パレードの紹介:2010年日本映画。5人の男女のゆるくてほのぼのした日常に潜む連続女性暴行事件と予想外の大どんでん返しが魅力。藤原竜也や貫地谷しほり、香里奈といった個性派俳優が演じる、平凡な若者だが、それぞれの現実に不満を抱えて生きている。
監督:行定勲 出演:小出恵介(杉本良介)、貫地谷しほり(大垣内琴美)、香里奈(相馬未来)、藤原竜也(井原直輝)、林遣都(小窪サトル)、中村ゆり(貴和子)、竹財輝之助(琴美の彼氏、人気俳優、丸山友彦)、石橋蓮司(野口良夫)、野波麻帆(美咲)
映画「パレード」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「パレード」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
パレードの予告編 動画
映画「パレード」解説
この解説記事には映画「パレード」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
パレードのネタバレあらすじ:起
ルームシェアをしている5人の若者がいます。冒頭で登場する大学生の良介と、ニートの琴美は、テレビで連続女性暴行事件が発生しているニュースを見てから買い物へ出かけました。同じアパートの前で泣いてしゃがむ高校生の女の子を見て思わず何があったか声を掛けますが、ほっといてほしいと言って立ち去っていきました。彼女がその場を後にしてから怪しげな政治家の男、野口が女の子が出てきた部屋から姿を現した為、売春が行われているのではないかと琴美は良介に訴え、2人で調査する事に決めます。後日、隣人のもう一人の怪しげな男性を定食屋で見かけ、益々怪しいと感じる琴美。良介は家で琴美と恋愛ドラマを見ている最中、知り合いから電話がかかり、学生時代の付き合いの浅かった友人、松園浩志が亡くなった事を聞かされました。旅行にも誘われますが、良介自身は、その誘いどころじゃありませんでした。ジョギングを夜するのが日課の良介は、その亡くなった友人、浩志の姉、貴和子と恋人関係で、彼女の家をジョギングついでに訪ねます。2人はその場の流れで一夜を共にした後、良介は浩志の死に号泣し、貴和子が宥めますが、彼女の関西人の彼氏が貴和子の浮気を疑い、更には泣いている良介を見て混乱した為、彼女の家を後にしました。ある日、家に見知らぬ金髪の若者、サトルがいて、彼は酔っぱらってここに連れてこられたらしく、家にずっといる琴美と直ぐ打ち解けます。サトルは良介と未来の事を知っていました。琴美に部屋にいて仕事に出て行った、直樹や未来、良介の事を説明しました。直樹がバナナジュースを作ってくれたこと、未来が泥酔状態から抜けてなくて少々怖かったことです。サトルは少し、琴美とパチンコ屋で遊んでから、俳優をしている彼氏、丸山に会いに行く予定が急にできた琴美と店を出てから別れました。琴美は丸山と久々に会って肉体関係を結ぶと、丸山が俳優である事から多忙で遠距離な状況にモヤモヤした気持ちを抱えながら帰ります。後日、サトルが夜にみんなを訪ねてきて、琴美以外の直樹、未来、良介はサトルが琴美が連れ込んだ男性なのではと疑いますが、琴美は誰の知り合いでもなく、午前中起きたら家にいて、良介の事を言っていたので彼の知り合いかと思ったと言いますが。良介はサトルを知らないと言いました。琴美以外はサトルを泥棒と疑い、それぞれの貯金が盗まれてないか調べますがどうやら違うようです。家を訪ねてきたサトルを家へ入れると、なんと、サトルは酔っぱらった未来が声を掛け、無理やり連れ込んだ男だったのでした。サトルが何者であるか分かった皆は解散し、それぞれの時間をいつも通り過ごしますが、なぜか、未来は女性が強姦された映像を一人ぼんやりと見つめていました。
パレードのネタバレあらすじ:承
サトルは男性の売春婦をしていて、みんなより一番年下です。若く、親しみやすい人ですが、どこか謎めいていました。未来はイラストレーター兼雑貨屋の店長です。仕事の為に、サトルを裸にし、絵のモデルになってもらいました。ふと、サトルのお尻に近い部分に大きな痣があることに未来は気付きました。サトルが裸婦モデルをする様子を興味津々で見守る琴美。良介がそこへ帰宅し、琴美があれほど騒いでいた隣人は占い師だったと分かりました。良介は琴美の指示通り、客に成り済まして潜入したのです。また別の日の夜、映画会社に勤める直樹がオネエバーで飲んでいると、店にやってきた未来に、家のドアに挟まっていた、連続女性暴行事件の危機を知らせるチラシを見せられます。この事件が起きてだいぶ経った頃にサトルが現れたと言われ、直樹はサトルを疑うなと未来を咎めるのでした。その後、直樹はお店に一緒にいた恋人の美咲を家までタクシーで送る為、未来と別れます。未来はサトルが売春をする仕事仲間とシェアハウスの仲間内の悪口を言っているのを見て不審に思いますが、仕事仲間と別れてから何事もなかったかのように振舞うサトルを見て、疑惑の念を押し殺し、平常通りに接し、飲みに付き合わせるのでした。酷く泥酔した未来はサトルに連れられて営業終了後の小さな遊園地に忍び込むと、メリーゴーランドに乗り、互いの身の上話をしました。未来は父親の虐待と母に対するレイプを目撃した元被虐待児で、今もその時の記憶がフラッシュバックしてしまうといった相当深い心の傷を抱えたまま大人になった女性でした。サトルは色々あったと濁し、みんなと住むまでは友達の家や仕事先の客の家に寝泊まりしていたと明かしました。
