典座 -TENZO-の紹介:2019年日本映画。「典座」とは禅宗寺院で食事を司る役職。曹洞宗では調理も食事も修行であり、典座は重要な役職である。本作に出演している河口智賢のいとこである富田克也が全国曹洞宗青年会に依頼された企画。『サウダーヂ』等を手掛けた、富田たちの映像ユニット空族 (くぞく) が、ドキュメンタリーとフィクションを交えつつ、福島と山梨に生きる二人の若い僧侶の苦悩を通して東日本大震災以後の日本、そして仏教を捉える。第72回カンヌ国際映画祭の批評家週間「特別招待部門」に選出された。
監督:富田克也 出演者:河口智賢(智賢)、倉島隆行(隆行)、近藤真弘(近藤真弘)、青山俊董(青山老師)ほか
映画「典座 TENZO」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「典座 TENZO」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
典座 TENZOの予告編 動画
映画「典座 TENZO」解説
この解説記事には映画「典座 TENZO」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
典座 TENZOのネタバレあらすじ:甘
本山での修行を10年前に終えた智賢(チケン)は今、富士山の裾野に広がる山梨県都留市にある耕雲院で、住職である父、母、妻、そして重度の食物アレルギーを抱える三歳の息子と共に暮らしている。全国曹洞宗青年会副会長の彼は、いとこが映画監督をしていたこともあって、青年会で映画を作りましょうと提案する。
15年前君はお寺が嫌いだったのに、と監督は問いかける。智賢は今の問題だらけの日本に信仰が必要だと考える。とりわけ、本山で進料理を任される役職「典座」だった智賢は、かつて自分自身を苦しめたアレルギーが本山の修行によって完治した経験から、「食」の問題を大切にしている。寺で精進料理教室を開いている。また、自殺を考えている人たちの相談に乗るいのちの電話相談も彼が熱心に取り組んでいる仕事だった。
典座 TENZOのネタバレあらすじ:酸
一方、修業時代の智賢の兄弟子・隆行(リュウギョウ)は福島県沿岸部にあったかつての自身のお寺も、家族も檀家も、すべてを東日本大震災の津波で流されてしまい、瓦礫撤去の作業員をしてひとり仮設住宅に住んでいた。ある日、智賢や隆行のかつての修行仲間で曹洞宗青年会の一員として福島で震災からの復興のために仕事をしている近藤真弘に、いのちの電話相談用の携帯電話が智賢から郵送されてくる。そこに軽トラックで久々に隆行がやってきた。隆行は智賢を懐かしく思うが「俺、いま土建屋だから。お寺もないし」といのちの電話の仕事を断わる。真弘がその日は女性からの電話相談に応じることになる。
ある夜、智賢の息子の智優が食物アレルギーによるアナフィラキシーショックで救急病院に運ばれる。クッキーに入っていたナッツが悪かったのだろうか。智賢はその晩こそ病院にテディベア等息子の入院に必要な物をもっていくが、お盆で寺は忙しく、なかなか息子の病室に行ってあげられず、妻に文句を言われてしまう。疲れ切った智賢はスマートフォンに真弘からかかってきた電話も無視してしまう。
そこで智賢は尊敬する青山老師を訪問し、迷いや悩みをきいていただく。
典座 TENZOのネタバレあらすじ:塩
隆行は多くの墓石が倒れたままの墓地で般若心経を唱えてから作業をする。また、仮設住宅の老人をたずねることもしていた。ある晩、福島のスナックで檀家総代に本堂再建の相談をする。だが、総代にも再建のあては全くない。総代は、自分が死んだら流れた先の土地のお坊さんに弔ってもらうことになるだろうと言う。隆行はスナックの女性の酌で銘酒を飲んで酔いつぶれ、軽トラックの荷台で寝てしまう。
智賢はある朝、めずらしく妻より先に台所に入って料理を始める。修業時代に典座であった自分の原点に立ち返ろうとしていた。
典座 TENZOのネタバレあらすじ:辛
上海浦東国際空港に智賢が降り立った。彼がここにいるのは、かつて道元禅師が命がけの旅をして学んだ天童寺を訪れるためである。天童寺の大きな山門をくぐった智賢は深山のほとりでひとり座禅を組む。
典座 TENZOのネタバレあらすじ:苦
仮設住宅の隆行がスーパーで値引きされた弁当を前に手を合わせ五観の偈を唱えていると来客がある。懐かしい智賢だった。
夜の浜辺に並んで座る二人。智賢は中国で思ったことを話す。道元禅師が天童寺と似ている自然環境の永平寺を修行の場に選んだこと。だが、自然と宇宙の循環について智賢が語ると、隆行は「お前、それをこの福島で言えるか?」と問う。気まずい沈黙がおとずれるが、隆行が道元禅師の著した典座教訓の一節を唱えると智賢もそれに続いた。二人は暗い海を見続ける。
典座 TENZOのネタバレあらすじ:淡
隆行もいのちの電話を担当するようになる。軽トラックの中で相談相手と話す隆行は、自分の方が相談に乗っていただいたみたいで、と涙を流していた。一方、山梨では僧侶もレフ板をもって映画撮影が続けられている。智賢の息子の知優は母親の新しい命の宿るおなかに話しかける。
以上、映画「典座 -TENZO-」のあらすじと結末でした。
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