あなたへの紹介:2012年日本映画。倉島英二は富山の刑務所で指導教官として勤務している。病気で亡くなった妻・陽子から一通の絵手紙を受け取る。そこには、自分の骨を故郷の海に散骨してほしいと書かれていた。英二は何故、陽子がこんな頼みをしたのか、陽子の真意を知るために手製キャンピングカーで長崎県平戸まで旅をする。旅の途中で出会う人々の人生に関わったことで、陽子の気持ちを少しづつ理解する。
監督:降旗康男 出演:高倉健(倉島英二)、田中裕子(倉島洋子)、佐藤浩市(南原慎一)、草彅剛(田宮裕司)、綾瀬はるか(濱崎奈緒子)他
映画「あなたへ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「あなたへ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
あなたへの予告編 動画
映画「あなたへ」解説
この解説記事には映画「あなたへ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
あなたへのネタバレあらすじ
倉島英二は富山の刑務所で指導教官として、受刑者に木工の実技を教えている。彼の妻・陽子は病気で最近亡くなりました。そんな彼に、遺言サポートの根岸季衣(笹岡紀子)から陽子が書いた絵手紙を手渡されます。その手紙には自分の骨を故郷の海に散骨してほしい。そして郵便局留めの手紙を受け取ってほしいと伝えられました。なぜ生前に何も言ってくれなかったんだろうかと、陽子の気持ちが分かりませんでした。英二は陽子が生きている時のことを思い返します。病室で陽子に、ミニバンを改造して手製のキャンピングカーを作ることを話します。
設計図も作っていました。「この車に乗って好きな絵でも描いたらどう」と言うと陽子は「行きたいところはいっぱいあるわ」とつぶやきます。英二は「どこへでも行くよ、だから早く治ってよ」と甘えるように話します。塚本夫妻が陽子に教わったおかずを持って、英二のところに来ています。英二が、頼んでいた墓地の話を伸ばしてほしいと頼みます。陽子からの絵手紙が気になっているので、長崎に行くことを伝えました。
あなたへのネタバレあらすじ–陽子との出会い–
陽子が、刑務所に慰問に来て、歌を歌ったことを思い出し、映像が流れます。その歌は宮沢賢治「星めぐりの歌」でした。ある日、バス停近くで陽子の姿を見て、英二は声をかけます。「よく、慰問に歌を歌いに来てくれた方ですね、あの星の歌を聞きながら故郷の星を思い出していました。」去ろうとした英二の後を追って、「慰問じゃなかったんです。たった一人のために歌っていたんです」と告白します。その人が2年前に亡くなったことと、皆を騙していたことを詫びます。英二は亡くなった受刑者の荷物の中に、陽子が書いた絵手紙と同じ物があったことを思い出します。英二が、ミニバンの中に照明を取り付けている姿が見えます。英二は迷いながらも陽子の故郷の長崎県平戸の薄香に行く決意をします。後輩である塚本和夫(長塚京三)に辞表を提出して長崎に行くことを話します。塚本は辞表を受理せず、強引に休暇届けとしました。
あなたへのネタバレあらすじ–杉野との出会い–
富山を出発してしばらく走り、飛騨で水を補給している時に、杉野輝夫(ビートたけし)に出会います。車の旅に慣れていない英二に、いろいろとアドバイスをして、オートキャンプ場に泊まることを勧めます。キャンピングカーで日本中を放浪していると話します。自分は元国語教師で、妻に先立たれて旅に出たと言います。英二に放浪の俳人・種田山頭火を熱く語ります。放浪と旅の違いは目的があるか、ないか。帰るところがあるか、ないかの違いだと英二に説明します。そして、英二に放浪と旅の違いは目的があるかないか」であり、芭蕉と山頭火の違いだと言い、「旅は帰るところがある」とも教える。一晩、同じオートキャンプ場に一泊しました。その夜に英二は陽子と立山連峰を見渡す海岸ではしゃいだり、語り合ったことを思い出します。夜が明けて、彼は英二の車に、何も言わずに山頭火の本を置いて去りました。英二は彼の話で自分の旅はなんなのかを考えているようです。
