バースデーカードの紹介:2016年日本映画。優しい両親と弟に囲まれて育った紀子。しかし紀子が10才の時、母親が亡くなってしまいます。亡き母との約束通り、毎年、誕生日の日にバースデーカードを受け取る紀子。そこには母親からの温かいメッセージなどが書かれており…。バースデーカードを通して母娘の深い絆を描く人間ドラマ。普通の女の子が1人の女性として成長し幸せを掴むまでの過程描いています。
監督:吉田康弘 出演:橋本愛(鈴木紀子(17-25歳))、ユースケ・サンタマリア(鈴木宗一郎)、須賀健太(鈴木正男)、中村蒼(立石純)、木村多江(石井沙織)、谷原章介(谷原章介)、洞口依子(美津代)、宮崎あおい(鈴木芳恵)、ほか
映画「バースデーカード」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「バースデーカード」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
バースデーカードの予告編 動画
映画「バースデーカード」解説
この解説記事には映画「バースデーカード」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
バースデーカード:詳細解説
バースデーカードの詳細あらすじ:昔語り
「21世紀の「紀(キ)」に、子どもの「子(コ)」と書いて紀子(ノリコ)。今、この時代に、確かに私という人間が存在した、という意味を込め、パパがつけてくれた名前です。」主人公である鈴木紀子が誰かに向かって話しています。窓のブラインドは降りてるし、病室で、子供に向かって話しているのかな?と思ったのですが、それにしては、敬語です。このセリフの意味が明かされるのは物語後編以降のことになります。紀子は、引っ込み思案の子供でした。4歳の時は、皆が遊んでいても、滑り台の上で座っているような子供でした。それでも絵本を読んでもらうことは大好きで、クマのあみぐるみを編んでいた母親である芳恵に、絵本を読むことをねだるのでした。そして、芳恵も、嫌がらず、絵本を読むために、あみぐるみをあむことをやめるのです。小学校になっても紀子の性格は変わりません。男の子に恐らく、給食着か体操着の入った袋で殴られただけで、泣きだすような子どもで、「泣き虫紀子」とはやし立てられ、周りの女の子からハンカチを貸してもらっても、それを使いません。うつむいたまま歩いていると、後ろから芳恵が近づいてきました。「のりちゃん」と呼びかけられて、振り向くと、芳恵はピエロの赤い鼻をつけていました。手をつないで帰るのですが、この時点で芳恵の骨ばった手は今後の不穏な展開を暗示しているようです。あと、妙に坂が多い街なので、単なる登下校でも面白い構図の場面が続きます。紀子と芳江は、まっすぐ家に帰らず、図書館に寄りました。そして、紀子は言います。「私は主人公でなく、脇役でいい。」 芳恵「のりちゃん、どうして、そんなこと言うの? この図書館に何冊の本があると思う? この本の数だけ主人公がいるんだよ。だから、のりちゃんも自分の人生では主人公なの。」紀子「それでも、私は脇役がいい。」(この辺、全て伏線です。幼き日の体験が積み重なって、紀子という一人の女性になっていく過程を丹念に描いて行く様子がうまいです。)
バースデーカードの詳細あらすじ:後悔の言葉
一度だけ、紀子は芳恵に酷いことを言って困らせたことがありました。学校で、紀子はクイズ大会の代表として選ばれました。眼鏡をかけた男性教諭が推薦したからです。男子生徒も、「鈴木さんは、こないだのテストで県庁所在地を全問正解したし」と納得しかけたのですが、いつもは、泣きべそな紀子にハンカチを差し出す女生徒の一人が「でも、鈴木さんは、緊張して答えられないかもしれません」などと、言います。親切心からでしょうか? 結局、紀子に決定するのですが、その時、女生徒の何人かに紀子は睨まれてしまいます。家に帰り、夕食時に、学校でクイズ大会の代表に選ばれたことを発表しました。芳恵は勿論、父・宗一郎も喜びます。弟の宗一郎も負けじと「僕はね、将来、野球選手か、魔法使いになるの」と発表します。宗一郎は、クイズを出します。