アルキメデスの大戦の紹介:2019年日本映画。2020年東京オリンピック開閉会式の演出を担当することが決まっている山崎貴監督。子どもの頃から戦艦大和や零戦が好きだったと語る監督は、「永遠の0」で零戦の悲劇を、そして本作で戦艦大和の壮絶な最期の瞬間を、得意のVFXを駆使して描き出した。戦艦大和の建造を阻止しようと奔走する若き数学者を、今最も注目されている若手俳優・菅田将暉が演じ、数式を板書しながらの長ゼリフの熱演に、共演したベテラン俳優陣が賛辞を送っている。
原作:三田紀房「アルキメデスの大戦」(ヤングマガジン) 監督:山崎貴 キャスト:菅田将暉(櫂直)、舘ひろし(山本五十六)、柄本佑(田中正二郎)、浜辺美波(尾崎鏡子)、笑福亭鶴瓶(大里清)、小林克也(大角岑生)、小日向文世(宇野積蔵)、國村隼(永野修身)、橋爪功(嶋田繁太郎)、田中泯(平山忠道)ほか
映画「アルキメデスの大戦」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アルキメデスの大戦」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
アルキメデスの大戦の予告編 動画
映画「アルキメデスの大戦」解説
この解説記事には映画「アルキメデスの大戦」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アルキメデスの大戦のネタバレあらすじ:起
昭和20年4月7日、鹿児島県の坊ノ岬沖にて、戦艦「大和」はアメリカ軍の航空機による集中砲火を浴び、なすすべもなく転覆、そして爆発を起こし沈没しました。この闘いで3,000余名の人命が失われました。
さかのぼること12年前。海軍少将 山本五十六(舘ひろし)は、これからの海戦は航空機を中心とした戦いになると考え、造船少将の藤岡喜男に新たな航空母艦の設計案を作らせていました。しかし、新型戦艦建造計画会議の場で、“大艦巨砲主義派”の嶋田繁太郎海軍少将(橋爪功)は巨大戦艦の建造を推してきます。造船中将 平山(田中泯)の提案するその戦艦の美しさに、議長である海軍大臣の大角も目を奪われてしまいます。どちらを作るかは、半月後の会議で決定することになりました。
その夜、山本、藤岡、そして彼らを支持する海軍中将の永野(國村隼)の三人は、料亭で今後の作戦を練っていました。議論も煮詰まり、芸者衆を呼んで楽しもうとしましたが、その夜はひとりの客が芸者全員を独占していて一人も来られないというのです。何人か譲ってもらおうと山本たちがその部屋を訪ねると、そこにはいたのは学生服を来た青年で、芸者の胸囲や投扇興の扇子を投げる高さなどを計りながら楽しんでいました。軍人が大嫌いだというその青年は、尾崎財閥でお嬢様の家庭教師をしながら帝大の数学科に通わせてもらっていましたが、あることがきっかけでクビになり退学させられたのだといいます。もらった大金を使ってしまおうと芸者全員を呼んで遊んでいた彼は、山本たちを追い返します。
自分たちの部屋に戻った山本は永野に、平山案の見積もりは虚偽の数字ではないか、こちらで計算し直して彼らの嘘を暴こうと提案するのでした。
アルキメデスの大戦のネタバレあらすじ:承
山本は、部下の田中(柄本佑)を伴って先日の青年、櫂直(菅田将暉)の下宿を訪れました。アメリカに留学するという櫂に山本は、アメリカと戦争になると告げます。驚いて「勝てるわけがない」という櫂に山本は、嶋田たちが推し進める巨大戦艦の建造をやめさせる手伝いをしてほしいと頼みます。そんな戦艦ができたら、国民は日本が負けるはずがないという幻想を抱いてしまう、と。しかし櫂は拒否しました。
