人魚の眠る家の紹介:2018年日本映画。脳死をテーマにした映画。我が子がもし事故に巻き込まれ、脳死状態になったとしたら…。心臓が動いて体の温もりを感じれば、もしかしたら意識が戻るかもしれないと期待を持ちながら介護をしていくのか、あるいは死を受け入れるのか、でも心臓が動いているのであればいつを死とするのか、母親は最新の医療技術をわずかな光として希望を持とうとするが、事故の当事者にとってはどうなのか。それは親の自己満足にすぎないのか、あるいは究極の愛情なのか。あなたならどうしたいですか?といった他人事ではない誰がいつ当事者になってもおかしくない、東野圭吾の小説を原作にしたミステリー。
監督:堤幸彦 出演:篠原涼子(播磨薫子)、西島秀俊(播磨和昌)、坂口健太郎(星野祐也)、川栄李奈(川嶋真緒)、山口紗弥加(美晴)、田中哲司(進藤)、田中泯(播磨多津朗)、松坂慶子(千鶴子)、ほか
映画「人魚の眠る家」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「人魚の眠る家」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
人魚の眠る家の予告編 動画
映画「人魚の眠る家」解説
この解説記事には映画「人魚の眠る家」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
人魚の眠る家のネタバレあらすじ:起・子供の受験と事故
冒頭、ある少年が友達とボールで遊んでいると、「播磨」という表札の掛かった大きな家の庭にボールが入ってしまい、庭の中にそおっと入っていくと、お母さんを呼ぶ少女の声が聞こえてきますが、そこにいたのは、可愛らしい顔立ちで車イスに座る、眠っているような少女でした。
播磨和昌(西島秀俊)は最新のテクノロジーを駆使して医療技術を提供している会社の2代目社長。仕事人間で家にいる時間はほとんどなく、子育てはほとんど妻・薫子(篠原涼子)に任せきりになっていました。先日浮気がバレて離婚の話が進んでいました。来年は娘の小学校受験を控えているので、合格するまでは仮面夫婦として、その後に離婚することを約束している。妹も和昌とは別れて再婚した方がいいのではないかと賛成してくれている。二人には娘の瑞穂(稲垣来泉)と息子の生人(斎藤汰鷹)がいる。今日は瑞穂の受験のリハーサル指導があるので、瑞穂たち子供は薫子の母・千鶴子(松坂慶子)と妹・美晴(山口紗弥加)に預けた。瑞穂はプールで生人と、いとこの若葉(荒川梨杏)と3人で楽しく遊んだ。若葉のおもちゃの指輪を瑞穂と二人で交代で指につけて、キラキラ光るのを眺めながら楽しく遊んでいた。入試の面談の待合室では、他の夫婦は早くから二人で並んで待っているが、面談ギリギリになりやっと和昌が入ってくる。そこでお辞儀の作法を確認して入室する。携帯電話の電源を切り忘れたままで…。いくつか質問に答えていると和昌の携帯電話から着信音が鳴る。そこで「本番は切っておきます。」と言って電話に出ると「瑞穂が救急車で運ばれた」と連絡があり、夫婦でそのまま病院へ直行する。若葉のおもちゃの指輪がいつの間にか指から抜けて排水溝に入ったので、二人でそれを取ろうとしていた。若葉は途中で息苦しくなり水からあがったが、しばらくして瑞穂の方を見ると指が抜けなくなって、プールの底に沈んでいたという。
人魚の眠る家のネタバレあらすじ:承・脳死を受け入れるのか
あわてて病院に駆けつけ、何があったか聞いても祖母の千鶴子も妹の美晴も状況がわからない。あわてふためいていると先生から説明があった。「意識が無くなり娘さんは脳死状態に。しかし、心臓は動いている。ただ、これまで医学的には意識が戻ったことはない状況にある。脳死判定を受け入れれば脳死をもって死の判断となるが、受け入れなければ生きているということになる。世界的に見ると日本は特殊だが、脳死を死とするか、心臓死を死とするか選ぶことができる」と。また、このような状況で聞き苦しいのですがと言いながらも臓器提供のことも聞かれた。とても難しい問題なので、夫の和昌は初代社長で実父の播磨多津朗(田中泯)にも相談する。和昌と薫子が瑞穂に面会した際、薫子が瑞穂の手を握っていると握り返したように感じ「この子はまだ生きている」と言う。