「私の周りには空気があります。では、キミの周りには何がある?」正男が次々に答えていきますが、ことごとく「ブー」と言われます。芳江が野菜サラダを出しました。そこには輪切りのゆで卵が乗っていました。「分かった。黄身の周りには白身がある。だから白身」「ピンポンピンポン、大正解。凄いぞ。紀子」 紀子も、嬉しそうだったのですが、当日、豹変します。もう一人の出場者の男子が、歴代首相の名前を暗唱していて、「えーと、あの人誰だっけ? 白い眉毛がボーンってしてて」 紀子「村山富市?」 男の子「あ、そうだそうだ。やべ、緊張してきた。俺、もう一回、トイレ行ってくる。」 男の子がトイレに行った時でした。紀子に嫉妬している女の子達がやってきました。いつもは優しいのに、今日は違います。「鈴木さん、あなた、出場しない方がいいんじゃない? だって、間違えると恥ずかしいし、声も出ないかもしれないじゃない。」気の小さな紀子にはそれだけで十分でした。小学生と言えど、女子です。同性に対する同調圧力は凄まじいものでした。客席には、芳恵や宗一郎の姿も見えました。しかし、紀子は早押しボタンに手を伸ばさずにうつむいています。男の子が助け舟で、「愛媛県の県庁所在地は?」という問題にボタンを押してくれました。「ほら、鈴木、得意だろ?」でも紀子はうつむいたまま答えませんでした。男の子は仕方なく「えーと、愛媛」と答えて間違います。芳恵も流石におかしいと気づきます。結局、1問も答えることはできませんでした。帰り道、芳恵は手をつないで帰りながら紀子に尋ねます。「どうして答えなかったの?」 紀子「分からなかったから」 芳恵「でも一問くらい分かったでしょう。」 紀子は、これ以上聞かれたくなって、投げやりになり、「もう私の人生に希望はないの」とまで言い出します。芳恵は言います。「紀子、あなたには未来がある。何にだってなれるの。いっぱいいっぱい希望があるの」 それに対して、紀子は心にもないことを言ってしまいました。「ママはどうなの? 希望通りの人生送れてる? 満足できてるの? これまでの人生、全て思い通りになった?もう私のことは放っておいて。」 流石の芳恵も顔を曇らせ、紀子の手を離し、先に歩いて帰ってしまいました。正男を肩車していた宗一郎も呆然と見送るだけでした。このクイズ大会は学芸会の一環として開かれたようで、平成11年度の表示がありました。つまり、17年前の1999年ということになります。紀子が9歳の時でした。
バースデーカードの詳細あらすじ:誕生日の約束
次の場面から、芳恵は入院し、頭に髪の毛を隠すために帽子をかぶっています。病名は明かされませんが、恐らく白血病でしょう。もしくは、ガンでしょうか?白血病も血液のガンであり、薬の副作用で抜け毛が酷いから帽子をかぶっているのだと思います。紀子と芳恵にわだかまりはないようです。紀子は、芳恵の着替えを持ってきたのでした。その芳恵は、「アタック25」を見ていました。だから、日曜日の13時過ぎということになります。芳恵は全問正解し、2人部屋の病室にいるもう一人の入院患者のおばさんも拍手喝采です。紀子は言います。「ねー、ママ出場して優勝して、エーゲ海クルーズに連れて行ってよ。」 芳恵「うーん、そーね。病気が治ったらね。」看護婦さんが聞きました。「はーい、鈴木さん、薬を抜きましょうね。紀子ちゃん、楽しそうね。何があったの?」芳恵は答えようとしますが、紀子が止めます。「ダーメ。ママと私、2人だけの秘密」そう言って、止めるのです。芳恵「分かったわ」芳恵は車いすに乗せられて病室から消えました。次の日は、芳恵はレースで花を編んでいるようでした。紀子が来ると丸い平たい箱の中に隠します。部屋には、紀子や正男の書いた絵がいっぱい張られていました。その日、紀子は、暗い顔で食卓につき、正男の「ママ、いつ帰ってくるの?」という質問に対し、「ママはもう家に帰ってこないんだ」と言ってしまいます。宗一郎も最初は否定しますが、嘘をつききれませんでした。翌日、宗一郎は、屋上で車いすに乗った芳恵に謝ります。「パパ、嘘が下手だから仕方ないわよ。」宗一郎「ごめん」芳恵「それよりパパ。今度の休み、ピクニックに行きましょう。」 宗一郎「いいのか?」