殿、利息でござる!の紹介:2016年日本映画。貧困に喘ぐ宿場町を救うため東奔西走する庶民達の姿を、実話を元に描いた作品。1766年、仙台藩吉岡宿は貧しさから夜逃げが相次いでいた。何とか町の未来を繋ぎたい男達は、大金を藩に貸し利息を得るという前代未聞の奇策に出る。笑いあり、涙ありの人情時代劇。仙台市出身のフィギュアスケート選手羽生結弦が特別出演したことでも話題を集めた。
監督:中村義洋 出演者:阿部サダヲ(穀田屋十三郎)、瑛太(菅原屋篤平治)、妻夫木聡(浅野屋甚内)、竹内結子(とき)、寺脇康文(遠藤幾右衛門)、千葉雄大(千坂仲内)、羽生結弦(伊達重村)ほか
映画「殿、利息でござる!」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「殿、利息でござる!」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
殿、利息でござる!の予告編 動画
映画「殿、利息でござる!」解説
この解説記事には映画「殿、利息でござる!」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
殿、利息でござる!のネタバレあらすじ:貧困の宿場町
舞台は1766年、仙台藩の小さな宿場町吉岡宿。茶師菅原屋篤平治が京から妻と共に帰郷すると、町は貧困に喘ぎ夜逃げが相次いでいました。吉岡宿は藩の物資を次の宿場まで運ぶ「伝馬役」を命じられていて、その費用は全て町で捻出しなければなりません。生活が立ち行かなくなった人々は夜逃げするしかなく、残った人間に負担がのしかかるという悪循環に陥っていました。町の窮状を嘆く造り酒屋穀田屋の主人十三郎は、ある晩煮売屋で偶然一緒になった篤平治に町を救う方法はないかと尋ねます。十三郎の弟で、造り酒屋と質屋を営む浅野屋の主人甚内から借金をしている篤平治。利息が高過ぎるとぼやいた彼は、唐突に「利息でござる」と呟きました。篤平治は仙台藩に銭を貸して利息を取り、その利息を伝馬の資金にするという奇策を思いつきます。千両貸せば毎年百両の利息が町に入ります。しかし千両もの大金を用意出来るはずもなく、篤平治は最初から諦めていました。
殿、利息でござる!のネタバレあらすじ:集まる同志達
ところが翌年になって、篤平治は十三郎が密かに例の奇策を進めていたことを知ります。十三郎は千両を集めるため同志を募っていました。村をまとめる遠藤幾右衛門とその上役千坂仲内が計画に賛同したため、篤平治も後には退けなくなってしまいます。その頃の仙台藩は、7代藩主伊達重村が官位欲しさに幕府の重役に金品を贈るなどしていたため、金欠状態に陥っていました。藩の財政を担う役人萱場杢は銭の鋳造を指示します。十三郎達は私財を擲ち必死に銭を捻出します。しかし目標は遠く、その上町のために自分達の生活をも犠牲にする十三郎に息子の音右衛門が強く反発するなど、問題は山積みです。極秘で進めていた計画は次第に宿場中に知られてしまい、売名目的で銭を出す者も現れます。そんな中、父親の代から守銭奴と叩かれている甚内までもが銭を出すと言い出しました。篤平治からそれを聞いた十三郎は、甚内が加わるなら自分は抜けると言い、会合にも顔を出さなくなります。十三郎は長男でありながら穀田屋に養子に出されたことを気にするあまり、生家や弟との間に遺恨を抱えていたのです。
殿、利息でござる!のネタバレあらすじ:浅野屋の真実
千坂は嘆願書を持ち代官所へ向かいました。代官橋本権右衛門は上へ取り計らうと約束しましたが、いつまで待っても藩の返事はありません。3ヶ月後、結局嘆願は却下されてしまいました。篤平治は諦めずに何度も訴えることを提案しますが、自らの立場を気にする千坂はなかなか動こうとしません。計画が暗礁に乗り上げ始めた1771年。ある晩、浅野屋に忍び込もうとしていた男が篤平治達に捕まります。15年も昔に吉岡宿から夜逃げしたというその男は、先代の浅野屋主人、十三郎と甚内の父親に大恩があると話します。先代は借金帳消しの上、銭を渡して男の夜逃げを見送ってくれたと言うのです。元金だけでも返すために浅野屋を訪ねたものの甚内も銭を受け取ってくれず、男は仕方なくこっそり返すつもりだったそうです。宿場中から守銭奴と陰口を叩かれている浅野屋親子の真実に驚く篤平治達。それ以上に驚いた十三郎は真相を確かめるため浅野屋へ向かいます。篤平治は音右衛門を連れ、幾右衛門と一緒に十三郎を追いかけました。
