたのだといいます。
レイコがその名を手に入れたときの記憶、-その場には一人の少女がいて、その子が落とした鈴をレイコが拾って渡そうとしたが逃げてしまった-。レイコが人間と関わらなくなってしまったのはこんなことが何度もあったからだと夏目は悟ります。
翌日、夏目は五丁町へ行く用事を頼まれます。そこでかつてレイコから逃げ出した少女、今は初老の津村容莉枝に出会いました。容莉枝は切絵作家で、家の中には作品と息子椋雄の写真がたくさん飾られています。二人ともドジで放おっておけない雰囲気がそっくり、そして椋雄はどこか浮世離れした雰囲気をまとっています。
帰り道、夏目は津村家を狙うかのような妖を見かけ、不安になります。
劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~のネタバレあらすじ:承
夏目は小学校時代の友人・結城大輔とすれ違い、過去の出来事を思い出します。結城は自分も人には見えないものが見えるのだと言い、妖怪を見に二人で滝に向かいます。
妖怪は夏目に「滝の水にふれると誰かの運命が変わってしまうから、さわってはいけない」と言いますが、何も見えない結城はそこに石を投げようとします。それを止めた夏目と気まずくなり、それきりになっていたのでした。
ニャンコ先生と再び五丁町を訪れた夏目は、椋雄と再会します。椋雄は夏目を家に誘い、母はなんてん様と呼ばれる大木に何でも報告して拝んでいると話します。そして心配だからどこにも行けないとも。夏目は切絵をもらい、ニャンコ先生と合流して帰ります。
ニャンコ先生に何かの種がついていて、夏目が庭にポイッと捨てると、翌朝それは大木に育っていました。しかし滋や塔子には見えていない様子。その実をニャンコ先生が食べると木は消えましたが、翌朝、先生がなんと可愛い三匹の仔猫に分裂してしまったのでした。
劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~のネタバレあらすじ:転
仲間の中級妖怪たちに三匹を預けるも1匹(1号)逃げ出してしまい、田沼と一緒に探し始めます。同級生の多軌が追いかけていったようですが、なぜか夏目以外、多軌の記憶があいまいになってしまっています。3号までいなくなり五丁町まで探しに行った夏目は、そこで二人の祓い人が“式”を探しているのを見かけます。
結局見つからず家に帰ると、滋たちが自分を忘れてしまい、そこには代わりに結城がいるという悪夢を見てしまいます。再び五丁町を訪れると、2号が容莉枝の家に向かって走り出し、そこで1号を抱いた多軌を見つけます。でも多軌は夏目たちのことがわかりません。どうやら記憶を奪う妖怪が関係しているようです。
すると椋雄が自分のせいだと。彼は人の姿をうつしまねる力をもつ妖で、ずっと見守っていた容莉枝の息子が8年前に亡くなったときに容莉枝に見られてしまい、以来、椋雄として過ごしているのだといいます。
劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~の結末
名取周一は、亡き主の命令で“記憶を奪う大妖”を狙っている式“ハバキ”の任を解くために探していて、夏目が何かを隠していると感じ取ります。
椋雄は夏目に「名前を返してほしい」といい、それによってニャンコ先生を元の姿に戻せるといいます。三匹を抱いて大木の穴の中に入る椋雄。“ホノカゲ”という名前を返すと白い鳥のような姿になり、ニャンコ先生も元に戻りました。名取は夏目や斑の協力もあり、式の“解約の儀”に成功します。そしてホノカゲは容莉枝のことを頼むと言い残して飛び立っていきます。
美しく輝く綿毛のようなものが宙を舞い儚く消えると、容莉枝や多軌、みんなの記憶がホノカゲのいなかった記憶に書き換わります。ふいに涙を流す容莉枝。夏目から、レイコが拾った鈴を受け取ると、実はレイコに憧れていたと言い、そして「もう大丈夫」と微笑みます。部屋には椋雄だという大きな白い鳥の切絵が飾られていました。
夏目は結城に会いにいき、自分に話しかけてくれたことがうれしかったと伝えることができました。様々な人と関わることで、レイコとは違う道が開けてきていることを夏目は感じていました。
以上、映画「劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~」のあらすじと結末でした。
「夏目友人帳 うつせみに結ぶ」感想・レビュー
-
劇場版 夏目友人帳~うつせみに結ぶ~を観てきました。(ネタばれあり)
夏目貴志(なつめたかし)は幼いころから妖(あやかし)と呼ばれる人ならざるものを見る力を持っていました。祖母レイコから遺品として受け継いだ「友人帳」と呼ばれる台帳に、レイコが勝負を挑んで負けた妖たちの名前が連ねてあります。その友人帳は名前を呼ばれると妖たちはどんな命令にも従わなければならないという強力な力が備わっていました。その友人帳を狙って、妖たちは夏目の前に現れます。夏目は大妖怪斑(ニャンコ先生)と共に妖たちに名を返す決意をします。
とここまでが、おおまかな原作のあらすじです。これを知っていれば、夏目友人帳は一話完結のオムニバスなので誰でも楽しめます。
今回は夏目の過去にまつわる話と、新しい妖の話が入っています。