芳恵「子供達には綺麗な姿の私を見せておきたいの」次の休みに、高原に家族4人でピクニックにでかけます。BBQセットをセットし、作るのはカレーです。宗一郎と正男はピーラーで、危ない手つきでジャガイモの皮を剥いています。正男は大目に注いでもらいたがります。食後には、ケーキが待っていました。3段重ねのホットケーキの上に、イチゴやブルーベリーにクリームが乗っていて、ロウソクも立てられていました。そうです。紀子の10歳の誕生日だったのです。プレゼントは病室で編んでいたレースがついたハンカチでした。さらに、バースデーカードが送られます。文面に書いてあるように、芳恵は約束します。「ママ約束する。これから誕生日に必ず手紙を書く。大人になるまでの10年間、毎年、バースデーカードを送るから。」正男もいいます。「僕のは?」芳恵「はい、正男の分」こうして、漸くバースデーカードの物語が始まるのです。
バースデーカードの詳細あらすじ:11~12歳
翌年の夏、紀子も正男も急いで学校から帰ってきました。それは、紀子の11歳の誕生日だったからです。2人が、まず家に帰って一番にするのは、白い額縁に入った芳恵の遺影に手を合わせることでした。正男は学校であった事を報告します。宗一郎も待っていました。(宗一郎の職業は天文学者で大学の講師です。)宗一郎はダンボールに色つき模造紙を張った郵便ポストを持ってきました。「さて、入ってるかな」紀子は恐る恐るポストに手を突っ込んで、まさぐります。ありました。「入ってる」宗一郎「ほらね、ママは約束を守っただろ」正男も読みたがりますが、宗一郎が止めます。紀子は自分の部屋に飛び込んで、急いで手紙を開けました。そこには、懐かしい芳恵の文字が書かれていました。手紙には、なぞなぞが書いてあります。「たいくつな人が割引セールで買った花は何?」 暇+割引ということでしょうか?そして、筒の中には、ヒマワリの種が入ってました。ちゃんと、庭に植える場所まで書いてありました。翌年、見事なヒマワリが咲き、そして、12歳のバースデーカードには、チョコマフィンの作り方が書かれていて、翌日、学校に作って持っていき、紀子はクラスの人気者になるのです。
バースデーカードの詳細あらすじ:初恋
原作にはあるのかもしれませんが、13歳のバースデーカードの内容は分かりません。14歳の内容は衝撃的でした。キスの仕方が書いてあったからです。紀子は、手紙の内容通り、イメージトレーニングします。枕にイケメンの顔を書いて、練習してるところを正男に見られたり、いつキスしてもいいように、歯を磨きます。学校で昼食後、歯を磨いていると友達に指摘されます。「紀子、血でてる」 紀子「ええー」また、宗一郎相手に上目使いの練習をしたりもします。宗一郎は不思議そうな顔で見ています。紀子が、ここまでキスの練習をしているのは、クラスに気になる相手がいたからです。しかし、奥手の紀子は見ているだけです。授業中に目があっても、そらすのがやっとです。ある日、友達から、好きな人が出来たと言われ、手芸室で相談に乗ります。でも、既に両想いで、紀子と一緒に行く約束をしていた夏祭りがいけなくなったという報告だけでした。紀子は「弟と行くから、気にしないで」というのですが、正男は、魔法使いになるのを諦め、少年野球チームで汗水流し、夏祭りも「友達と行くし、姉ちゃんと一緒になんて言ってられるかよ」と生意気なことを言うようになっていました。仕方なく、庭でひまわりの水やりをしてました。すると、近所に住む、眼鏡をかけた、ふくよかな美津代さんが声をかけてきました。「綺麗なひまわりね。いつも世話してえらいわ。ところで、のりちゃん、今、暇かしら?」紀子「暇です。もてあましてます。」 美津代が呼んだのは、浴衣の着付けのためでした。美津代は、芳恵から娘に貰った黄色い帯の説明をしながら、紀子に浴衣を着せます。そして、紀子は美津代と共に夏祭りに出かけるのです。そこで、偶然、紀子は、想い人である純に出会います。「立石くん?」何故か純はタコ焼きの屋台で、たこ焼きを焼いてました。「おう、鈴木。」 紀子「何してるの?」 立石「バイト。手伝わさせてもらってるの。」店の人が帰ってきました。「友達に1個作ってもいいですか」 店のおじさんも空気を読みます。