あなたへのネタバレあらすじ–田宮との出会い–
琵琶湖を過ぎ京都に入ります。雨になり、駐車場で本を読んでいると窓がノックされます。田宮裕司がバッテリーコードを貸してほしいと言います。車のエンジンがかからなくなってしまったのです。コードを繋げますがエンジンはかかりません。荷物を大阪に運ばなければいけないのですが、時間に間に合わないと、困っていました。田宮に英二は、自分の車でよければ運ぶのを手伝うと言いました。田宮は喜んで、英二の車に荷物を積み込みます。車が走り出すと、田宮は弁当の実演販売をしていると説明します。とても明るく調子の良い男に見えます。もう一人、同行している部下の南原慎一はおとなしく口数は少ない男です。大阪のマーケットに着いて、英二も手伝い、時間に間に合いました。食事の時に英二が長崎の平戸の薄香に行くことを話すと、南原は興味があるような素振りを見せます。田宮が、お客さんの喜ぶところを見て行きませんかと誘い、最後まで付き合いました。弁当は全て完売しました。ふと、ショーウインドーの大工道具に目がいき、回想します。ショーウインドウに展示してある大工道具をじっと見つめている英二に、陽子が「ほしいのでしょ、退職祝いに買いなさいよ、これからも嘱託で働けるのだから」と進めるが、自分には高すぎると答えます。
後ろを振り返り、陽子を探し、ため息をついてうなだれます。
あなたへのネタバレあらすじ–陽子の思い出–
英二は竹田城跡に立って上から景色を見ています。回想は、天空の音楽祭で、陽子が歌っています、その跡で太鼓の実演が続きます。陽子は英二に、せっかく来てくれたのにうまく歌えなかったことを詫びます。そして、歌でうそをついてしまったので、歌をやめると話します。亡くなってから、大事だったことが分かるのですねと寂しそうに話します。英二は「あの中では流れているはずの時間が止まっています。忘れられていいんじゃないでしょうか」「でないとあなたの時間が止まってしまいます」と言うと陽子ははっとして英二を見つめます。陽子が「忘れるためにあの人のことを聞いてくれませんか」と言って回想は消えます。英二がうつむきがちに竹田城の景色を見ています。雲海の中に竹田城が浮かび上がる、幻想的な風景です。オートキャンプ場で、車の中で英二が不器用に人参を切っています。回想が始まり、病室で陽子が簡単なお惣菜のレシピを英二に渡します。塚本さんにめんどうばかりかけてはいけないと注意します。困っている英二を見て、陽子は笑っています。
あなたへのネタバレあらすじ–杉野との再会–
後から入ってきた車は杉野でした。英二は妻が死んだことを話し、杉野も病気で妻を亡くしたと話します。その時に警察の車が止まり、杉野の車を見て手配中の車だと言います。杉野が自分の車だと言うと福岡県警から車上荒らしの被害が出ていると言って、杉野を逮捕しました。英二に向かって、杉野は放浪しているうちに迷ってしまいましたと言いました。英二も一緒に連れて行かれますが、富山刑務所の確認が取れました。杉野は、全国を旅しながら車上荒らしを繰り返していたそうです。杉野の話しは全て嘘だったのですが、山頭火の本は英二の物だから返してほしいと言ったそうです。英二は複雑な思いになります。
あなたへのネタバレあらすじ–田宮の告白–
車で下関を走っていると田宮から電話があり、門司で落ち合うことになります。居酒屋で酒を飲んでいると、田宮が酔って自分のことを話し始めます。いつもの明るい声ではなく、奥さんが浮気しているみたいなのです。しかし、それをはっきりするのが怖くて、自ら出張をしていると話します。英二が車で休んでいると外から南原がやってきます。田宮が酔って迷惑をかけたことを詫びます。そして、長崎県平戸の薄香に行って、船の手配に困ったら、大浦吾郎(大滝秀治)を尋ねるようにと紹介します。昔、釣りに行った時に、世話になったところだと話します。