夏目が高校生になり、ようやく妖たちを認識してくれる人たち、妖怪はみえなくても信じてくれるクラスメイトや、祓い屋(はらいや)と呼ばれる妖怪を退治する人たちに出会い、小さいころからの劣等感を抱かずに済むようになりました。
そんな中、たまたま結城大輔(ゆうきだいすけ)という小学生時代の同級生に会います。
当時結城はうそつきと評判で「見えないものが見える」と言っていました。幼い夏目は「自分のほかにもへんなものが(このころの夏目は妖をあやかしと認識していませんでした)見える仲間なんじゃないか」という淡い期待を持ちます。
ところが、結城は本当は「見えなかった」のです。
ところで、夏目の友人帳を狙って悪さをする妖もいるわけで、そんな時夏目は一般人に害が及ばないようにしていました。ある日ひょんなことからレイコを知っているという津村容莉枝(つむらよりえ)に会います。
容莉枝は、椋雄(むくお)という息子と二人暮らしですが、二人は仲良く暮らしていました。夏目も容莉枝や、椋雄のやさしさに触れます。
ある日、夏目に悪さをしようとしていた妖をふるぼけた社に追い詰めたニャンコ先生こと斑が退治します。斑の目に入ったものは、おいしそうな果物……。
食べ物に目のないニャンコ先生はそれをむしゃり、と食べてしまいます。するとあら不思議、ニャンコ先生が三匹に分かれてしまったのです。
夏目が家に帰ると、ニャンコ先生が三匹に分かれています。夏目はびっくりして、ニャンコ先生を元に戻す方法を探すため、高校の皆と逃げ出したニャンコ先生を探します。
ニャンコ先生は普段から可愛いですが、三匹に分かれた姿は正にキューーーーート!!とりあえずネーミングセンスを何とかしてもらいたい(一号・二号・三号って……笑)
ニャンコ先生を見つけた多軌(たき)が追っていった先がなんと容莉枝の家。それも赤の他人であるはずの多軌が、なぜか容莉枝の親戚の子供ということになっています。
不思議な事件に遭遇した夏目。この辺りは「何故ニャンコ先生が三匹に分かれたのか?」となんだか津村親子が怪しいぞ、と観ていて思い始めます。ですが、接点が「夏目レイコ」なだけで、容莉枝は何も知らなさそうでした。
「これは妖の仕業だ、三号は元に戻れる場所にいる」とニャンコ先生一号と二号が口々に言います。
夏目は椋雄と共に三号を探しに出かけます。
椋雄の独白に、夏目は心を打たれます。椋雄はなんと、人の記憶を書き換える妖怪だったのです。そして
椋雄が大きな木の虚の中にある社でその生涯を終えようとしていた時、夏目の友人帳に名前があることを知らされます。名は「ホノカゲ」。
「その土地にいすぎてしまった」と言う椋雄の独白のところで、思わず涙が……。
夏目友人帳はこの胸がぎゅっと締め付けられる感じがたまりません。
容莉枝の元に帰ってくると、すっかりホノカゲがいたことを忘れている彼女に、夏目はいたたまれなくなります。椋雄は七年前にすでに亡くなっていて、記憶を書き換えたホノカゲが椋雄になっていたのです。
「おかしいわね、七年も前の事を思い出すなんて……」
私は観ていて、容莉枝さん! それでいいんだ! 椋雄の事忘れないで! と心の中で思いました。
所詮妖と人とは相いれないのか? と容莉枝と椋雄(ホノカゲ)を見て夏目は思います。
ただ、気持ちは通じていたんじゃないかと、私は信じたいです。
最後に、夏目は結城と仲直りします。結城の存在は多少語られるものの、強くは感じないのですが、モチーフとしての結城(妖が見えないものが夏目に感じる事)を上手く表現できていると思います。
そして、また、夏目はいつもの日常に戻っていきます。
容莉枝がレイコの事を憧れていたこと、結城が見えないものに憧れていたこと、この二つは物語の鍵となっているんだなと思います。
この映画はエンディングの音楽もとてもやさしくしっとりと歌い上げられているので、余韻に浸るにはぴったりです。
以前同じ緑川ゆき原作の「蛍火の杜へ」が映画化されたときに、「悲しい、つらい、けれど、愛おしい作品」だなと思っていましたが、今回の夏目友人帳も、悲しいこと、つらいことを乗り越えて、「愛おしい」へ昇華したんだな、と思いました。
アニメーションといえど、奥が深いので(実際、アニメは六期やっていてなお深夜番組)子供向けではありません。しっとりと心地の良い「泣き」の映画だと思います。 -
夏目友人帳の映画を初めてみました。
テレビのときより話の広がりが大きくて内容が盛りだくさん。
いろいろなストーリーが展開されてそれが混ざり合いながら盛り上がり、最後にはすーっとまとまって消えていくような感じでした。
夏目友人帳にはいつも泣かされます。今回もあやかしがすべて背負って消えようと静かに決めたシーンで泣いてしまいました。
理不尽でもすごく悲しくても、泣きもわめきもせずに静かに受け入れる姿は、何であってもなんともいえず切なくいとおしい気持ちにさせられます。
夏目友人帳、待望の映画化!夏目シリーズはいつ見ても心があたたまります。いつか誰の記憶からも完全に忘れられてしまう大妖。存在自体が儚げで涙を誘います。いつかは終わってしまうと思いながらも容莉枝の息子として寄り添う姿に感動しました。忘れてはならない、忘れてほしくない人を大事にしなくちゃなと思わされました。