「いいぞ。作ってやんな。」 美津代も察します。「おばさん、疲れたから向こうで休んでるわね」紀子は、まごつきますが、覚悟を決めます。純が作った、たこ焼きは変わってました。純「たこ入ってないんだ」紀子「ああ、それでか」 純「代わりにコンニャクを入れてみた、どう?」 紀子「うん、おいしいよ。これ」純「よかった」 紀子「立石君、えらいな。もうバイトしていて」 純「俺、バイクが欲しいから」紀子「え、もう乗れるの?」 純「バイクに乗れるのは16歳からだよ。鈴木は何にも知らないな」紀子「だって、女子はそーゆーことは普通知らないよ」 純「免許とったら後ろに乗せてやるよ」いい雰囲気です。花火も、あがり始めました。この映画で凄いのは、平野部からあがる花火を山腹から見下ろしているところです。丁度、花火が炸裂する瞬間をバックに2人は向かい合います。紀子は目をつむります。でも…。純「鈴木、青のりついてて、歯茎から血がでてる」紀子「ええー」 すべては紀子の妄想でした。純「鈴木、どうかしたか?」 紀子「何でもない」 まだキスは早いようです。
バースデーカードの詳細あらすじ:小豆島の冒険
16歳の時、芳恵の手紙にしたがって、紀子は学校をさぼり、映画を見に行きました。何故か「セーラー服と機関銃」です。1981年12月公開の映画です。17歳になった紀子は、フェリーの第3おりいぶ丸に乗り、島に向かっていました。香川県にある小豆島に向かっているのです。さて、紀子が小豆島に向かっているのは、芳恵の代わりに同窓会に出席する為です。福田港で迎えに石井沙織さんという女性が待っていました。芳恵の親友だったそうです。沙織は自動車を走らせながら会話をします。「電話してくれて、助かったわ。タイムカプセルのこと、すっかり忘れとったわ。それにしても、のりちゃん、ほんま、芳恵ちゃんと、よう似とるわ。」 紀子は「似てない」と返そうとして、言葉を飲みこみます。夜になり、同窓会という名の宴会が始まります。紀子が飲んでいるのは、恐らく烏龍茶でしょう。同級生は12人しかいなかったそうです。「二十四の瞳」? そこで、卒業アルバムを見せられます。でも、芳恵は修学旅行の金閣寺前の写真で、空中の丸の中に浮いてました。衝撃の事実が語られます。「芳恵ちゃんは、ボイコットしたからのう。」「芳恵ちゃん、生徒会長やったし。」「東京いったんかのう。」沙織は、触れられたくない過去のようです。ガンガン飲んで酔いつぶれてました。2人の男性が芳恵に告白して降られたようです。お開きになり、タクシーを待つ間、真相は分かりました。本当は東京へ修学旅行に行くはずだったのですが、校長がピンハネして、京都行きになり、その抗議で、芳恵と沙織はボイコットするはずが、沙織だけ、京都に行ったのです。その校長は、現在、京都でNPOの会長になってるそうです。タクシーが来ました。その帰りのタクシーの中で、沙織は語ります。「私達が東京に行きたかったのは、ピンクレディーの解散コンサートが旅行日程と重なっていたからや。私も東京行きたかったけど、親に泣きつかれてね。芳恵ちゃん、ほんまに1人で東京に行ったんやろうか?」 家に帰ると、酔った沙織は、さらに衝撃的なことを言います。「うちの娘ね。引きこもりなの。紹介するね」大声で呼び続けると、その娘が出てきますが、洗面器に水をいれて、ぶちまけて、さっさと入ってしまいました。着替えて酔いがさめた沙織は、紀子の布団をしきます。紀子も旅疲れが出てたので、さっさと寝てしまいます。
バースデーカードの詳細あらすじ:ピンクレディー
翌朝、早く目覚めた紀子が外に出ると、沙織たちは農作業をしていました。「何をしてるんですか?」沙織「オリーブ茶を摘んどんるんよ」 紀子「私もやってみていいですか?」 沙織「助かるわ。そういえば、芳恵ちゃんも、よー手伝ってくれよったわ。」 沙織「さて、私は朝ごはんの支度するね」朝ごはんが出来た時、紀子は沙織に頼まれます。「うちの子、以前は明るい子やったのに、半年前から引きこもっていてね。のりちゃん、よかったら話してみてくれん?」 紀子は断ります。「私、ママとは違うんです。それに、こーゆーこと苦手で」 沙織「ごめんね。無理いって」 その娘が降りてきました。