櫂は過去に、尾崎に連れられて海軍の嶋田に会っていました。そこで戦艦の建造について話す二人に、いかに戦艦の砲撃が非効率か、そんな建造は止めた方がいいと言ってしまい、彼らの逆鱗に触れた櫂はその立場を追われたのでした。
日本を発つ日、港には尾崎の娘 鏡子(浜辺美波)が見送りに来ていました。彼女の背後に戦火の幻が見えてしまった櫂は船を下り、山本が待つ車へと向かうのでした。
山本は“少佐”の地位で櫂を迎え、二週間で平山案の見積もりを計算し直すよう依頼し、部下の田中を助手につけました。
海軍省に着いた櫂は永野に会い、でっち上げでもいいという彼の冗談に困惑しますが、あわてて山本が撤回するのでした。
櫂には日当たりの悪い北側の、雨漏りのする部屋があてがわれ、資料といえば藤岡が記憶を頼りに書き起こした書類が二、三枚あるだけでした。
櫂が海軍省内で資料を見ようとしても軍規によって断られ、見積もりを計算し直すための資料は何ひとつありません。
櫂は本物の戦艦を見たい、と横須賀港に向かいます。そこには“長門”があり、運良くそれに乗船することができた櫂は、田中に艦長を連れ出させて機密である設計図を盗み見ることに成功します。そして艦内のさまざまな場所を、巻尺で測っては手帳にメモしました。
海軍省に戻った櫂は、それらのメモをもとに一から長門の図面を書き起こし、そこから平山案の見積もりを計算するつもりです。味方の協力は得られず、平山陣営から嫌がらせを受ける中、二日で初図面は完成しました。
次は、見積もりを出すために必要な、材料費や人件費の根拠となる資料探しです。田中の提案で民間の造船会社にあたるものの、海軍からの命令でどこも取り合ってくれません。困った櫂は鏡子を呼び出します。父親の尾崎は家に仕事を持ち帰らないため役に立てない、とがっかりする鏡子でしたが、幼い頃出入りしていた大里(笑福亭鶴瓶)という男のことを思い出して櫂に伝えました。大里はいま大阪で小さな造船会社を営んでいて、彼なら協力してくれるかもしれない、ということでした。
櫂と田中は大阪へ向かいますが、大里にあっさり断られてしまいます。貴重な時間を費やして翌日も待ち続けますが、全く脈はなく、あきらめて東京に戻ろうとしたそのとき、なんと鏡子が現れたのです。
アルキメデスの大戦のネタバレあらすじ:転
すごい剣幕で詰め寄った鏡子のおかげで、大里は櫂に協力してくれることに。彼は、過去の資料が置いてある倉庫に案内してくれました。あと一週間でこれらを検証すれば平山案の嘘を暴ける、と櫂たちは安堵しました。そして櫂が、なぜ尾崎造船が大損を覚悟してまでこの平山案の戦艦造船を引き受けるのか、と疑問を口にすると大里が、他の巡洋艦と抱き合わせで受注するのだと教えてくれました。尾崎造船はそうやって大きくなった会社なのだと。
そのとき、田中宛てに永野中将から電報が届きました。なんと、決定会議が明日の午前11時からに急きょ変更になったというのです。計算していたのでは絶対に間に合いません。
櫂は、設計図をハサミで切り刻み、鉄の量だけ計算してほしいと皆に頼みます。切り分けた紙にびっしりと鉄の量を書き写し、最終の夜行に乗り込んで櫂たちは東京へと向かいます。列車内でも櫂、田中、鏡子の三人はずっと計算をしていました。
東京について会議の部屋に着いてもまだ、計算は終わっていません。
会議が始まり、藤岡は若干の減額を申請しましたが、議長の大角(小林克也)は決定に影響しないと取り合いません。それどころか、永野たちに対して「私の顔を立てると思って…」と平山案の採択を受け入れるように迫ってきます。櫂は、計算を田中に託して立ち上がり、黒板の前で説明を始めます。グラフを書き、さらに時間を稼ぐために数式を書き始めます。その数式に船の鉄の量を当てはめれば、正しい見積もり金額が出せる、と豪語する櫂に対し、嶋田は資料を持ってきて確かめてやるといきり立ちます。