殿、利息でござる!のネタバレあらすじ:最後の奮闘
4人を迎えた甚内とその母親は、先代主人が銭を藩に上納し、伝馬の負担を減らして貰おうと考えていたことを話します。「誰かに褒められたくてやるものではない」と言っていた父親は、守銭奴と叩かれてもずっと密かに宿場のために銭を貯めていました。死に際に父は甚内に志を託し、甚内もそれに応えて質素倹約に努めていました。十三郎は知らず知らずの内に父の遺志を継いでいたのです。篤平治は急いで千坂を訪ね、まだ立場に拘る彼を一喝します。浅野屋まで千坂を連れて来た篤平治は同じ話をするよう甚内に頼みます。座敷に戻ろうとする甚内の足はふらついていました。実は甚内は幼少から目が悪く、そのために十三郎が養子に選ばれたのです。十三郎はしっかりと弟を支えながら家に入っていきました。1772年、千坂は代官所に嘆願に向かいます。浅野屋親子の話を聞いた橋本は胸を打たれ、粘りに粘って萱場に嘆願書を渡すことに成功。集めた寛永通宝ではなく、金の小判で千両という条件付きで嘆願が通ります。喜ぶ十三郎達ですが、篤平治が萱場の策略に気付きます。銭の鋳造により寛永通宝の相場は下がっていて、小判千両にするにはあと800貫文足りないのです。浅野屋で話を聞いた甚内は500貫文出すと言いますが、篤平治と十三郎は浅野屋が潰れてしまうと断ります。しかし異変を察知した十三郎が店の奥へ走ると、蔵人も酒もありません。浅野屋はもう潰れていたのです。覚悟を決めていた甚内達に頼み込まれ、500貫文を受け取った十三郎達。更に煮売屋の女将ときが50貫文を出し、残りは250貫文。その250貫文は、心を入れ替えた音右衛門が奉公に出て10年分の給金を前借りし工面してくれました。
殿、利息でござる!の結末:悲願、成就。
1773年、ついに十三郎達は小判千両を揃えます。驚いた萱場は十三郎達を呼び出し報奨金を与えました。しかしその場に甚内の姿はありません。甚内は牛や馬を虐げてはいけない、駕籠を使って人間を苦しめてもいけないという父の教えを守っているのだと十三郎が語ります。役人である萱場は不愉快そうな表情を見せますが、咎めることなくその場を去りました。十三郎達は褒美を持って浅野屋へ向かいますが、甚内は受け取らず町に配ると言い出します。そこへざわめきと共に現れたのは、なんと藩主重村です。重村は三つの酒銘を与え、浅野屋を潰すことは許さないと告げます。そして「城まで歩いて帰るぞ!」と言いながら颯爽と去っていきました。こうして、吉岡宿には毎年藩から利息が支払われることになりました。伝馬の負担が減り、町は貧困から脱します。浅野屋は三つの酒が飛ぶように売れ潰れずに済みました。甚内はその儲けを道の修繕などに使ったといいます。千坂は重村に認められ念願の侍となり、篤平治の茶は町の名産品になりました。十三郎は「私のしたことを人前で語ってはならぬ」と遺言を残したそうです。そして穀田屋は、現在も宮城県で酒屋を営んでいます。子ども達の笑い声が響き、この映画も終わりを迎えます。
以上、映画殿、利息でござる!のあらすじと結末でした。
お殿様、正確には藩に大金を貸し、その利息で町の立て直しを図る。そんな荒唐無稽ともいえる設定なのに、実話を元にしているという所がすごいです。だからこそ、ところどころ笑える点はありつつも、基本的には登場人物たちの姿が、とても丁寧に描かれています。
感じの悪い守銭奴と思われていた浅野屋親子の真の姿が判明し、実家である浅野屋を長年恨んでいた十三郎が呆然するシーンは、圧巻です。また、お殿様が浅野屋に対するの感謝の気持ちを、酒銘を与えるという形で示したところが、とても気が利いていると思いました。