沙織が紹介しようとすると、紀子のTシャツをいきなり脱がせようとします。娘の服を借りてたからです。「脱ぎます。すぐ脱ぐから」 紀子は別室で他の服に着替えてから、返しに行きます。そして、部屋の中で、「さくらの国」のCDを見つけました。「私、この曲知ってる」。娘は言います。「そのバンドな。解散してしもうたんやけど、今、再結成して、これになってる。聞いてみる?」「ぎんなんボーイズ」というバンドになったようです。紀子「この曲知ってる」娘「じゃ、聞いてみる」中学、高校生の違いはあれど、同世代のせいか、打ち解ければ仲良くなるのは早かったです。沙織は外で見てました。タイムカプセルを掘り出す時間になっていましたが、楽しそうな2人を邪魔するような野暮はしません。沙織は1人で出かけてしまいます。芳恵と沙織が通っていた中学校は島の西側にありました。(沙織の家は島の中央、南側にあります)中学校のグラウンドでは、ユンボ(ミニショベルカー)で、ガスボンベのようなものを掘り起し、クレーン代わりに吊り上げられていました。そして、シートの上にみんなの埋めた物を広げていきました。CDを聞き終え、1時間過ぎた頃、紀子はタイムカプセルのことを思い出します。「いけない、○ちゃん自転車ある?」そして、自転車を借りて言います。「お母さんと仲良くして。」娘は言います。「分かってる。お母ちゃんは悪くない」紀子は自転車を借りて、中学校に向かいます。中学校に着くと、タイムカプセルの中身の確認は終わっていたようです。沙織「のりちゃん、丁度よかったわ。はい、これ芳恵ちゃんの」 封筒を手渡されました。中に入っていたのはピンクレディの解散コンサートのパンフレットでした。紀子は1ページ目を開いた時に、沙織に渡します。紀子「どうぞ」 沙織「いいの?」 沙織も開きます。そこには手紙が挟んでいました。「沙織、ごめんね」と芳恵の字が書かれていました。沙織「芳恵、私こそ、ごめんね。」その時、紀子の意識は、知らない教室にいました。そこには、セーラー服を着た芳恵が机の上に寝そべっていました。芳恵は廊下に走り出します。紀子は叫びます。「ママ!」 芳恵は振り向きます。少し微笑んだ気がしました。沙織は、紀子の見送りに来ていました。お土産は、しょうゆ豆です。そこに自転車で娘が駆け込んできました。引きこもりが治ったのです。沙織は喜びます。でも、娘の用事は紀子にでした。「ベスト焼いてきた。今度、一緒にカラオケ行こう。」 紀子「だったら、一緒にピンクレディーを歌おう。」 娘は理解できませんが「分かった。ママに習って練習しておく」 沙織「フリまでバッチリ、教えるわよ」 石井母娘と再会を約束して別れました。帰りは第8おりいぶ丸です。この後、髙松築港につき、JR高松駅からマリンライナーに乗って、瀬戸大橋を渡り、岡山駅から新幹線に乗ったのでしょう。
バースデーカードの詳細あらすじ:反抗期
19歳になった、紀子は急に身長が伸びたような気がします。17歳の時点で橋本愛さんになっているので、周りの大学生の友人の身長が低い役者さんを配役したせいかもしれません。それはともかく、今年の紀子は、手紙を読みません。去年の18歳の誕生日は、芳恵の手紙に振り回されて、ボランティアに参加し、友達の約束をすっぽかすことになったからです。高校球児になった正男が聞きます。「何でさ。」紀子「今年は読まない。ママに人生を決められたくないから。」普段は温厚な宗一郎がテーブルを叩いて怒りました。宗一郎「ママに謝れ」 怒られたことがない紀子はビックリしますが、それでも気持ちは変わりません。やっと絞り出した言葉は「だったらママを、ここに連れてきてよ。」紀子は家を飛び出します。そして、あてもなく、さまよいます。湖のほとりをトボトボ歩いていると、バイクとすれ違います。そして、そのバイクは止まり、呼びかけられます。「鈴木?」 紀子は涙を拭いて振り向きます。「立石君?」 純「どうした? こんなトコで。」紀子は答えられません。純は、何となく察したようです。「よかった。約束はたせそうで」 紀子「約束…何?」純「中学の時に約束したろ。バイクの免許取ったら、後ろに乗せるって」純に言われるままに、紀子はヘルメットをかぶり、後ろにまたがります。