水雷艇千鳥、重巡洋艦妙高、と立て続けに正解を導き出す櫂。そして、ついに平山案を計算すると、なんとその額は提案された見積もり額の2倍近い金額でした。
その事実を突きつけられた平山はしばしの沈黙ののち、「真実?そんなものが何になる?」と開き直り、他国に見積もりが漏れた場合、正式な見積もりが知られれば列強はさらに強い戦艦を作ってくる、敵をあざむくにはまず味方からだ、と持論を展開します。その言葉で場の空気は一変し、大角は平山案を採用すると決定します。
櫂は、貼り出されていた平山案の設計図をじっと見つめ、「この船には重大な欠陥があります」と声を上げました。最大級の横波に対して構造的に耐えられないという櫂の指摘に、平山は再度設計図を見直し、そして自分の非を認めました。自ら提案を取り下げ、結局藤岡の提案した空母が採用されたのでした。
アルキメデスの大戦の結末
一ヶ月後、櫂は平山に呼び出されました。そこには、20分の1の戦艦の模型がありました。そして平山は、この案を復活させたい、と言うのです。一度はこの船の図面を起こしたことのある櫂に、これが完成した姿を見たくないはずがない、と技術者として揺さぶりをかけてきます。
「ちがう!」
否定する櫂に平山は、こう言います。「日本人は負け方を知らない。最後のひとりまで戦おうとするだろう。だが、国を象徴するような巨大戦艦があったらどうだろう」と。つまり平山は、あえて巨大戦艦を作り、それが沈むことによって戦意を喪失させ、国民に負けを認めさせるための“よりしろ”にしたいのだというのです。そして、その意図にふさわしい名前を平山は考えていました。
その名前は「大和」。
9年後。
日本軍の真珠湾攻撃から2ヶ月後のこの日、戦艦大和の船上に、山本五十六はいました。両脇で敬礼する海軍の軍人の間を、意気揚々と歩いていきます。そこには櫂直の姿もありました。
船を下り、岸から戦艦大和の姿を臨む櫂の目には涙が。その理由を問われた櫂は、「この国のようだ」と答えます。その意味もわからずに、質問した軍人は、「そうですね。まさに大日本帝国の象徴です」と誇らしげに返すのでした。
以上、映画「アルキメデスの大戦」のあらすじと結末でした。
「アルキメデスの大戦」感想・レビュー
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2019年観た映画で一番好きだった。戦争に関する物語だが、冷静に物語りが進んでいくのが良かった。菅田将暉と柄本佑の長台詞の早口に感心した。とても聞き取りやすい。数式を暗記したとも言っていたので、膨大な数大変だったろうなと。
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シリアスなシーンと面白いシーンが程よくあって見応えがあった。
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アメリカのナイ委員会も銀行を糾弾したが、軍事費の根拠が曖昧にされるのは今もそうで、例えば米軍の諸国駐留費用は、ペンタゴンも駐留国の行政も明確に公表していない。
そして数学者は実は損害死亡保険のアクチュアリーにもなりうる。戦艦大和にも相当な保険料がかけられ銀行も潤った。ただどんな賠償金をもってしても歴史は修正できないのだから戦争は愚かだ。
この映画は戦艦建造の予算に関わる不正を暴くというストーリーで、戦争映画としては珍しいのではないでしょうか。素直に面白い映画だと思います。特に良かったのは、戦艦大和へと話が繋がる部分でした。この映画では、大和は重大な使命を帯びて建造されました。冒頭シーンは大和が戦闘で撃沈されるシーンです。それに対し、ラストシーンは大和が意気揚々と出撃するシーンでした。そこに大和の悲劇と戦争の愚かさを感じました。