茜色に焼かれるの紹介:2021年日本映画。『舟を編む』『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』などを手掛けた石井裕也が監督・脚本を務め、尾野真千子が4年ぶりに主演を務めたヒューマンドラマです。新型コロナウィルス禍の時代を背景に、夫を理不尽な事故で失った主人公の女性が理不尽な苦境にもめげずに逞しく生きていく姿を描きます。
監督:石井裕也 出演者:尾野真千子(田中良子)、和田庵(田中純平)、片山友希(ケイ)、オダギリジョー(田中陽一)、永瀬正敏(中村)、大塚ヒロタ(熊木直樹)、芹澤興人(滝)、前田亜季(幸子)、笠原秀幸(斉木)、鶴見辰吾(有島耕)、嶋田久作(成原)、泉澤祐希(教師)、前田勝(ケイの彼氏)、コージ・トクダ(店長)ほか
映画「茜色に焼かれる」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「茜色に焼かれる」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
茜色に焼かれるの予告編 動画
映画「茜色に焼かれる」解説
この解説記事には映画「茜色に焼かれる」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
茜色に焼かれるのネタバレあらすじ:起
田中良子(尾野真千子)は小さなカフェを一人で切り盛りしながら、中学生になる一人息子の純平(和田庵)を女手ひとつで育ててきました。しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響は容赦なく良子に襲いかかり、良子はカフェを畳まざるを得なくなりました。現在では良子はホームセンター内の花屋のバイトと風俗嬢の仕事を掛け持ちしていました。
良子の夫・陽一(オダギリジョー)は7年前に、元政府高官の高齢者・有島が運転する車に撥ねられて死亡していました。ブレーキとアクセルの踏み間違えによるものでした。しかし、有島はアルツハイマーを患っていたことを理由に罪に問われず、有島側は一応賠償金を用意したのですが、良子は彼らから謝罪の言葉が一言もないことを理由に受け取りを拒否し続けてきました。
良子は純平との二人分の生活費の他にも、養父の老人ホーム入居費、そして更には陽一が浮気相手に産ませた子供の養育費までも払っており、ただでさえ苦しい家計はさらに圧迫され続けていました。それでも良子は、口癖のように「まぁ、がんばりましょ」と自分自身に言い聞かせていました。
ある日、良子は陽一を轢き殺した有島が死んだことを知りました。有島は陽一とは違い、天寿を全うしての大往生でした。良子は有島の葬式に出ようとしましたが、有島の葬式は陽一の葬式の時とは比べものにならないほど盛大なものでした。良子は有島の息子・耕(鶴見辰吾)や顧問弁護士の成原(嶋田久作)によって冷たく追い払われました。純平はなぜ葬式に行ったのかと問うと、良子は自分でもわからないと言いつつあの日の事故の意味をずっと考えていると応えました。
茜色に焼かれるのネタバレあらすじ:承
純平は学校でいじめに遭っていました。いじめっ子たちは良子が風俗で働いていることをネタにして純平を強請り、陽一の事故ですらもからかいのネタにしていました。純平がいじめられていることを知った良子は学校に抗議しに行きましたが、純平の担任(泉澤祐希)ら学校側の対応はあまりにも杜撰なものでした。
良子がバイトをしている花屋の雇われ店長(コージ・トクダ)は、ホームセンターの上司・斉木(笠原秀幸)からコロナ禍で働き先のないお得意先の娘を雇ってくれるよう要求されました。店長は良子に何とか辞めてもらえるよう仕向け、それでも辞めない良子に言いがかりをつけて無理やり解雇しました。
生前はバンドマンだった陽一は、世の中のあらゆるものに反抗しながら生きていました。時には陽一は新興宗教に騙され、持ち金全てを寄付してしまったこともありましたが、良子はそれでも陽一のことは深く愛していました。そんな陽一の命日にはかつてのバンド仲間が集まり、宴会を開いていました。純平はこの宴会の席で、良子がかつて劇団で芝居をしていたことを知りました。
陽一のバンド仲間だった滝(芹澤興人)はかねてから良子に気があったらしく、良子に執拗に迫ってきました。そんな理不尽な日々に疲れ果てた良子の愚痴を聞いてあげているのが、風俗店の同僚・ケイ(片山友希)でした。
ケイは子供の頃から父親に性的虐待を受け続けてきました。ケイは自分はかねてから糖尿病を患っていると語り、治療費や生活費を稼ぐために風俗で働いていることを明かしました。良子とケイの間には次第に友情が芽生え、純平もケイにほのかな想いを抱くようになっていきました。
そんなある日、良子は学校に呼び出され、以外にも純平の成績が非常に優秀であることを告げられました。塾に行く金もなく、家でも大して勉強していないはずの純平でしたが、陽一の生前の口癖だった「トップのトップを目指す」を頑なに守り続けていたのです。