そして、それなりに走って、連れてこられたのは「支那そば」と書かれたラーメン屋でした。紀子「何ここ?」 純「俺、ここで修行してるの。一杯食ってく?」紀子「じゃー、お願いします。」 純は、ラーメンを茹で始め、湯切りの手際も、それっぽく見えます。できあがったラーメンは美味しそうです。紀子も幾口か食べて「おいしい」と言います。純は、心底から「よかった」と叫び、ガッツポーズをします。不思議なのは、夕刻なのに、他に客も店員もいないことです。定休日なのでしょうか?(香川県の個人経営のうどん屋なら、朝早い分、15時とか18時閉店も珍しくはないのですが)食べ終わった紀子を送る前に、純は聞きます。「さっき泣いてたろ。どうした?」 紀子「パパと喧嘩した」純「そっか、俺はできないな。」 紀子「どうして?」 純「言ってなかったっけ? 俺、母子家庭なの。母さんは、それこそ、身を粉にして働いて、俺を育ててくれたから、喧嘩なんてできない。」 紀子は送り届けられ、ヘルメットを返し損ねそうになりながら、「また」と言って別れます。そして、気持ちに変化が現れ、手紙を読むことにしました。手紙の芳恵からいきなり謝られました。というのも、19歳の手紙を書いてた芳恵は、その日今まで書いた全ての手紙を破り捨てようとしたのです。そこに宗一郎が入ってきて、止めます。1通は破られてしまいました。宗一郎は手紙の入ったダンボールを投げて、何とか他の手紙を守りました。芳恵「どうして、私は会えないの? 19歳の紀子に、20歳の紀子に。」宗一郎「それでも書いてほしいよ。だって約束したろ? 今の気持ちを1行だけでもいい。書いて欲しいんだ」芳恵「そんな手紙をもらって嬉しいの?」宗一郎「19歳の紀子がどうなってるか誰にも分からない。喜ぶかもしれない。喜ばないかもしれない。それでも書いてほしいよ」紀子の眼からは涙があふれます。1階に下りると、ソファーで、宗一郎が寝ていました。ビールが2缶開いてます。一本は倒れ、もう一本は立っています。1本は飲み干し、もう一本は残っているのかもしれません。紀子は、宗一郎に毛布をかけるのでした。
バースデーカードの詳細あらすじ:最後の手紙
20歳の誕生日は、久々に家族3人でピクニックに出かけました。10歳の誕生日の時のようにカレーを作ります。ケーキは買ってきたのでしょうか? 宗一郎と正男が天体観測の準備をする中、最後の手紙を読みます。10年間の感謝が書かれていました。そして、あの日の問いかけの答えが書かれていました。「10年前、といっても、私には、この間のことですが、あなたに聞かれて答えられなかったことを今、答えますね。 ママの人生は決して思いどおりではなかったと思います。数えきれない程の後悔、心残りばかりです。 だけど、ママは自分の人生に満足しています。パパと出会い、あなたと正男が生まれてきてくれたこと。それだけでママは大満足です。 今まで読んでくれて ありがとう。バイバイ のんちゃん」紀子はしばらく手紙を眺めていました。そして、宗一郎と、正男に合流し、天体観測をはじめるのです。空には満天の星が輝いていました紀子はスーパーのバイトを経て、図書館に就職したようです。司書でしょうか? 一方、正男の高校野球は、補欠ではなく、ベンチ要員として終わります。ここで漸く、紀子の住んでる地域が分かります。地方大会の準決勝、スコアボードには、「野辺山VS諏訪湖」と書いていました。つまり、「君の名は。」の糸守湖のモデルである諏訪湖のほとりに住んでいたのです。要するに長野県ですね。(「君の名は。」の三葉の住んでる町のモデルは岐阜県です。)普段は明るい正男も、負けて帰ってきて、「これから受験か」と言い残し、すすり泣くのでした。紀子も泥だらけのユニフォームを洗い続けてきただけに、正男の努力が報われなかったことに、同情するのでした。21歳の誕生日、ラーメン屋の大将から、海苔とゆで卵をオマケされました。そして「アイツ、頑張ってるよ」と言われるのです。その純から手紙をもらいます。「去年でママからの手紙が終わって寂しいって言ってただろ。」しかし中に書かれていたの一言だけ「これからも よろしく」だけでした。「だって何書いていいか分からなかったし」正男は、紀子の勤めている図書館で勉強していますが、3回受験に落ちたそうです。そして、今年も熟睡していて、ダメそうです。