あなたへのネタバレあらすじ–平戸に到着–
次の朝、英二は平戸の薄香に入ります。陽子の指定した郵便局で手紙を受け取ります。手紙にはさようならと雀の絵と灯台が写っていました。郵便局のその位置から書かれてあった灯台が見えます。英二は、漁協に船のチャーターを頼みに来ました。しかし、嵐で出る船はいなく、お骨の散骨を紹介することは出来ないと断られてしまいます。自分で漁師に頼みますが、散骨は縁起が悪いので断られます。英二が飛び込んだ食堂に、漁協で散骨のやり取りを聞いていた、濱崎奈緒子がいました。奈緒子は父親が亡くなったのはこんな嵐の日だったねと母親・濱崎多恵子(余貴美子)に話しています。この店は奈緒子と母親が経営している店でした。奈緒子が何故ここで散骨するのかを英二に尋ねます。英二が妻はここの出身だと答えて、南原から貰ったメモを見て、大浦吾郎のことを話します。傍にいた若者・大浦卓也(三浦貴大)は、その大浦吾郎の孫でした。どうして、じいちゃんのことを知っているのかを尋ねます。英二は南原から聞いたことを話します。奈緒子の強い後押しで、大浦吾郎に会いにいきます。
あなたへのネタバレあらすじ–大浦吾郎との出会い–
卓也と奈緒子は結婚することになっています。吾郎は英二の話を聞いて、船を出すことを断ります。卓也が「薄香の物は薄情者と思われてしまう」と抗議します。吾郎は「薄情か薄情でないか、その人がよくわかっているはずだ」と話を切ります。
あなたへのネタバレあらすじ–多恵子との出会い–
英二が食堂の駐車場で車中泊しようとしていると、奈緒子が嵐が強いから店に泊まるように言います。店の中で多恵子が英二に酒の相手をしてほしいと話しかけます。そして、多恵子は7年前に夫が嵐の夜に猟に出たまま帰って来なかったことを話します。吾郎を紹介してくれた南原はどんな人なのかを尋ねます。保険金は死体が上がらなくても3ヶ月でお金が出ることを説明しました。英二は何故陽子が生きている時に話してくれなかったのだろうと考え続けていることを話します。多恵子は英二に、夫婦だからといって全部分かるわけではない、言わなかったことなんて、どうでもいいことじゃないかと話します。この手紙を頼りにここまで来たことで十分じゃないかと話します。英二は吾郎が船を出さなかったのは、自分の決心がついていないことを、見透かされたのだろうと話します。
あなたへのネタバレあらすじ–幼い陽子との出会い–
朝になって英二は薄香の町を見て回りました。写真館に目がとまり、飾られた写真を見ています。その中に舞台で歌を歌う少女の写真がありました。それは幼い頃の陽子でした。英二は絵手紙をもう一度見ます。灯台と飛び立つ雀、そしてさようならの文字。私の骨は故郷の海に撒いてください、あなたへ、と書かれた手紙。写真館の位置から灯台が見えます。英二は絵手紙を灯台に向けて投げました。ひらひらと絵手紙は小さくなっていきました。
あなたへのネタバレあらすじ–吾郎の思い–
英二は吾郎に再び船を出してほしいと頼みました。その様子を見て、吾郎は明日は海も静かになると、承知しました。卓也は奈緒子も自分のことのように喜んでいたと伝えます。そして自分が奈緒子を愛していることと奈緒子が海を嫌いにならなかったことを話します。
あなたへのネタバレあらすじ–多恵子の願い–
夜になり英二の車に多恵子が夕食を届けてくれました。車の中で多恵子は夫が仕事の失敗で借金があったことと保険金で借金を返して、釣り小屋を食堂に作り変えたことを話します。奈緒子と卓也の衣装合わせの写真を夫に見せたいから、海に流してほしいと訴えるような顔で頼みます。承知したあと、英二は写真を見つめ思いをはせます。翌朝、天気は晴れました。
あなたへのネタバレあらすじ–海の散骨–