良子は純平に常日頃から生きていく上でルールを守ることの大切さを説いてきていました。良子は純平に「もうひとつルールを作ろう」と切り出し、「お金のことは心配しないこと。行けるところまで行きなさい。その代わり体だけは大切にして。危ないこともしないように」と誓わせました。
茜色に焼かれるのネタバレあらすじ:転
そんなある日、良子は偶然にも高校時代の同級生だった熊木直樹(大塚ヒロタ)と再会しました。熊木は自分は離婚していることを語り、良子を高級レストランでの食事に誘いました。その日から良子は度々熊木と会うようになり、いつしか熊木のことを本気で愛するようになっていきました。
熊木との結婚を意識するようになった良子は、風俗店の店長・中村(永瀬正敏)に店を辞めたいと切り出しました。熊木に何やらよからぬものを感じ取ったのか、中村は「風俗店に勤めていたことを言えないような男なんだろう? 大丈夫か?」と心配しました。
良子は意を決して、自分は風俗で働いていることを熊木に正直に打ち明けたうえで好きだと告白しました。ところが、熊木は態度を豹変させ、実は妻とは離婚していないことを明かしました。熊木は「もっと気楽な関係でいようよ。風俗に勤めていたのならうまいんでしょ」と体の関係を求めてきました。
良子はケイにそのことを相談しましたが、実はケイもまた壮絶な人生を歩んでいることを知らされて強く衝撃を受けました。ケイはヒモのような男(前田勝)と同棲しており、その男から度々暴力を受けていたのです。ケイは男との子を身籠ったのですが、男から堕ろすよう強要され、その際に子宮頸ガンを患っていることが発覚したのです。しかもケイのガンはかなり進行していました。良子はケイを励ますように、いつかカフェを再オープンしたらその時は手伝ってほしいと声をかけました。
その帰り、良子は公営団地の自室から火の手が上がっていることに気付きました。火は消防車に消し止められ、純平も無事でしたが、この火災は純平をいじめていた同級生による放火でした。しかし、良子は火災の原因もろくに調べてもらえず、しかも団地の人々からは周囲に迷惑をかけていると責められ、団地を追い出されることとなりました。良子は「今日だけは母親だかなんだかということを忘れさせて」と純平に告げ、カバンの中に包丁を隠し持って外に出ました。
茜色に焼かれるの結末
良子が向かった先は、神社で待っていた熊木の元でした。いつものように悪びれず近づいてきた熊木でしたが、次の瞬間、良子は包丁を取り出して熊木に襲い掛かりました。
良子の後をつけていた純平は近くの公衆電話から風俗店に電話をし、良子から包丁を取り上げました。それでも良子が熊木と揉み合いになっていると、純平から知らせを受けた中村とケイが駆け付けてきました。中村は熊木を殴り倒し、「あとは(中村と繋がりのある)ヤクザに任せてくれ」と告げて熊木を連行していきました。
ケイは良子と純平に牛丼をご馳走してくれました。そこに中村から電話がありました。中村はヤクザの他にも弁護士の成原とも繋がりがあり、良子の一件を揉み消してくれたうえで熊木とは“ヤクザのルール”で全てカタをつけたからもう心配はいらないと告げました。純平はケイに感謝し、ケイは「今度、純平くんをデートに誘ってもいいかな」とはにかんでみせました。
ケイがこの世を去ったのは、それから間もなくのことでした。葬式に参列した良子と純平は、中村からケイは薬を飲んでビルの屋上から転落したと伝えられました。純平は「事故ですよ。ケイさんは僕とデートする約束をしていたんですから」と自殺ではないと強調しましたが、中村はケイから預かっていた封筒を渡すと、ケイはこの封筒を預けたあと自殺したのだと語りました。封筒の中にはまとまった額の現金が入っていました。
良子は純平を自転車の後ろに乗せ、夕暮れの中を駆け抜けていました。良子は「なんだかいつまでも夜が来ない。ずっと茜色が続いている」と語りかけ、「俺、負けそう」と弱音を吐く純平に「わたしも」と応えました。純平は良子に「大好きだ」と伝えました。
良子は義父が入所している老人ホームに掛け合い、演劇のオンライン公演をさせてほしいと頼みました。この老人ホームでは、コロナ禍でも入居者に楽しんでもらおうと音楽のミニコンサートなどがリモートで催されていました。純平もネットを通じて良子の一人芝居を観ました。良子は動物のぬいぐるみを陽一に見立て、彼に対する恨みと愛を告白する芝居を披露していました。純平は「母さん、わけがわからないよ」と呟きながらも、母の逞しい愛情をひしひしと感じ取っていました。
以上、映画「茜色に焼かれる」のあらすじと結末でした。
「茜色に焼かれる」感想・レビュー
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映画を思い出して泣きそうになりました。
感動ものです。「まぁがんばりましょ」。