バースデーカードの詳細あらすじ:挑戦の始まり
ある日、純の勤めているラーメン屋で「アタック25」を見ている時でした。紀子は全問正解しました。そして、純に言われます。「出場してエーゲ海クルーズに連れて行ってよ」かつての、芳恵と自分自身のやり取りを思い出します。純「出場するの、いやなの」? 紀子「クイズって苦手だから」純「どうして?」 紀子「昔、学校のクイズ大会で答えられなかったの」紀子は家に帰ると、引き出しから懐かしいハガキを見つけました。それは芳恵と一緒に書いた、児玉清さんのイラスト入りの応募はがきでした。鈴木芳恵(主婦・33歳)と書かれています。翌日、赤い円筒型のポストに紀子は応募はがきを投函しました。まもなく、予選への招待通知の封筒が届きます。紀子は予選会場に向かいますが、行くたびに参加賞のボールペンがたまっていくだけでした。それでも諦めません。ある日、家に帰ると、正男が旅支度で出かけようとしていました。正男の20歳の手紙には、「旅をしなさい」と書かれていたそうです。紀子「パパに相談したの?」 正男「したよ。反対された」 紀子「当たり前じゃない」 正男「だから姉ちゃん、よろしく」 そこに宗一郎が帰ってきました。「正男、やっぱり、こいつ」 正男は宗一郎の隙をついて、ママチャリで出かけます。宗一郎は、ショートカットして坂を滑り落ちます。しかし、それでも止められません。紀子は仕方なく、「正男、せめて連絡しなさい」紀夫の挑戦は続いていました。そして、とうとう、「16番 鈴木紀子さん」と呼ばれたのです。予選には筆記試験の他に面接がありました。「16番 鈴木紀子さん、お入りください。」 座った紀子は語り始めます。「21世紀の「紀(キ)」に、子どもの「子(コ)」と書いて紀子(ノリコ)。今、この時代に、 確かに私という人間が存在した、という意味を込め、パパがつけてくれた名前です。」漸く冒頭のシーンにつながるのです。つまり、「アタック25」の予選における面接でのセリフだったのです。何日か後に、純にお祝いにされます。いつものラーメン屋ではなく、ワイングラスがある高級レストランのようです。フランス料理かもしれません。「こんなとこじゃなくてもいいのに」 でも、純からも報告があるようです。それが何かは語られず、紀子は家に帰宅します。宗一郎がいきなり言います。「紀子、おめでとう。」紀子は戸惑います。「え? パパ、どうして知っているの?」 どうやら、純との関係が進展するような祝い事が紀子のみの上に起きたようですが、宗一郎の返事は違いました。「届いたぞ。」それは、「アタック25」の本選出場のお知らせでした。紀子は喜びます。そして、日曜日、新幹線で、新大阪に向かいます。朝日放送ことABC放送は、大阪府のほたる町にあります。そこには、紀子と宗一郎の他に、純と、石井沙織の娘がいました。紀子以外は応援ですが、紀子は純に「頑張ってね」と言うのでした。
バースデーカードの詳細あらすじ:アタック25
本戦が始まりますが、紀子は焦って、お手付きをします。3つの城の写真が写った時点で、ボタンを押したと言うより肘が当たった感じです。宗一郎たちは、「が」「ん」「ば」「れ」のうちわをそれぞれ持っていました。しかし、宗一郎は右手に「ば」を持ち、左手に「ん」を持っていたせいで、他の人には「が」「ば」「ん」「れ」としかと読めません。司会の谷原さんが指摘し、「3人のご関係は?」と聞かれます。宗一郎は「父と友人です」と答えるのですが、純が複雑そうな笑顔を浮かべています。谷原さんは察して、「友達以上恋人未満というとこですが」の発言で、宗一郎は「何を言ってるんだ?」というような顔をしています。ともあれ、宗一郎達のやりとりで、紀子の緊張も解け、その後は、快進撃が続きます。アタック25は、解答をすることで、陣地が増えます。それを4人の回答者でとりあうのです。紀子のマスは緑です。10マス以上取っています。最後の問題になりました。その前に、純は宗一郎に言いました。「お父さん、僕と紀子さんを結婚させてください」思わず、宗一郎は叫んでしまいました。「えーッ」。司会の谷原さんに、「お父さん、落ち着いてください」と窘められます。