ユメ十夜の紹介:2007年日本映画。夏目漱石の幻想短編小説集「夢十夜」を映像化。日本を代表する11人の監督が、独自の解釈で漱石の夢の世界を描き出す。ファンタジー、コメディ、ホラーなど、多彩な表現で紡がれる不可思議なオムニバス・ムービー。
監督:実相寺昭雄(「第一夜」)、市川崑(「第二夜」)、清水崇(「第三夜」)、清水厚(「第四夜」、OP&ED)、豊島圭介(「第五夜」)、松尾スズキ(「第六夜」)、天野喜孝(「第七夜」)、河原真明(「第七夜」)、山下敦弘(「第八夜」)、西川美和(「第九夜」)、山口雄大(「第十夜」) 出演者:小泉今日子(「第一夜」ツグミ)、うじきつよし(「第二夜」男)、堀部圭亮(「第三夜」夏目漱石)、山本耕史(「第四夜」漱石)、市川実日子(「第五夜」麻砂子)、阿部サダヲ(「第六夜」わたし)、Sascha(「第七夜」ソウセキ)、藤岡弘、(「第八夜」漱石(正造))、緒川たまき(「第九夜」母)、松山ケンイチ(「第十夜」庄太郎)ほか
映画「ユメ十夜」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ユメ十夜」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ユメ十夜の予告編 動画
映画「ユメ十夜」解説
この解説記事には映画「ユメ十夜」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ユメ十夜のネタバレあらすじ【第一夜】
小説家の百閒が仕事をしていると、金魚鉢を覗いた妻ツグミが「また金魚が死にました」と言いました。百閒は、次はランチュウを飼おうと提案します。百閒は12時になっても腹が減らないことを不思議に思いました。雷雨に見舞われ部屋が暗くなると、ツグミは「あなたと一緒になってどれくらいなるかしら」と呟きます。「五十年かしら。百年かしら」と。手伝いに来ていた女が、時間なので暇を貰うと言い出します。「旦那さんと二人じゃ私怖い」と言って家を出て行きました。ツグミは畳の上に横たわり、「百年可愛がってくれたんだから、もう百年待っててくれますか?」と尋ねます。百閒が狼狽していると、ツグミは静かに死亡しました。百閒が家財道具を積み上げると、「時間が逆に回っているよ」とツグミの声が聞こえます。百閒は「百年はもう来ていたんだな」と気付きました。
ユメ十夜のネタバレあらすじ【第二夜】
闇夜に包まれた寺の中。その一室で、男は難しい顔で座布団に座っていました。和尚が現れ、「お前は侍である」と言います。そして侍なら悟れない筈はなく、いつまでも悟れないお前は侍ではないと言い出しました。和尚は口惜しかったら悟った証拠を持って来いと言って部屋を出て行きます。怒った男は、時計が次の刻を打つまでに必ず悟ってみせると座禅を組みました。男は悟りと和尚の首を引き換えにしてやろうと考え、悟れなければ死のうと決意します。ふと見ると、床の間の海中文殊の掛け軸が、「無」という字に変わっていました。男は「無を悟るのだ」と集中します。しかしそれより早く、時計が次の刻を打ちました。男は座布団の下に忍ばせておいた短刀を取り出し、腹を切ろうとします。ところが何度やっても刃を突き刺すことが出来ません。男はついに頭を抱えて泣きじゃくりました。そこに現れた和尚は、「それでいいのだ」と言って笑いました。
ユメ十夜のネタバレあらすじ【第三夜】
