水上のフライトの紹介:2020年日本映画。『超高速!参勤交代』を手掛けた脚本家・土橋章宏が、リオデジャネイロパラリンピックに出場したパラカヌー選手・瀬立モニカとの交流を通じて書き上げたオリジナルストーリーを映画化したスポーツドラマです。不慮の事故により下半身麻痺となった主人公がパラカヌーと出会い、家族や仲間たちの支えを得て自らの道を切り開いていく過程を描きます。
監督:兼重淳 出演者:中条あやみ(藤堂遥)、杉野遥亮(加賀颯太)、高月彩良(村上みちる)、冨手麻妙(朝比奈麗香)、高村佳偉人(佐藤達也)、平澤宏々路(杉下里奈)、大塚寧々(藤堂郁子)、小澤征悦(宮本浩)ほか
映画「水上のフライト」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「水上のフライト」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
水上のフライトの予告編 動画
映画「水上のフライト」解説
この解説記事には映画「水上のフライト」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
水上のフライトのネタバレあらすじ:起
2017年9月。体育大学3年生の藤堂遥(中条あやみ)は、“女王”の異名を持つ走り高跳びの有望な選手で、オリンピック出場を目指していました。元来負けず嫌いな遥は、自分にも他人にも厳しく、後輩でライバルの村上みちる(高月彩良)に対しても突き放すような態度を取っていました。
そんなある日。練習を終えた遥は、雨が降ってきたので母・郁子(大塚寧々)に迎えに来るよう頼みましたが、郁子は別件で手が離せない状況でした。一人で帰ることにした遥は途中で車に撥ねられました―――。
―――遥は3日間もの間昏睡状態にありました。病院で目を覚ました遥は検査の結果、脊髄損傷で下半身麻痺と診断されました。一生車椅子の生活になると非情の告知を受けた遥でしたが、再起へのわずかな望みをかけてリハビリに取り組み始めました。
3ヶ月後。遥は退院して自宅での生活を始めました。しかし、遥はテレビで自分の代わりに日本代表強化選手に選ばれたみちるの活躍を目の当たりにし、心を閉ざして塞ぎ込んでしまいました。そんな遥を心配する郁子は、亡き夫の親友でカヌーコーチの宮本浩(小澤征悦)に家に来てもらうことにしました。遥はかつて小学生時代に亡き父と共にカヌーをしていたことがあり、宮本は遥に一度カヌーを見に来るよう誘いました。
水上のフライトのネタバレあらすじ:承
普段はスポーツ施設の職員として働く宮本は、「江戸川青空カヌークラブ」で子供にカヌーを指導していました。見学に訪れた遥は、そこで宮本の教え子である少年・佐藤達也(高村佳偉人)や少女・杉下里奈(平澤宏々路)と知り合いました。
最初のうちはカヌーに乗ることを拒んでいた遥でしたが、達也から挑発されたことでムキになってカヌーに乗ることにしました。久しぶりにカヌーを漕いだ遥は子供たちと共に川を進み、その際にカヌーを漕ぐのには下半身の力を必要としないこと、そして見た目も動きも視線の高さも健常者と同じであることに気付きました。
改めてカヌーの魅力に取りつかれた遥は、宮本の教え子たちはみなネグレクトや登校拒否など様々な事情を抱えていることを知りました。遥はカヌーに関する書物を読むために郁子に頼んで図書館に連れて行ってもらい、そこで義肢装具士をしている加賀颯太(杉野遥亮)と出会いました。
颯太は一目で遥の乗っている車椅子が彼女の体にフィットしていないことを見抜きましたが、遥は気付くことなくその場を後にしました。
遥は他の大学への転校を勧める郁子に「逃げるのは嫌」だと、今の大学に通い続ける意思を伝えました。遥は図書館で借りた本でカヌーの漕ぎ方を学び、宮本の元で子供たちに交じってカヌーの練習を始めました。元々運動神経の良い遥は次第に上達していきました。