卓也の操る船で吾郎と共に、英二は港を出港します。しばらく沖に向かい、吾郎が「ここでよか」と言うと卓也が船を止めます。吾郎が「ここなら、誰の迷惑もかからん」と英二に言います。「この海には、こいつの両親も眠っとる、意地の悪いことを言ってすまんかった」と謝ります。夕焼けの空に白い太陽、薄暗くなった海が金色に輝いています。英二が、骨壷を開けて、一握り、また一握りと丁寧に散骨する。最後に花束を投げて合掌する。紅く染まった空、溶けるように海に沈む太陽の美しい景色です。港に戻り、英二が礼金を渡すと吾郎が「油代だけ貰っておけ」と卓也に指示する。「久しぶりに綺麗な海を見た」と立ち去ります。英二は座って物思いにふけます。回想が映されます。陽子が縁側の風鈴を吹きながら「秋になったら忘れずに外さなきゃね、季節外れの風鈴ほど悲しい音はないもの」と微笑して消えます。英二はじっと海を見つめています。多恵子は駐車場から英二の車がないのを見て、呆然となります。英二は退職願いを入れた封筒を郵便ポストに投函します。
あなたへの結末–英二の鳩–
英二は携帯で南原を呼び出します。南原に散骨は無事終えたことを報告します。そして、食堂で出会った女性から迷って当たり前じゃないかと言われたことを話します。そのおかげで遺言の本当の意味が分かったような気がしますと話します。「あなたにはあなたの時間があると、そう言いたかったのだと思います」「その女性がこの写真を海に流してほしいと、そうしたら見てもらえるかもしれない」と南原に写真を見せます。南原が、食い入るように写真を見つめます。南原は意を決したように話し始めます。自分があの海で育ったこと、そして奈緒子が生まれたこと、沖で生活しようと考えたこと、海で遭難したことを話します。英二は立ち上がり、自分は長い間刑務官だったことをうちあけて、受刑者が人を使って情報を流すことを鳩と言うのだと説明します。「自分は今日、鳩になりました」と南原に言います。南原は泣きそうな顔で立ち上がり頭を下げました。英二は黙って、その場を立ち去ります。イベント会場では、田宮が一生懸命弁当を売っています。それを遠目で見ながら英二は去っていきます。
「あなたへ」感想・レビュー
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亡くなった受刑者宛てに出されていた絵手紙の内容が陽子なぜ自分が先に亡くなることを想定していたのかが分かりにくい。故郷の海に散骨して欲しいという最後のメッセージも亡くなった受刑者宛てに出していたのか不明のままで終わっている。
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この映画を見て理解できない点が多分にありました。
ふと、森沢明夫さんの原作?を見つけ読んでみたらすごく理解できて感動したし、陽子からの手紙の内容も涙が出るほどのすばらしい長文でした。
この映画では表現されていないことが多数あり、視聴者へ100%伝わっていないのが残念です。 -
2022年2月20日のテレビ東京で初めて見ました。健さんの演技なら見たいし、せっかくだしと何気なく。今更、見終えてからの余韻が熱くて。見てよかったと。あらすじを読ませていただいて、ほぼ理解しました。「鳩になった訳」海で遭難した人と結びついたあたりを見逃してしまい、今度は襟を正して、きちんと見たいとの感想です。
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今まで何度も,見ても理解できない所がありました。見るたび、深まる意味。まだわからない所があります。心で理解したいと思います。
「夫婦だからと言って全部わかるわけではない。」これがこの映画のテーマでしょうか。
健さんの遺作となったこの映画。写真館に飾られていた写真を見て、「ありがとう」の渋い一言。この一言は私には今まで自分の映画に携わってきた人々全ての人に対するお礼の言葉だったのではないかと、今になりそう思うようになりました。健さんへ。今まで40年間理想の男性を演じてくれてありがとう。