先生はラザロ徴候(脳死患者が反射的に手足を動かす動作のこと)の可能性があると言うが、瑞穂の指が動いたことで、まだ生きていると信じてしまう。そして臓器提供を拒否する。さらに、薫子は自分から離婚を言い出したにもかかわらず、身勝手かもしれないが白紙に戻して自宅で看護をしていきたいと和昌に告げる。和昌も薫子の言葉に理解を示す。脳死状態で自発呼吸も困難な瑞穂には横隔膜ペースメーカーを埋め込んで呼吸を行えるようにして、自宅での介護に備えた。祖母・千鶴子も自分が連れて行ったプールで起こった事故だったので責任を感じ、もしも意識が戻ったら「おばあちゃんのせいだ」と言ってもらいたいと希望をつないだ。また娘の薫子の力に少しでもなりたいと思いながら、薫子にきつく当たられたり叱られながらも一生懸命に目を覚ましてくれたらという希望を抱きつつ瑞穂の介護に協力する。
和昌の会社では最新の科学技術を使って、体に障害を持って手足が動かせない人でも脳波を使って自分の意志で手足を動かすことを研究している星野祐也(坂口健太郎)がいた。星野は、体が動かせない者でもこの技術を使えば自分で出来ることの満足感があると言う。脳死状態でも脳の代わりに人工的な電気信号を送れば、体を動かすことが可能になるという。早速、和昌は星野に娘の事を話し、研究対象としてやってくれないかと話す。社長から抜擢され、とても喜んで星野はそれから和昌の家に通うようになる。真面目で研究熱心な星野は恋人の真緒(川栄李奈)の誕生日に「来年も一緒に過ごそう」と言われる。「仕事の内容は極秘のため話せないが充実した研究をしている」と言う。星野は瑞穂にANCという人工的に神経を接続させる技術を装着させると、手や足を動かすことができるようになり薫子はとても喜ぶ。この事で床擦れの心配もなくなり、始めの頃よりも健康にもなった。しかし、同僚はそんな星野を見て、脳死の人間にそんなことをして何の役にたつのかと、それよりは生きた人間にした方がいいのでは、と言う。そんなある日、和昌は息も自然にできるようになる手術があることを知る。早速手術をすると、寝息をたてて寝ているように見える。このことにより、薫子はさらに大きな希望を抱くようになっていく。体も成長していき、ひな祭りや行事のあるごとにお友だちを招待してお祝いをしたりもした。星野の研究もどんどん進んでいく。薫子も欲が出てきて星野のいないときに勝手に使ったことで、星野は自ら1日おきに来ることを約束する。
そんなある日、星野の恋人・真緒の誕生日の招待があった。しかし星野は、仕事があるのでと言って断る。あまりにも仕事が忙しいようなので、ある日、タクシーで後を追いかけるとそこは社長の家だった。そこで星野のいない時に訪問すると、部屋に通されて薫子がお茶を入れに行っている間、脳死の女の子が車イスに座っているのを見ていると手が上がったのを見て怖くなり、あわてて部屋を飛び出します。またある日、夫が瑞穂にぬいぐるみを買った時は、手をだいぶ細かく調整させて動かすことが出来るようになり、口角をあげて笑うことも出来るまでになっていた。ところが、恋人の真緒は仕事に没頭して休日出勤もする星野のことを心配して「時間を返してほしい。」と社長に直談判していた。社内でも星野の仕事が行きすぎなのではと問題になっていた。組織としての会社が社長の私物化のように見えるし、期間も無期限なのはおかしいとも問い詰められていた。夫の和昌は、初代社長でもあり父でもある多津朗のところへ、自分がしていることはどうなのかと思い、考えを聞きに行った。父は会社で息子がどういう状況にあるかもすでに耳に入っていて「人間の領域をはるかに越えている。」と。そこで星野に職場移動を命じる。しかし、星野は納得できず「焼きもちを妬いてるのですか?あの家族に必要なのは社長ではなく僕です。僕たちが瑞穂ちゃんを育てているのです。」と言う。
人魚の眠る家のネタバレあらすじ:転・家族の葛藤と崩壊
