映画「クラッシャージョウ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
クラッシャージョウの紹介：1983年日本映画。宇宙を股に掛け、いかなる危険も恐れず問題を解決するクラッシャーと名乗る者達。若いながらも才覚に溢れチームを率いるジョウに、さる令嬢を極秘に移送してくれという依頼が入る。令嬢は重病を患っていて症状の進行を止める為に冷凍睡眠処置を施されていたが、彼女には秘密があった。その秘密はジョウ達だけではなく、宇宙の運命も巻き込んでいく。ジョウとその仲間達の冒険を描いた高千穂遥の傑作ＳＦ小説を、安彦良和が初監督したアニメーション映画。メカデザインなどを大物漫画家、アニメーター等が協力、また当時の流行していた背景の業界ネタがちりばめられている。
監督：安彦良和 声優：ジョウ（竹村拓）、アルフィン（佐々木るん）、タロス（小林清志）、リッキー（小原乃梨子）、ドンゴ（二又一成）、マチュア（武藤礼子）、マーフィー（大塚周夫）、コルワスキー（納谷悟郎）、バード（小林修）、ほか
この解説記事には映画「クラッシャージョウ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ある惑星のハイウェイを猛スピードでトラックと複数のエアカーが撃ち合い、カーチェイスを繰り広げます。堅気には見えない男達が乗り込むトラックは何とか追っ手を振り切り街の倉庫に身を隠しましたが、用意していた宇宙船は爆破されてしまいました。彼等はその積荷、女性を格納したコールドカプセルを運び出す為に次の手を考えざる得ませんでした。
万請負業であるクラッシャーのジョウとそのチームは、仕事を終え休暇に入ろうとした所、ある上流階級の令嬢を助けて欲しいという飛び込みの依頼されます。その令嬢は病気で冷凍冬眠処置をしており、別な惑星の専門医による手術を必要としていると依頼者の執事は言います。ジョウが執事に身元の証を求めると、彼は一族だけが使用できるスペシャルカードを見せます。メンバーのアルフィンはそれを検分、本物と認めます。しかし、チームの一員だがまだあどけないリッキーがアルフィンは元王女であると説明すると執事は、カードを奪い返すように懐に戻します。ジョウは古株のタロスにスケジュールを確認し休暇を諦め、高額の報酬で依頼を了承しました。
ジョウは戦闘機を使い母機である宇宙船ミネルバにカプセルを格納します。ミネルバはそのまま宇宙に出てワープ航法に入ります。ここまでは順調に進みましたがワープ空間に入って暫くすると、突然操縦不能になります。そして大きなショックを受けてジョウ達は気絶しました。ジョウが気が付くと、船は通常空間で静止していました。他のメンバーも目を覚まし、ジョウは船内をチェックします。すると積荷は同乗していた執事達と共に姿を消していました。現在位置を調べると予定の航路とは全く違う場所でした。不可解な事に首を捻っていると、連合宇宙軍の巡洋艦コルトバより威嚇攻撃を受けます。海賊狩りをしていたという艦長コルワスキーは、不自然に停泊していたジョウ達に海賊容疑を掛け、逮捕しました。取調べを受けるジョウは事情を全て話しましたが、依頼主は存在していませんでした。潔白は証明できませんが海賊だという証拠もなく、彼等は釈放されます。しかしそれには裏があり、軍は海賊を一網打尽にしようとジョウを囮にしようと画策します。
釈放されたジョウにクラッシャー財団は謹慎処分を与えます。それを伝えたのは議長でありジョウの実父でもあるダンでした。わざわざ本部からやって来たダンに対してジョウは荒れ、酒を飲んで大喧嘩をします。その彼等の前に一人の男が現れます。その男はタロスの元チームメイトで今は軍情報部に勤めるバードでした。彼は、ジョウに仕事を依頼して来た男達の素性を海賊であると示し、今何処にいるかも教えます。それを聞いたジョウは、バードの思惑も知らず海賊の後を追いました。