最後の問題は「第1回芥川賞の受賞作は」という問題でした。紀子の脳裏に、芳恵との思い出がよみがえります。「蒼氓」という本を見つけた時です。紀子は聞きます。「ママ、これ何て読むの?」 芳恵「”そうぼう”よ」紀子「どんな意味?」 「”普通の人が一生懸命に生きて、いつか死ぬ”って意味よ。つまり、ママやのりちゃんのような人の話。」 紀子「ふーん」 回想が終わり、紀子は自信をもって答えます。「そうぼう!」次の場面で、紀子と宗一郎は、船の上にいました。エーゲ海クルーズではありません。宗一郎「紀子、惜しかったな」紀子「ああ、ダメだったか。まさか、作者の名前とはね。どっちにしても、名前は覚えてなかったし。普通の私じゃこれが限界。」 宗一郎「そんなことはない。紀子は頑張った。凄いよ。パパの自慢の娘だ」 そこに純がやってきます。「飲み物もってきました。あ、お父さん、空き缶捨ててきます。紀子、本場のたこ焼き」 宗一郎は憮然としています。娘を嫁に取られる父親として、最後の抵抗をしているようです。しかし、「本当だ。タコ入ってる」などと楽しげな紀子の様子を見て、諦めたようです。「立石くん、娘を紀子をよろしくお願いします。」結婚の許可が下りました。紀子と純は喜びます。実は、番組でもひと波乱ありました。「石川達三」。谷原「正解です。鈴木さん、残念でしたね」 紀子「正男見てる?姉ちゃん、優勝できなかったけど、結婚するから、早く帰ってきなさい」 谷原「衝撃の発表がありましたが、次回も『アタック25』お楽しみに」それを見ていた、正男は、自転車屋でタイヤのパンク修理をしていました。「姉ちゃんマジかよ。おじさん急いで」自転車屋のおやじ「はいはい、急いでますよ。」石川達三の「蒼氓」は、ブラジル移民達が、渡航して現地に根を降ろすことを決意するトコで終わるそうです。
バースデーカードの詳細結末:もう一つの手紙
結婚式の朝、宗一郎が身支度が遅く、ハイヤーの運転手さんが急がせています。さらに、宗一郎は「ヒマワリの前で記念撮影しよう」と言っています。紀子「えー、お父さん。間に合わなくなるから、いいよう」とか、やっていると、そこに正男が「日本一周」ののぼりを立てて、自転車で帰ってきました。「姉ちゃん結婚おめでとう」宗一郎「何が日本一周だ。連絡一つよこさないで」 紀子「もう、パパも正男も急いで」 運転手「はい撮りますよ」パシャ。久々に家族3人と新たに純が加わった写真が撮影されました。式場で、紀子はドレスに着替えていました。同じく正装した正男と宗一郎が入ってきました。実は、正男は、紀子にあるものを渡すために、帰ってきたのでした。それは、20歳の正男の手紙に入っていたものです。紀子が結婚した時のために、もう一通手紙が残っていたのです。(これはパンフレットに掲載されていません)正男と宗一郎は出て行き、残された紀子は手紙を読みます。内容は「結婚おめでとう」という物でしたが、もう一つサプライズが書かれていました。目の前にある箱を開けると、そこには手縫いのブーケが入っていたのです。つまり10歳の誕生日に贈られたレース編みの花がついたハンカチは、今回のブーケで余った物から作られていたのです。紀子はレースをかぶり、式場に向かいます。追伸で、「正男もしっかりしてるでしょう?」と書かれています。その正男は、緊張する宗一郎を励ましています。宗一郎が緊張しているのは、花嫁の紀子をエスコートするためでした。教会の通路中央で、純にバトンタッチです。勿論、式場には美津代や、石井母娘も参列しています。紀子は引っ越しました。純が独立して、ラーメン屋を開くからです。まだ、店は改装中です。2階で、買い出しに行くという純に「すぐ行く」と言って、芳恵の遺影に「ママ、それじゃ行ってきます」というのでした。傍らには、芳恵が編んだクマの編みぐるみの他に、3つほど新たにぬいぐるみが並んでいます。この家でも新たに家族の写真が増えていくのでしょう。エンディング主題歌は木村カエラさんの「向日葵(ひまわり)」でした。
以上、映画「バースデーカード」の詳細あらすじ解説でした。
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