明治41年夏。夏目漱石は騒がしい子ども達の声と、進まない仕事に苛立っていました。漱石は子どもだった頃の自分を思い出せません。妻鏡子は6人目の子を妊娠していました。彼女は初めての子を流産しており、2度目の妊娠の際ノイローゼになって自殺未遂を起こしています。夜、子どもを寝かしつけながら鏡子は幼い頃の話をしました。家の近くの山道にお地蔵さんがいくつも並んでいて、ある日誤ってその内の1体の首を落としてしまったそうです。最初の子を妊娠した時そのお地蔵さんの夢ばかり見ていたという鏡子は、最近になってまたお地蔵さんの夢を見るようになりました。今度はお地蔵さんの首を元に戻す夢だそうです。すると子が泣き出したので、漱石は外にあやしに出かけました。ふと、漱石は背中の子どもの目がいつの間にか潰れていたことに気付きます。いつ目が潰れたのかと聞くと、「なに昔からさ」と子どもらしくない答えが返って来ました。漱石は何だか恐ろしくなって、子どもを捨てるために森に入って行きます。そこにはお地蔵さんが7体並んでいました。「どうせまたひとつは駄目になるだろうが」と子どもが言うと、赤ん坊の泣き声と共にお地蔵さんの首がひとつ落ちました。その場を足早に去った漱石は、大きな杉の木の下にやって来ます。そして昔、ちょうどこんな晩にここで少年を殴り殺したことを思い出しました。背中の子が急に重くなり、見ると殺害した少年の姿になっています。13歳の夏、漱石は子どもだった自分を殺したのです。――漱石ははっと目を覚ましました。この年の12月、漱石の6番目の子は無事に生まれました。しかしこの2年後、7番目の子どもが1歳で急死してしまいます。
ユメ十夜のネタバレあらすじ【第四夜】
漱石は日向はるかという女から講演の依頼を受け、見知らぬ町にやって来ました。駅の伝言板には、町民会館まで来て欲しいと書かれています。その隣の柱には14本の正の字が刻まれていました。漱石はバスの中で、住民からこの町の子どもが一斉に神隠しに遭ったという話を聞きます。漱石がバスから降りると、老人が手拭いを蛇に変えると言って子ども達を集めていました。漱石が追いかけると、彼らは忽然と消えてしまいます。古い写真館で幼い自分の写真を見つけた漱石は、ここが幼い頃病気療養のため滞在していた町だと思い出しました。病気がちだった漱石とよく遊んでくれた少女、それが日向はるかです。町中に行方不明の子ども達を捜す紙が貼られ、新聞には飛行機事故の記事が掲載されています。日向はるか達は皆海の向こうへ歩いていってしまいました。泣き崩れる漱石の上を飛行機が過ぎ去り、やがて海に墜落して爆発します。駅に戻った漱石は、今度こそ忘れないと15本目の線を柱に刻むのでした。
ユメ十夜のネタバレあらすじ【第五夜】
自宅で眠っていた麻砂子は電話の音で起こされました。受話器からは「鶏が鳴くまで待つ」と女の声が聞こえます。リビングへ行くと、前の夫と幼い息子が部屋を荒らしていました。そこへ包帯を全身に巻いた天探女が現れます。悲鳴を上げる麻砂子に、天探女は「鶏が鳴くまで待つ」と囁きました。麻砂子はゴルフクラブで天探女を殴打し、馬に乗って夜明けが迫る空の下を疾走します。遠くの森から黒い煙が立ち上っていました。天探女が猛烈なスピードで麻砂子を追いかけてきます。麻砂子が落馬すると、天探女は鶏の声で鳴きました。朝が訪れ、森を彷徨っていた麻砂子の夫庄太郎は、大破した車を見つけます。車から出てきた麻砂子は大怪我をしていて、夫と息子は死亡しました。これは庄太郎が知らない麻砂子の記憶です。包帯の下から現れた天探女も麻砂子でした。落馬した麻砂子が公衆電話から自宅で眠っている麻砂子に電話をかけます。麻砂子がリビングに行くと庄太郎が食事をしていました。天探女が現れ、麻砂子の隣に座ります。麻砂子が「いいでしょ?これも私なの」と言うと、庄太郎は「いいね」と答えました。すると天探女と同じ姿で、更に体中を真っ赤に染めた化物が庄太郎の隣に座りました。庄太郎は「いいだろ?」と言って食事を再開します。
ユメ十夜のネタバレあらすじ【第六夜】
彫刻家の<わたし>は運慶が仁王像を彫ると聞き、是非見物しようと駆けつけました。大勢の見物人が集まる中、エキセントリックな格好をした運慶が現れます。唐突に踊り始めた彼を見物人は絶賛しました。運慶が木に斧を振り下ろすと、木の中から仁王像の顔が現れます。どうやら最初から仁王像の顔が木の中にあって、運慶はそれを取り出しているらしいのです。わたしは自分にも仁王像が彫れるのではないかと考え、早速家に帰って運慶の真似事をしてみました。しかし木の中から現れたのは木彫りの熊です。どうも彫る人間のサイズに合ったものしか埋まっていないようです。