ジョウ達が向かった惑星ラゴールは、海賊の巣窟になっている星でした。チームは地表に降下を始めます。すると、彼等の到着を察知した海賊マーフィー一家の幹部、ネロとノーマンに率いられた戦闘機部隊に襲撃を受けます。ミネルバは交戦を開始ししますが幹部二人に梃子摺り、ジョウはアルフィンと共に戦闘機で出撃します。ジョウはタロスに足手まといだと離脱を指示、１機で何とか敵を退けますが自分達も墜落、未開の密林に不時着してしまいました。宇宙港に着陸したタロスは、ジョウ達の救助を急ぎます。そこに何故か大統領秘書官が連絡してきて手助けを持ちかけて来ました。
密林を彷徨うジョウ達ですが、そんな彼等を別な場所に不時着したネロとノーマンが襲い掛かってきます。銃撃戦の末、ジョウはノーマンを退けますがアルフィンをネロに人質に取られてしまいます。しかしそのネロは、凶暴な原生生物に襲われ命を落とします。ジョウ達も危うい目に遭いますが、ＶＴＯＬで駆け付けたタロス達に救助されます。ジョウ達は、ＶＴＯＬを貸してくれた大統領と密会します。大統領は事情を知っており、手を貸す代わりに海賊のボス、マーフィーの暗殺を依頼して来ました。ですがジョウは暗殺を断り、代わりにマーフィーを捕獲を提示、取引を成立させます。
海賊の基地がある島へは、大統領が無理にフロートを装着したミネルバで近付き海から上陸します。その基地では令嬢の覚醒治療が行われていました。しかし覚醒はうまく行かず、幹部キリーは苛立ちます。そこにノーマ帰還の知らせが届きます。戻って来たノーマは、ジョウ達の事とそれを手引きしている者が居る可能性を示唆します。キリーはそれをマーフィーに報告します。その時侵入者発見の連絡が入り、マーフィーはジョウ達を捉え、裏切り者の情報を引き出せと命じました。
囮として暴れ回るタロスとリッキーですが、その間に建物内に侵入したジョウとアルフィンの合図を機に撤退を開始します。しかしそれはノーマと幹部ロキの手によって阻まれてしまいました。奥に進むジョウ達ですが、キリーの待ち伏せに遭い彼等も又、撤退を余儀なくされました。逃げるジョウ達ですが、彼等は令嬢の居る治療室に迷い込み、彼女を攫い小型ヘリで脱出しました。
ヘリを墜落させてしまったジョウ達は湿地帯に隠れていました。そのヘリを残骸を海賊のＶＴＯＬが発見、攻撃します。そして、周囲を探るように掃射して去って行きました。何とかやり過ごしたジョウですが、その銃声をきっかけに令嬢が目を覚まします。令嬢の本名はマチュアと言い、科学者でした。海賊は、彼女が師事する博士が開発していた、外部からワープ制御が可能な新型装置が狙いでした。ジョウはそれを使ってマチュアを奪われた事に気付きます。そこに海賊の無人機部隊が襲い掛かって来ました。ジョウ達は何とか凌ぎますが、武器を全て使い切ってしまいました。ジョウはマチュアから装置に関する話の続きを聞きます。装置には欠陥があり、それを使い続ける事で空間に裂け目が出来てしまうのです。そしてマチュアはその装置を二度と使えなくする事も出来ました。そこにノーマが部隊を率いて来てジョウ達も捕えられます。
ジョウとアルフィンは、タロスとリッキーが拘束されている部屋に監禁されます。無事合流を果たしたジョウは現状を話し、サイボーグ化しているタロスが隠していた左腕のガトリングガンで脱出を図ります。別に拘束受けたマチュアですが、マーフィー達に装置の最終調整を依頼されます。それを拒む彼女ですが、キリーがサブマシンガンを持ち出しマチュアの足元を撃ち始めました。その時、マチュアの脳裏に誘拐の際見た恩師の最後が蘇ります。彼女はそのトラウマから調整を引き受けます。そこにジョウ達の脱走が幹部達の耳に入ります。ジョウ達の追跡はノーマが行い、一度はジョウを追い詰めますが、その油断から命を落してしまいます。ジョウはミネルバに残るロボット、ドンゴに援護のミサイル攻撃を指示します。ドンゴはミサイルを一斉発射し、ミネルバを移動させようとします。その時、フロートからもミサイルが発射され、基地を瓦礫の山と変えました。マーフィーはこの攻撃を受け基地を放棄、宇宙要塞ゴモラへと移動を開始します。ジョウ達も追い縋りますが、後一歩及びませんでした。マーフィーがゴモラに移った事を知った大統領は報復を恐れ、形振り構わず連合宇宙軍に対して救援を要請しました。