息子の生人も瑞穂と同じ小学校に入学した。その時薫子は瑞穂を連れてきた。夫の和昌はちょっと戸惑った。生人は友達に「生きている」と言ったのだが、それから学校でいじめられるようになる。和昌がある日、道を歩いていると臓器移植の募金を呼びかけるパンフレットを渡している団体がいた。ふと見ると学生時代の友人もいる。友人と話すと、知り合いの子どもがアメリカで手術するために2億4千万円の寄付金集めをしていると言う。他人事とは思えず、和昌も百万円寄付する。しかし、薫子は賛同できなかった。しばらくして団体の事務所に行くと、ドナーを待つ子供の父親から「夫婦二人で決めたことがある。それはドナーを待つことについて。ドナーが現れるという期待だけはやめようと約束している。」これを夫婦で話して決めたと聞いた。しかし、それからしばらくして和昌に電話があり、ドナーを待っていた子供は亡くなったと聞かされる。
この頃からどんどん薫子は瑞穂を外に連れ出すようになる。母の千鶴子もうろたえて和昌に相談する。和昌は注意するが聞かないので「世間の見世物になっている。」と止める。生人も今までは学校から帰ると「お姉ちゃん、ただいま。」と言っていたのに、入学してからはだんだん瑞穂を避けるようになっていった。毎年、若葉を招待して、ひな祭りや誕生会をしていたので今年の誕生日も生人が友達を6人連れてくると言っていたのに、誰も来ていない。生人を問い詰めると「誰も来ない。入学式でお姉ちゃんが生きていると言ったらいじめられるようになった。お姉ちゃんは本当は死んでるのにお母さんが生かしてるんだ」と。その時若葉が生人に「それは言ったらダメ。」と言うと、薫子は、みんなが瑞穂は死んでいると思ってることに対して怒り出す。そこで薫子は生人の頬をたたいた。それを見た和昌は「価値観を人に押し付けてはダメだ」と薫子をたたく。
そして、刃物をもって瑞穂の首の前に向けた。みんなびっくりして誰も手が出せない。薫子は警察に自ら電話すると警察がやって来た。「もしこの子を私が殺したら殺人罪ですか?だったら生きているということで喜んで刑を受けます。でも、死んでいるというのなら人は二度は死なないから殺人罪にはならない。」と。警察も困り果て、なんとかなだめようとする。ついに瑞穂の心臓の前に包丁を突きつけた。夫が「頼むから殺さないでくれ。」と叫んで覆いかぶさる。若葉が「瑞穂ちゃんは私の身代わりになったんだ。ごめんなさい、瑞穂ちゃん。大きくなったら私が何でもお手伝いするから。」と言うと、みんなびっくりしてしまう。生人も「お姉ちゃんは生きていると学校で言う」と泣いて訴える。薫子も正気に戻り刃物が床に落ちる。そして「生人ごめんね」と言って抱きしめる。それから研究員の星野も、恋人・真緒の職場に行き「ごめんね」と謝る。真緒は「お帰り」と言って受け入れてくれた。そんなことがあってからしばらく、薫子が家に引きこもっているのを和昌が心配して、外に家族を連れ出そうとする。久しぶりに家族4人で、かつて瑞穂と遊んだ公園に行くと、昔、瑞穂が「素敵な場所見つけたから今度お母さん連れていってあげる」と言っていた、瑞穂の描いたハートの形に穴が開いた木の株があった。こんなにところにあったんだと薫子は驚く。
人魚の眠る家の結末・命日、そして空き地の謎
薫子は瑞穂と一緒にピアノを弾いたり本を読んでいたことを回想していた。看病で疲れたのか、うとうとしていた。すると瑞穂が目を覚まし起き上がる。そして「お母さん、ありがとう…。」と言った。それを聞いた薫子は何かを悟ったかのように受け入れた。そして瑞穂の要体の異変を知らせるブザーが鳴って薫子はその夢から目覚める。
薫子は和昌と共に、瑞穂の脳死判定を受けることにした。そしてやっと瑞穂の死を受け入れた。夢の中でお別れをしたその日を瑞穂の命日としたのだ。
葬式を家の庭でしています。病院の先生も来ています。和昌は先生から「あなたは何をもって死としますか?」と聞かれ「心臓の死かな」と答えると「じゃあ、まだ死んでないですね。この世界のどこかで誰かの心臓が動いている限りは」と言われるのだった。
ずっと何年も入院していた宗吾は心臓移植の手術を受けて元気になり、家に戻ってきた。この少年・宗吾は映画の冒頭でボールで遊んでいた少年だ。「行きたい所があるんだ」と両親に言って元気に出掛けると、向かった先は空き地になっていた。その空き地はかつて播磨家のあった場所だった。
以上、映画「人魚の眠る家」のあらすじと結末でした。
この映画は本当にどこをとっても切なくて心が締め付けられるように痛くて苦しい気持ち抜きには見られなかったです。でもそれは見なければよかったとかではなくあまりにも考えさせられる事が多くて現実にいつ誰に起きてもおかしくないことで自分に置き換えた時にどうするんだろうって自問自答ばかりしてしまいました。