パレードのネタバレあらすじ:転
親知らずを歯医者で抜いた直樹は仕事を休む連絡を会社にしました。ふと、彼は歩道橋の上から、サトルが誰かの車から降りて別れるのを目撃し、彼の後をこっそりつけることに。サトルが野口の街頭演説を聞いているのを見た直樹はサトルがその後、誰かのアパートへ家に行き、女性の部屋らしきぬいぐるみがあるベッドで寛ぐと、女性の裸体らしきものが写されたポラロイド写真を見ながら自慰行為にふけるサトルを見て不審に思います。ふと、掛かってきた電話に出るサトル。電話は琴美からでした。琴美には何事もなかったかのように会話した後、家路に戻ったサトルを引き続き尾行する直樹。直樹は未来の部屋に入ると、友達と写るフォトフレームに収められた写真を軽蔑し、有り触れた画材道具の中から、幾つかあるビデオテープのうち一つを気になって再生しました。そのビデオテープには女性が泣いて抵抗していて、何者かにレイプされているビデオでした。サトルは「趣味悪」と言ってビデオの再生を止め、取り出します。その後、直樹はサトルに何をしていたか問い詰めますが、琴美はデートに出掛けた、自分は家にいて寛いでいたと話します。その後、サトルは直樹が見てないところでビデオテープの中に琴美のお気に入りのドラマを録画しました。直樹は仕事先で社長から大きなインタビューの仕事に関して、他の社員にその連絡すると言いました。サトルを従弟と社長に偽って直樹は職場に連れてきて仕事の手伝いをさせました。その後、良介のバイト先の居酒屋で夕食をとる2人。直樹はサトルに家出したのかと尋ね、サトルが否定すると、かつて15歳の頃に家出した事を話しました。また、良介は大学卒業後は恋人と暮らす為に田舎に帰らなくてはならず、シェアハウスを出て行くだろうと突如告げて仕事に戻ります。翌朝、帰宅し、爆睡した直樹は、怒っている未来に何かを疑われました。未来の部屋にあったビデオテープに琴美のお気に入りのドラマが録画されていたからです。未来は琴美にも問い詰め、直樹でも琴美でもなければサトルだ、彼を家から追い出せと怒ってビデオテープを床に投げつけました。直樹は琴美にサトルの行方を尋ねると、昨日から帰ってないと言った後、妊娠した、丸山に琴美が妊娠している事を伝えてほしいと頼みます。後日、直樹は丸山に会い、琴美の妊娠を伝えました。その後、丸山と別れた直樹を偶然、美咲が目撃し、直樹に声を掛けてきます。直樹は事情を伝え、美咲は直樹にまだ自分を好きか確認してきました。曖昧に答えてから彼女と別れた直樹は、オネエバーで酔い潰れた未来を介抱するよう、バーのスタッフに頼まれました。サトルが荷物をまとめて出て行ったこと、遊園地に2人で忍び込んだこと、虐待の傷跡を残した未来が衝動的に見てしまうレイプシーンが収められたビデオテープに別のドラマが録画されていた事を再び言いました。直樹は未来になんでそんなものを見るのか聞くと、女性が痛めつけられている映像を見ると、自分の中の臆病さが消えて落ち着くのだと未来は答えました。虐待が残した心の傷が未来の心を歪ませてしまっていました。
パレードの結末
しかし、美咲はサトルが自分のビデオに細工をしてくれたお陰でいつまでも過去のトラウマにすがってはいけないと気付かされて感謝していると言葉を続け、シェアハウスを出て行くと言って先に帰りました。帰宅した直樹は何やら着替えていて、外出する準備をします。琴美から電話がかかり、赤ちゃんを病院で堕ろす決意をしたと伝えました。良介のようにジョギングへ出かける直樹。直樹は通りすがりのOLの女性を凶器で殴打して殺害。連続女性暴行事件の犯人は、みんなの中で一番良識ある直樹でした。その一部始終を見ていたであろうサトル。サトルは直樹の手を引いて逃げ、車に連れ込みます。シェアハウスのみんなが直樹の本当の姿を知っているのではないかと呟き、直樹は怒りをぶつけると車から飛び出します。サトルは走って帰宅した直樹の後を追い、家路に着くとみんな平然としています。そして、良介の提案でみんなで伊豆旅行に行く事が決まってしまうほのぼのした空気になり、直樹はほっとし、張りつめていた糸が切れたように泣き出しました。優しい状況が一変し、直樹も当然行くかと声を掛けた未来の声が冷めていて、直樹が顔を上げると、みなこれまでのゆったりした態度ではなく、直樹を軽蔑するような目で見ていました。やはり、直樹の本性を知っていたのです。
『悪人』『怒り』でも有名な吉田修一の小説が原作。都会でルームシェアをして暮らしている五人の男女。それぞれが抱えている弱点や秘密が丁寧に描かれています。演技派揃いの俳優陣が作り出す奇妙な空気感がたまりません。しかし近所で起こった通り魔事件や、後から共同生活に割り込んできた謎の少年のせいで、少しずつ皆の関係にひずみが生じていきます。その果ての衝撃のクライマックス、更にそこから続くラストシーンには、ゾッとさせられること間違いなしです。