ジョウ達は要塞を攻撃しますがまったく歯が立ちません。更には海賊艦隊に挟み打ちに合い窮地に追いやられます。それを救ったのは、バードとコルワスキー率いる宇宙軍でした。艦隊は海賊を一蹴します。大統領の裏切りに怒り狂ったマーフィーは装置を使い、海賊と宇宙軍の艦艇をラグーンへ突入させ攻撃し始めました。ラグーンの都市が壊滅して行く様にマーフィーは勝ち誇りますが、それを大統領に唆されたロキが撃ち、暗殺します。ですが流れ弾がコントローラーを破壊、装置を暴走させ空間を捻じ曲げ始めます。ジョウはそれを止める為、コルトバの主砲でゴモラのドッキングハッチを破壊してもらい突入します。戦闘車両に乗り換えたジョウ達は、途中キリーを倒し、コントロールに辿り着き、抵抗するロキを撃ちます。コントロールでは、マチュアが機械そのものを止めようと必死になっていました。しかし彼女はロキに撃たれ重傷を負っていてジョウに助けを求めます。ジョウは彼女の指示により装置を止める事に成功しましたが、マチュアはそれを見届けるように息を引き取りました。
コントロールに、バードとコルワスキー達が踏み込んできます。コルワスキーは謝罪のようにジョウ達の功績を褒めますが、リッキーは大統領に礼を言えと返します。その時、それを聞き咎めたロキが身を起こし、大統領に踊らされた自分を笑い、そのまま絶命しました。
大統領は海賊が壊滅し、ラグーンが解放された事を高らかに宣言します。演説を終えた大統領が執務室に戻るとジョウが待っていました。彼は大統領が海賊の利益横取りを画策していた事を責めたてます。大統領は証拠がないと突っぱねますがそこにバードが現れ、救援要請に託けて行った捜査で入手した証拠から彼を逮捕しました。連行される大統領を余所に、バードはジョウに感謝を口にします。ですがジョウはバードを殴り倒し、執務室を後にしました。
バードは今回の一件をダンに報告します。彼はダンに息子を利用した嫌味を言いますが睨み付けられます。ジョウは、アルフィンと共にドライブに出ていました。落ち込むジョウの横、アルフィンはマチュアが博士の娘で、利用されると判っていながらも冷凍睡眠処置を行われた事を話します。ジョウは、マチュアが子を思わない親は居ないという言葉を思い出し、吹っ切るようにまた宇宙へと旅立って行きました。
昭和50年代後半における、アニメブームを彩った一作です。原作は高千穂遙氏で、イラストは安彦良和氏が担当されていました。当時の書店では特に一コナーが設えられているほどの人気作であり、何度か手にしたことをよく覚えています。アニメの内容よりもキャラクターの作画の方が印象に残っていますね。シリアスあり、ギャグありの楽しい構成でした。クラッシャーという、宇宙の何でも屋が宇宙海賊と交戦するというストーリーは、超ヒット作である『スターウォーズ』シリーズに触発されてのこともあると思いますが、SFという言葉がサイエンスフィクションであるよりもスペースファンタジーの方が似合うということを納得させられた気がしましたね。ストーリー性云々よりもアクションの方が記憶に残っている作品です。本作はこれ一本のみで、続編は映画では制作されませんでしたが、現在でも創作世界で確たる地歩を築いている名作であることに間違いはありません。私はOVAの方は知りませんが、機会があればこちらも視聴してみたいですね。いずれにせよ、30年余という時間の隔たりを感じることはない作ですよ。この点は保証しますので。