水上のフライトのネタバレあらすじ:転
そんなある日、自身もかつて宮本の教え子だった颯太がクラブを訪れ、遥のために競技用のカヌーを持ってきました。宮本は遥に、カヌーでパラリンピックを目指さないかと提案しましたが、遥は「バカじゃないの! 私は走り高跳びでオリンピックに出たかった。空を飛びたかった。なのに走り高跳びがだめならカヌーでパラリンピック?」と泣きながら突っぱねました。颯太はそんな遥に「カヌーが楽しかったんじゃないの?」と声をかけ、カヌーを続けるべきだと励ましましたが、遥は自分の気持ちに整理がつけられないままでした。
翌日。やり場のない思いを抱えた遥は自暴自棄になって川沿いの坂道を走り、転倒して車椅子を壊してしまいました。遥はたまたま通りかかった里奈と達也に助けられ、連絡を受けた颯太は遥を職場に連れて行き、かつて車椅子バスケットをしていたという親友の車椅子を貸してあげました。颯太は未だに自分の体に合わない車椅子を使い続けていた遥に体と一体化する装具の大切さを説き、深く反省した遥は颯太に新たな車椅子を作ってもらうことにしました。
2018年8月。遥は宮本が勤めるスポーツ施設でアルバイトとして働いていました。宮本のカヌークラブは山中湖で林間合宿を開き、遥と颯太もスタッフとして同行しました。遥はそこで、颯太の親友は2年前に病で他界していたことを知り、宮本や颯太、郁子、そして宮本の教え子たちの気持ちに気付きました。
誰もが夢も人生も、そして友だちも全てを失ったと思い込んでいましたが、実は誰もが自分自身を見失っていただけだったのです。遥は颯太に走り高跳びへの想いを断ち切ったことを伝え、これからはパラカヌーを人生の新たな目標にすると決意しました。
翌朝、遥は一人湖でカヌーの練習をしていた。太陽の光を受けて輝く湖面には青空が反映しており、その光景を見た里奈は「綺麗…お姉ちゃん、空を飛んでいるみたい」と口にしました。
水上のフライトの結末
遥は郁子に、大学を出たらジュニアスポーツの指導員になると将来の夢を語りました。郁子は遥の決意を喜んでくれました。遥は宮本にカヌーでパラリンピックを目指す意思を伝え、その日から目標に向かって必死に猛特訓する日々を送りました。
2019年。宮本はパラリンピックサポートセンターに遥の選手登録を申し込みました。パラリンピックに出場するためにはこの年の9月に行なわれる選考レースへの出場が条件となっており、遥と宮本は最大のライバルになるであろうトップ選手の朝比奈麗香(冨手麻妙)を超えることを目標により一層練習に没頭していきました。
同じ頃、遥のかつての後輩だったみちるはスランプに陥っていました。かつてのコーチから連絡を受けた遥は久しぶりにみちるの元を訪れ、みちるに「調子が良くても悪くても結局やることは同じ。自分を信じて努力するしかない」と檄を飛ばし、先輩からの最後の命令として「走高跳の女王の座はみちるが守って。私も飛ぶから」と笑顔を見せました。みちるも笑顔を返しました。
2019年9月、遥は日本パラカヌー選手権大会の女子200Mレースに出場しました。遥は勝ち進んで決勝に駒を進めると、その決勝戦で遂に朝比奈との直接対決に臨みました。遥は仲間たちの想いを胸に自己最高記録を更新する漕ぎを見せましたが、あと一歩で及ばず朝比奈に優勝をかっさらわれました。
それでも準優勝となった遥に朝比奈が近づき、「次の選考会を楽しみにしてる」と声をかけました。遥は次は必ず勝つと返し、朝比奈と握手を交わしました。遥は颯太に「自分の居場所を見つけた」と伝え、宮本に「私、今なら空も飛べるはず」と今の気持ちを伝えました。遥の表情は満足そうな笑顔を見せていました。
以上、映画「水上のフライト」のあらすじと結末でした。
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