ユメ十夜のネタバレあらすじ【第七夜】
ソウセキは巨大な船の上にいました。船は何人もの巨人の水夫達が動かしています。ソウセキが船の行き先を訪ねると、水夫は笑って相手をしてくれませんでした。ソウセキの居場所はこの船にはありません。どうしようもない孤独の中、死を選ぶべきではないかと考えるソウセキ。そんな彼の前に、ウツロという少女が現れました。彼女も自分の居場所が無いと感じ、とても怯えています。ソウセキが話しかけようとすると、ウツロの姿は消えていました。彼女を捜して店に入ると、人間ではないものが大勢楽しんでいます。ウツロは店のピアノで音楽を奏で始めました。ソウセキは居場所を見つけた彼女を羨ましく思います。店を出たソウセキは海に身を投げました。沈みながら生きたいと願うと、彼は強い光に包まれ、巨大な魚へと姿を変えます。光り輝く魚は船を横切るように飛び上がりました。それを見たウツロは、嬉しそうに笑みを浮かべます。
ユメ十夜のネタバレあらすじ【第八夜】
少年が田んぼでミミズに似た巨大な「何か」を捕まえました。しかし飼育は母に反対され、家に入れて貰えません。そこに少年の祖父正造が帰って来ました。長い廊下を通った彼は、ぽつんと二段ベッドが置いてある部屋に入ります。そこには骨が透けて見える女と、半透明の犬がいました。正造はベッドに横になり、枕の下から肉まんを取り出して食べます。――41歳になった漱石は、「夢十夜」の執筆に手間取っていました。垣根の向こうから、少女達が「鴎外せんせ~!」と呼んでいます。漱石が床屋から出て来ると、道の向こうに金魚売りが座っていました。2人の閒に、ミミズに似た巨大な「何か」がどっと落ちて来ます。
ユメ十夜のネタバレあらすじ【第九夜】
少年の父がどこかへ行ったのは、月の出ていない夜中のことでした。母は出征した父のため、夜に少年を連れて神社に向かいます。そして少年を柱にくくりつけ、お百度参りを始めました。少年が社の中を見ると、戦地の父が笑っています。少年は母を必死に呼びますが、聞こえていないようでした。母の脳裏に出征前夜の諍いが過ぎります。どうしても戦地に行って欲しくない母は、父に届いた赤紙を庭に破り捨ててしまいました。父は慌てて拾い集め、母はそれを阻止しようとしてもみ合いになります。気付くと父は倒れていて、流れた血が赤紙を更に真っ赤に染めていきました。
ユメ十夜のネタバレあらすじ【第十夜】
しばらく町から離れていた庄太郎が突然帰って来ました。内臓をブラブラさせて、瀕死の庄太郎は遺言代わりにと何があったか話し始めます。庄太郎は町で一番の美男子でしたが、驕ることはなく、裏表が無い人間だと評判でした。しかし実際は醜い女を嫌悪し、人知れず殺害して埋めていたのです。そんなある日、庄太郎の前にとても美しい女よし乃が現れました。ひと目で夢中になってしまった庄太郎は彼女について行き、店で豚丼を食べさせて貰います。そのあまりの美味しさに、庄太郎は腹がパンパンになるまで食べ続けました。その様子を見たよし乃は、調理している地下工場に庄太郎を落下させます。そこで豚丼の材料が太った男だと知った庄太郎は思わず嘔吐しました。よし乃は見た目だけを気にする人殺しだと庄太郎を詰り、真の姿を見せます。彼女の正体は大きな豚の化物でした。ひどく殴られた庄太郎は、土下座する振りをして蹴りを入れ、何とか逃げ出します。庄太郎は自分の死を悟っていました。しかし庄太郎は死なずに138歳となり、宇宙飛行士にまでなったのでした。
以上、映画ユメ十夜のあらすじと結末でした。
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